【お薦め本】『季語の科学』(尾池 和夫著 淡交社)

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▼しばらく「つん読」にしておいた本をこの正月にひっぱりだしてきた。
 著者の名前になつかしい思い出があった。
 山崎断層地震(1984.05.30)のすぐ後ではなかったと記憶している。だから、それは40年近く前のことになるのかもれない。場所に定かな記憶もなくなっていた。
 ただ、講演の冒頭だけは鮮明に憶えていた。
 「私が、小池(尾池にひっかけて)の鯰(なまず)です!!」
 (このときは地震と鯰の関係はうっすらとした認識しかなかった)
 尾池先生の名前を聞くと、今でもこのフレーズを思い出すのである。
 だから、私には俳人「尾池和夫」より先に地震学者・地球科学者「尾池和夫」が先行するのである。
 
▼正月から読み始めた俳人「尾池和夫」先生の本があまりに面白かったので、今年最初の【お薦め本】にあげてみることにした。

◆【お薦め本】『季語の科学』(尾池 和夫著 淡交社 2021.3.6)

 例によって、話が拡散してしまわないうちにお薦めポイント3つを先に挙げておく。

(1)「季節のことば を科学する」から学ぶのに最適の書!!
(2)俳句を読むあるいは俳句を詠むための最高の参考書!!
(3)自分が暮らす地域や専門と季語との関連を考えるための書!!

▼では少しだけ詳細に書いてみる。

(1)「季節のことば を科学する」から学ぶのに最適の書!!
 【お薦め本】にしたいと思うのに決め手となったフレーズがあった。
それは、「季節のことばを科学する」である。
 昨年から少し「○○を科学する」というコトバにはまっていた。一番最近では、「「原子論」を科学する」で、それは今なお継続中である。さて、次はどんな「○○を科学する」にするか迷っているところだった。
 コレだ!!と思った。それはなんとこの書の「あとがき」にあった。

 『淡交』の二〇二〇年七月号から一二月号まで、六回にわたって「季節のことばを科学する」というシリーズを掲載していただいた。その内容の一部もこの本に再録した。『淡交』は、裏千家茶道の機関誌であり、茶の湯を中心とする日本文化を総合的に紹介する月刊茶道誌である。その読者からも「季節のことばを科学する」はたいへん好評で、このことが、茶の湯と季語の出会いの意味を考える機会となった。(同書P278 より)
 「季節のことば=季語」を科学するという姿勢は、みごとに徹底していた。そのことにいたく感動するのだった。
 手持ちの「歳時記」(『俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版編))と読み比べながら読んでみると、「科学する」の徹底ぶりが実に面白かった。

(2)俳句を読むあるいは俳句を詠むための最高の参考書!!
 ちょっと 後先が逆になってしまったが、「はじめに」著者はいきなり次のように言い切っていた!!

 季語がおもしろいと思っている方に読んでいただきたいと、この本を書いた。この本は季語を批判するものでない。季語を知って俳句を読む、あるいは俳句を詠むためのための本である。(同書P6 より)

 なんとみごとな言い切りだろう!!ここまで言い切られるとスッキリしていていい。さらには、次のように言っていた。
 片山由美子は『季語を知る』(角川選書、二〇一九年)で、「季語は意味ではなく言葉である」と述べ、「歳時記の矛盾や季節のずれ指摘しようとすればいくらでもできるが、合理性が最優先される世界ではない。現実とのずれを承知の上で、むしろ楽しむゆとりがほしい。南北に長い日本列島の季節の違いは誰もが承知しており、いっせいに春になるはずはないのである。むしろ文学上の共通の時間を持つために、歳時記があると思えば、よいのではないだろうか」と言う。(同書P6 より)

読み始めたのが、お正月ということで、本の最後の「歳の暮れ・新年」から見ていった。「季語」を「科学する」視点にたった読み解きが実に面白い。
 一例をあげてみる。
「春」の章から【立春】をあげてみる。ところどころの部分の引用で失礼ではあるが、

 【立春】<春立つ・春来・立春大吉>初春 時候

 二十四節気の最初が立春である。節気には三つの意味がある。天文学で定義された時刻としての節気は一瞬である。暦ではその瞬間を含む日をさしたり、次の節気(立春なら雨水)の前日までの期間をさす。立春から立夏の前日までが春で、寒さの頂点を過ぎた立春から、時候の挨拶に「余寒」を使う。

 ……(中略)
 一九四七年、ニューヨークと上海と東京で、大がかりな実験が行われた。そのことは、中谷宇吉郎『立春の卵』にくわしい。この場合の立春は、場所によって異なった時刻であり、その時、中国の古書にある通り、実際に卵が立ったという記事が新聞に載った。

 ……(中略)
(「朔旦立春」について)次の機会は二〇三八年、南海トラフの巨大地震が起こる時期と予測された年にあたっている。((同書P14-15 より))


 全文はぜひ手にとって読んでみてください。「ヘェー、そこまで言うの!?」と面白いです!!


▼最後のお薦めポイントにいこう。
(3)自分が暮らす地域や専門と季語との関連を考えるための書!!
 再び「はじめに」もどろう。

 地球科学を専門とする私は、かつて「天地人研究会」と「ジオ多様性研究会」を主宰し、広い分野の専門家を集めて議論を繰り返した。互いの専門領域の話を理解しながら議論を深めることで、新しい研究分野を展開していこうという趣旨であり、また、日本列島の大きな特徴である、地形や地質の細かい分布による多様性を分析して、そこから浮かび上がる日本の文化の特徴を知ることを目的とした。(同書P7 より)

 まさに、地球学者・尾池和夫先生の本領発揮である。
 こだわりのあったのは、専門分野だけでなかった。
 全編通じて、地域「京都」へのこだわりも強いと思った。

 これもまた一例だけでも

 【鯰】<梅雨鯰・ごみ鯰> 仲夏 動物
 …(略)
 この頃ちょうど、一六〇五(慶長一〇)年の南海トラフの巨大地震に先行する西日本は内陸地震の活動期であった。この秀吉による指月伏見城の天守も、一五九六年の有馬ー高槻構造線活断層に発生した大地震で倒壊し、多数の死者を出すこととなった。(同書P117 より)

これら地域・専門への「こだわり」を見せた「歳時記」はこの本の大きな特徴ありとっても面白いと思えてきた!!
 
その点から言えばもっともっと多様な「歳時記」があってもいいな!!
もっと言えば、私だけの「歳時記」があってもいいな!!

