【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書)

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▼私は最近「歴史」というものに興味を持ちはじめた。
自分が歳をとってきたせいもあるのだろうか!?

今さらではあるが、
小さな小さな「自分史」も、大きな「歴史」の流れのなかで起こったことなのかも知れない。
と思い始めたのだ。

「世界史」「科学史」は、不勉強もあってこれまではどちらかというと他人事だった!!
待てよ!!
 ひょっとしたら私が好むと好まざるに関わらず、その「渦中」に暮らしてきたのかも!?

▼こんな思いを加速してくれる本に出会った!!
 実際に手に入れたのはちょうど一年前だった。少し寝かせておいたのだ。

 

◆【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書 2020.01.10)

 

 もともと「歴史」は他人事!!という認識だった。私はとりわけ「世界史」が苦手だった。
「高校世界史でわかる」と言われても、そのレベルもきわめてあやしいものがあった。
 だから、話はどこにとんでいくかわからない。
 そこであらかじめいつものようにお薦めポイント3つにしぼつてあげておく。

 

(1) ハイブリッド「科学史」の面白さを存分に楽しめる!!

(2)「科学」の「現在地」を世界史の視点で読み解くことができる!!

(3)「これから」の科学・科学教育のヒントがここにある!! 

 

▼ではひとつずつ少しだけくわしく

(1) ハイブリッド「科学史」の面白さを存分に楽しめる!!

ハイブリッド「科学史」 ?(゜_。)?(。_゜)?
耳慣れぬコトバだ。著者のコトバを借りよう。

そうした現状を鑑みたとき、ひとつの事例ではあるものの、歴史学と自然科学を融合した科学史の研究は、文科と理科にまたがる貴重な懸け橋となっている。いま、「ユニークな特徴をもっている」と書いたのはそういう意味であり、また、そこから ー 一粒で二度美味しいとでも表現できる ー 二つの大きな領域の融合ならではの、いわば〝ハイブリッド〟(hybrid)な面白さ知ることができる。(同書P3より)

 もう少し続けて引用させてもらおう。

 そこで、そういう面白さ伝えるために、本書では、世界史の流れの中に科学上の発見や科学者の人間模様を組み込むという構想を立ててみた。たとえてみれば、世界史(主として近代科学を生んだヨーロッパの近現代史)の変遷を「知の時間軸」に、各時代の科学者が挑んだ自然の探究を「知の空間軸」に設定し、二つの軸が形成する「時空」を舞台に、科学史を描いてみようという試みである。(同書P4より)

 この試みはみごとに成功していた!!

第1章 イギリス王政復古と「学会」創設
    ──ニュートンはなぜ大科学者たり得たか

第2章 フランス革命と化学革命
    ──なぜ諸科学は動乱期に基礎づけられたか

第3章 普仏戦争と「量子仮説」
    ──量子力学は製鉄業から生まれた?

第4章 世界大戦と核物理学
    ──真理の探究はいかに歴史に巻き込まれたか

第5章 変貌する現代科学──巨大科学は国家を超える

 各章のタイトルならべて見るだけでも圧巻である!!
 「世界史」の苦手な私にも十分楽しめた。
 一大スペクタル巨編を見るような思いだった。
 誰かほんとうにこれを映像にしてくれないかな。
 大ヒットまちがいなしだと思うけどな。

 

(2)「科学」の「現在地」を世界史の視点で読み解くことができる!!
 「科学」の本質は「未知なる真理」の発見にある。
 しかし、それもまた、やはり人間の営みである。いかに「真理」が時代を超えたものであっても、その「発見」には時代的背景が色濃く影響している。   
 第一章の主人公・ニュートンの場合で見てみよう。

 一六六五年、イギリスは貿易の利害の対立から再び、オランダと戦火を交えることになる(第二次英蘭戦争)。と同時に、この年、イギリスはペスト(黒死病)の大流行という災厄に襲われた。特に人口が多いロンドンは感染が瞬く間に広がり、阿鼻叫喚の地獄と化した。(同書P28より)
 さてペストが猖獗をきわめる一六六五年には、ニュートンは大学を卒業し、引きつづき、ケンブリッジで学究生活を送るつもりでいたが、疫病の感染を防止するため大学は閉鎖されてしまった。やむなく、ニュートンはウールスソープ村の生家に帰ってきた。(中略)ニュートンは二年近くを一人、故郷で過ごすことになる。(同書P30より)
 大学を卒業したばかりの若者わずか一年余りの間に誰の助けも借りず、二項定理、流率法(微分)と逆流率法(積分)、色彩理論(太陽光が屈折率の異なる光線に分けられるとする理論)を見つけ出すか、あるいはその手掛かりを得たというのであるから、驚かせる。
(同書P31より)

 コロナ禍の「現代」と重なってしまったもので、ついつい引用がながくなってしまった。 
 
 第二章の断頭台に消えた大化学者・ラヴォアジエしかり、「時代」に生き死んでいった科学者が次々と登場するのだった。
 先の話にもどるが「一大スペクタル巨編」の登場人物には事欠かなかった!!
 
 本論にもどろう。「時代」とともに「科学」はどのように変遷していったのだろう。
 そして、「現在地」は…!?。

 

 振り返ってみれば、近代科学が産声をあげたおよそ四〇〇年前から今日まで、本書を通してたどってきたように、科学という営みは決して立ち止まることなく、比類なきほどの進歩を遂げてきた。そして、進歩するにつれ、社会との関係を深め、その深まりはやがて、諸刃の剣の性格を帯びてきた。科学をどちらの刃として使うかは偏に、我々の人間性にかかっている。(同書P253より)

 「諸刃の剣」!!それが「現在地」!?

 

▼最後のポイントに行こう。

 

(3)「これから」の科学・科学教育のヒントがここにある!!
 本書の最後は次のように締めくくってあった。

 そして、科学が進めば進むほど、剣の諸刃の威力はどちらも強くなるわけである。
 将来にわたり、巨大化をつづけるであろう科学は同時に、国際協力の体制も強化されていくものと予想される。その流れが、同じ目的と責任をもった者どうしの連帯を深め、科学が平和の実現と人類の幸福、そして知的好奇心の発露の場となることを願って、本書の締め括りとしたい。(同書P254より )

 

 「時代」は遡行はしない。
 だから、その「時代」にもどって「やりなおし」はできない。
 できるのは「これから」を変えることだけだ!!
 そのためにも「歴史」から学ぶ必要がある。
 ここにこそ、科学・科学教育の「これから」を考えるヒントがある。

 

 ここからはちょっと【お薦め本】の話をはなれて、蛇足をひとつふたつ。

ひとつめは、この本最後は「超巨大科学」の話が中心になってしまって、「等身大の科学」の話はどこかに行ってしまっている。
 あえて探すとすれば最後に引用した文の「知的好奇心の発露の場」のコトバか。 
個人的にはそこにいちばん興味あるのだが…。

 もうひとつは、この本の中に2度ばかり我らが寺田寅彦が登場する。
これを探してみるのも面白いかも知れない。

 最後の最後に 
 附録「世界史・科学史比較年表」は実に面白い。
 この年表は2019年で終わっている。
 後に2020年・2021年には何が追記されるのだろうか!?

 

 やっぱりまちがいない!!
 私たちは「歴史」の「渦中」にいる!! 

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【私の読んだ本・ベスト10】2020!! #お薦め本

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▼恒例の【私の読んだ本・ベスト○○】をリストアップしてみる。
 リストアップするのは、この2020年一年間に【お薦め本】としてあげたもの10冊である。
 順番はあくまでここのblogに書き込んだ順番である。
 
 では、はじめる!!

