本日(2025/05/09)、第410回オンライン「寅の日」!! #五月の唯物観 #traday #寺田寅彦

▼「あなたの好きな色は!?」 と訊ねられたら、躊躇なく
山の緑 !!
と答えるだろう。
野の緑!!
畑の緑!!
とも そして ちょっと大げさに
緑の哲学!! と。
▼本日(2025/05/09)は、第410回オンライン「寅の日」である。
5月のテーマも、ちょっと大げさに「寅彦と哲学」である。
【5月テーマ】「寅彦と哲学」
その一回目である本日は、「五月の唯物観」を読む。
◆本日(2025/05/09)、第410回オンライン「寅の日」!!
▼まずはこれがいつ書かれたものかを見ておこう。
(昭和十年五月『大阪朝日新聞』)
昭和十年(1935)とは、寅彦の最晩年である。この年の大晦日に寅彦は亡くなっているのである。
したがってこの「五月」も最後の「五月」だった!!
自らの「五月」遍歴から語ってくれている。
若かった時分には四月から五月にかけての若葉時が年中でいちばんいやな時候であった。理由のない不安と憂鬱の雰囲気のようなものが菖蒲や牡丹の花弁から醸(かも)され、鯉幟(こいのぼり)の翻る青葉の空に流れたなびくような気がしたものである。
それが年を取るうちにいつの間にか自分の季節的情感がまるで反対になって、このごろでは初夏の若葉時が年中でいちばん気持のいい、勉強にも遊楽にも快適な季節になって来たようである。
そして寅彦の「科学する」がはじまる!!
われわれが格別の具体的事由なしに憂鬱になったり快活になったりする心情(ムード)の変化はある特殊の内分泌ホルモンの分泌量に支配されるものではないかと思われる。
数式で書き現わすと、この問題の分泌量Hがざっと H = H0 + A sin nt のような形で書き現わされその平均水準のH0[#「H0」は縦中横]と振幅Aとが各個人の各年齢で色々になる量だとする。そこで今いちばん適当なHの量を仮にKだとすると、上式をKに等しいと置いたときにその式を満足するような時間tに相当する時季がその人のいちばん気持のいいときになる勘定である。
えっ!?そこまで言うのと思っていたら、そこで終わらないのが寅彦だった。
しかし実際は上のような簡単な式ですべてが現わされるはずはないので、例えば過剰や過少が寒暖の急な変り目だけに起り、そういう時期だけにそれが有効に心情を支配するのだとすれば、それでも一応はこの困難が避けられるであろうと思われる。
そういう場合に、前述のごとき馬鹿げた数式でもひねくってみることが少なくも一つの有効な鎮静剤の役目をつとめることになりはしないかと思うので、そういう鎮静剤を一部の読者に紹介したいと思ったまでのことである。
▼寅彦の「本意」は、最後にあるように思われるのは私の思い込みだろうか!?
これらの泥塗事件も唯物論的に見ると、みんな結局は内分泌に関係のある生化学的問題に帰納されるのかもしれない。そういえば、春過ぎて若葉の茂るのも、初鰹の味の乗って来るのも山時鳥(やまほととぎす)の啼き渡るのもみんなそれぞれ色々な生化学の問題とどこかでつながっているようである。
それにかかわらずもしや現代が一世紀昔のように「学問」というものの意義の全然理解されない世の中であったとしたら、このような科学的五月観などはうっかり口にすることを憚(はばか)らなければならなかったかもしれないのである。そういう気兼ねのいらないのは誠に二十世紀の有難さであろうと思われる。
そして今、二十一世紀!!
寅彦はいつ読んでも今日的!!
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