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【私の読んだ本・ベスト6+α】2022!! #お薦め本 #静電気 #原子論

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▼年末恒例の【私の読んだ本・ベスト○○】をあげてみる。
 リストアップするのは、この2022年一年間に【お薦め本】としてあげたもの6冊である。
 順番はあくまでここのblogに書き込んだ順番である。

 今年は、【お薦め本】としてあげたものが、6冊と少々少ないので+αとして
「静電気を科学する」
「原子論を科学する」
 に関連して、とても参考にさせてもらった本を一緒に並べてみた。


【その1】【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎)
 2022年の元日には、この「藤の実」が7つもはじけるのを目撃するという体験をさせてもらった。
 寅彦の言う「潮時」を、リアルに実感できたのはうれしい!!
 何度も読み返したい本だ!!


【その2】【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社)
 人間「フランクリン」を身近に感じさせてくれた。
 そして、科学者「フランクリン」のすばらしさが存分に描かれていた。


【その3】【お薦め本】『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 )
 戦後の「原子論」(いや「科学教育」そのものといっても過言ではない)はここからはじまった!!
 ずっと使い続けて来た「原子論的物質観」のルーツはここにあった。あらためて読み返してみてたくさんの再「発見」があった。


【その4】【お薦め本】『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)
 「原子論の歴史} 定番本!!
 巻末の「原子論の歴史」年表は、「これから」も うんと役に立つだろう!!


【その5】【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社)
 大人から子どもまで、誰もが「これから」も楽しめる科学絵本決定版!!
 今では、同名アプリでも楽しめることもできる!!


【その6】【お薦め本】『ふしぎで美しい 水の図鑑』(文・写真 武田康男 緑書房)
 “空の探検家”=武田康男氏自らが撮影した176枚の写真はどこまでも美しく圧巻である!!
 あなたはどの写真に「水」の「ふしぎ!?」を見るだろう!?
 バケツの「氷」から、南極、砂漠草原の「水」まで、世界まるごと「水」の記録!!
 今、もっとも 美しく 「ふしぎ!?」な本!!


 さあ、2023年は、どんな本に出会えるだろう!?
 どんな本に「再会」できるだろう!?
 楽しみである!!
 

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【お薦め本】『ふしぎで美しい 水の図鑑』(文・写真 武田康男 緑書房)

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▼クリスマスイブの午後だった。
 いつものように「ひとり吟行」に出かけようとしたら、またまたはげしい風とともに
「小さな雨」が降ってきた。待てよ「雨」と言うより「雪」かもしれない。
 いや、それらが混じりあっているようだから、「みぞれ」と呼んだ方がいいのかも知れない。しばくすると晴れきた。
 いずれにしても降ってきたのは「水」にはちがいなかった。アメダスでは「降水量」として「記録」されるのだろう。
 さて、この地球上「水」に関して、たいへん興味深い本に出会った!!
 それは、天からのX'masプレゼントと思って読んでみた。
 実に面白かったので、つい今年最後の【お薦め本】にあげてみたくなった。

▼その本は、実はあらかじめ予約を入れておいて、出版されると同時に手に入れて置いた。
 
◆【お薦め本】『ふしぎで美しい 水の図鑑』(文・写真 武田康男 緑書房 2022.12.1)
 
 読んでみて、このX'masプレゼントに大満足していた。
 いつものように3つのお薦めポイントを先にあげて置こう。

(1)あらためて「ふしぎ!?」な水に興味をもたせてくれる!!
(2)“空の探検家”=武田康男氏自らが撮影した写真は美しく説得力を持つ!!
(3)意識的に「水」にはたらきかけてみたくなる!!

▼さあ、ひとつずつ少しだけ詳細に語ってみよう。

(1)あらためて「ふしぎ!?」な水に興味をもたせてくれる!!
 正直に話をすると、武田康男さんのこれまで出された本は、ほとんど読ませてもらい、ある程度は「わかっている」つもりでいた。
 読み進めるうちに「これはちがう!!」と思いだした。この本は、「これまでのどの本ともちがう。」と思いはじめた。
 「わかっている」つもりの水の「ふしぎ!?」にあらためて注目させてくれた。
 たとえばこうだ。

 雲は直径0.01㎜程度の球形の水滴が集まったもので、上昇気流や空気抵抗のはたらきにより地上に落ちてきません。水滴の直径が0.1㎜以上になると霧雨となってゆっくり降り、1㎜になるとふつうの雨になります。2~3㎜程度だと、水滴が落ちるスピードがあがる分、空気抵抗が大きくなり、横にやや広がった「あんパン」のような形になります。7~8㎜程度の大きさになると分裂してしまいます。
 直径0.01㎜の雲の粒が直径1㎜の雨粒のになるには、雲の粒が100万個も必要です。さらに、雨粒どうしが降ってくる最中にふつかって大きくなることもあります。背の高い積乱雲から大粒の雨が降るのは、そのためです。(同書P14より)

 さらには、こんな話も出てきます。
 水雲と氷雲は見た目が違います。水雲はもこもことした塊状や不透明な灰色が広がっていて、氷雲はすじ状やペール状に白く輝いています。積乱雲の場合は、入道雲のときは多くが水雲ですが、かなとこ雲に成長した上部は氷雲になっています。
 雲の中に水滴と氷の粒の両方が存在していると、雨や雪が降りやすくなります。水雲と氷雲が混ざっているいるところでは、水滴から氷の粒へと水蒸気がどんどん移動し、大きくなった氷の粒が落下します。これが解けると雨で、解けないと雪として降ります。
(同書P46より)

 このアタリマエ!!
 これはやっぱり「ふしぎ!?」だ。
 これはほんの一例にすぎない。
 地球上の「水」の「ふしぎ!?」が一挙に公開である。それは、目次をみればわかる。
 
 第1章 水の特性
 第2章 宇宙と水
 第3章 大気の水
 第4章 海
 第5章 陸地の水
 第6章 氷の世界
 第7章 生物と水

 まとめて見ることによりその「ふしぎ!?」は豊かになり深まる!!
 それは美しさにツナガル!!
 あらたな切り口で、水の「ふしぎ!?」に迫る!!


(2)“空の探検家”=武田康男氏自らが撮影した写真は美しく説得力を持つ!!
 この本には176点も「写真」が登場すると言う。確かに多くの写真がある。
「ほんとうかな!?」疑り深い私は、カウターを持ってきて数えてみた!!
 ほんとうだ。たしかに176点ある!!
 多いだけではない。その厳選された176枚、どれもが“空の探検家”=武田康男氏自らが撮影したものだった。だから、どの写真もがとても説得力をもっていた。
 
 「武田康男写真展」を訪れたつもりで
 私の「お気に入り」ベスト5 を選んだ!!