【その1】【お薦め本】『いたずら博士の科学教室 磁石の魅力』(板倉 聖宣著 仮説社)
 名著中の名著!!
 40年も前に出された本だが、時代を超えて面白い!!


【その2】【お薦め本】『ニュートン式超図解 最強に面白い!! 天気』(荒木健太郎 監修 ニュートンプレス)
 教科書より「教科書」している!!
 天気の「ふしぎ!?」を超図解!!これならわかる!!
 「大気の物理学実験室」で起こる数々の謎解きをわかりやすい図で解説する。


【その3】【お薦め本】『鳥の目・虫の目・子どもの目』(酒井 浩著 無明舎出版)
 「自然は 最高の教科書!!」
 「子どもは 最高の指導書!!」
 を具体化した最高の実践報告。最高の「子育て自然観察ガイド」ブックでもある!!
 今、もっとも有効な一冊!!

 
【その4】【お薦め本】『教科書に掲載された 寺田寅彦作品を読む』(山田功著 リーブル出版)
 オンライン「寅の日」のテキストとさせていただいた本!!
 ながきにわたりきわめて高頻度に寅彦の随筆が教科書にとりあげられきた。それはなぜか!?
 具体的作品を読み解きながら解説する。
 教科書で扱われたときの「学習のてびき」もあったりする。実にうれしい一冊だ!!
 学生にもどった気分になって、寅彦を今一度読んでみよう!!


【その5】【お薦め本】『雲と出会える図鑑』(武田康男著 ベレ出版)
 「雲見」の旅へ誘う書!!
 「空の探検家」武田康男さんが、「雲見」のノウハウを伝授してくれている。
 はやく「雲見」の旅を再開したいな。どこから行こうかな o(^o^)o ワクワク


【その6】【お薦め本】『ふだん着の寺田寅彦』(池内 了著 平凡社)
 これまでとちがった寅彦像も見えてきた。
 愛すべき人間「寺田寅彦」像がまるごと見えてきた!!
 ますますファン度を増すのだった。


【その7】【お薦め本】『なぜ学ぶのか 科学者からの手紙』(板倉 聖宣著 仮説社)
 この書き込みを「原稿」として、『たのしい授業』(2020年9月号 仮説社)に載せていただいた。
 とてもありがたく、うれしかった!!


【その8】【お薦め本】『日曜俳句入門』(吉竹 純著 岩波新書)
 オンライン句会「寅の日」の助走のため読んだ本だった。
 投句の面白さ、醍醐味を熱く語ってくれている!!


【その9】【お薦め本】『俳句を楽しむ』(佐藤郁良著 岩波ジュニア新書)
 「句会」の いろは を知りたく読んだ!!
 とてもわかりやすい俳句入門書として最高!!ジュニア新書なのがうれしい!!


【その10】【お薦め本】『楽しい雪の結晶観察図鑑』(武田康男著 緑書房) #雪の結晶 #武田康男
 年末年始の寒波が心配だ。大きな被害が出ないことを願う。
 同時にちょっと楽しみもある。
 黒・青のフェルト、ルーペなども準備した。
 ひよっとしたら「天からの手紙」が届くかも。
 見えたら武田さんのみごとな写真と照らし合わせてみよう。

さあ、来年はどんな本と出会えるかな。
過去に出会った本との「再会」も楽しみだ!!
 

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【お薦め本】『楽しい雪の結晶観察図鑑』(武田康男著 緑書房) #雪の結晶 #武田康男

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▼1936年、世界に先駆けて人工雪をつくった中谷宇吉郎博士は、今年 生誕百二十年だ。
 その中谷博士は、『雪』(青空文庫より)のなかの「第四 雪を作る話」の最後に、次のように言っています。

 このように見れば雪の結晶は、天から送られた手紙であるということが出来る。そしてその中の文句は結晶の形及び模様という暗号で書かれているのである。その暗号を読みとく仕事が即ち人工雪の研究であるということも出来るのである。

▼この「暗号」を読み解くためのみごとな観察図鑑ができた!!
 こんなすばらしい観察図鑑をつくったのは、「空の探検家」武田康男さんである。

◆【お薦め本】『楽しい雪の結晶観察図鑑』(武田康男著 緑書房 2020.12.20)

 武田さんならではの美しい写真が満載だ。お薦めポイントいっぱいありすぎるほどある。
 いつものように無理やり3つにしぼる。

(1)美しい雪の結晶の写真が満載!!「雪の結晶」写真集の決定版!!

(2)リアルである!!すべての写真に原寸写真がついている!!

(3)雪の結晶を楽しむためのノウハウ、アイデアが満載!!

▼ではひとつずついこう。

(1)美しい雪の結晶の写真が満載!!「雪の結晶」写真集の決定版!!

 「空の探検家」武田康男さんの撮った写真には、いつも「科学」があった。
 その「科学」は説得力をもつ。
 そして、いつも「ふしぎ!?」を豊かにし、「美しさ」を何倍にも膨らませてくれた。
 
 一例だけあげてみよう。
 「雪の結晶の降り方と速さ」(P24)のところでこう述べていた。

 雪の結晶の落ちる速さは、大きさや形によりますが、角柱状や砲弾状などは空気抵抗の影響が少ないため、1秒間に1m程度と速く、角板状や樹枝状などは1秒間に0.5m前後と遅くなる傾向があります。1,200mの高さの雲からは、20分から40分程度で地上へ降りてくることになります。(同書P24より)

 そうこの20分~40分のあいだにも「天からの手紙」にいくつものドラマが起こるのです。そんなこと想像しながら雪の結晶を見ればますます「美しさ」が増してくるのです。
  
 武田さんは「はじめに」の書き出しにこう語っています。

 寒い冬の日、降ってきた雪の中に少しだけ結晶が混じっていることを知ったのは、私が子どもの頃でした。そして「いつかきれいな雪の結晶を観察して、写真に収めたい!」と心に決めました。(同書P6より)

 それから数十年たって南極地域観測隊員にもなり、南極の雪の結晶も顕微鏡で観察し、写真に収めました。何度も何度も冬の北海道も訪ねました。
 本州の山々にも出かけ、雪の結晶の写真を撮りためてきました。「空の探検家」である武田さんは、撮りたいものがあれば、地球上ならいつでもどこへでも跳んでいきます。
 こうして撮りためた膨大な写真を整理分類し、公開されたのがこの「観察図鑑」です。
これぞ「雪の結晶」写真集の決定版です!!


(2)リアルである!!すべての写真に原寸写真がついている!!

  これは(1)の繰り返しのようであるが、そうではない。
 実は、私はここがこの本の最高のお薦めポイントだと思っていた。
 各ページ 美しい雪の結晶の拡大写真を見せてもらえるだけでなく、自分でも「観察」の追体験をやらしてもらえるのだ!!
 これが滅法面白い!!
 用意したのは2種類のルーペだ。
 ・置き型のルーペ ×3 (100円ショップで購入)
 ・本格ルーペ ×20
美しい拡大「雪の結晶」写真のそばには必ず小さい黒い円の原寸写真がついていた。
 最初は半信半疑で黒い円のなかを覗いて見た。
 なんと、拡大写真そっくり(アタリマエ!!)のものが見えたのだ。
 感動である!!
 これで武田さんの「観察」の追体験ができるのだ!!
きわめつけが「氷晶に近い結晶」(同書P114)だった。
 最初は×3ルーペで見て、次に×20ルーペ で見る。
 たしかに見える!!
 
これを見るためだけにこの本を手に入れても損はしない!!

