【お薦め本】『「美食地質学」入門』(巽好幸 著 光文社新書)

▼私はこれまでの拙い取り組みの最終ラウンドとして
を進めていた。諸事情があって一年以上「開店休業」状態が続いている。
けっして、やめるつもりはなかった。
そのなかで「ふるさと巡検」が究極の楽しみだと思っていた。
その考えに今も変わりがないが、なにかものたらないものを感じていた。
そのものたりなさの「正体」を私はまだ知らなかった。
▼そのものたりなさの「正体」を考えるのに大きなヒントになりそうな本に出会った。
それが今回の【お薦め本】である。
◆ 【お薦め本】『「美食地質学」入門 和食と日本列島の素敵な関係』(巽好幸 著 光文社新書 2022.11.30)
ともかく、これは面白い!!
これが実感である。
多くの人が、そう感じたからこそ「続々重版!」を繰り返すロングセラーになっているのだろうが、ここでは私なりのお薦めポイント3つをあげておく。
(1)変動帯の民の「美食」を、「地質学」でわかりやすく、面白く読み解いてくれていた!!
(2)日本列島のダイナミックなジオストーリーが、具体的に見えてくる!!
(3)寺田寅彦の「日本列島移動説」にふれてくれていた!!
▼ではひとつずつ少しだけくわしく。
(1)変動帯の民の「美食」を、「地質学」でわかりやすく、面白く読み解いてくれていた!!
私は、この本を読み始めて何度これを繰り返しただろう。
「ナルホド!!」
「これなら私にもわかる。面白い!!」
「今一度、これを食べる旅に行きたい!!」
「もっとはやくこの本を読んでおきたかった。」
具体例をあげて紹介する方がわかりやすいだろうと、気に入ったところに付箋をはっていたら、これもこれもとなってしまい。いっぱいになってしまいついに最後まできてしまった。
けっきょく最後の「エピローグ」の著者のコトバを借りることにした。
しかし、美食地質学の旅を終えた読者諸氏には、例えば和食の基本となる出汁が、プレート運動に伴う地殻変動や火山活動が山地を形成ことで成立したことをご理解いただいたはずだ。世界一の変動帯である日本列島は、地震や噴火などの過酷な試練を人々に与えてきたのだが、人々は黙々と試練を甘受するだけでなく、しっかりその恩恵を享受してきたのである。(同書P288より)
つづけて、こうも言っていた。
つまり美食地質学は、我が国や地方を特徴づける食材や食文化のオンリーワン性を浮かび上がらせ、人々にこれまで気づかなかった地元の魅力を再発見してシビックプライドを高めるための一助となるに違いない。同時に、これまで幾度となく試練に見舞われ、それを与えてきた日本列島の自然に対して畏敬の念を抱きながらも、感謝の気持ちを忘れずに暮らしてきた先人の営みやその精神性を改めて見つめ直すきつかけにもなれば望外の喜びである。
(同書P289より)
今、この本に登場する「美食地質学」の旅の「現地」に行ってみたい気分になってきた!!
次のお薦めポイントにいこう。
(2)日本列島のダイナミックなジオストーリーが、具体的に見えてくる!!
ポンコツ頭も作用しているのだろうか、日本列島のジオストーリーがなかなか頭に定着しなかった。
時空のスケールが遠大すぎた。一度聞いてナットクしたつもりなっていてもすぐわすれしまうのだった。これまでの常だった。
ところがこの本ではちょっとちがっていた。
特に2つのジオストーリーが印象に残った。
ひとつは「日本列島誕生物語」。
今から約2500万年前、アジア大陸の東縁部一大事件が勃発した。大地が裂けて、その片割れの地盤が太平洋へと動き始めたのだ。私たちの知る日本列島の誕生である。そして、迫り出した日本列島とアジア大陸の隙間には「日本海」が出現した(図表1ー3)。
(同書P25より)
もうひとつは「変動の時代へ」。
そしてついに日本列島は、世界一の変動帯へと進化していく。その引き金となった大事件が起きたのは、今から300万年前。40億年におよぶ日本列島の歴史からするとつい最近のことだ。それまで北向きに動いていたフィリピン海プレートが、突如として45度方向転換をして、北西へと向きを変えたのだ。(同書P27より)
この2つを説明する図がまたとてもよかった。
・図表1ー3 現在の日本列島ができるまでの変遷 (同書P23)
・図表1ー4 フィリピン海プレートの方向転換と日本列島 (同書P28)
ある程度簡略化(これがミソかも知れない)され、美食地質学の旅のなかで、繰り返し繰り返し説明されていた。
「美食」との関連で語られるから、とても楽しい!!わかりやすい!!面白い!!ナットクだ!!
だから記憶にも残りやすいのだった。
▼最後のお薦めポイントにいこう。
(3)寺田寅彦の「日本列島移動説」にふれてくれていた!!
これは私のちょっと気儘なお薦めポイントだった。
この本で我らが寺田寅彦は3度登場した。(私の見落としがなければ)
なかでも、いちばんくわしく書かれているのは次のところである。
寺田寅彦の「日本列島移動説」
通常の海でなく、大陸地殻がちらばっているように見える日本海のでき方について、挑戦的かつ先見性のある説を唱えたのは、第1章でも述べた通り、かの寺田寅彦であった。1927年のことだ。
アルフレッド・ウェゲナーの「大陸移動説」に触発された寺田が発表した論文では、太平洋側とは異なり日本海側沿岸にはいくつかの島や海底台地が存在し、これらが列をなしていることに注目。そして、このような島列は、日本列島がアジア大陸から分離移動した過程で、日本海の中に取り残された陸の破片と考えた。
(同書P220より)
この論文に興味があった。ネツトで調べてみた。
・「日本海沿岸の島列に就いて」(寺田、1927)
おおっ、100年前だ!! どんな論文なんだろう?
ひとつ思い当たることがあった。
●『寺田寅彦全集 科学篇 全6巻』(岩波書店刊)
である。ちょつと無理をして手に入れていた。こんなときに利用しなければと思い調べて見た。
あった!!みつけた!!「VOL Ⅲ 94」である。
うれしいと思ったのはつかの間、アタリマエだが論文は全文英語だ!!
不勉強な私には歯が立たない。付図を楽しむのみだった。
ところが、アリガタイことにこの本では一度は忘れられていた寺田説が完全に復活するまでのプロセスがわかりやすく語られていたのだ。
もうこれだけでも、この本は最高にお薦めだ!!
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