【ベスト1】 氷が水になっていくところ (同書P27)
【ベスト2】 南極にいたクマムシ  (同書P139)
【ベスト3】 飛行機から見た熱帯地方の積乱雲 (同書P43)
【ベスト4】 霧雨の水滴    (同書P15)
【ベスト5】 南極海の卓上(テーブル型)氷山 (同書P121)
【次点】 過冷却水 氷点下で撮影した水滴と氷の粒 (同書P13)

いやいやそんなものではない!!
・「氷が解けて水が集まるようす」「水が球形になって分かれるようす」「あとから小さな水滴が続くようす」(同書P19)  
・「バケツに張った氷」 (同書P127)
・「葉の先に付いた球形水滴」  (同書P52)
・「南極半島付近の氷がある海で泳ぐクジラの群れ」 (同書P34)
 等々 
 超一級の定番だって忘れられない!!
・「枯れ草に付いた霜」 (同書P113)
・「北海道で撮影した雪の結晶」(同書P57)
 等々
 あげだせばきりがない。!!
 どだいベスト5を選ぶなどと言うのは無理です。ページをあっちへいったり、こっちへもどったり迷うばかりです!!
 
 結論から言います。
バケツの「氷」から、南極、砂漠草原の「水」まで
世界まるごとの「水」が記録(写真撮影)されています!!必見です!!

▼ ヘタな紹介は、これぐらいにしよう。
 実際に手にとって、これらの「写真」を見ればわかることです。
 最後に「蛇足」ぎみになるが、これだけは言っておきたいのでこれを付け加えておく。

(3)意識的に「水」にはたらきかけてみたくなる!!
いくつかの場面で 「ソレナラバ私も…」と、自分で確かめてみたくなることが提案されいた。

・実験:水の色を見てみよう (同書P28)  
・「バケツに張った氷」 (同書P127) そうだ バケツに水を入れておこう
・みごとな「北海道で撮影した雪の結晶」(同書P57)を見ていると自分でもきっと「挑戦」してみたくなるはずだ!!
等など。

 そうだ、今年も「Wコップの実験」セットしなければ!!

 ともかく、今年のX'masプレゼントは最高!!

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【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社)

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▼昔、読んだつもりになっていて、あらためて読んでみて、その内容の新鮮さに驚いていてしまうことがある。
 自分でも「ほんとうに、この本、昔読んだかな!?」と疑わしくなってしまったりする。
 最近、そんな思いをした本に、次がある

●1971年 板倉聖宣『(いたずらはかせの科学の本)もしも原子見えたなら』国土社

 初版本は、年表(『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)より)によればそれは半世紀以上前に出されたものだった。

「原子論」を科学する シリーズをやっているうちに、ぜひこの本の新版を手に入れて 読んでみたくなった。


◆【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社 2008.11.25)


話があまり面白いので拡散しすぎないうちに、いつもの3つの【お薦め】ポイントをあげておく。

(1)わかりやすく面白い!!
(2)科学的根拠が明確である!!
(3)再度、「原子論」を学び直したい人のための必読書!!


▼できるだけもう少しくわしく書いてみよう。

(1)わかりやすく面白い!!
が 元々これはアタリマエすぎるほどアタリマエのことです。これは「絵本」だからです。
 これは、私の「絵本」に対する勝手な思い込みがすぎるでしょうか。
 この本ができた根っこのところに、著者の「思い出」が深くかかわっていました

 じつは、私がこのような本を書くようになったのは、私自身が小学校5~6年生のころに、この本と同じような原子・分子の話を読んでいて、「その話が私の科学好きを育んでくれた」という思いが元になっています。私はそのころ、子ども向きの科学の本を古本で買うことを覚えたので、たまたま古本屋で<小学校全集>の一冊『児童物理化学物語』という本を買ったのです。そんな本を小遣いで買ったといっても、その本の内容が全部理解できると思って買ったわけではありません。ただ、<そういう科学の本への憧れ>で買ったにすぎません。じっさい大部分の話は理解できず、面白くも感じなかったのですが、その本の一部に「<科学者の使っている不思議なメガネ>を使うと原子や分子が見える」という話があって、とても面白いと思いました。
 じつは、その「<不思議なメガネ>を使うと原子や分子の動きまで見える」というのは本当のことではありません。しかし、私は、その話を本当の話として受け入れてしまいました。しかも私は、その後大学生になってまでも、何となく「原子や分子は、その動きまで目に見えるものだ」と思い込んでいました。しかし、その思い違いは私にとってマイナスになることはありませんでした。(同書 P44より)

 何事も、こういうことというのは、自分自身の<体験>が元になっているというのは強いものである。この本の面白さやわかりやすさというのは、板倉氏自身のこの<原体験>からくるものだった。
 ダカラ、きわめて納得のいく話だった。

(2)科学的根拠が明確である!!
しかし、またなぜ自分が「読んだことがある」と思い込んでいたのだろう。
いや、実際に当時の勤務校の「図書室」ででも当時読んだのかも知れない。初版が半世紀以上昔のことで忘れてしまったのある。
 もうひとつ理由があった。それは同名の授業書「もしも原子がみえたなら」(©仮説実験授業研究会1976年5月新版)というのがあって、ならよく参考にさせてもらっていたから、その元本の本書と勘違いしていたのかもしれない。
 その授業書の最初は次のようにはじまつていた。

 この授業書は『(いたずらはかせの科学の本7)もしも原子がみえたなら』(板倉聖宣著、国土社刊)をもとにして作成されたものです。
 <もしも原子がみえたなら>は、約1億倍の分子模型(実体積分子模型)を手にとって、くみたてながら、空気の原子・分子論イメージを形成しようというねらいをもった授業書です。[質問]が三つあるだけで、あとは原子・分子の絵に色ぬりながらお話を読みすすめる、という、仮説実験授業の授業書としては異色の構成をもった授業書ですが、小学校5・6年生や中学生にはたいへん好評を得ています。

 「絵本」と言いながらも、いくつも授業実践を経ていたから、中身はきわめて科学的な根拠に基づいていた。特に水の分子(同書P12)、二酸化炭素分子(同書P29)等についてはくわしかった。こうであってこそ、永きにわたって多くの小学生・中学生に受け入れられてきたのであろう。ダカラ、今、大人が読んでも説得力をもつのである。


▼最後に蛇足的になるが
(3)再度、「原子論」を学び直したい人のための必読書!!
 今回、私としては、ここがもつとも強調したいところであった。
 長期にわたって、『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 )『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)を中心として、「原子論」の歴史を学び直してみた。自分自身が「授業」で使いつづけてきた「原子論的物質観」のルーツを追いつづけてみた。
 そのなかで、あらためて気づいたこと、「発見」したことも多かった。
 この本も「すへてのものが原子でできている」という「原点」を再認識させてくれる。
 簡単に「わかったつもり」にならずに、この偉大なるアタリマエをじっくり学び直してみよう。きっと、「その通り!!」と膝をたたくことも多かろう。ぜひ…!!
 