▼最後は

(3)雪の結晶を楽しむためのノウハウ、アイデアが満載!!

 空の「ふしぎ!?」を知りつくした武田さんの説明はいつもわかりやすく楽しい!!
私たちを未知なる世界に連れて行ってくれるのだ。
 今度の「雪の結晶」の世界でも同じだった。
 「なるほど、これは面白い!!」を繰りかえしているあいだに、すっかり「雪の結晶」の虜になってしまうのだった。
 面白い!!と思った項目だけでもコラムからあげてみる。

・街中の雪の結晶(クリスマスシーズンの今こそ)
・雪はなぜ白いのか
・雪の結晶の描き方
・折り紙でつくる雪の結晶
・雪の結晶をつくってみよう
 等々
 
 きわめつきは第4章 「雪の結晶の見つけ方」だ。

第4章 雪の結晶の見つけ方
・いつ、どこできれいな結晶が見られるか
・雪の結晶を観察しやすい場所
・雪の結晶が降ったあと
・雪の結晶が降る天気図
・雪の結晶の観察方法
・雪の結晶の簡単な撮影方法
・世界の雪の結晶
・南極の雪の結晶

 長年「雪の結晶」を追い続けてきた武田さんならではの情報が満載だ!!
特に「観察方法」「簡単な撮影方法」は必見だ!!
 
誰もがきっと今度は自分でこの美しい「雪の結晶」に出会いたくなってくるにちがいない!!

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【お薦め本】『俳句を楽しむ』(佐藤郁良著 岩波ジュニア新書)

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▼この度、オンライン句会「寅の日」をいよいよ起ちあげることを機に、俳句への興味があらためて湧いてきていた。
「俳句もどき」は詠んではいても、それはなかなかシロウトの真似事の域をでるものではなかった。
 あらためて根っこのところから俳句のキホンを学んでみたい!!
 そして
 句会の進め方、楽しみ方を知りたい!!
 そんな思いがあった。

▼そんなとき出会ったのが今回の【お薦め本】である。
 岩波ジュニア新書の一冊である。私は若い世代向けに出されているこのシリーズの新書が好きである。

◆ 【お薦め本】『俳句を楽しむ』(佐藤郁良著 岩波ジュニア新書 2019.11.20)

 いつものようにお薦めポイント3つを先にあげておく。

(1)俳句甲子園常勝名門校の指導者が俳句の楽しさを体験的に熱く語っている!! 

(2)現役国語教師が書いたとてもわかりやすい最高の俳句入門書!!

(3)自分でも俳句を詠み、句会にも参加してみたくなる本!!

▼では3つのポイントについて少し詳しくみていこう。

(1)俳句甲子園常勝名門校の指導者が俳句の楽しさを体験的に熱く語っている!! 
 「俳句甲子園」今では多くの人がTV等で知っているこの大会は、1998年「俳都」(俳句の都)松山ではじまったそうです。
 著者が率いる開成高校チームが参加したのは2001年の第四回大会からだそうです。
  これが著者自身にとっても俳句との最初の出会いだったようです。   
 開成高校が常勝校になるまでのドラマが「第一章 俳句甲子園からはじまった!」では熱く語られていた。
 途中で紹介されている生徒たちの俳句が実にすばらしい!!
 このドラマ自体が俳句の楽しさを伝えてくれていた。
 著者のことばを借りよう。

俳句を始めるきっかけは本当に人それぞれで、私のように俳句が向こう側からやって来た例もあれば、俳句甲子園出場を機に俳句を始めた若者も多くいます。皆さんにとっては、この本を読んだことが俳句をはじめるきっかけになるかもしれません。
俳句を始める年齢もまた、人それぞれです。私の場合は、三十二歳で俳句に出会いましたが、これはプロの俳人としてはやや遅い方だと思います。十代から俳句に触れている若者を見ると本当にうらやましく思いますが、これは致し方ありません。俳句に出会うのが何歳であっても、決して遅すぎるということはないのです。
 この本の読者が若い方であればなおさらですが、少し年齢の上の方でも、俳句の世界へ是非一歩を踏み出していただきたいと思います。(同書 P27より)

 

(2)現役国語教師が書いたとてもわかりやすい最高の俳句入門書!!

・第2章 俳句を鑑賞する
・第3章 季語の世界
と読み進めるうちに
 「これならわかる!!」
 「ナルホド (゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン」
と納得することも多かった。これまでに読んだ類書(そんなたくさん読んだわけではないが)にくらべてとてもわかりやすいと感じた。
 文体も使われている言葉も 初学者にはとてもわかりやすいものになっていた。
 きわめつけは
・第4章 実作への一歩
 だった。ここでは、まるで「俳句入門」の授業を受けているような気分になるのだった。
 わかった!!
 なぜかくもやさしくわかりやすいのか!?
 今さらであるが、著者はプロの俳人であると同時に現役の国語教師なのである。
 ここでの読者への問いかけは授業における精選された「発問」なのである。
 授業ノートを読むような気持ちで読めば、「これから」もずっと使える最高の「俳句手引き書」となるだろう。
 また迷ったら開いてみよう。

 俳句上達の秘伝が語られていた。

 まずは、一日に二、三句でよいので継続的に俳句を詠む習慣をつけましょう。その中から他者の評価を得られた句だけを残して、残りは潔く捨てる。この姿勢が身についたら、皆さんも「俳人」の仲間入りをしたと言ってよいでしょう。(同書P158より)

▼最後に
(3)自分でも俳句を詠み、句会にも参加してみたくなる本!!

 俳句を極めようとすれば、今挙げたように様々な努力が必要になるのですが、それは何年か時間をかけて取り組めばよいことです。まずは、俳句を楽しむ気持ちを大切にしてください。俳句が好きになれば自ずと次の課題見えてきて、何をしなければならないか、自分なりに気づくようになるはずです。何もかも一気に習得しようと思う必要はありません。(同書P184より)
 俳句は十七音というささやかな器ですが、その奥行は無限に広がっています。読者の皆さんも、是非俳句を楽しみながら、自分の人生をより豊かなものに耕していっていだきたいと思います。(同書p192より)

  こんな誘いの文章を読んでいるうちに、自分でも俳句に挑戦してみたくなるのでした。
 さらに、こうも言われていました。

 俳句を続けていく中で一番の楽しみは、句会に出ることです。句会は、俳句における最も基本的な活動と言ってよいでしょう。(同書p161より) 

 この言葉につづけて、具体的な句会の進め方についての話もあるのはうれしいです。
 今、もっとも知りたいところだったから。
 付録には「清記用紙・選句用紙」の見本までついていたアリガタイ!!

 今すぐにもリアル句会に参加してみたい気分にもなる。
 しかし、今はそれはなかなか…。
 そこで、まずはオンライン句会を!! と言えば我田引水がすぎるか。
\(・_\)ソノハナシハ (/_・)/コッチニオイトイテ
 
今、最も【お薦め本】にあげたかった本である!!

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【お薦め本】『日曜俳句入門』(吉竹 純著 岩波新書)

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▼人生に一度は「句会」なるものに参加したいと思いつつ、ついにその機会もなく今日にいたってしまっている。
 人が集うこと自体がなかなか難しい今日、逆にそのピンチをチャンスにかえて挑戦みたいと思うことが出てきた。
 オンライン句会である!!
 ずぶのシロウトであること省みず、俳句結社「寅の日」まで立ちあげてしまった。
 オンライン句会「寅の日」の展開はいよいよ今からだ!!

 もっとも肝心のことが、後先逆になっていることに気づいた。(^^ゞポリポリ
 毎週一句だけ「俳句もどき」を数年前からつくっているだけで、まったくのシロウトの域を脱しきれずにいた。
 まずは「俳句」を詠むということが課題だった!! 

