中谷宇吉郎を訪ねて(3) #中谷宇吉郎
▼宇吉郎の墓を離れるやいなや再び雨が降り出した。
まずい!!
ここで旅を終えるなら、あとはのんびりとでいいのだが、私にはこの旅でどうしても行っておきたい場所があった。
「大聖寺」デアル!!
当初の予定では、バスでいったん加賀温泉駅までもどって、そこから再びバスか列車で向かう予定にしていたが、もうその時間はない!!
それに雨だ。こんなとき、私はいつもタクシーを利用することにしていた。
「青春18きっぷ」で節約旅行しながら、タクシーを利用するなんて相矛盾するようだが、ここがいちばんのゼイタクのしどころだと思っていた。他のところでいくら節約しても、このゼイタクだけは譲れなかった。
近くのホテルに寄って、そこでタクシーをよんだ。
タクシーに乗るなり言った。
「大聖寺駅へお願いします。」
「えっ? ここからなら加賀温泉駅の方が近いですよ。」「大聖寺駅でほんとうにいいんですか?」
かなり年配のベテラン運転手さんだった。
ここからが面白かった!!
なぜ大聖寺をめざすのか?今、宇吉郎の「ゆかりの地」をめぐる旅の途中であることなどを話した。
半世紀以上この地でタクシー運転手さんの話は滅茶苦茶面白かった。
ガイドブックやネットには絶対ないような面白情報満載だった!!豊富な体験をまじえて語ってくださる「片山津(加賀)温泉物語」はずっと聞いていたかった。今から行く大聖寺の歴史についてもくわしく教えてもらった。
今回もやっぱり タクシーは最高!!大正解だった!!
大聖寺駅に着いたときは、午後2時半近くになっていた。
▼「大聖寺」でどうしても行ってみたい場所とは、錦城小学校と錦城山であった!!
ここではいつもとは逆だった。
前々からとても気になる宇吉郎の随筆があった。気になるよと言うよりわけもわからず「お気に入り」という方がいいかも。
●「簪を挿した蛇」(青空文庫より)
特に、最後の一文が特に気になっていた。
眼に見えない星雲の渦巻く虚空(こくう)と、簪をさした蛇とは、私にとっては、自分の科学の母胎である。人には笑われるかもしれないが、自分だけでは、何時(いつ)までもそっと胸に抱いておくつもりである。
この「簪を挿した蛇」の舞台こそ、錦城小学校であり錦城山なのである。
宇吉郎は6年間この小学校に通ったのである。
だから、はじめに「簪を挿した蛇」ありきなのである!!
さっそく、錦城小学校に行ってみた。
幸い雨はやんでいた。校門の前を流れる川にも歴史を感じる。
江沼神社のそばを通り、裏山の錦城山・大聖寺跡に行ってみる。そこには遊歩道があった。
ゆっくりする時間はないが、とりあえず登れるところまで登ってみた。
山の上から錦城小学校とそのグランドが見えた。
曇っていたが、小松のあたりまで見えているようだった。
降りてきて、再び江沼神社の沼のあたりを歩いてみた。
「簪を挿した蛇」が出現するかと思ってしまった。境内には、あの『日本百名山』の深田久弥文学碑があった。
▼もうタイムリミットだ。
駅へ歩いて向かう。タクシーの運転手さんの話を思い出した。
ほんとうに歴史ある町なみだ!!
もうひとつだけ行ってみたいところがあった。
石川県九谷焼美術館だ。
なかに入ってゆっくり見せてもらう時間はない。せめて入口だけでも…
宇吉郎は「九谷焼」にはこだわりがあった。そのあたりをくわしく次に書いていた。
●「九谷焼」(青空文庫より)
大聖寺駅にもどり列車で、加賀温泉駅に向かうことにした。
そこに荷物を置いていたからである。
そして加賀温泉駅17:34発で帰路についた。
▼一泊二日の「中谷宇吉郎を訪ねて」の旅はまたたくまに終わってしまった。
最初の「なぜ今、中谷宇吉郎なのか!?」に対する
もうひとつの答えを記するには拙速すぎるかも知れない。
あくまで、暫定的中間報告ということで思いつくまま、気まぐれにあげてみる。
(1)「宇吉郎」の科学は、「寅彦」の科学を継承しつつもさらにそれを超えるものがあるかも!?
(2) 「寅彦」の科学をコトバにしたのは、「宇吉郎」のテガラだ!!
(3) 美しい文章にすることにより、「科学」を美しい「かたち」にした!!
(4)宇吉郎は「科学」の面白さを誰にでも挑戦できるように伝えてくれている!!
例 「霜柱の研究」
「立春の卵」(【立春の卵】191日の軌跡)
まだまだありそうだ。
しばし、この旅の反芻作業を繰りかえしてみよう。
そして、またいつか…。
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