【お薦め本】『竹取工学物語』(佐藤 太裕著 岩波書店)

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▼今年の春先に、しばし、前の竹薮で「竹」とつきあう機会があった。
 そんなカッコイイ話ではない。
 荒れ放題にしていた竹薮を、少しだけ片づけたのだ。
 ちょつとだけ「ポンコツ竹取の翁」を演じてみたのだった。
 あらためて、「竹」という「植物」を見ていると、なんか「凄いやつ」に思えてきた。
 その「竹」に関して、もっといろんなことを知りたい。
 それを教えくれる面白い本はないかとさがしていた。

▼そしたら、そのなかで出会ったのが今回の【お薦め本】である。
 まだ半わかりだが、あまりに面白いのでここであげてみることにした。

◆【お薦め本】『竹取工学物語 土木工学者、植物にものづくりを学ぶ』(佐藤 太裕著 岩波書店 2023.7.12)

 例によって、いつものように3つのお薦めポイントを先にあげておく。

(1)植物「竹」の凄さを、「構造力学」の視点で解明してくれている。
(2)身近なモノを、ちがった切り口で「科学する」面白さを伝えている。
(3)「常民の科学」の凄さと「これから」を語っている。

▼では蛇足にならない程度に、少しだけ詳しく
(1)植物「竹」の凄さを、「構造力学」の視点で解明してくれている。
  構造力学の研究者である著者の視点で、3つの「ふしぎ!?」を最初にあげてくれていた。
 すると現地で、竹を少しでも知る人にとっては至極当たり前なのかもしれませんが、穴と節、断面が丸ということしか認識していなかった私にとっては新しい発見がいくつもありました。そのうち、今後の研究に大きく影響を及ぼす事実が以下の三点でした。
(1)節と節の配置間隔(節間長)は縦方向に一定ではなく、根元(地際)と先端(梢端)付近で短く、中央部付近で長い 
(2)竹は円筒ではなく円錐形をしている
(3)竹を切って断面を見てみると、縦方向に貫く繊維(維管束鞘)の分布が断面内で一様ではなく、内側よりも外側に多く存在する
 (同書P21より)
はじめて聞けば、まったくシロウトの私には驚きの「事実」デアル。
 「なぜなんだろう!?」
 この謎解きを構造力学研究者の視点でみごとに展開してくれています。 
・竹の「節」がもつ力学的役割
・竹の「維管束」がもつ力学的役割
等など半わかりながら、ナルホド ソウイウコトカ と少しずつ読み進めていくと、思わず感嘆してしまいます。
 うまいことなっとるんやな!!
 竹ってなんて賢いんだ!!
 竹は凄い!!
 と。

(2)身近なモノを、ちがった切り口で「科学する」面白さを伝えている。
 「竹」に限らず、身の回りのモノたちについて、ちがった切り口で「科学する」ことの有効性・面白さを次のように語っていた。

 竹や樹木をはじめとする自然由来の植物を構造物に見立て、その形状や仕組みを力学的な観点からひもとくことは、長年にわたって植物たちが積み重ねてきた智恵を、私たちが獲得することにつながると思わずにはいられません。
 また、次世代で求められる自然と調和する構造物を開発していくために、自然との関わり方を誰よりも知っている植物たちに訪ねることは極めて合理的なアプローチであるといえるでしょう。さらに、植物そのものを力学的特性をうまく利用した材料として使用し、かつ日進月歩で進化する科学技術を駆使して材料としての機能を高めることで、植物は私たちの暮らしを豊かにするツールとなりえるわけです。(同書P74より)

 竹との「つき合い」をもう少し考えてみたいな!!
 このままでは少しモッタイナイ!!

▼最後のお薦めポイントに行きたい。
(3)「常民の科学」の凄さと「これから」を語っている。
第一章のタイトルはこうだった。
 「竹取の翁は優れたエンジニアだった?」
 なかなか興味深い作業仮説の導入である。
 「野山にまじりて、竹をとりつゝ、よろずの事に使ひけり」というのであるから、これが教えてくれるように

我々の祖先は科学や工学が発達する以前の遙か昔から、竹の優れた構造・材料的性質を「経験的に」認識し、生活のさまざまな場面で利用してきたのではないか、と想像されます。現代に生きる私たち日本人が何気なく使う竹の心地よさを、竹取の翁も感じていたのかもしれません。(同書P4より)

 竹取の翁も「経験的」に認識していただろう先人たちのすぐれた智恵と技術!!
 そこから生まれた科学、それを私は勝手に「常民の科学」と呼びたい。
 それらは営々と引き継がれ今日にいったっている。
 それらは、「これから」の科学技術のあり方についても大きなヒントを与えてくれている。
 研究領域は私が把握しきれないほどに広がり、細分化されてきていますが、研究者それぞれの専門領域から植物を深く洞察したときに知りうることを共有できれば、学術の大きな世界が開けてくるのではないでしょうか。研究は研究者のためだけにあるのではなく、一般の方のものでもあります。科学という範疇に入っていないと皆さんが思われるような、経験的な知見や発想もまた貴重で、こういったことを科学者と共有することも大きな価値があると考えています。土木工学、機械工学の視点から植物を見るということは、通常ではないことかもしれませんが、皆さんもご自身の専門や得意分野から、関係なさそうな別のものを眺めてみるときっと面白い気づきがあると思います。
 (同書P105より)

 もういちど、ヤブ蚊の出てくるまでに竹薮をのぞいてみたくなってきた。

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【お薦め本】『ファラデーのつくった世界!』(藤嶋昭・落合剛・濱田健吾著 化学同人)

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「中学校理科」はファラデーで決まりだ!!