▼そんなときとっても興味深い本に出会った。
 それが今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『日曜俳句入門』(吉竹 純著 岩波新書 2019.10.30)

 新書版でとてもわかりやすく書いてあった。
 読み進めると、自分には遠くの世界であると思っていた「俳句の世界」が、身近に感じられてくるから不思議だった。
 いつものように3つのお薦めポイントをさきにあげておく。

(1)最も身近な「シロウト俳句のすすめ」がここにある!!

(2)「投句」の楽しさ、面白さ、心得を体験的に語ってくれている!!

(3)未知なる「俳句の世界」を身近に俯瞰できる!!

▼3つのお薦めポイント少しだけ詳細に語ってみる。

(1)最も身近な「シロウト俳句のすすめ」がここにある!!
 そもそもタイトルの耳慣れない「日曜俳句」って何?
 説明があった。

日曜俳句とは、まずもって、新聞や雑誌、テレビなどのメディアに投句し、選を受ける一連の流れ、および公表された作品のことをいいます。(中略)趣味として俳句をつくるのが、日曜俳人。休日に絵筆をとる日曜画家、大工仕事をする日曜大工となんら変わりません。誰に習うわけでもなく、好きというだけで道を究める。人生百年時代の生き方のひとつとして、私は「日曜俳句」を提唱します。(同書「はじめに」 より)
   TVで「俳句」の扱う人気番組があったり、新聞には毎週多く人が投句した俳句がみられたりする。私自身も日曜日の朝は、毎週Eテレ「NHK俳句」を楽しみにして視ている。  世間ではちょっとした「俳句」ブームなのかも知れない。 自分でもその「俳句の世界」に一歩踏み入ってみたい気分にもなる。しかし、その一歩には、なかなか勇気が入るのだ。  そこで、こうだ!!  
結社でもない。同人誌でもない。句会でもない。俳句教室でもない。ひらかれた第五のルートとして、日曜俳句はある。(同書 P19より)
日曜俳句なら、初心者の拙い俳句でも、独学の無手勝流でも、俳壇の大御所が、手にとって見てくれる。選ばれると、反響がある。(同書P26より)

うまい!!
と思うことがあった。実は引用させてもらった上記の二文はいずれも本文からの引用でなく「小見出し」なんである!!
 なんと長い「小見出し」だと最初は驚いたが、やがてみごとな作戦だと感心してしまった。
 この長い「小見出し」がならんだ「目次」を見るだけでも、読んでみたい気になってくるのだった。

 奥付の著者紹介「コピーライター 俳句・短歌愛好家」を見て妙に納得するのだった!!


(2)「投句」の楽しさ、面白さ、心得を体験的に語ってくれている!!
ここもまた、「小見出し」を引用させてもらう。

右も左もわからなくても、五・七・五なら、かんたん。とにかく、つくる。おっと、歳時記だけは忘れずに。(同書 P52より)

デビューは、新聞俳壇に限らない。近くでも遠くでも、小さくても大きくても、投句できる機会は逃さない。(同書 P58より)
投句は、はがきか、ネットか。最初は、はがきがおすすめ。しかし、無理に自筆で書くこともない。パソコン使えば、自分の句帳にもなる。(P93より)
パソコンを使っても、俳句は縦書き、一行におさめることが基本。ネット投句も、まずは紙に縦書きに書いてから。(同書P97より)
継続は力なり。解説を書き加えたりせず、俳句だけで勝負していれば、いつか結果につながってくる。(同書P110 より)
季節の移り変わり。日々の暮らしの喜怒哀楽。俳句の対象は無限だが、つづけるうちに自分のテーマがみつかるといい。(同書P115より)
ときには、どこかに出かける「ひとり吟行」。日曜俳句なら、旅先で投稿した俳句に出会うとも。ほかでは絶対に味わえない気分だ。(同書P139より)
入選すると、ご褒美がもらえることも。でも、日曜俳人には、掲載されることが無上の喜び。選評もいただければ、それが最高のご褒美。(同書P156より)

「日曜俳句」を自ら提唱し、その第一人者が、自らの体験をもとに、その醍醐味、面白さ、さらには投句に際して、ぜひ心得ておくべきことを具体例をあげながら楽しく語る。
 きわめて説得力をもつコトバがつづく!!

 実例として著者自身の入選句があがっているがさらに説得力を増している!! 

▼最後のポイントにいく。
 
(3)未知なる「俳句の世界」を身近に俯瞰できる!!
 いかに話題になることが増えたとは言え、ふつうに暮らしをしている人間から見ると、やっぱり「俳句の世界」は、未知なことの多い遠い別世界に思える。
 そこをまた自らの体験から知り得た情報をくわしく教えてくれている。
 例えばこんな調子だ。

主な俳句団体は、四つ。それぞれ特徴があるので、俳句教室を選ぶときや、日曜俳句を送る選者に迷ったときなど、役に立つ。(同書P39より)
 
投句から掲載まで、新聞俳壇は二週間から一ヶ月。このスピード感は、俳誌ではまねできない。ニュースに取材した句も鮮度が落ちない(同書p135より)

 また最後にあがっている

「主なメディア、公募俳句大会の投句規定」(同書P209より)

は、今から「日曜俳人」をめざす人にとってはきわめて有用な情報だろう。

・田螺鳴くー東日本大震災と日曜俳句 
・第4章 明日へ動く日曜俳句
では、「日曜俳句」のこれからの可能性が熱く語られていた。

 最後に著者からのあたたかいメッセージを引用させてもらおう。

 ことばの過剰な時代だからこそ、五・七・五の十七音という節度、季語という共通理解の手がかりも含まれる俳句が、やさしく感じられます。たのしく、前向きに、みんなで投句しようよ。ひとりじゃないよ。そんな気持ちから『日曜俳句入門』を世におくることにしました。(同書P216より)

出さずに残っていた「はがき」がなかったかな? とさがす自分がいた!!  

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【お薦め本】『なぜ学ぶのか 科学者からの手紙』(板倉 聖宣著 仮説社)

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▼寺田寅彦記念館友の会では、5年前の2015年、寺田寅彦没後80年企画としてアンケート「私の好きな寺田寅彦の随筆 ベスト・ワン」を実施された。
 私は躊躇なく「科学者とあたま」を選んだ。
 5年経った今もその思いは変わらない。
 事実、この7月で8年と4ヶ月つづけてきたオンライン「寅の日」でも、この「科学者とあたま」を繰りかえし読んできた。
 読んだ回数は、読んだ随筆の中でトップで9回に達していた。
▼その寅彦の「科学者とあたま」について、あの板倉聖宣さんが書いた文章が載っている新刊が出たと聞いた。
 さっそく入手して読んでみた。

◆【お薦め本】『なぜ学ぶのか 科学者からの手紙』(板倉 聖宣著 仮説社2020.06.26) 

新刊と言っても、板倉さんは2018年2月すでに亡くなっている。
 従って、過去に書かれ遺された文章から、テーマに関連するメッセージを厳選されたものだそうだ。
 特に若い人向けのメッセージが中心だそうだが、ポンコツの私が読んでも十分楽しく読めたので、【お薦め本】にあげてみることにした。
 例によって、お薦めポイント3つを先にあげておく。

(1) 不易な問い「なぜ学ぶのか?」に答えるヒントがやさしく語られている!!

(2) 現代版「学問のすすめ」がここにある!!

(3)「寅彦とこれからの科学教育」を読み解くヒントがここにある!!