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【お薦め本】『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)

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▼「原子論」を科学する というシリーズをはじめて、はや三ヶ月がすぎた。
 その中で、「原子論」の歴史 について、最初に語りはじめたのは2022/06/05であった。
 最初の参考文献は
 
◆『原子論の誕生・追放・復活』(田中実著 新日本文庫 1977.7.25 初版)

であった。今さらながらはじめて知ることも多く、とても勉強になった。

▼その本につづいて参考にした本、それが今回の【お薦め本】である。


◆『原子論の歴史-誕生・勝利・追放-』(板倉聖宣著 仮説社 2004.4.5初版)
◆『原子論の歴史-復活・確立-』(板倉聖宣著 仮説社 2004.4.5初版)

の『原子論の歴史 上下』2冊である。
 これまた実に面白く、学ぶところも多かった。これからも大いに活用させてもらうつもりだ。そこで、これまでの「整理」もかねて、【お薦め本】にあげてみることにした。
いつものようにお薦めポイント3つあげてみる。

(1)「原子論の歴史」の最新・決定本!!

(2)等身大の文体で、わかりやすく「原子論の歴史」を読み解くことができる!!

(3)私にとっての「原子論」を問うのに最適の書!!


▼では少しだけ詳しく

(1)「原子論の歴史」の最新・決定本!!
 著者は「「私の原子論とのつきあいと原子論の教育の歴史」……あとがきにかえて」のなかで、この本について次のように語っていた。

 この本の中心は、「古代ギリシアの原子論は、エピクロスによって科学となった」という事実の発見にあります。これまで原子論の歴史を書いた人は、そのことに気づいていなかったので、古代の原子論を単なる空想にすぎないと貶めてきたのです。
(『原子論の歴史-復活・確立-』P151より)

私は、「この本によって、これまでの世界の原子論教育を全面的に変えることができるだろう」とも自負しています。私はこれまで、「読み、書き、計算、分子模型にコンピュータ」ともいって、原子論の教育を最も基礎的な教育の一つとして重視しているのです。それは私の一方的な思いこみによるものではありません。子どもたちに少しでも原子論を教えたときにその子どもたちの示す驚きと喜びの発見が元になっているのです。
(『原子論の歴史-復活・確立-』P153より)

 
 とても自信に充ちたコトバです。それはそれなりの「私の原子論とのつきあい」から生まれたものだと思われます。
 「…あとがきにかえて」の文章がとってもいいです!!
 これからはじめて読まれる方、またあらためてこの本を読まれる方への提案です。
 はじめにこの文章を読んでから、各章を読んでみましょう!!
 各章で何を言いたいのかとてもよくわかってきます。


(2)等身大の文体で、わかりやすく「原子論の歴史」を読み解くことができる!!
 著者は今度は「はしがき」で、この本を書きはじめた意図を次のように語っていました。

 さて、じつは私がこの本の原稿を書きはじめたのは、高等学校の『基礎理科』というコースで「科学史を中心とした授業」が始まることを知ったときでした。これまでの理科教育は、多くの「科学嫌い」を生産する結果になりましたが、高校で科学史の授業が始まると、またまた多くの「科学史嫌い」が生産される結果になるのではないかと、とても心配だったからです。
(中略)
 そこで、科学史と科学教育の研究の両方を専門にしている私としては、ごく一部分の授業でもいいから「私ならこうする」というプランが発表できないものか、と思い悩んできました。
(中略)
 そこで思いついたのは、「<原子論の歴史を中心にした科学史>の授業をやったら、高校生たちにも楽しい授業かも知れない」ということでした。
(『原子論の歴史-誕生・勝利・追放-』P2より)

 最初の意図は、みごとに成功しています。
 単に歴史的事実を文章で羅列するのではなく、授業書風に<予想>を立てながら読めるようにしたり、簡単な<実験>を提案したりの工夫が見られる。
 文体もいつものように板倉さんの語り口調の等身大の文体で、あまりなじみないこともわかりやすく読み解ける。
 高校生にもどった気分で楽しく科学史を学べた。
 これが私にはいちばんアリガタイところだった!!


▼最後に

(3)私にとっての「原子論」を問うのに最適の書!!
 著者はこの本を次のようにしめくくりました。

 このような経緯を見れば、本書は「私の原子論との付き合いの総決算のようなもの」とも理解していただけると思うのですが、どうでしょうか。
(『原子論の歴史-復活・確立-』P175より)

言い換えれば、この本を読めば
 「板倉聖宣氏にとっての「原子論」とは何か!?」
  がわかるということだろう。
私が 「原子論」を科学する シリーズをはじめた究極の意図は
 私にとっての「原子論」とは何かを問うことであった。
 このことに答えるヒントがこの本にはいっぱいある。


【オマケ】付録 最高に役に立つ!!
◆「原子論の歴史」年表
(『原子論の歴史-復活・確立-』年表P178~P200)
これを手に入れるためだけにこの本を手に入れても損はしない!!


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【お薦め本】『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 )

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▼誰にも、思考の「原点」とよべるような本がある。
 もうとっくに「内容」など忘れてしまっているが、その本に書かれた断片的なフレーズをふっと思い出したりする。
 「原子論的物質観」というコトバもそのひとつである。
 物質探検の学習で、常套句のように使って来た。
 いったいこのコトバにどこで最初に出会ったのだろう!?

 きっとこの本だろう思って、ゆっくりゆっくり読みなおした本が今回の【お薦め本】である。

▼読みなおしてみて、感動であった!!
 今回は 【お薦め本】の紹介というより、私自身の読書メモとして、「記録」に残して置きたかったのである。

◆『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 1977.7.25 初版)

 【お薦め本】紹介ではないと言いながら、矛盾するようだがいつものように、3つのお薦めポイントをあげる。

(1)「原子論」の歴史を概観できる!!

(2)「原子論的物質観」に基づく授業づくりのヒントがここにある!!

(3)これからの「原子論」の可能性を教えてくれている!!

▼これに従い少しずつ詳しくのべてみる。

(1)「原子論」の歴史を概観できる!!
 「はじめに」次のように書いてあった。

敗戦後まもなく、マッカーサー統治下の一九四九年に、私は『原子論の誕生・追放・復活ー原子と化学』(三一書房刊)とい小著を出した。(同書p3より)

 つまりこの本の元本は1949年に出されていたということになる。
 今から73年も前のことになる。
 さらに旧著のはしがきを引用しながら、こう語られていた。
 旧著のはしがきに私は次のように書いた。
 「(中略)またもう一つ私が強調したいのは、科学を凶器にしてはいけないということです。このことが今ほど切実に感じられるときはありません。この重要な歴史の瞬間に、ギリシアや中世紀の人々の意見などを聞いてみるのは、ひどくまのびのしたことと思われるかもしれません。真実は、いつでもたたかいの中からかちとられてきました。その歴史をながめることは、迂遠ではない教訓を与えてくれるとおもいます。《中世》ははたしてわれわれの前に、たちふさがってはいないでしょうか。この本を書きながら、私はいつでもそういうことを思い続けました。」 
 この心持ちは二八年たった今日、いささかも変わっていないことを書きそえておく。
(同書P4 より)

 1977年5月。著者・田中実氏はこう語った。
 それからでも、45年の歳月が経った。

 《中世》ははたしてわれわれの前に、たちふさがってはいないでしょうか。

の問いかけは、よりリアリティをもって響いてくるのだった。
 私は不勉強でほんとうに「世界史」に疎かった。しかし、この本を読み進めるなかで「歴史」を読み解く秘訣・コツのようなものがあるのに気づかされた。
 たとえばこうだ!!