 長年中学校で「理科の授業」を続けて来た人間の確信だった。
 「ここでもやっぱりはじまりはファラデーか!!」
 何度、そう思ったことだろう。
 最近、いや「中学校理科」だけではない。
 ファラデーは私が思っていた以上にもっともっと凄いのかも知れない!?
そう思わせてくれる本に出会った。

▼それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『ファラデーのつくった世界! ロウソクの科学が歴史を変えた』(藤嶋昭・落合剛・濱田健吾著 化学同人 2024.4.1)

いつものようにお薦めポイントを3つあげておく。

(1)ファラデーの仕事の全貌が見えてくる。
(2)ファラデーのやった実験を豊かな動画で楽しめる。
(3)「これから」の科学のヒントがここにある。

▼では少しだけ詳しく語ってみる。
(1)ファラデーの仕事の全貌が見えてくる。
 4つのPARTから構成されていた

PART1 ファラデーってどんな人?
PART2 ファラデーとその発明・発見:現代にどう影響しているか
PART3 ファラデーと彼をとりまく科学者たち
PART4 実験「ロウソクの科学」の感動を再現する

これまでのファラデー本の「総集編」の様相を呈していた。
ともかくファラデーのことならなんでもふれてあった。 
最後に「参考文献(P132)」がまとめてあるのもアリガタイ!!

個人的には、たいへん興味を持ってきた「ファラデーの日誌」についてもふれてあつた。

一般的に実験ノートには、日々の実験について方法や結果などを記録して残しますが、ファラデーのノートはひと味ちがいます。彼は、研究に関して実験方法や結果以外にも、たとえば結果に対する考察や次の実験の計画、結果の予想、先行研究などの報告についても書きこんでいます。また、それぞれの段落は短文をまとめ、通し番号をつけていました。番号をつけることでデータが整理され、表やグラフを作成するときに出典をわかりやすくできたことでしょう。このように、彼の実験ノートはただの実験記録ではなく、論文の下書きような完成度となっていました。(同書P18より)

なんかファラデーの「仕事ぶり」がわかるようで、学ぶところ大ですね。
他に巻末にある
「ファラデー年譜」
「ファラデー自身の研究と関連したテーマでの金曜講演会」
「ファラデーが世話した講演会」
「用語解説」
等など たいへん興味深い情報が満載である!!


(2)ファラデーのやった実験を豊かな動画で楽しめる。
 これがこの本の最高のお薦めポイントかも知れない。
PART2 9編
 PART4 27編
 合わせて36編もの実験動画(YouTube)が、楽しめるのである。
特に
PART4 実験「ロウソクの科学」の感動を再現する
においては、今すぐ居ながらにして
「ロウソクの科学」6講を追体験できるのである。
   こんなうれしいことはない。最高だ!!

▼最後のお薦めポイントに行こう。

(3)「これから」の科学のヒントがここにある。
 特に今回、これまで思ってきた以上に「ファラデーは凄い!!」と思ったのは、

PART2 ファラデーとその発明・発見:現代にどう影響しているか
  
 を読んでからである。
 今さらながらはじめて知ることも多く、ファラデーの「仕事」が、現代の最先端の「科学」とどうツナガッテイルかを知った。
 どうやら、「これから」の科学ともツナガッテイクようにも思えてきた。
 最後にあの「ロウソクの科学」の最終講におけるファラデーの言葉が引用してあった。

 “若いみなさんに伝えたいのは
 「きたるべきみなさんの時代において、
  ローソクのようになってほしい」
 という私の願いです。
 すなわち、みなさんの行動すべてにおいて、
 人類に対するみなさんの義務の遂行において、
 みなさんの行動を正しく、
 有益なものにすることによって、
 ロウソクのように世界を照らしてください。”
(同書P123より)

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【お薦め本】『熊楠さん、世界を歩く。 冒険と学問のマンダラへ』(松居竜五著 岩波書店)

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▼私は、ずいぶん昔になるが、次なる拙い文章をある教育雑誌に書いたことがある。

 

◆「南方マンダラ」にこれからの理科教育をみる (2010年3月)

  なにもわかっていないくせにエラそうに!?
 今、読み返してみると恥ずかしいかぎりである。
 でも、やっぱりそれは「正しい」のかも知れない!?
 と思わせてくれる本に最近出会った。

▼それが、今回の【お薦め本】である。

◆ 【お薦め本】『熊楠さん、世界を歩く。 冒険と学問のマンダラへ』(松居竜五著 岩波書店 2024.03.14)  

いつものようにお薦めポイントを3つに絞る。
3つは相互に関連し、同じことにツナガッテイルが、前後しながら私の理解した範囲で紹介してみたい。 

(1)焦点化されたテーマで、世界を「楽しむ」熊楠像を描く!!
(2)とても平易なわかりやすい文体で、誰もが読みやすい!!
(3)南方熊楠の世界を追体験(共有)してみたくなる!!

▼では、ひとつずつ行こう。
(1)焦点化されたテーマで、世界を「楽しむ」熊楠像を描く!!

 ちょっとこれまでの「熊楠」本とちがうニュアンスを抱かせる本だった。
 「はじめに」の文章を読むうちに、そのわけがわかってきた。

 この文章をからわかるのは、熊楠さんが何よりも「楽しさ」というものにこだわった人だということだ。そもそも熊楠さんは世間的には「博物学者」と呼ばれているけれど、何をしたかと聞かれると、ひとことでは言い表せない。生物学者であり、民俗学者でもある。さらに歴史や文学、人類学や生態学など。今の学問で言えばとても「学際的」にいろいろな分野にまたがった研究をしていた。だから、熊楠さんのことを理解するのは難しいと、これまではかなり長い間、信じられてきた。
 しかし、熊楠さんという人は、宇宙のすべてを対象としながら、「楽しさ」のために学問をしている人だと考えれば、とてもわかりやすいところがある。熊楠さんにとっては、学問的な制度や分野や枠組みは二の次だった。その時、その時の、自分の好奇心がおもむくままに、楽しみを宇宙から「心」に取り入れていただけだ。そういう意味からは、世間の評価とはうらはらに、実は「楽しさ」のみを追い求めた、とても理解しやすい人だったと考えた方がよいのではないだろうか。
 筆者の考えでは、熊楠さんという人は、「子どもの眼」とでもいうべき純粋な好奇心を、一生にわたって持ち続けた人だ。熊楠さんの言っていることは、虚心坦懐に見れば、いつも当たり前の疑問からストレートにものごとをとらえた結果、生じたものであるように思える。そのため、こちらの方も学校で習ったり、インターネットで調べたりした生かじりの常識的な知識を捨てて向き合うと、熊楠さんのやっていることの整合性に納得がいく。
(同書 「はじめに」Pⅶより)