▼ではひとつずつ少しだけ詳細に

(1) 不易な問い「なぜ学ぶのか?」に答えるヒントがやさしく語られている!!
 「なぜ勉強するのか」「なぜ学ぶのか」この不易な問いかけに出会わなかった教師はいないだろう。
 いや教師のみでないだろう。多くの大人が一度は出会ったのことがあるのでは。
 ひょっとしたらこの問いを発したのは自分自身であったかも知れない。
 答えはみつかっただろうか!?
 答えはひとつではない!!まだみつかっていない人もあるかも知れない。
 ここに答えをみつけるヒントが語られている。たとへばこうだ。
 

 「なぜ勉強するのか」それがわからないと勉強しない、というのは、いまの学校教育中ので明らかに損です。しかし、長い目でみると、それは決して損なことではないと私は思っています。「なぜ学ぶのか」それがわかってはじめて<本当の学問>ができるようになり、学問を作りかえることができるようになると思うからです。
 「急がば回れ」ということわざがあります。本当の学問をするために、ときには損を覚悟で「なぜ学ぶのか」考えてみませんか。(同書P19より)

 あくまで中学生・小学生への「手紙」というかたちで語られているので、とても平易な文章でわかりやすい!!
 なおかつ説得力をもつ!!そして面白い!!
 最初の「ジャガイモの話」など、今、なお新鮮で納得である (゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン

(2) 現代版「学問のすすめ」がここにある!!
 5章「予想と討論と実験と」
 6章「たのしく学び続けるために」
 は仮説実験授業をやっている子どもたちへの「手紙」というかたちをとりながら、現代版「学問のすすめ」が語られているように思えた。
 これまた時空を超えて今なお響いてくる熱き呼びかけであった。

 じつは、科学の歴史の上でもっともすぐれた科学者というのは、「みんなが解けないむずかしい問題を解いてみせた人」ではありません。一番えらい科学者というのは、「やってみればだれでも実験できそうな問題だけれども、それまでだれも考えたことのないような問題で、しかもたいていの人がまちがって予想するような問題」を考えついて実験してたしかめた人なのです。そういう科学者はみな、昔の科学者の研究したことをくわしく勉強しています。(同書 P87より)

▼さて、次が私にとっては本命です。

(3)「寅彦とこれからの科学教育」を読み解くヒントがここにある!!
 仮説実験授業を提唱した板倉聖宣さんが、寺田寅彦をどう読んだか!?
 私のお気に入りの「科学者とあたま」をどう読み解いたか。それにいちばん興味があった!!
 寺田寅彦と板倉聖宣 やっぱり 多く響き合うところがあったようだ。
 さすがだと思うところがあった。ここだ!!

 そのことを思うとき、寅彦が「頭がよくて、自分を頭がいいと思い利口だと思う人は先生になれても科学者にはなれない」とか「これを読んで何事をも考えない人は、おそらく科学の世界に縁のない科学教育者か科学商人の類であろう」と言って、科学教育者を皮肉って済ませているのは感心できない。当時の寅彦の心情は私にも十分理解できるつもりだが、やはりこれは困る。もともと科学研究というものは、研究者個人の頭だけでなく、科学研究を行なう雰囲気に左右されることが大きい。だから、科学研究に従事する個人だけでなく、科学教育や科学行政に係わる人々の間にも、「科学者とあたま」のような文章を読んで「会心の笑みをもらす人」が増えなければ、日本の科学は創造性を発揮しえないと思うのである。(同書P94より)

 スッキリ!!である。
 お気に入り随筆でありながらも、読むたびに科学教育に携わってきたものとして、最後の部分に反駁できないことにくやしさをおぼえていた。
 さすが、板倉さんだ。
 「感心できない」「やはりこれは困る」と言い切っていた!!
 
 寅彦をこれからの科学教育に「活用」したい私としてうれしい本だ!!


【オマケ】最後に「「なぜ学ぶのか」なんて聞かれたらどう答えたらいいんだろう?」という小原茂巳さんの文章が出ていた。
 この本を解説してくれていた。またまたこれが、なかなか面白いのだ!!
 そこでなつかしく思い出してしまったことがある。
 今から38年前の1982年4月に『授業を楽しむ子どもたち』(小原茂巳著 仮説社)の書評(そんなたいしたものではないが…)を書いた記憶があった。たしか、それは「「同時代人」のあなたへ」ではじまるこれまた手紙風文章だった。蛇足で スミマセン<(_ _)>
  
 

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【お薦め本】『ふだん着の寺田寅彦』(池内 了著 平凡社)

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▼12日に一回ずつ寺田寅彦の作品(随筆)を読むオンライン「寅の日」をはじめて8年が過ぎ、今、9年目である。
 通算回数は、次回(2020/07/10)で第258回目である。
 自分でも驚いてしまう回数である。 
 ひとりの人間の書いたものを、こんなに長く読み続けたのは、人生はじめての体験だった。はじめた当初は面白くなくなったらすぐやめようと思っていた。
 ところが、続けてみると様子が変わってきたのだ。
 「にわか寅彦ファン」は、やがて「追っかけ寅彦ファン」になっていったのだ!!
 読めば読むほど寅彦が面白くなっていった!!
 寅彦はいつ読んでも驚くほど今日的だった!!
 なぜだろう!?
 寺田寅彦の魅力はどこに!?

▼このオンライン「寅の日」をより楽しく続けていくために、とても参考になりそうな本に出会った。それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『ふだん着の寺田寅彦』(池内 了著 平凡社 2020.05.20)

 お薦めポイントのいっぱいあるとても面白い本だ!!
 いつものようにはじめにお薦めポイントを3つに絞り先にあげておく。

(1)寺田寅彦の作品(随筆)をより深く、豊かに楽しめるようになる!!

(2)愛すべき人間「寺田寅彦」像がまるごと見えてくる!!

(3)寺田寅彦を「活用」するヒントがここにある!!

▼ひとつずつ、少しだけ詳細に

(1)寺田寅彦の作品(随筆)をより深く、豊かに楽しめるようになる!!

 実は、オンライン「寅の日」をはじめたころ、「何から読んでいけばよいか?」を考える上でとても参考にした本があった。それがこの本と同著者・池内 了氏の
 ●『寺田寅彦と現代~等身大の科学を求めて~』(池内了著 みすず書房 2005.01.21)
である。「等身大の科学」というフレーズに惹かれていたこともあり、興味深く読み、さらにオンライン「寅の日」で読む随筆の決定にずいぶん参考にさせてもらった。言わば、オンライン「寅の日」ガイドブックとして利用させてもらったのである。深謝。

 さて、この本である。この本の趣旨を著者自身に語ってもらおう。それが最高の紹介のような気がしてきた。
 それは、最後の最後にあった。
 

本書を手にして、私が寅彦への悪口を書いたと誤解してはならない。人間はさまざまの側面を持っており、寺田寅彦にも欠点や限界があり、悪癖を止められずいたことも知った上で、彼が残した仕事を概観すればまた違った景色が見えてくるのではないだろうか。褒め上げるばかりが寺田寅彦を評価することではない。人間的な弱点、時代が課した制約、自分の好悪に左右された側面も含めて、批判的に見、その上で全体像を把握することこそが寺田寅彦を真に理解することに繋がるのである。「寺田寅彦は謹厳実直で文理融合の偉大な先覚者とばかり思っていたが、こんなに多様な顔があったのか、見直した」と思ってくだされば、本書を書いた甲斐があったというものである。(同書P283より)
  

ここにすべてが語ってあった。
 さらに、「これから」のオンライン「寅の日」にひきつけて言えば、科学者「寺田寅彦」の書いたものを、より深く、豊かに読み解くことができる気がしてくるのだった。
 寅彦のほんとうの魅力とは、実はこのあたりに起因しているのかも知れない。

(2)愛すべき人間「寺田寅彦」像がまるごと見えてくる!!