  では原子論史上二人のDすなわちデモクリトスとドールトンとをつなぐ一本の赤い糸は何であったのだろうか。オリエント社会から高い物質文明、とくに鉄器文明を受けついだギリシア人の中から、自然と人工の事物についての豊富な知識にもとづいて、万物の根源を問う学問と思想が生まれた。彼らがさぐりあてたのは、物質不滅の原理であり、それと表裏一体の元素と原子にかんする概念であった。それは二〇〇〇年にわたる物質探究の源流となった。社会的生産力が高まって、人間が自然を加工する活動の発展につれて、物質的自然の知識はたくわえられ、物質不滅の原理は実践を助ける重量保存の法則に高められた。それとともに、元素と原子の概念は、より多く現実の物質と結びつけられたものに変貌し、これらを実験自然科学の理論の中に位置づける模索がつづけられた。
(同書P161より)

 そうだ!!
 ものごとをバラバラにみるのではなく、ツナゲて考えることだ!!
 ツナグ「赤い糸」をみつけることだ!!
 
 「原子論」こそ物質探究の歴史を読み解くときの「赤い糸」だ!!


(2)「原子論的物質観」に基づく授業づくりのヒントがここにある!!
最初に言っていた「原子論的物質観」というコトバ、ここでみつけた!!

 ドールトンがニュートンの影響を受けて、その原子論的物質観を、当然のこととして受け入れて、ラヴォアジエの元素各種の本体をそれぞれ固有の原子と考え、そうした原子を重さの測定のできるものにしたことは、前章に書いたとおりである。そしてニュートンの原子の出どころを源流までさかのぼればデモクリトスにたどりつくことはまちがいない。
(同書P161より)

 他所でも使われていたかも知れないが、はじめて気づいたのはここだった。
もう一度「目次」をあげてみる。

はじめに
一 火の技術
二 原子論の誕生と追放
三 原子の忘却
四 原子のルネッサンス
五 科学的元素から原子へ
六 仮説の原子から実存の原子へ

 なんとか読み終えた今、痛切に思う!!
 「原子論的物質観」に基づく授業とは、この「原子論の歴史」のどこかにその「授業」を位置づける作業なのだ。
 従って授業づくりのヒントは、ここにある!!
 生徒たちの物質認識の過程は、この「歴史」のなかにある!!

 もうひとつある!!
「はじめに原子ありき」の授業の可能性だ!!
 21世紀に生きる「原子論者」を育てよう!!

▼最後にいこう。
(3)これからの「原子論」の可能性を教えてくれている!!
最後の方に、きわめて示唆的な文章があった。

 科学的方法による自然認識が、人間が物質的世界にはたらきかけることによって描き出す客観的世界の像である以上は-そのことの真偽がまた現代の哲学の一大論争点でもあるのだが-どんなに不完全で、断片的な像であろうとも、より完全な、より全体的な像へ接近するための手がかりでなければならない。不完全な像を完全なものと断定し、部分の姿を全体像ときめつけたとき、そこに誤りが生まれ、挫折がおこり、ひいては科学的真理への不信が芽生える。
(同書 P175より)

 たとえ「原子論」と言えども、更新を怠るとき内なる《中世》が蘇ってくるのである!! いつまでも、自分自身の「ふしぎ!?」を大切しながら更新をつづけ、これからも21世紀を生きる「原子論者」でありつづけたいものだ!!

読み終えて、あらためて色褪せてしまった「表紙」を見た。あのドールトンの「こだわり」を思い出した。

 ドールトンは原子を面白い円形の記号であらわした。酸素原子はただの円、水素原子は中心に点を打った円等々。それは原子にたいするドールトンのゆるがぬ確信をあらわしているかのようだった。現在われわれが使っている酸素=O、水素=Hなどの記号がスウェーデンの化学者べルセリウスによって提案されると、彼は頑固にそれを拒否した。アルファベットで原子をあらわしては、ほんとうに存在し、結合し分離する原子というもののイメージがあいまいになってしまうと考えたのである。
(同書 P158より)

まちがいない!!
『原子論の誕生・追放・復活』は名著中の名著デアル!!

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【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社)

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▼私は、「フランクリンの末裔」くんからプレゼントしてもらったお宝本をこのまま本棚にしまい込んでおくのではモッイナイと思っていた。
 「静電気」を科学するシリーズ をつづけている今こそもう少しなんとかしたかった。
 とは言っても、「静電気」に関する絵・写真の資料は見ればなんとかわかるが、それ以上まったくわからなかった。思いはあっても、全文英語ではまったくお手上げだった。
 こんなことならもう少し英語も勉強しとくんだったな。

▼そんなとき、ファラデーラボの森本雄一さんに「この本が面白いよ」と教えてもらった本がある。それが今回の【お薦め本】だ。

 

◆【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社 1996.8.15)

 

読んでみたら、ほんとうに面白かった!!
 人に語らずにはおれない面白さだ。そこで【お薦め本】にあげてみることにした。
 話があちらこちらにとばないうちに、いつものようにお薦めポイント3つをあげておく。

(1)等身大の語り口調で人間「フランクリン」の魅力に迫る!!

(2)科学者「フランクリン」の面白さをやさしく熱く語る!!

(3)社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? を問う!!