 ナルホド!!納得である。ダカラか
 さらに、この本の意図を次のように語っていた。

 この本では、顕彰館を中心とした一次資料を十全に活用した上で、熊楠さんの内側からの視点を読者が体感することを目的としている。熊楠さんの見た世界を、まるで自分の中で繰り広げられるように感じてもらいたいというのが、筆者としてのちょっと高望みかもしれない願いだ。そのために「図鑑」「森」「生きもの」という三つのキーワードを設定してみた。熊楠さんが関心を持ち、世界の不思議を追い求めていった出発点が、そこにあるからだ。(同書「はじめに」Pⅷより)

 それに呼応するように三つのキーワードに焦点化し、3部構成となっていた。
第1部 熊楠さん、図鑑の世界に目覚める
第2部 熊楠さん、世界の森をかけめぐる
第3部 熊楠さん、生きものを見つめる

「熊楠さん」研究の第一人者である著者が案内してくれる「熊楠さんの世界」は最高に楽しい!!

 

(2)とても平易なわかりやすい文体で、誰もが読みやすい!!

 実は、これこそがこの本の最大の特色であり、最高のお薦めポイントかも知れません。
本のタイトルからして、親しみを込めて『熊楠さん、世界を歩く』となっていますよね。
 この本の中では「熊楠さん」は、始終一貫しています。
 この本のスタンスの意思表明が、早い段階でしてあった。

 「はじめに」でも述べたことだけれども、熊楠さんが書いた原文はこんなふうに、今の読者から見るとやや読みにくい文語体で書かれている。そこで、この本では熊楠さんのことばの引用に関してはすべて、手軽に意味を読み取ることを重視した現代語訳で通したい。(中略)
 こんなこんなふうに、エッセイ調のくだけた内容のものについては軽く、論文調の堅いものに関してはやや重厚に、あらたまった手紙の場合はていねいに、筆者の印象に沿って意訳していきたいと思う。熊楠さん以外のものでも、近世以前の文章は基本的にこれに準じることとする。
 もしかしたら、この文体だと一般的な熊楠さんのイメージとは少し異なっていると感じられるかもしれない。ただ筆者としては、「はじめに」で述べたような、この人が生涯持っていた「子どもの眼」を活かすことを優先したい。そこで、そういう誰の中にもある「内なる熊楠さん」を意識した訳し方をしていきたいと考えている。(同書P4より)

  スバラシイ!!大賛成デアル。
 また、「ボク」へのこだわりもたいへん気に入った!!

 そこで、この本での熊楠さんの主な自称を「ボク」とした。これは当然ながら賛否両論があるだろう。人によっては「こんないい子ぶった熊楠なんかイヤだ」と言われるかもしれない。そうした批判も、筆者として甘んじて受けるつもりだ。ただ筆者としては、熊楠さんと自分とを結ぶ最短距離にあるのがこの一人称だった。そして、子どもの頃から晩年まで一貫して自分の興味関心に忠実であり続けたこの人物のストレートな性格を表現する際には、やはりこの選択が最適だと思う。(同書「おわりに」P208より)

この本が、なぜこんなにも読みやすく面白いのか。わかる気がするのだった!!
 ホンモノはわかりやすく面白い!!

▼では、最後のお薦めポイントに行こう。
(3)南方熊楠の世界を追体験(共有)してみたくなる!!

 あの「知の巨人」の世界を追体験するなんておこがましい話だ。
 しかし、この本に書かれた「熊楠さん」の世界なら、ちょっと覗くぐらいなら、私にもできかも知れない。そう思わせてくれるのがうれしい!!
 私にとってのこの本の「本命」は、この章にあった。

14 「南方マンダラ」の構想からエコロジー思想にたどり着く 

これまでの「冒険」と「学問」のマンダラはここに集約されていた。
 これまでの各章はここへの序章に見えてくるのだった。
 「萃点」は、ここにあった!!
 この文脈のなかで、「南方マンダラ」とは
 引用させてもらいはじめたら、きりがない気がする。
 それこそ「蛇足」というものだろう。
 
 と言いながら、やっぱり少しだけ引用させてもらおう。
 なんと優柔不断な性格なんだろう。(自分でも呆れる)

 熊楠さんは、「南方マンダラ」の一本一本の曲線は「事理」を意味していると説明している。それはつまり、一つの原因には一つの結果があるという、近代科学の「因果律」と呼ばれる原則を基礎として、自分の世界観を描こうとしたということだ。その無数の因果律は宇宙のすべてを貫いているから、それを一つひとつ解きほぐしていくことで、人間の考えの及ぶ範囲でならば、どんなことにもたどり着けるということになる。
 それらの因果のみちすじ同士は、それぞれ時には偶然に近づいて、お互いに干渉し合ったりもする。そのことによって、熊楠さんの用語によれば「縁」が生まれ、それが「起」となって新たな因果を生みだす(図14-2)。だから、ここに描かれた複雑な世界は、さらに高次元の複雑な現象を引き起こし続けているということになる。そのようにして世界の中でさまざまなものごとが止むことなく、終わることなく進行していくようすを、熊楠さんは「不思議」という名でも呼んだ。学問とはその「不思議」を解き明かしていく作業ということになるだろう。(同書P177 より)

