【祝】本日(2021/11/14)、第300回オンライン「寅の日」!! #茶わんの湯 #traday #寺田寅彦
▼『寺田 寅彦 漱石、レイリー卿と和魂洋才の物理学』(小山 慶太著 中公新書 2012.1.25)にたいへん興味深い一文があった。
寅彦は高嶺俊夫と親交を深めるなか面白いことをやっていたようだ。 一九二八年(昭和3年)の春ころから、高嶺と寅彦は毎週一度のペースで、二人だけの昼食会を催すことになる。高嶺はこの日を「寅の日」、一方の寅彦は「高嶺デー」と呼んでいた。(中略)学問の話もしたが、それ以外に気楽なテーマもよく話題にのぼったという。“高等遊民”を彷彿させる二人の姿が浮かんでくる。(同書 P15より)
寅彦のにわかファンだった私はとんでもないことを思いついた。
この「寅の日」を現代に蘇らせることはできないか?
ヒントとなったのは、かつて【理科の部屋】のオンライン学習会だ。
時空を超えるオンラインでは可能ではないのか?
そうして生まれたのがオンライン「寅の日」!! 2012年4月のことだった。
面白くなくなったらすぐやめようと思っていた。
ところが読めば読むほど面白くなり、いつのまにやら本日まで来てしまった。
▼本日(2021/11/14)は、記念すべき第300回オンライン「寅の日」である。
11月のテーマは、
【11月テーマ】「寅彦の自然の見方」
である。
記念すべき本日は、「茶わんの湯」を読む。
◆本日(2021/11/14)、第300回オンライン「寅の日」!!
▼今回の「茶わんの湯」は、数ある寅彦の随筆のなかでも、最も有名で多くの人に読まれた随筆だろう。
私自身も、「国語」の教科書に登場して最初に読んだ寅彦の作品でもある。
元々があの鈴木三重吉が1918(大正7)年に創刊した児童文学雑誌『赤い鳥』に掲載されたものであり、子どもから大人まで楽しめる名作中の名作である。
「科学読み物」最高峰!!
出だしからぐいぐいとその世界に引き込まれていくのだった。
ここに茶わんが一つあります。中には熱い湯がいっぱいはいっております。ただそれだけではなんのおもしろみもなく不思議もないようですが、よく気をつけて見ていると、だんだんにいろいろの微細なことが目につき、さまざまの疑問が起こって来るはずです。ただ一ぱいのこの湯でも、自然の現象を観察し研究することの好きな人には、なかなかおもしろい見物(みもの)です。
「なるほど!!」となっとくするのもつかの間、次々とあらたな展開となっていきます。
こんな具合に
次に湯げが上がるときにはいろいろの渦(うず)ができます。これがまたよく見ているとなかなかおもしろいものです。線香の煙でもなんでも、煙の出るところからいくらかの高さまではまっすぐに上りますが、それ以上は煙がゆらゆらして、いくつもの渦(うず)になり、それがだんだんに広がり入り乱れて、しまいに見えなくなってしまいます。茶わんの湯げなどの場合だと、もう茶わんのすぐ上から大きく渦ができて、それがかなり早く回りながら上って行きます。
みごとな観察眼です!!
みごとなのは観察眼だけでないのです。観察した現象をみごとな文章で地球規模の自然現象に結びつけていくのです。
しかしまた見方によっては、茶わんの湯とこうした雷雨とはよほどよく似たものと思ってもさしつかえありません。
ちょっと見ただけではまるで関係のないような事がらが、原理の上からはお互いによく似たものに見えるという一つの例に、雷をあげてみたのです。
これぞ「寅彦流自然の見方」真骨頂がここにあるのです!!
▼あの中谷宇吉郎先生は、「茶わんの湯」について次のように語っていた。(「「茶碗の湯」のことなど」中谷宇吉郎 青空文庫より )
恐しいもので、この「茶碗の湯」を数行よみかけたら、これは寺田先生以外には誰も書けないものだとすぐ直観された。それは、文章の良い悪いなどの問題では勿論なく、また内容が高級で表現が平易であるなどということを超越したものであった。強いて言えば、それは芸が身についた人の芸談にあるような生きた話であった。 「茶碗の湯」は全部で、印刷にして六頁(ページ)くらいの短いものである、しかしその中には、先生が一杯の熱い湯のはいった茶碗を手にして、物理学の全体を説き明かして行かれる姿が出ていた。
これまたみごとなものだ。これほどみごとな解説は他にはないだろう。
「芸が身についた人の芸談」を存分に楽しませてもらいたいものだ。
最後は、こうしめくくられていた。
茶わんの湯のお話は、すればまだいくらでもありますが、今度はこれくらいにしておきましょう。
今、考えてみると、2012年の4月にはじまったオンライン「寅の日」では
寅彦が「まだいくらでもあります」と言ったお話の数々を楽しませてもらってきたのだと思う!!
オンライン「寅の日」はどこまで続くだろう!?
面白い!!
と思えるうちは、可能な限りつづけたいものだ!!
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