▼ではもう少しだけ詳しくひとつずついこう。

(1)等身大の語り口調で人間「フランクリン」の魅力に迫る!!
 まず最初に正直に白状しておこう。
 私はあまりに「フランクリン」のことを知らなすぎた!!
 「凧をあげて、電気をあつめた男」程度の認識しかなかったのである。
 著者はこの本の最後にこう言っていた。

そこで私はこの本で、かなりくわしくフランクリンの仕事をできるだけ視野広く見ようと試みたのですが、理解していただけたでしょうか。私のこの『フランクリン』が、新しいフランクリン像を多くの人びとに知らせることができるといいと思っています。(同書P269より)

 この試みはみごとに成功しています。
 「フランクリン」というのがこんなすばらしい魅力的な人間だったとは!!
 感激です。
  いかし、これまたふつうの偉人伝のように、別世界の人間のようには扱われていません。そこがまた著者板倉聖宣先生のうまいところですが、平易な等身大の語り口調で新たな「フランクリン」像を浮き彫りにしていきます。

 ベンは年とった父親の子どもで、すでに五人の兄さんと五人の姉さんがいました。そのうち五人は前のお母さんの子どもでしたが、ベンを生み育てたお母さんはその後二人の妹を生んでいます。小さいときに亡くなった兄弟を除いて、子どもだけで十三人の大家族でした。手工業をやりながらそんな大家族を養っていくのは大変だったことでしょう。じつは私も九人兄弟の六番目で、似たような手工業の職人の家に育ったので察しがつくように思えるのです。(同書P14より)

 こんな調子です。
 読み進めるうちにわかってきます。板倉先生はこの「フランクリン」のことがとても気に入ったのだなあと。
 読んでいるこちらもそれにつられてどんどん「フランクリン」が好きになっていくことまちがいないです。

(2)科学者「フランクリン」の面白さをやさしく熱く語る!!
 私にとっては、ここがこの本を読む本命の部分でした。

 しかし、彼は「科学者になろう」などとは全く思っていませんでしたから、その研究の成果を論文に書いて発表することなど、考えてもみませんでした。彼はただ仲間と一緒に実験したり議論したりして楽しむだけで満足していたのです。そして、その他にも彼の実験に興味をもってくれる人がいることがわかると、その人に喜んで手紙を書いて知らせました。そこで、このときの実験のことも、ずっと後になって書いた手紙の中に書かれて残っているだけなのです。(同書P44 より)

 ここにフランクリンの「科学」の醍醐味とその「方法」が示唆されていた。
 だからこそ

 フランクリンの手紙の中の説明はとても簡単明瞭です。だから、その説明を読むだけでも、彼らがどんな実験を積み重ね、どんな議論をしていたか察することができます。(同書P96より)

 これは生涯一貫した科学者「フランクリン」の姿勢でした。
 板倉先生は、この本の中で、できるだけくわしく「フランクリンの手紙」をたくさん紹介してくれています。
 シロウトの私にはそれがとてもアリガタイ!!
 それは、きっとこんな思いからなんだろう。

 私がもっとも知りたいと思っていた部分についても具体的な多数の手紙を紹介してくれています。これが実にアリガタイ!!

・先端放電現象
・電気の行方
・電気流体の過剰(+)と不足(-)という考え方
・電気一流体説=電気量保存の原理の確立
・ライデン瓶=コンデンサーの謎の解明
・フランクリンのカミナリ研究の起源
・カミナリの正体をつきとるための実験方法の提案
・『電気の実験と考察』の出版
等々です。

 ますます「フランクリン」のファンになってしまいます!!

▼そして最後に
(3)社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? を問う!!
 フランクリンのマルチな活躍ぶりにはびっくりばかりであった。

・『貧しいリチャードの暦』
・フランクリン暖炉の発明
・アメリカ理学会の創立
・北東風の研究
・フランクリンの人口論
・アメリカ植民地全体の政治家
・義勇軍の連隊長
・『富みに至る道』
・「アーモニカ」の発明
・メキシコ湾流の海図の作成
・アメリカ独立宣言
・フランス駐在大使の仕事
・遠近両用眼鏡の発明
等々

 ここでも、具体的な「フランクリンの手紙」を多数紹介してくれているのはアリガタイ!!
 こんなマルチな活躍の強力なバックボーンになっているのは科学者「フランクリン」なのではないかと思う。
 そして、今、問いかけてくるのである。

 社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? 

 最後に、著者・板倉先生のこんなコトバを引用させてもらおう。

 フランクリンだけではありません。彼の時代の科学者たちには、自分がたのしんだ科学研究の感動をできるだけありのまま伝えたくて、その研究の経過をくわしく書く人が少なくありませんでした。しかし、最近の科学論文には、そういった生き生きとした表現がほとんど見られません。そこで、科学は多くの人びとにとって身近な存在でなくなってしまったのです。これは残念なことです。私は、科学の歴史を専門として、かつ科学教育の研究も専門としています。そこで「せめて私だけでも」と思って、専門的な論文でも自分の研究したことをできるだけ具体的に感動的に書くようにしています。すると、多くの人びとに喜ばれるだけでなく、フランクリンの場合と同じように、たくさんの人びとからいろいろなことを教えてもらうことができることを体験しています。(同書P214より)

【オマケ】最後のベンジャミン・フランクリン(1706~1790)年譜
  スバラシイ\(^O^)/ 使いモノ二ナル!!(エラソウに (^^ゞポリポリ)

 あの「お宝本」の資料が妙にリアルに見えてきた!!ウレシイ!!

 

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【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎)

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▼今年の元旦はうれしい報告からはじまった。
 ラボ(物置!?)に設置していた「藤の実」が3つも一斉にはぜったという。
 たまたまそこに泊っていた子供からの報告だった。
 夕方になって、2つがはぜった。さらに深夜には、2つが追加してはぜった。
 けっきょく2022/01/01だけでなんと7つもの「藤の実」が一斉にはぜったことになった!!
 元日はまさに「藤の実」の「潮時」だったのだろうか。
 普段はほとんど使わないエアコン暖房を使ったことも影響しているのだろうか!?

▼「ふしぎ!?」な「偶然」があるものだ。
 この日は今年最初の「寅の日」でもあった。それだけでない。
 以前から予約注文していた一冊の本が年賀状とともに届いた。
 それが今回の【お薦め本】である。


◆【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎 2021.12.31)


なんと発行日は前日の「寅彦忌」だ!!
  例によってお薦めポイントを先に3つをあげておく。

(1)寅彦の謎解きの科学を何倍にも増幅して楽しめる!!

(2)多面的な視点から寺田物理学の読み解きがされている!!   

(3)名作「藤の実」をより面白く読むための豊富な資料がここに集めてある!!


▼3つのお薦めポイントは重なるところもあるが、順次少しだけ詳しくのべてみる。
 まず

(1)寅彦の謎解きの科学を何倍にも増幅して楽しめる!!
 はじめの山田功氏の読み解きは実に面白かった。
 十段落に分けての読み解きは、寅彦の文章のバックグラウンドを詳しく興味深く解説するものだった。
 なるほどと納得することしきりだった。
 特に第三段落までの「藤の実」が一斉にはじける現象の謎解きはみごとである。
 それは、まるでコナンの探偵物語でも読むような面白さだ。
 謎解きは、自ら体験することからはじめておられた。

 藤の実がはぜたときの音とは、いったいどんな音だろうか。私も確かめたくなった。ある年の十一月中頃、藤の実を探すことにした。大きな公園の藤棚を見に行くと、手入れがされていて藤の実はない。近くの家に藤棚があることを思い出し出かけた。幸い、いくつかの藤の実が残っていた。  それを貰い、部屋にひもを張りつるした。十二月中頃、部屋で本を読んでいると、突然「ぴしっ」と乾いた短い音がし、藤の実がはぜた。その時、体がピクリと緊張した。そして、タネは部屋のドアに当り床に落ちた。これが寅彦の体験した藤の実のはぜる音なのかと納得したのである。それだけのことだが、作品「藤の実」がぐっと自分に近づき、いっそう深い関心がもてたのである。(同書P17より)