 そして「萃点」についてはこうだ。

 「南方マンダラ」の中心付近には、多数の線が交錯する場所に(イ)と記されている。この(イ)のような、さまざま地点とつながっている点のことを、熊楠さんは「萃点」と呼んでいる。ここから世界の考察を始めることができれば、多くの地点に素早く達することができる。つまり、学問的な観点から言えば、世界の全体が理解しやすい地点ということになる。ものごとを手早く知ろうとするならば、萃点を押さえるのが近道だ。(同書P178より)

 
 これが、なぜこれからの「理科教育」と関係あると思ったんだろうか!?
 その話は、また別の機会にしよう。

 ともかくこれまでとはちょっとちがった「熊楠さん」の世界を存分に楽しめる本だ!!
 久しぶりに「熊楠さん」を訪ねて行きたくなってきた。
 

 

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【お薦め本】『ウマは走るヒトはコケる 歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学』 (本川達雄著 中公新書)

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▼私は、糖尿病対策と「ひとり吟行」をかねて、基本的に毎日きめた歩数以上「歩く」ようにしている。
 ちょっと天気の悪い日などがつづいて、「歩く」のをさぼっていると、体調悪く感じてしまう。また目を悪くしてしまい、車で移動することがなくなってしまっていた。
 そんなこともあって、最近「歩く」にとっても興味を持っていた。

▼そんなとき、あの名著『ゾウの時間 ネズミの時間』の著者が、とても興味深いタイトルの近著を出しておられるのを知った。
それが今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『ウマは走るヒトはコケる 歩く・飛ぶ・泳ぐ生物学』 (本川達雄著 中公新書 2024.2.25)

 最初から正直にことわっておく。
 いつものことと言えばそれまでのことだが、ポンコツ頭の私には、この本の内容をまだよくわかっていなかった!!
 それなのになんで【お薦め本】にあげるのだと言われれば困ってしまう。
 でもやっぱり【お薦め本】にあげておきたかった。
 それはなぜだろう!?
 自問自答しながら、これを書いている。

 いつものように、【お薦めポイント】3つをあげておく。
 やや的外れという気もするが

(1)動物の「動く」を「力学」で読み解く!!
(2)アタリマエに見えていた動物の「動く」に感動する!!
(3)私の「動く」を科学してみたくなってきた!!

▼私が理解できる範囲でということで、ポイントひとつずつみていこう。
 
(1)動物の「動く」を「力学」で読み解く!!

  動物の「動く」をこのように理解していた。
 だから「はじめに」の冒頭の文にはうんと納得できた。

 動く物と書いて動物。動物の最も動物らしいところは動くところだろう。餌を求めて出歩く、逆に餌にされそうになったら逃げる。時節になれば異性を求めてうろつく。季節ごとに棲みやすい環境を求めて長距離の渡りをするものもいる。サンゴやフジツボのように海底に固着している動物でも、幼少時代には大海原を移動して棲息場所を広げている。
(同書「はじめに」ⅰより)

 その「動く」をより豊かに語ってくれるのだろうと期待していた。
 ところが、正直言ってページめくるたびに仰天してしまった。
【コラム】には
・テコ  
・ニュートンの運動の法則
・運動量保存則とフルード効率
等々
 本文にも「流体力学」「連続の原理・ベルヌーイの原理」「抗力と流線形」等などごくアタリマエにでてくるのである。
 物理・力学などあまり得意でない私は面食らってしまった。
 そりゃそうだけど!?
 なんだろうこの違和感!!
 ちょっと期待を裏切られた気分でいた。ポンコツ頭の私には「力学」と「生物学」は別々の引き出しにしまれていた。(たいした「知識」ではないが)
 しかし、最後の最後に、「おわりに」書かれたこの本の本意を読んだとき、この本がやっぱり【お薦め本】でまちがいないと思いだした。
 少し長いが引用させてもらう。

 子供は生きものが大好きだし、小学校や中学校で目に見える生物のことを学んでいる間は理科生物分野という教科も好き。だが、中学三年でメンデル遺伝の法則という目には見えないものが出てきたとたんに生物嫌いが増える。
 重力や弾性力も見えないものだが、コケれば痛いしゴム製のパチンコの弾が当たればやはり痛い。これらの力は実感できるものなのである。だからそれらを使って説明すれば、自身の歩行や他の動物の動きも、そして動きの基礎になっている体の構造も、中学生なら実感を伴って理解できると筆者は思う。しかし重力や弾性力を中学物理分野できちんと学習した後でなければ、生物の授業でそれらを使った説明を行ってはいけないことになっている。そのため、動物の運動や、脊椎や肢の働きについて中学校ではきちんと説明されることなく、その状態のまま高校で分子生物学を学ぶことになる。
 日々の生活に密着した運動と「それを可能にするために体がこんなふうにできているんだなあ」という実感を伴った理解。これらは良い社会人になり、健康な毎日を過ごすためには必須の生物学上の知識・理解だと筆者は強く感じているのだか、それを得る機会が、初等中等教育のどこにもない。だからこそ本書を書いた。(同書P285より)

 (2)アタリマエに見えていた動物の「動く」に感動する!!
 そういうことか!!
 そのつもりになって本書を読み返してみると、ますます面白い!!
 今までのアタリマエが感動的に見えてくる。
 「ヘエー、うまいことなっとるな!!」
 「誰がこんなすごいこと考えたんや!?」
 「これぞ科学や!!」
などとひとり言を連発していた。
 変なところにも感動していた。

 歩く場合は肢を持ち上げて前に出す必要がある。肢が3本ならば、そのうち1本をもちあげれば2本肢で立つことになり、体は不安定になってしまう。肢が4本あれば、1本を持ち上げてもまだ3本は地面に着いており、この3本の肢の描く三角形から重心がはずないようにしながら肢を踏み出せば、体が不安定になることはない。4本肢とは静的安定を保って歩ける最低の本数なのである。実際、どの四肢動物においても、非常に遅く歩く場合には常に静的安定を保ちつつ進む。(同書P15より)