 「甘い物とコーヒー好きの寅彦」
 「タバコを止めない寅彦」
 「癇癪持ちの寅彦」
 「心配性の寅彦」
 「厄年の寅彦」
 … 等々、読み進めていくとその「こだわり」ぶりにあらためて驚く。そのひとつひとつがどれも半端でなかった!!
 しかし、不思議と「なんだそんな人間だったのか」と落胆するようなことはまったくなかった。
 むしろ、「やっぱり…」と、笑ってしまい、納得し共感までしてしまうのだった。
 妙に人間「寺田寅彦」が愛おしくすら思えてくるのだった。
 これは8年間に渡るオンライン「寅の日」でのつき合いの成果だろうか!?
 変な話だが、私は自分の親族以外の墓所で、寅彦の墓所ほど頻繁に参ったことがない。
 いつのまにやらどこか、愛すべき身内意識まで生まれているのかもしれない。
 
なかでも印象的だった「こだわり」は
 「心配性の寅彦」(寅彦なりの子どもたちへの愛情表現なのだろうか!?それにしても…)
 「医者嫌いの寅彦」(科学者・寅彦の言動とは思えぬ矛盾、しかし…)
 ここで、たいへん興味深い著者の仮説をあげておられた。
 「寅彦の業病の由来?…… X線回折実験」(同書P204より)
これは一読に値する!!

 ここでも、やっぱり著者のコトバを借りよう。

 これまで神棚に祀っていた、文理双方に卓越した寅彦の厳めしい大判の写真から、アルバムに収められた、数多くのふだん着のスナップ写真に目を移すと、人間味に富み矛盾した言動も辞さなかった寺田寅彦の異なった実像が浮かび上がってくるのではないだろうか。読者も、寅彦ワールドの豊かさを味わっていただければ幸いである。(同書P6より)

▼最後に行く。

(3)寺田寅彦を「活用」するヒントがここにある!!

 寺田寅彦を「活用」する。これは鎌田浩毅氏(京大 火山学・地球科学)のコトバである。

 アウトリーチに関する私の修行は今も進行中であり、寺田が残してくれた試行錯誤の記録は知恵袋となっている。彼の専門と思想を引き継ぐ者として、これからも寺田寅彦を「活用」していきたいと思う。」(「寺田寅彦を「活用」する」鎌田浩毅『科学者の目、科学の芽』(岩波書店)P174より)

 このコトバが気に入ってしまった。 
 私には特に寅彦と重なる専門分野があるわけではないし、また寺田寅彦研究を本格的に語るほどの知識も力量もない。
 単なる「にわか寅彦ファン」にすぎない。(最近は少し「追っかけ寅彦ファン」に進化したかも…)
 そんな私にも私なりに寺田寅彦を「活用」したいという願いがあった。
 
 どんな状況のなかで、どんな思いを持って、85年以上の時空を越えて、現在もなお「きわめて今日的!!」と響いてくるコトバを発し続けたのか!?
 それを知るには、まるごと「寺田寅彦」を理解することが必須だ。
 
 「こんなとき、寅彦ならどう考えただろう?」
 「こんなとき、寅彦ならどうしただろう?」
 と寅彦を「活用」しようとするとき、役に立つヒントがこの本にはいっぱいある!!
 

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【お薦め本】『雲と出会える図鑑』(武田康男著 ベレ出版)

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▼「今、いちばんやりたいことは何ですか?」
と問われれば、私は何の躊躇もなく次のように答えるだろう。

 「雲見」の旅に出たい!!

 行く先の希望もいろいろあるが、それは二の次である。ともかくいろんな雲に出会える「雲見」の旅である。いろんなところに出かけた「雲見」の旅のなかで、最も忘れることのできないうれしい旅があった。

●富士山五合目へ、「雲見」の旅!!(1)
●富士山五合目へ、「雲見」の旅!!(2) 

である。

▼その「雲見」の旅を思い出させてくれるようなうれしい本が出た!!
それが今回の【お薦め本】である

◆ 【お薦め本】『雲と出会える図鑑』(武田康男著 ベレ出版 2020.5.25)

実に面白い!!
 お薦めポイントはいっぱいありすぎて、またまたダラダラと語ってしまいそうだ。
 いつものように前もってポイントを無理やり3つにしぼっておく。

(1) 空の探検家・武田康男さんと一緒に「雲見」の旅をしている気分になる!!
(2) 雲と出会うための「秘技」のすべてがここにある!!
(3) 「雲見」のカガクを楽しめる!!

▼3つのポイントは重複し、深く関連しているが、少しだけ詳細に語ってみる。

(1) 空の探検家・武田康男さんと一緒に「雲見」の旅をしている気分になる!!
 武田さんの「雲見」の解説は、いつもわかりやすく説得力をもつものだった。
 それは、きっと武田さん自身が「雲見」の魅力を知り尽くしているからだろうと思っていた。
 「雲見」の魅力については、「はじめに」のなかで、次のように語っていた。

 空に生まれては消え、風に流されて、雨や雪をもたらす雲は、人類が生まれるずっと前から地球に存在し、雲の下で人間は進化してきました。私は雲を眺めると、そうした時間と空間のスケールを感じるのです。(同書P2より)

 1章「雲について」
 2章「身近に見られる雲」 
 で、「雲見」の基本的なことをマスターしてから、いよいよ3章「おもしろい雲を探す旅」から、最高の案内人と一緒の「雲見」の旅がはじまるのだった。
 春・夏・秋・冬の「雲見」の旅が用意されている。!!
 8章「海外の雲」では、アラスカや南極への「雲見」の旅までつれて行ってもらえる。
 使われている写真はすべて武田さん自身が出かけて行き撮ったとっておきの写真ばかりである。
だからこそ、リアルで説得力をもつ。
 ワクワクと感動の伝わってくる文体もいい。
 どこから開いても、最高の案内人と一緒に「雲見」を楽しんでいる気分になるのである。

(2) 雲と出会うための「秘技」のすべてがここにある!!
 本のタイトルからいけば、これこそが本意なのかもしれない。

 いつも驚き感動することがある。
 今朝は栃木におられたのではと思ったら、昼には東京で仕事をされていた。
 飛行機で九州まで飛ばれたと思ったら、夕方には千葉に戻っておられる。
 そんなことがしょっちゅうだった。
 驚くべき行動力である。それは国内にかぎらなかった。地球上ならいつでもどこでも出かけて行かれた。
 まさに「空の探検家」であった。
 そうして誰よりもたくさんの雲を見てきた武田さんだからこそ語れる「雲と出会える」のための「秘技」があった。
 それを、この本ではおしみなく公開されていた。

 雲の写真は、レア度を3段階に分けて載せてあった。
・レア度 低 …年に何度か出会える 
・レア度 中 …年に1度くらい出会える
・レア度 高 …10年に1度くらい出会える
 という具合だ。
 レア度「中」「高」とあるとついつい冒険心、探検心をくすぐられてくるのだった。
 そして、これが最高のウリだ!!
 どの雲についても「雲との出会い方」が記してあった!!
この「雲」に出会うための「秘技」、具体的のノウハウのすべて、観察のための心得等が書いてあった!!