 これはこの探偵物語のはじまりにすぎなかった。
 謎解きは、次々とリアルに展開された。
 寺田邸の藤棚はいつどこにつくられたのか? 
 タネがはげしくあたった障子のある居間とガラス窓の台所と藤棚の位置関係は?
 寺田邸平面図、現場写真、居間スケッチ等々。
 次には藤の実が一斉にはじけた時の気象条件の検証を行なっていた。
 当日の「天気図」、中央気象台の観測データから、「異常に低い湿度」の謎を読み解こうしていた。
 それで驚いてはいけない。
 山田氏とその教え子の川口氏はなんと2014年、二ヶ月にわたり数百の藤の実で、はじけた数と、気象状況(湿度)との関係を調べているのである。
 まだまだある。
 猛烈な勢いで飛び出すタネの「初速度」を寅彦がやったように「高校物理」の問題として計算しているのである。さらには「その瞬間」を写真に収めようと根気よく試み成功しているのである。(この本にはそのときの写真が口絵に紹介されている)
 この取り組みを読んでいるあいだに、寅彦の次のコトバを思い出したのだった。

一方で、科学者の発見の径路を忠実に記録した論文などには往々探偵小説の上乗なるものよりもさらにいっそう探偵小説的なものがあるのである。実際科学者はみんな名探偵でなければならない。 (「科学と文学」青空文庫より


 山田氏の「むすび」のコトバを引用させてもらおう。
 

 こうして、「藤の実」を読み終えてみると、身近な事象も気を付けて眺めると、「おや」、「不思議だな」と思うことが結構あることに気づく。それは、興味深いことで、楽しい疑問である。そうした出会いができるためには、普段から自分の五感の感度を少し上げておかねばならぬ。五感というアンテナを磨き、いくつも立てておくことだ。そして、不思議だと思ったことを、「それは偶然だ。」とか、「悪日」とか、「神様や悪魔の仕業だ。」と、簡単に思考を止めてしまわないことである。根気強くもう一歩調べていくと「不思議」の原因を発見できるかもしれないのである。(同書P29より)


▼次のお薦めポイントにいこう。

(2)多面的な視点から寺田物理学の読み解きがされている!!
 多面的・多角的な視点で読み解きがおこなわれているということは、著者たちのそのタイトルからもわかった。

○「藤の実」によせて:偶然と必然のはざま 松下 貢
 「銀杏の一斉落葉」にふれて次のように語っていた。
  

 ここでのポイントは、落葉集団の表面は外部の空気抵抗を受けるが、その内部では空気も一緒になっているので、葉っぱ達は空気の抵抗なしに落ちるということである。こうなると、落葉集団の縁の葉っぱはひらひらとするが、集団内の葉っぱは滝の流れのようにどどっと一斉に落ちるであろう。
 この落葉の流れのきっかけを考えてみると、どの一枚の葉がどこで落ちるのかは、まったく偶然であろう。しかし、落葉が集団となって滝のように流れる段階では、この流れは実際の滝の水の流れと同様に、必然的な現象ということになる。すなわち、寅彦が見た銀杏の一斉落葉は偶然から必然への推移を観察したことになる。(同書P36より)

 思わず、なるほどと膝をたたくのだった。


○植物生態学からみた「藤の実」 工藤 洋

 自然科学者としての立場では、あらゆることに先入観を持ち込まない。まずは、現象をよく観察し、数値データを集め、偶然でなく説明し得る仮説を立てる。そして、その仮説が否定されるあらゆる可能性を考えて、観察と実験を繰り返す。この行為は自分が仮説を信じるかどうかとは別次元の行為で、仮説は証明されるものではなく、否定されないことをもって保持される。(同書P53より)
 
 さすが自然観察のプロのコトバは示唆的である。


○寺田寅彦「藤の実」に見る自然観 川島禎子

 「藤の実」について、文学的な考察をしてきました。とても短い作品ですが、これは備忘録であると同時に、連句的手法を活用して今寅彦が見ている世界を写した試みであり、身近な出来事から「潮時」という現象を読み取る実験である、と言っていいでしょう。
 また科学者として分析的で論理的な自然観を持つのみならず、連句的手法を随筆に取り込むことで東洋的な自然観で対象をとらえることも意識的に行なっていたのではないかと指摘しましたが、そうした複眼的な自然観が、文学者としても、また科学者としても独自の興味深い視点を提示し得た理由だと考えられます。(同書P76より)

 「連句的手法」「複眼的な自然観」私にはなんとも興味深いキーワードだ!!


最後のポイントに行こう。

(3)名作「藤の実」をより面白く読むための豊富な資料がここに集めてある!!
 これはこれまでのお薦めポイントと重なることにもなるのだが、やっぱりこの本の大きな特徴ともなっているのであげておきたい。
 よくありがちなケースとして、「これをより深く知るためには、こんな参考資料・文献がありますよ」と紹介のみに終わることが多いのだが、この本はちがっていた!!
 この本にはこのすべてが<付録>として「ここに集めて」あった。

<付録>
・「十五メートルも種子を射出す 藤の莢の不思議な仕掛」平田 森三   
 ※必読!!寅彦たちの論文をわかりやすく『子供の科学』(昭和八年十月号)に発表したもの

・「破片(抄)」 吉村冬彦(寺田寅彦)

・「雪子の日記(昭和七年十二月~昭和八年一月)」

・「鎖骨」 吉村冬彦(寺田寅彦)

・寺田寅彦 略年譜

 この一冊で名作「藤の実」のバックグランウドのすべてがわかるのだ。

 
 寅彦ファン必読の一冊だ!!

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【私の読んだ本・ベスト8】2021!! #お薦め本

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▼年末恒例の【私の読んだ本・ベスト○○】をあげてみる。
 リストアップするのは、この2021年一年間に【お薦め本】としてあげたもの8冊である。
 順番はあくまでここのblogに書き込んだ順番である。


【その1】【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書)
 アタリマエのことであるが、「科学」も歴史のなかにある!!
 ニュートンのあの有名な発見は、ペストの流行の時期だったという。
 コロナ禍の今、「科学」の現在地は!?


【その2】【お薦め本】『細胞とはなんだろう』(武村政春著 ブルーバックス)
 今、再び問う。そもそもウィルスって何!?
 ウィルスが感染するのはヒトではなくて細胞!?
 細胞とウィルスの関係は!?


【その3】【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店)
 「ほんとうの名著は児童書にアリ!!」の確信を強めてくれた本だ!!