 おおっ、これぞ「立春の卵」の力学ではないか!!
 こんなのもあった。

結局、歩行においては重心を上げて重力位置エネルギーを蓄え、次に重心を落下させて蓄えた位置エネルギーを運動エネルギーへと転換して重心を前へと押し進め、さらにこの運動エネルギーを使い重心を再度押し上げて位置エネルギーとして保存し、またこれを次の一歩に使う。こうして重力位置エネルギーと運動エネルギーを相互に転換することにより、エネルギーを再利用し、輸送コストを節約しているのが、倒立振り子のように肢を振る歩行である。(同書P56より)

  このように、きわめてアタリマエのことも、「力学」で科学してもらえば、うんと納得がいくのである。    
やがてこの本のタイトル『ウマは走る ヒトはコケる』の意味も少しずつ見えてくるのだった。
 私は、なかでも特に興味をもった動物の「動き」 は「飛ぶ」である。

 鳥の体には飛ぶためのさまざまな工夫が見られる。(1)体の軽量化。(2)強力な飛翔筋とそれを支える骨格系。(3)効率の良い翼を形成する羽根(羽毛)。羽根はまた高空を高速で飛んでも体が冷えないよう、体温を高く一定に保つ役目もはたす。鳥の体温は40~42℃と哺乳類よりも高い。飛ばないダチョウの体温は哺乳類と同じであり、高い体温は飛行に必要な高い代謝率に寄与している。(4)高い代謝率を保てる効率の良い呼吸系。これにより飛翔筋への大量エネルギー供給が可能になっている。(同書P209より)

 繰り返し出てくるコトバは「うまいことなっとるな!!」ばかりだった。 
 これぞ「進化」のなせるデザインなんだろうか。
 この本を読んだ後、毎日見ている鳥たちの「動き」が気になってしかたない!!
 鳥たちはやっぱり超すごい!!

▼最後のポイントにいこう。 
(3)私の「動く」を科学してみたくなってきた!!
 最初に述べた私の「動く」に関連して、とても興味をもった章があった。
 それが、第4章「車輪」である。
 「自転車」を褒めているのだった。
 

 車輪の悪口を言ってきたのだが、こうして舗装道路を張り巡らしてしまったのだから、せめて排気ガスを出さない車輪を大いに使おうではないかという議論をしたい。

 自転車を褒めたいのである。自転車はなんと言っても効率がいい。海から陸上に上がってしまつた動物では、一番力を使うのは体を持ち上げておくところ。歩行・走行の垂直成分(体を持ち上げる力)は水平方向(推力)の8倍。それほど体を持ち上げるのには力が要り、それにはエネルギーを使う。その分がないから自転車は楽に進めるのである。(同書P106より)

 話は徹底していた!!
 これがまた面白いのだが、このあと「自転車の歴史」へとつづくのだった。
 そして、最後には著者の持論「自転車のすすめ」が登場するのだ。

 それに対して機械を使っていると言っても、自転車は自分が汗を流して動かすものである。風を受け、景色を楽しみ、きょうも生きているなあと感じられ、乗ること自体を目的として楽しむことができる。自転車ならば通勤は活動的行為となり得る。
 機械を使うとどうしても主役が機械になってしまう。それに対して自転車は機械というより、自分の手足の働きを助ける道具であり、主役は人間で、道具はアシスタント。現代の暮らしは過度に機械に頼り、機械に使われている感があるが、なるべく人を主役にして機械はそれをアシストするように使って、その分、機械のエネルギー消費量を減らすことを考えた方が良い。その観点からすると、自転車はまさに優等生であり、「アシスト自転車」という言葉は象徴的である。(同書P117より)

 大賛成デアル!!
 実は最初に言ったような事情で、自動車の利用がこれまでのようにいかなくなっていた。そこで、新しく「自転車」を購入していた。
 この「自転車のすすめ」を読んで、もっとこの自転車を利用しようと思いだした。
 えらく個人的な私の「動く」の話になってしまつたが。

 「歩く」を含めて、私自身の「動く」を楽しく科学してみたい!!

 

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【お薦め本】『まちぶせるクモ 網上の10秒間の攻防』(中田兼介著 コーディネーター辻 和希 共立出版)

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▼私のシロウト「クモ学」は、2013年7月に偶然にはじめてコガネグモの「狩り」を目撃したことにはじまる。急激に、「クモ」たちの「ふしぎ!?」に惹かれていった。
 いちばんの「ふしぎ!?」は、ずっと身近に一緒に生きてきたはずなのに、なぜこんなすごい生きものの「ふしぎ!?」に気づかなかったということだろう。
 待望の「クモはすごい」は、すでに書かれていた!!
 それが、前回の【お薦め本】だった。

◆【お薦め本】『クモのイト』(中田兼介著 ミシマ社)


▼あまりに面白かったので、著者・中田兼介先生の「クモ学」の本をさがした。
 あった!!
 それが、またまた面白かった。
 そこでつづけてになるが、次の本をぜひ【お薦め本】にあげたくなってきた。 

◆【お薦め本】『まちぶせるクモ 網上の10秒間の攻防』(中田兼介著 コーディネーター辻 和希 共立出版 2017.3.15)


 やはりお薦めポイント3つをあげる。
 今回も面白く学ぶところが多すぎて3つはむつかしかったが、あえてこうした。

(1)焦点化することにより「クモ学」の面白さをより豊かに語ってくれている!!
(2)本格的科学研究のすすめ方のヒントがここにある!!
(3)これがプロの「クモ学」のすすめだ!!