 さすがだと思ったことがいくつもある。
・「下見」をしておいて、「予想」をもって観察する。 
・メインの写真だけでなく、「その前」のあるいは「その後」の写真が掲載されている。
・同時刻の写真でも見る方向・角度を変えた写真もある。
(これは実にスバラシイ試みだ!!、その雲に出会える前の写真があることで、そのタイミングを知ることができる。またその後の変化を知ることで、どんな変化の一コマかを知ることができるのである。)

 これぞ、「ひとりでも多くの人に、この雲と出会って欲しい!!」という著者の願い・本意の現れである。

▼最後の3つ目のポイントにいく。

(3) 「雲見」のカガクを楽しめる!!
 メインの写真については、必ず
 「なぜ、その雲がみられるのか?」
 「どんなときに、その雲がみられるのか?」
 等について、わかりやすく「カガク」的解説がついていた。
それがとてもわかりやすいのである。
 けっして難解な専門用語を使うわけでもなく、誰が読んでもわかる用語を使って「カガク」的分析がしてあるのだ。
 だから誰もが納得できるのだった。
 
 「カガク」だからこそ、私にもきっと「出会える」はずと思えてくるのだった!!
 「雲見」しながら、たくさんの「カガク」が学べるのだ!!
 
 この本を読んで、次なる「雲見」の旅の準備しておきたいものだ!!
 さあ…!!

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【お薦め本】『教科書に掲載された 寺田寅彦作品を読む』(山田功著 リーブル出版)

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▼2012年4月にはじめたオンライン「寅の日」は、9年目の歩みに入ってはや一ヶ月がすぎた。
  一度も休むことなく、昨日(2020/04/29)で第252回目であった。
 この間に読んだ寺田寅彦の随筆はついに100編に達した。
 はじめた当初は「面白くなくなったら、すぐやめよう」と思っていた。
 ところが、読む度に 益々面白くなっていった。
 寅彦が亡くなってからでも、はや85年もの歳月が過ぎていた。
 ところが読む度に驚いたことがある。
 どの随筆もが、たった今書かれたように新鮮で今日的だった!!
 そして、なにより面白かった!!

 

▼ 元々「にわか寅彦ファン」だった私は、やっとここまで来て寅彦の随筆の面白さを少し人に語れるところまできたかも知れないと自負していた。
 そんな勝手な思いをうちのめされるような本に出会った!!
 この本が「寅彦のほんとうの面白さはそんなものでない。まだまだあるよ…」と教えてくれているようだった。
 正直言ってちょっとショックだったが、それ以上にうれしかった。
 その本が、今回の【お薦め本】だ。

 

【お薦め本】『教科書に掲載された 寺田寅彦作品を読む』(山田功著 リーブル出版 2020.4.15)
             (※「寺田寅彦記念館友の会」に連絡すれば入手可能!!)

 著者はいつもお世話になっている「寺田寅彦記念館友の会」の副会長の山田功先生だ。
「にわか寅彦ファン」の私は「友の会」のみなさんにはこれまでずっとたくさん教えられてきたが、今回のこの本にもいっぱいはじめて知ることがあった!!
 お薦めポイントもいっぱいあるが、いつものように3つにしぼる。

(1)学生にもどって、寅彦作品を深く味わうことができる!!

(2)寅彦作品教科書掲載の歴史がわかる!!

(3)寅彦作品のバックグラウンドを知り、より楽しく読める!!

 

▼では3つのポイント少しだけ詳しく。

(1)学生にもどって、寅彦作品を深く味わうことができる!!

 私の記憶が正しければ、私が最初に出会った寅彦の作品は現代国語の教科書に掲載された「茶わんの湯」だったと思う。(昭和40年代前半、半世紀以上前の話)
 変な話だが、内容よりも肖像画(写真?)をよくおぼえている。今から思えば切手になった「あれ」だったと思う。
 もう今は、教科書では出会えないようだ。残念である。
 この本では、5つの作品に再会できる。アリガタイ!!

・「新星」
・「凌霄花」
・「森の絵」
・「藤の実」
・「たぬきの腹つづみ」(ローマ字)

 うれしいことに、教科書に記載された当時と同じように

○(注)があり読み方、詳しい説明がある!!
○ 段落にわけてあり、著者のくわしい解説がある!!それがスバラシイ\(^O^)/
○ 当時のままの本文前の解説では、「取り上げのねらい」などが記載されている。
○ 「学習の手引き」までついている!!
 うれしいかぎりである!!

 ダカラ

 だから私たちは、学生にもどった気分になって、時空を越えて寅彦の作品に再会できるのである。

 これ以上語れば「蛇足」になると思いながらも語らずにおれない。
○ 段落にわけてあり、著者のくわしい解説がある!!それがスバラシイ\(^O^)/
 これが本書を最高に魅力的なものにしている。 
 少しだけ例をあげさせてもらう。

「森の絵」についてである。

 さてこの絵を寅彦は、とても大切にしてきたが今はない。作者も分からないとある。果たして実際の絵はどんなふうに描かれているのだろうか。バルビゾン派の画家かも知れないと思い、ミレーやコローの画集を開いてみたし、関連の展覧会にも出掛けたが、それだと思われる作品には出会わなかった。ならば、この文章から「森の絵」を再現したらどうだろかと考えた。残念ながら画才のない私にはできない仕事である。そこで、岐阜県在住の風景画家森本彰氏にお願いをした。このやっかいな願いを画家は、快く引き受けてくださった。それが、ここに掲載した絵である。文章を丹念に読み取り、「森の絵」を再現してくださったのである。この絵を見ていると、言葉では言い尽くせなかった森全体の雰囲気が漂ってくるのである。(同書 p82より)

 なんというこだわりだ!!単なる通り一遍の「解説」ではないのだ。

 もうひとつだけ例をあげさせてもらおう。

「藤の実」にあった。

藤の実がはぜたときの音とは、いったいどんな音だろうか。私も確かめたくなった。ある年の十一月中頃、藤の実を捜すことにした。大きな公園の藤棚を見に行くと、手入れがされていて藤の実はない。近くの家に藤棚があることを思い出し出かけた。幸い、いくつかの藤の実が残っていた。それを貰い、部屋にひもを張りつるした。十二月中頃、部屋で本を読んでいると、突然「びしっ」と乾いた短い音がし、藤の実がはぜた。その時、体がピクリと緊張した。そしてタネは部屋のドアに当たり床に落ちた。これが寅彦が体験した藤の実のはぜる音なのかと納得したのである。それだけのことだが、作品「藤の実」がぐっと自分に近づき、いっそう深い関心が持てたのである。(同書 p105より)

 これは、ほんのさわりにすぎない。このようにに深い読み解きがつづくのである。
これらによって、

 私たちは、寅彦の作品に再会するだけでなく、深く味わうことができるのである。 

 もう一度、言おう アリガタイ!!

 

(2)寅彦作品教科書掲載の歴史がわかる!!

この本は、寺田寅彦研究においても貴重な一冊である。
著者の長年にわたる調査研究によってまとめられた報告があがっている。
【教科書に掲載された寅彦作品の一覧】が表にまとめられていた。
■大正時代
■昭和初期(第二次世界大戦前まで)
■昭和戦後時代
と分けて「掲載年」「作品名」「掲載冊数」「備考」が記載されていた。
なんと多くの寅彦の作品が掲載されていたのだろう!!
感激することしきりである。
これを見ていると、いかに寅彦の作品が時代を超えて読み継がれてきたかがわかる。

なぜ、寺田寅彦だったのだろう!?

著者のコトバをかりよう。

寅彦の言葉に「ねえ君、不思議だと思いませんか」というのがある。すべての科学の始まりはここにある。この不思議を解き明かしてゆくことが科学である。そんなことを寅彦の随筆を通して、学んでいくのである。(同書p21より)

▼最後に行こう。

(3)寅彦作品のバックグラウンドを知り、より楽しく読める!!

