本日(2019/09/26)、第234回オンライン「寅の日」!!#traday #寺田寅彦
▼子規庵の糸瓜は、台風の強風にもめげず元気だ!!
7~8個の大きな糸瓜の実を収穫できそうだ。うまく種子も回収できれば…
▼本日(2019/09/26)は、第234回オンライン「寅の日」である。
8月、9月と続けて読んできた「ルクレチウスと科学」の最終回である。
寅彦はなぜかくも熱くルクレチウスを語ったのか!?
その謎解きはどこまで進んだだろう?
そして、私自身の「原子論」「原子論的物質観」とは!?の課題はどこまで?
◆本日(2019/09/26)、第234回オンライン「寅の日」!!
▼最終回の今回は、六章と後記を中心に読む。
六章のはじめに「天災は忘れられたる頃来る」の警鐘を鳴らしつづけて来た寅彦ならではの文章が出てくる。
彼が雷電や地震噴火を詳説した目的は、畢竟(ひっきょう)これら現象の物質的解説によって、これらが神の所業でない事を明らかにし、同時にこれらに対する恐怖を除去するにあるらしい。これはまたそのままに現代の科学教育なるものの一つの目的であろう。しかし不幸にして二十世紀の民衆の大多数は紀元前一世紀の大多数と比較してこの点いくらも進歩していない。たとえば今のわが国の地震学者が口を酸(す)くして説くことに人は耳をかそうとしない。
さらに続けてこうも言っていた。
そうして大正十二年の関東地震はあれだけの災害を及ぼすに至った。あの地震は実はたいした災害を生ずべきはずのものではなかった。災害の生じたおもなる原因は、東京市民の地震に対する非科学的恐怖であったのである。科学は進歩するが人間は昔も今も同じであるという事を痛切に感じないではいられない。同時に今の科学者がルクレチウスから科学そのものは教わらなくても、科学者というものの「人」について多くを教わりうるゆえんをここにも明らかに認めうると考えるのである。
そして最後に興味深い言葉で結んでいる。
ルクレチウスはおそらく、この後にさらに何物かを付加する考えがあったのではないか。私はこの書に結末らしい結末のない事をかえっておもしろくも思うものである。実際科学の巻物には始めはあっても終わりはないはずである。
▼最後の「後記」に、これまでのエキスをすべて詰め込んでいる!!そんな気がしてくるのである。
少し引用がたくさんになるが、私自身が少し「まとめ」をするためと思いつづける。スミマセン<(_ _)>
まずルクレチウス礼賛の言葉を聞いてみよう。
ルクレチウスの書によってわれわれの学ぶべきものは、その中の具体的事象の知識でもなくまたその論理でもなく、ただその中に貫流する科学的精神である。この意味でこの書は一部の貴重なる経典である。もし時代に応じて適当に釈注を加えさえすれば、これは永久に適用さるべき科学方法論の解説書である。
現代科学の花や実の美しさを賛美するわれわれは、往々にしてその根幹を忘却しがちである。ルクレチウスは実にわれわれにこの科学系統の根幹を思い出させる。そうする事によってのみわれわれは科学の幹に新しい枝を発見する機会を得るのであろう。
現代の科学がルクレチウスだけで進められようとは思われない。しかしルクレチウスなしにいかなる科学の部門でも未知の領域に一歩も踏み出すことは困難であろう。
ここで寅彦はたいへん興味深い「作業仮説」を提案していた!!
今かりに現代科学者が科学者として持つべき要素として三つのものを抽出する。一つはルクレチウス的直観能力の要素であってこれをLと名づける。次は数理的分析の能力でこれをSと名づける。第三は器械的実験によって現象を系統化し、帰納する能力である。これをKと名づける。今もしこの三つの能力が測定の可能な量であると仮定すれば、LSKの三つのものを座標として、三次元の八分一(オクタント)空間を考え、その空間の中の種々の領域に種々の科学者を配当する事ができるであろう。
L…ルクレチウス的直観能力
S…数理的分析能力
K…器械的実験より系統化・帰納する能力
面白い!!
あなたはどこに位置するだろう? 私はどうだろ?
寅彦の示唆することはこのあたりにあるようだ!!
以上の譬喩(ひゆ)は拙ではあるが、ルクレチウスが現代科学に対して占める独特の位地を説明する一助となるであろう。
誤解のないために繰り返して言う。ルクレチウスのみでは科学は成立しない。しかしまたルクレチウスなしには科学はなんら本質的なる進展を遂げ得ない。
最後の寅彦からの忠告・戒めは真摯に受け止めたい。
私は科学の学生がただいたずらにL軸の上にのみ進む事を戒めたく思うと同時に、また科学教育に従事する権威者があまりにSK面の中にのみ学生を拘束して、L軸の方向に飛翔(ひしょう)せんとする翼を盲目的に切断せざらん事を切望するものである。
ここではいったん終りとするが、Facebook版・サイエンスカフェ「寅の日」ではつづけて議論を深めていきたい。
二ヶ月つき合ってくださったみなさんありがとうございます。では、また… <(_ _)>
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