▼ポイントをひとつずつ少しだけ詳しく

(1)焦点化することにより「クモ学」の面白さをより豊かに語ってくれている!!
 まず、この本のタイトル・サブタイトルがとっても気に入っていた。
 『まちぶせるクモ 網上の10秒間の攻防』
「10秒間の攻防」についてはこうだ。

 10秒強ほどの時間で起きる。このクモとエサの攻防戦の舞台が、円網だ。そして本書は紙幅のほとんどを使ってこの10秒間を説明する1冊てある。(「はじめに」ⅶより)

 事実「もくじ」は次のようになっていた。
 1 まちぶせと網
 2 仕掛ける
 3 誘いこむ
 4 止める
 5 見つける
 6 襲いかかる

 次は「網上の」だ。
 著者は「網」にこだわっていた。

 クモが糸で建築する罠のことを「クモの巣」と呼ぶ人は多い。しかし、本来「巣」という言葉は、本来棲むところを指すものだ。確かにクモは自分の作った罠の上で暮らしている。だから、網のことを巣と呼んでも間違っているわけではない。しかし、網の最も大事な働きは、エサの動きを止め、クモが襲いかかるまで逃がさないよう、その場に留め置くことだ。こういう役割をもつ「巣」は、動物の世界では珍しく、特別な存在である。なので本書では、生物学者としての細部へのこだわりを発揮させてもらって、「クモの巣」の中で罠としての働きをもつものを「網」と呼ぶ。本書の中心テーマはこの「網」だ。(「はじめに」ⅴより)

 いいですね!!
 この「こだわり」に大賛成です。
 まったくのシロウトの私も「巣」には抵抗があり、「ネット」(ときにWeb)というコトバをつかってきていた。
 最後になってしまったが、メインタイトル「まちぶせるクモ」の「まちぶせ」である。
 「まちぶせ」について、「おわりに」のなかでこう語っていた。少し長いが、あまりに面白いので…。
 引っ込み思案なこともあって、待つことは習い性だ。子どもの頃は、家で友達が遊びに誘ってくるのを待っていることが多かった。生き物の生態や行動を調べるようになった今では、野外で動物が来るのを待ったり、実験条件が整うのを待ったりするのは日常茶飯事、待つのが苦にならないタイプでよかったとしばしば思う。
 そんな私がアリの社会を扱った博士論文書き上げた後、次の面白い研究テーマを探してぶらぶらしているときにクモと出会ったのは、天の配剤だったのかも知れない。それから20年、勤め先を三度も変えながら、曲がりなりにもクモの研究を続けてこられたのは、罠を仕掛けて誘いこみ一気に動いてカタをつける、彼女たちのまちぶせの巧みさに魅了させられたからだろうか、いや、辛抱強く機を待ち続ける彼女らの姿に何かシンパシーのようなものを感じていたからかもしれない。(「おわりに」同書P122より)

 こう言う著者のモノローグ風語りが大好きです!!
メチャクチャ納得である!!
 これで、タイトル・サブタイトル『まちぶせるクモ 網の上の10秒間の攻防』のすべてが浮き彫りになってきた。
 クモの世界をこのように焦点化することによって、その面白さをより豊かに語ってくれているように思った。
 私が最初にコガネグモの「狩り」を目撃して、「クモ学」に惹かれていったわけもわかるように思えてきた。

(2)本格的科学研究のすすめ方のヒントがここにある!!
 きっとこの本のメインは、ここにあるのだろう。
 事実、この本を読み進めていくうちに、「さすがプロ!!」と驚き感動することが多かった。
 「科学研究」とは、こんな手順で進めるものであるのかと目から鱗であった。
 ナルホドと感心したところも多い。少しだけアトランダムにピックアップしてみる。

 このことから、クモの網の作り方を理解するには、ただエサを獲ることだけ考えていればよいのでなく、彼らが網を使ってどのように環境を認識しているか、という視点も必要だといえる。動物の世界では、食べることと知ることは分かちがたいことなのかもしれない。(同書P28より)

 実験には音叉を使った。ピアノの調律のときにカーンと鳴らす、U字型のあの道具だ。捕食者とは何の関係もなんの関係なさそうに思えるがさにあらず、造網性のクモは視覚が優れない代わりに振動には鋭敏に反応し、足場の揺れや、空中を伝わってくる揺れ(音のことだ)に対して優れた感覚をもつ(略)、そのため、音叉を鳴らして近づけてやると、クモは種によっていろいろの反応をしてくれる。自然観察会などで実演するのにちょうどよい題材である。(同書P38より)

 やっぱりそうか!!ゲホウグモが早朝より暗闇で「店じまい」するのを観察したとき、たしかに私もそう思った。今度から、これを使わせてもらおう。
 そこで私はあらためて先行研究を精査してみた。すると、実験的な手法を使って確実な得た研究では、おびき寄せ説を支持したり対捕食者説を否定するものに直線上の白帯をつける種を対象にしたものはほとんどなかったのだ(中田2015)、やはり白帯は、形によって違った役割をもっている。では、直線上の白帯はどんなメカニズムでクモの安全性を高めているのだろうか?この答えはまだわかっていないが、クモの上下に伸びる目立つ白帯が、クモのいる場所をわかりにくくさせている。というのが1つの可能性だ。(同書P46より)
 
 「先行研究」の精査、仮説立て、可能性の追求!!
 科学研究は、いつも直線的とはかぎらないんだ。それが醍醐味でもあるのだろう。
 ここでも、やはり著者の魅力は等身大の語り口調だった。
 クモの行動の研究というのはおよそ世間の役には立たないものだ。そんなわけで、私の研究生活は、あふれる予算とは無縁である。役に立つ学問分野のようにはいかない。そんな私の支えがホームセンター、安価な家庭用グッズをどうやって実験・調査に利用するか考えながら、消費文明の権化ともいえる商品棚の間を歩き回る至福の時だ。たとえば、私は小さなクモを生きたまま手術することがあるのだが、そのときに使う保定用具は…(同書P61より)

