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サイエンスコミュニケーター宣言(206)

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▼ほんとうにやっとなんだ。「では、明日はやろう!」ばっかりを繰り返し、ついには年を越してしまった。
ヒガンバナの「種子もどき」の処理だ。玄関先のバケツにつけたままだったのだ。バケツの水は凍り付き子房部も朝方には凍てついていた。陽があたりはじめると融けるそれを繰り返していたのだ。
 処理を愚図っていたのは怠惰な性格だけでなく、この先どうすればいちばんいいのかが見えてこなかったこともある。やっと決断してやったのは一昨日7日、冬休み最後の日だった。
バケツから子房部だけを取り、皮をはぎ「種子もどき」を取り出し十分湿らせたティシュペーパーとともにチャックつきナイロン袋に入れた。こんなことでは発芽したりはしないのでは、とかなり絶望的予測をもっていた。
その作業をしているときだ、その黒いかたまりのなかに動くものを見た!!
いっぴきの虫がはいだしてきたのである。体が緑色をしていて活発に動きはじめた。
こんなところに「生命体」がいたのだ。
この虫を見ていたら急になんの根拠もない希望をいだいてしまったのだ。
ひょっとしたらこのヒガンバナの「種子もどき」も…と。
▼「私の理科教育史」をつづける。

【「地下茎」第13号 1982.10. 】

の巻頭も「生命」に関することを書いていた。
「どうしてヒトをやらないのか」という主張だった。
細胞分裂の観察にしても「タマネギ、ソラマメの根端」の観察ばかりでなく、ヒトの場合ももっとやるべきではないかというようなことを書いていた。「自分自身の体もたったひとつの細胞から出発しているのだ」という事実はもっともっと教えられていいのではないかと考えていたからであろう。
地下茎第13号P1-3「どうしてヒトをやらないのか」 
▼そんなことを考えていたと思われるのは、同じ本の紹介本にあらわれていた。
二冊セットで紹介している。
『生物の世界と子どもたち』
『生きものとヒトの学習』
いずれも九州生物学教育研究グループ著 (たたら書房)である。
この本の紹介は先行実践から学ぼうという気持ちの表れでもあったのだろう。
地下茎第13号P9「本」
▼それから30年の年月がたった。
「日本理科教育史」をみたときにもふり返ったのだが、今度はこの30年間の「ヒト」、「生命」に関連する科学技術史だけをピックアップしてみる。(村上陽一郎著『人間にとって科学とは何か』の「近代科学・技術に関する出来事年表」参照)

●1982年(昭和57) 人工心臓の移植に成功(米)。

●1983年(昭和58) 日本初の体外受精児誕生。

●1984年(昭和59) エイズ・ウィルス発見(米仏先陣争い)。

●1985年(昭和60) 国内初のエイズ患者報告。

●1986年(昭和61) 最初のBSEに感染した牛が発見される(英)。

●1987年(昭和62) 超新星1987Aから世界初のニュートリノ検出(日・米・ソ)

●1990年(平成2)  ADA欠損症に対する初の遺伝子治療(米)。

●1995年(平成7) エボラ出血熱の流行(ザイール)。

●1996年(平成8) BSEのヒト感染と疑われる患者が発生(英)。クローン羊ドリー誕生(英)。

●1997年(平成9) 日本で脳死・臓器移植法成立。

●1998年(平成10) トムソン(米)がES細胞(胚性幹細胞)培養に成功。

●2001年(平成13) ヒトゲノム解読結果の第一稿が公開(米)。

●2003年(平成15) ヒトゲノムプロジェクトが解読完了を宣言(米)。SARS(重症急性呼吸器症候群)が世界的に流行。

●2006年(平成18) 山中伸弥ほか(京大)、トムソン(米ウィスコンシン大)がそれぞれiPS細胞(人工多能性幹細胞)生成技術を発見。

●2008年(平成20) 下村脩(緑色蛍光タンパク質GFPの発見)が化学部門でノーベル賞を受賞。

●2010年(平成22) 渡航移植の自粛と金銭を介した臓器提供の禁止を勧告(WHO)。

●2011年(平成23) 3.11東日本大震災と東京電力福島第一原発事故。

●2012年(平成24) 山中伸弥(京大)がiPS細胞で医学・生理学賞部門のノーベル賞受賞

主だったところをピックアップするだけでこうだ。
明らかに30年前と状況は大きくかわってきている。
では、「これから」の「ヒトの学習」は何をどのように教えられるべきなんだろう。
教材としてなにがふさわしいのだろう。
不易と流行がある。
ならば「不易」とは、「流行」とは…?

 

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