本日(2025/01/09)、第400回オンライン「寅の日」!! #天災と国防 #traday #寺田寅彦

▼寅彦の鳴らし続けた警鐘について、弟子である中谷宇吉郎先生は次のように語っていた。
実はこの言葉は、先生の書かれたものの中には、ないのである。しかし話の間には、しばしば出た言葉で、かつ先生の代表的な随筆の一つとされている「天災と国防」の中には、これと全く同じことが、少しちがった表現で出ている。
……
もともとこの言葉は、書かれたものには残っていないが、寅彦の言葉にはちがいないのであるから、別に嘘うそをいったわけではない。面白いことには、坪井忠二(つぼいちゅうじ)博士なども、初めはこの言葉が、寅彦の随筆の中にあるものと思い込んでいたそうである。それでこれは、先生がペンを使わないで書かれた文字であるともいえる。(「天災は忘れた頃来る」中谷宇吉郎 青空文庫より)
▼本日(2025/01/09)は、記念すべき第400回オンライン「寅の日」である。
2025年1月のテーマは、「今」にもっともふさわしいテーマである。
【1月テーマ】「寅彦と防災・減災」
その一回目である本日は、中谷宇吉郎先生も指摘していた「天災と国防」を読む。
◆本日(2025/01/09)は、第400回オンライン「寅の日」!!
▼「えっ、いつ書かれたものなんだろう!?」
思わずそう思ってしまった!!
最後を見ると、「昭和九(1934)年十一月」となっていた。
91年の時空を超えてぐいぐいと引き込まれていく。
気象学的地球物理学的にもまたきわめて特殊な環境の支配を受けているために、その結果として特殊な天変地異に絶えず脅かされなければならない運命のもとに置かれていることを一日も忘れてはならないはずである。
しかしここで一つ考えなければならないことで、しかもいつも忘れられがちな重大な要項がある。それは、文明が進めば進むほど天然の暴威による災害がその劇烈の度を増すという事実である。
文明が進むに従って人間は次第に自然を征服しようとする野心を生じた。そうして、重力に逆らい、風圧水力に抗するようないろいろの造営物を作った。そうしてあっぱれ自然の暴威を封じ込めたつもりになっていると、どうかした拍子に檻(おり)を破った猛獣の大群のように、自然があばれ出して高楼を倒壊せしめ堤防を崩壊(ほうかい)させて人命を危うくし財産を滅ぼす。その災禍を起こさせたもとの起こりは天然に反抗する人間の細工であると言っても不当ではないはずである、災害の運動エネルギーとなるべき位置エネルギーを蓄積させ、いやが上にも災害を大きくするように努力しているものはたれあろう文明人そのものなのである。
やがて気になりだした。中谷宇吉郎先生が指摘した警鐘と「全く同じことが、少しちがった表現」で出てくるのはどこだろう?
このあたりだろうか。
それで、文明が進むほど天災による損害の程度も累進する傾向があるという事実を充分に自覚して、そして平生からそれに対する防御策を講じなければならないはずであるのに、それがいっこうにできていないのはどういうわけであるか。
そのおもなる原因は、畢竟(ひっきょう)そういう天災がきわめてまれにしか起こらないで、ちょうど人間が前車の顛覆(てんぷく)を忘れたころにそろそろ後車を引き出すようになるからであろう。
▼たしかに「時代がちがう!!」の指摘もあるだろう。
しかし、もう少し寅彦のコトバに耳を傾けてみよう。
しかし昔の人間は過去の経験を大切に保存し蓄積してその教えにたよることがはなはだ忠実であった。
時の試練を経ない新様式の学校や工場が無残に倒壊してしまったという話を聞いていっそうその感を深くしている次第である。やはり文明の力を買いかぶって自然を侮り過ぎた結果からそういうことになったのではないかと想像される。
古い民家の集落の分布は一見偶然のようであっても、多くの場合にそうした進化論的の意義があるからである。そのだいじな深い意義が、浅薄な「教科書学問」の横行のために蹂躙(じゅうりん)され忘却されてしまった。そうして付け焼き刃の文明に陶酔した人間はもうすっかり天然の支配に成功したとのみ思い上がって所きらわず薄弱な家を立て連ね、そうして枕(まくら)を高くしてきたるべき審判の日をうかうかと待っていたのではないかという疑いも起こし得られる。
戦争はぜひとも避けようと思えば人間の力で避けられなくはないであろうが、天災ばかりは科学の力でもその襲来を中止させるわけには行かない。その上に、いついかなる程度の地震暴風津波洪水(こうずい)が来るか今のところ容易に予知することができない。
天災の起こった時に始めて大急ぎでそうした愛国心を発揮するのも結構であるが、昆虫(こんちゅう)や鳥獣でない二十世紀の科学的文明国民の愛国心の発露にはもう少しちがった、もう少し合理的な様式があってしかるべきではないかと思う次第である。
時代は二十一世紀になった。
それも四半世紀目にもなる今年!!寅彦が鳴らし続けた警鐘は時空超えて「今」も響いてくるのである。
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