 およそ生き物が秩序立ったことをしているとき、どんなささやかなことに見えても、そこには何か意味があるはずだ。一方、クモが網を引っ張っているという話は、何かで読んだこともなければ、誰かからも聞いたこともなかった。ということは、ひょっとして私はまだ世界で誰も気づいていないような新しい現象を発見したのだろうか?ひゃっほう?!(同書P73より)

 こんなの読んでいると、こちらまでうれしくなってきますね!!
 ますます著者の大ファンになってしまいますね。
 いやいや、まだまだこんなものではなかった!!
  いやしかし落ち着け、クモが網を引っ張っていることにこれまで誰も言及していないのには、まったく別の可能性もある。重要な生物学的意味がないので、わざわざ記述するまでもない。という可能性だ。このがっかりするようなシナリオを潰すためには、現象をみつけて喜んでいるだけではダメだ。その役割をちゃんと明らかにしなければ。(同書P74より)

 このあとのみごとな論理展開!!
 クモたちにまけない持続的「まちぶせ研究」!!
 ポンコツ頭の私には、すぐには理解できぬほどのするどい「クモ学」研究!!
 「クモ学」は総合科学研究だ。

 最後に著者が「おわりに」の末尾に書かれた文章を引用させてもらおう。

 こういうスタイルは、生物学の教科書を書き換えるような大発見にはつながらないかもしれない。私が、ギンメッキで見つけたことも、また射程が広くないからだ。しかし、よく考えてみれば、私は元々、大きな発見をしてやろうとかの野心を持ち合わせてこの業界に入ったわけではない。ただ自分と違う他者のことを理解したいと思うだけだ。だから別に教科書を書き換えられなくったって、一向に構わない。個々の生き物の理屈がわかるようになる。これこそが、生物を対象にした学問の醍醐味だろう。そう思って、私は明日も網の前に座って、何か面白いことは起きないかな、と待ち続けるのである。(同書P124より) 

 
 この本は、本格的に科学研究をすすめるヒントをくれるだけでなく、研究のモチベーションをうんと高めてくれるのである。
 
▼最後のお薦めポイントに行こう。
(3)これがプロの「クモ学」のすすめだ!!
 このポイントを、コーディネーター役の辻和希さんが「アマチュア研究家に薦めたいクモの行動生態学へのガイド」なかでうまく語っておられた。
 小中高校の理科の先生には、本書をぜひ読んでもらいたい。クモのようなそこかしこにいる小さな生き物を、ホームセンターで買える程度の簡単な道具を使い、知恵を絞って実験や観察をすることで、先端科学的な研究ができるというのは、教育現場において魅力的でないだろうか。本書は小中高校の教育現場で、たとえば夏休みの自由研究やスーパーサイエンスハイスクールでの生徒の研究などのよい参考教材になると思う。(同書P132より)

 まったくの同感である!!
 そして、なにより、これからの私のシロウト「クモ学」の最高の参考文献になることはまちがいなかった!!

 さあ、今年はどんなクモの「ふしぎ!?」との出会いがあるのかな!?
 楽しみだ!!

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【お薦め本】『クモのイト』(中田兼介著 ミシマ社)

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▼私のシロウト「クモ学」は、偶然にも2013年の夏にコガネグモの「狩り」を目撃したことによってはじまった!!
 それまで、ことさらにクモの存在すら認識したこともなかった。いや、無意味に「いやなヤツ」ぐらいの認識があったかも知れない。
 しかし、このときをきっかけにコガネグモ、ゲホウグモ、ジョロウグモ等などこんなに面白くて「ふしぎ!?」生きものが、一緒にに暮らしていることを知った。
 知れば知るほど「ふしぎ!?」がふえてきて面白かった!!
 誰かはやく『クモはすごい』を書いて欲しいと願いつづけていた。

◆「クモ学」のすすめ


▼私は間違っていた!!
 やっと気づいた。
 私のアンテナが低くなっていただけだった。
 すでに待望のその本は出版されていた。それが今回の【お薦め本】だった。
 
◆【お薦め本】『クモのイト』(中田兼介著 ミシマ社 2019.9.26)

待望のこの本は、期待以上に面白かった!!
あまりに面白いので、いっきょに読めた。
お薦めポイントもいっぱいありすぎて、いつものように3つにしぼるのはむつかしかった。
でも、やっぱり3つにしておこう。

(1)私の「クモ学」の世界をより豊かに面白くしてくれた!!
(2)等身大のユーモアたっぷりの語り口調がうれしい!!
(3)今年のクモたちとの「出会い」を楽しみなものにしてくれた!!


▼では少しだけ詳しくなかみにふれてみましょう。

(1)私の「クモ学」の世界をより豊かに面白くしてくれた!!
 少しだけといっても、60歳台になってからはじめた「にわかファン」とちがって、本格的な専門家です。
 「へーそうだったのか!!」と驚きナットクすることばかりだった。 
 当然、シロウトの私のレベルとはちがうが、共感できるところも多かったです。
 たとえばこうです。

 クモの魅力とは何でしょう?クジラのように大きくもない。鳥のように美しく鳴くわけではなもない。イヌのように懐くわけでもない。魚のように美味しいわけでもない。クワガタのようにカッコよくもない。
 私が思うに、クモの魅力は、その賢さと複雑さにあります。クモは他の動物を襲って生きている捕食者です。うまくエサを捕らえるために、糸を使ってワナを仕掛けたり、オトリを使っておびき寄せたり。多彩な技を繰り出すために、経験から学び、未来を予測して柔軟に生き方を変えていきます。その様子を見ていると、クモに意図があるように見えてきます。この世界はクモの意図に満ちあふれているのかも。 
 そんなクモには、私たち人間と重なる部分もありますし、よく似ているようでまったく異質な部分もあります。ですから、ずっと見ていると、自分たち人間の生き方が決して唯一絶対のものでなく、実はいろんな可能性の一つに過ぎなかったんだと気づかされます。この信じて疑っていなかった世界が崩壊するような感覚を覚える瞬間は、一度体験すると病みつきです。私にとってクモの魅力はここにあります。(同書P7より)
 