 ここも著者のコトバをかりよう。 

 寅彦の作品のアンソロジーは多々出版されているが、丁寧な解説を加えた本は少ない。自由に読めばよいのであるが、できる限りの調査をし、作品に直接表れていない背景を紹介して、それをもとに作品を読んでもらったらどうかと考えた。それは遅々として進まぬ仕事であったが、ようやく代表的五作品をここに紹介することができた。
 寺田寅彦の作品を学校で学んだ方も、学ばなかった方もこれをきっかけに、寺田寅彦随筆集を手に取ってくだされば、著者の喜びとするところである。(同書p142より)

 著者の意図はみごとに成功している!!
 この本を読んで、これからのオンライン「寅の日」が益々楽しみになってきた。
 著者の手法を学ぶこともかねて、6月・7月のオンライン「寅の日」では、ここに取り上げられた五作品を読むこととしたい。
 詳細については後日案内させてもらう。

 オンライン「寅の日」参加者はぜひご一読を!!
 もちろんそれだけでない寅彦に興味のあるすべての人に!!
 とりわけ現役の「学生」さんにもお薦めである!!

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【お薦め本】『鳥の目・虫の目・子どもの目』(酒井 浩著 無明舎出版)

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 自然は 最高の教科書!!
 子どもは 最高の指導書!!

 理科教育の先達からの貴重な教えだった。
 現場で授業に困ったら思い出した。教えはいつも「有効」だった!!
 「やっぱりそうだつたのか」と実感をともなって納得することも一度や二度ではなかった。
 それは、言わば理科教師にとって「不易」の教えでもあった。

▼現場を離れて久しくなろうとしていた。
 この春、この教えを「やっぱりそうだったのか」と思い出させてくれるうれしい本に出会った。
 著者はネットでいつもお世話になっている酒井浩さんだ。


◆ 【お薦め本】『鳥の目・虫の目・子どもの目-ヒロちゃんの子育て自然観察ガイド-』(酒井 浩著 無明舎出版 2020.4.10)


 あまりに面白かったので一気に読んでしまった!!
 お薦めポイントはありすぎるほどいっぱいある。ひとつひとつあげていけばきりがない。
 いつものように、あえて3つにしぼっておく。
 勝手に自分の文脈にひきつけ過ぎの感もあるが…。

(1)「自然は最高の教科書!!」を具体例をあげながら熱く語ってくれている。
(2)「子どもの目」を通しての自然観察の面白さを教えてくれている。 
(3)最高の「子育て自然観察ガイド」ブック!!

▼ここからはポイントひとつずつについて

(1)「自然は最高の教科書!!」を具体例をあげながら熱く語ってくれている。
 少し著者自身のコトバにかえてみよう。

 自然の中には、子育てのヒントとなるものがたくさん隠されています。具体的な一つ一つの自然が私たちに様々な姿で「子の育ち」にとって大切なことを教えてくれます。まさに「自然は先生」なのです。
 本書では、本格的な「子育て論」とまではいかないものの、野山で育つ生き物たちや子どもたちの具体的な姿を紹介していくことで、「ヒトの育ち」にとって大切なことは何か、お伝えできたらと思います。(同書p4より) 

 ここで感動したことがあります。
 私が、「自然は最高の教科書!!」というとき、射程内に入っているは授業・学習のことどまりです。でも著者はそこまででとどまらず、「子の育ち」「ヒトの育ち」まで射程内に入れてきます。さすがです!!
 さらに驚くのは、この本では一貫してこの姿勢が貫かれています。
例えばこうだ。

わずか半年だが、カンムリカイツブリには大切な子育ての原理が詰まっているように思えた。
 子育てを半年で終えるようにカンムリカイツブリの一生は、私たち人間と比べて圧倒的に短い。はっきりとしたことはわかっていないが、一説には10数年だという。
 それだけに、生きていくうえで大切なことが凝縮されていたと思えてしょうがない。(同書p41より)


(2)「子どもの目」を通しての自然観察の面白さを教えてくれている。

「葉っぱが風で小鳥のように飛んでいる!」(同書p102より)
 この子どものみずみずしい感性に感動する著者は、これまた徹底して「子どもの目」にこだわっていきます。

 子どもの目線というのは、大人と違って低い位置にある
 大人が1.5~1.8メートルならば、子どもは0.7~1.3メートルぐらいだろうか。
 子どもが様々な発見ができたのは、その低い目線の位置にもよるだろう。それだけに、子どもの目線から教えられることは多い。
 しかし、それ以上に子どもの何物にもとらわれないまっすぐな目やそれを支える感性が大人も驚くほどの発見につながっているに違いない。(同書p52より)

 ここにこそ、「子どもは最高の指導書!!」にツナガル信念がある。

▼最後にいこう。
(3)最高の「子育て自然観察ガイド」ブック!!
 本のタイトルを単なる「自然観察ガイド」とせずに「子育て自然観察ガイド」としたところに、大いなる著者の主張があるのだろう。
 この意図は、みごとに成功している!!
 類書にみられないすばらしい取り組みの数々!!
 
3 森の子どもたち
4 子どもと楽しみたい自然

 には、実際に自分でも「自然観察会」をやってみたいと思っている人にはとても役立つヒントが満載だ!!
 なかでも著者のお薦めは「親子自然観察会」である。

 私は、現職時代から「親子」での自然観察会にこだわってきたが、子育てには最高のシーンであると考えている。
 もし、私に小さな子どもがいたら、わずかな時間でかまわないから親子で野山や公園を歩いてみたいものだ。
 そのことの繰り返しがどれだけ子どもの心や体の成長につながることか、年を重ねれば重ねるほど痛感するのだ。

 

 「親子自然観察会」は、一過性のイベントであってはならないと思う。
 この観察会をきっかけにして、親子でのコミュニケーションを図るだけでなく親子で自然に触れることの大切さを感じてほしいと願っている。(同書p80~81より) 

 他にも面白そうな具体的取り組みがいっぱい紹介されている。
 私が特に気に入ったのは
○歌って楽しむ自然観察「繭の抜け殻3兄弟」(同書p85より)
だ。
 そう言えば、オンラインで著者にヤママユガの抜け殻のことで教えてもらったことがあったような。その節はありがとうございました。
 
 「自然観察会」に興味があっても、実際に自分でやってみようと思ったら、はじめの一歩は誰しもちょっと躊躇してしまう。
「親子自然観察会」でも同様だろう。
 そんなとき、とっても参考になることが書かれていた。 
失礼だが、項目だけ引用させてもらう。くわしくは、ぜひ本書を手にとって読んでみてください。
 
  ○ 子どもとどう関わったらよいの? (同書p93より)

 ① 教えようと思わずむしろ子どもと一緒に遊ぶ気持ちで
 ② 問いかけと実物を説明の推進力にする
 ③ 大人にとってやっかいなものが子どもの遊び道具になる。

 

 最後にもうひとつだけふれておきたいことがある。
 すばらしい「写真集」が記載されていることだ。
 まず「写真集」を、そして本文を読んでからまたこの「写真集」を!!
 一枚一枚の写真が「物語」を語りはじめる!!

 私のお気に入りベスト3は
「落葉を使って首飾り」
「草笛に挑戦する2歳児」
「小学校の教室で3・2・1の合図で種子模型を飛ばす」

 さあ、こんな時期だからこそあまり人の集まっていない近くの野山で著者お薦めの「親子自然観察会」を楽しもう!!

 

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