【その4】【お薦め本】『理系的アタマの使い方』(鎌田浩毅著 PHP文庫)
 あの名著『知的生産の技術』の現代版!!
 アウトプット優先主義の知的生産術を伝授!!今一度、自分の知的生産術の吟味を!!
 ヒントのすべてがここにある!!


【その5】【お薦め本】『すごすぎる 天気の図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA)
 子どもから大人まで誰もが楽しく学べる!!
 動画(YouTube)のレクチャーで楽しく学べるのもうれしい!!


【その6】【お薦め本】『チバニアン誕生』(岡田誠著 ポプラ社)
 子どもから大人まで誰もが「チバニアン誕生物語」を楽しめる本!!
 私としては「地磁気逆転」の松山基範博士と寺田寅彦のツナガリが面白かった。
 さらには、「磁石石」の堂面春雄先生にまでツナガッタのはとてもうれしかった!!


【その7】【お薦め本】『煮干しの解剖教室』(小林眞理子著 仮説社)
 私はこの本をテキストとして、はじめて「煮干しの解剖」実験に取り組んでみた。
 とてもわかりやすく、楽しかった!!
 この本の著者・小林眞理子先生にオンラインレクチャーを受けたのは今年最高の思い出だ!!


【その8】【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部)
 オンライン「寅の日」への最高の案内書!!
 「オンライン「寅の日」って何!?」と問われれば、これからはこの本をお薦めしたい。
 

 さあ、2022年はどんな本と出会えるかな。
 楽しみである!!

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【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部)

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オンライン「寅の日」をはじめたのは2012年4月だった。
 面白くなくなったらすぐやめようと思っていた。 
ところが寺田寅彦の随筆は、読めば読むほど面白くなっていった。
はじめてから10年目になり、まもなく第300回目をむかえる。
 
 にわか寅彦ファンは、いつしか「寅の日」が最高の楽しみになってしまった。

▼そんなオンライン「寅の日」に関連しそうなたいへん興味深い本がこの夏に出された。
 それが、今回の【お薦め本】である。
 

◆ 【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部 2021.7.30)


 いつものようにお薦めポイント3つを先にあげておく。
 でなければ、いくらでもダラダラと書いてしまいそうだ。それほど面白いのだ!!

(1)平易な一人称の語り口で語られる最高に面白い「寺田寅彦自伝」!!

(2)「寺田物理学」が子どもから大人まで楽しめるように語られている!!

(3)オンライン「寅の日」への最高の案内書である!!


▼ではひとつずついこう。 

(1)平易な一人称の語り口で語られる最高に面白い「寺田寅彦自伝」!!
 著者は寅彦研究の第一人者・池内了氏である。
 池内了氏はすでに

・『寺田寅彦と現代 ~等身大の科学を求めて~』(池内 了著 みすず書房)
・『ふだん着の寺田寅彦』(池内 了著 平凡社)

等で科学者・寺田寅彦の魅力を私たちに紹介してくれていた。
 今回は、これまでの「総まとめ」として、子ども向けにわかりやすく語り口調で書かれていた。
 いつまでもにわか寅彦ファンの私にはそれがアリガタイ!!
 著者は最初にこうとも言われていた。

 本書では、私が寺田寅彦になった気持ちで、かれの人生をたどりながら、どのような発想で研究をおこなってきたかを語ろうと思います。同時に、寅彦の長所だけでなく短所についてもふれ、かれの人間性の豊かさにもふれたいと思っています。わたしは、そんな欠点も見える寺田寅彦を好ましく思っているからです。(同書P3より)

 ますますアリガタイ!!


(2)「寺田物理学」が子どもから大人まで楽しめるように語られている!!
 「寺田物理学」!! 
 私にはなかなか魅力的なひびきをもつコトバです。
 しかし、 「寺田物理学とは!?」
 の問いに、自分のコトバで答えようとしてもなかなか難しかったです。
 あきらめずに、これからも何度でも挑戦してみたいと思います。
 この本には、それに答えるときのヒントがあります。

著者は言います。
 

 第2の点は、それまで解決が困難だとして敬遠されてきた問題にたいして、思いきったアイデアで挑戦したということです。
 一般に、敬遠されてきた問題というのはひじょうに複雑で、解決の糸口すら見つからないので「複雑系」とよばれてあとまわしにされてきました。寅彦はそのような複雑な系こそ今後重要となり、研究の本腰を入れなければならいと主張し、考えるヒントを提案したのです。(同書P8 より)

うれしいのはその「寺田物理学」を、子どもから大人まで楽しめるようにわかりやすく語られているのです。
 ときには、「現代」からの視点でその意義、先駆性が語られているのはうれしい!!
 それはまるで、寅彦自身が「現代」に蘇ったようだ!!


▼最後のポイントはこうだ!!
 今回はここが最も言いたかったお薦めポイントである。

(3)オンライン「寅の日」への最高の案内書である!!

 著者ははじめの「寺田寅彦とわたし」でこう言っていました。

 このようにわたしの進路を決めることなった寺田寅彦は、むろんとっくに亡くなった人だし、かれが書いたむつかしい論文を読んだわけではありません。わたしがおもに親しんだのは彼が書いた多くの随筆です。かれはその随筆で、だれもが経験するような日常のことがらをとりあげ、思いがけない発想でそれに関する「ふしぎ」について語っていくのです。その発想のおもしろさにひきこまれ、こんな見かたができるのか、そんなふうに考えられるのか、と思ってしまいました。かれは、自分の意見をおしつけるのでなく、筋道どおり考えればこうなるはずだとしめすだけなのですが、わたしは知らぬまに納得させられているのでした。合理的に考える方法さえ身につければ、だれもが納得する答えに行き着くためでしょう。  こうして寺田寅彦の随筆に魅せられるうちに、かれが物理学だけでなく広く科学の重要な課題を50年も前に予言したいたことがわかりました。(同書P2 より)

 思わず納得です。(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン
著者は寅彦の人生をたどりながら、そのときどきに書かれた随筆を数多く登場させます。
そして、その随筆を寅彦の視点でわかりやすく解説してくれます。
私が数えたかぎりでは
 26編もあります。(数えもれがあるかも知れませんので、これ以上です。)
 26編の随筆は、アリガタイことに今すぐ青空文庫で読むことができます。

◆作家別作品リスト:No.42 寺田寅彦 (青空文庫)


  そうです!!
  それをオンラインで、12日に一度これを読んでいるのが
オンライン「寅の日」なんです。

 ここからは完全な「我田引水」モードです。
私はこれからオンライン「寅の日」ってなに!?
と訊ねられたら、ぜひ

『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部 )を読んでみてください!!

と答えようと思う。

 この本は寺田寅彦の随筆の世界へ誘う本です!!
 オンライン「寅の日」への最高の案内書です!!

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