 まったく同感です!!
 私も、ずっとこれが言いたかったです。
 でも、まったくのシロウトの私には、知識もコトバもなかったです。
 だから、『クモはすごい』をはやく誰かに書いて欲しかったのです。

 私のシロウト「クモ学」の世界は、自宅から半径数㎞の限られた範囲だけでのものだった。
 むしろ最も身近にこそ、その最大の「ふしぎ!?」があると主張していた。
 しかし、それは広い世界のことを知らなかっただけのことかも知れない。
 この本を読んでいると痛切にそう思い始めていた。
 例えばこうです。
 

クモ、日本人より先に宇宙を飛ぶ
 NASAというと、宇宙開発です。そして、クモと宇宙は切っても切り離せない関係にあります。なんといっても、これまで十六個体のクモが宇宙旅行をしているのです。ちなみに宇宙を飛んだことのある日本人は二〇一九年時点で一二人しかいません。
 クモが最初に地球の重力のくびきを離れたのは、日本人に先駆けること二十年近くなる一九七三年のことでした。(同書P27より)

 「重力」のことは意識したことはあるとは言え、「宇宙」のことまで考えていなかったです。いつも下向きにネットに待機して「狩り」をすることは観察により知っていても、「重力」と関係を深く追求することはなかったです。
 関連して、こうも教えてくれています。

 クモの世界の大法則が成り立つのは、下のほうがエサをとるのに都合がよいからです。私たちは重力のある世界に棲んでいるので、上へのぼるより下へおりるほうが速く移動できます。ですから、クモは下にかかったエサを捕まえやすいのです。
 私たちが商売するとき、お客さんがよく来る場所には大きな店を開くように、クモもとりやすい方向に網をひろげているわけです。下を向くのも同じ理由で、エサがとりやすい下を向いてあらかじめ好機に備えています。(同書P79より)

 なんというアタリマエ!!
 もっと驚くのはこのアタリマエにさからうクモもいるという!!
 ことさように、専門家だからこそ知るうんちくが次々と出てくる。
 それが実に面白い!! 
 私がこれまで知っていた「クモ学」の世界をどんどん豊かにふくらませてくれるのだ。
 いっぱいその具体例がありすぎて、ほんとうにきりがないが、もうひとつだけ例をあげておく。
 クモ流、おびき寄せの術
 クモはただ網を仕掛けてエサが来るのを待ちぶせる受け身一辺倒の生き物ではありません。エサをだまして、おびき寄せることもこともします。クモの網は、材料の糸がとても細く、光をあまり反射しないようになっているのに、その中心部には、いろいろな形の、糸でできた目立つ飾りがついていることがあります。
 この飾りを作る糸は、たて糸とも横糸とも性質が違っていて、昆虫が見ることのできる紫外線を中心に、光をよく反射します。一説によると、この目立つ飾りとクモのからだの色や模様があいまって、私たちほどに目のよくない昆虫からは、花のように見えるのだそうです。ハチのような昆虫はこの偽物の花に引き寄せられていきます。そして、ハッと気づいたときはすでに遅し、網にぶつかってしまいます。(同書P81より)

 ずっと「ふしぎ!?」に思ってきた「飾り=隠れ帯(今はあまり使わないコトバらしい)」の謎解きもしてくれているのです。やっぱり「クモはすごい」デス!!
 

(2)等身大のユーモアたっぷりの語り口調がうれしい!!
かつて延原肇先生(高校教師・生態学者)は言った。
「ミミズの身になってミミズをみる」と。 
それを合点的に肯定できる一言だと、あの庄司和晃先生は絶賛していた。
この著者は、最後の最後にこう書き記していた。

 クモを見ていると「何を考えているんだろう」と思います。人間を見ているときに考えるのと基本的に同じです。経験で変わり未来を予測する、柔軟で複雑な心があります。本当か?と問い詰められると、うううと困ってしまうのですが、ともかく眺めているとそう言いたくなる気持ちを抑えられません(動物行動学では、対象を人になぞらえて理解しようとするのは抑制的であるべきとされていて、私もその意味はよく理解できるのですが、一方で人間が世界を理解するやり方とはそういうものであろうとも思います)。本書のタイトルは、そんなクモの心を「イト」=「意図」として表現しています。
 もちろん「イト」は、クモの最大の特徴である「糸」でもあるわけです。糸を世界に張り巡らせる。心のあるクモ。そんな二つの「イト」に満ちた世界を、健やかなまま息子の世代に受け渡せれば、この本がささやかでもその役に立てればな、と願っています。 
(同書P195より)

 著者の「イト」はみごとに成功しているようです。
 始終一貫して「クモの身になって、クモをみている」のです。
 それも、等身大のユーモアたっぷりの語り口調で書かれているからうれしいですね。
 とりわけ後半の
第5章 クモ的思考 その1 個性って?
第6章 クモ的思考 その2 コミュニケーション上手になりたい
第7章 クモ的思考 その3 不確実な世の中をサバイバルする
 が面白いですね!!


▼最後に行きましょう。

(3)今年のクモたちとの「出会い」を楽しみなものにしてくれた!!
 正直に言いますと、最初にコガネグモの「狩り」に出会ったときのような新鮮な感動がうすれてきていました。
 最初は「こんなスゴイやつたちと一緒に暮らしてきたんだ!!」と、会う人ごとに熱く語っていました。
 ところが、最近ちょっと…!?
 著者はちがいました!!著者の「クモ愛」は徹底していました。
 こんな調子で語りかけてくれていました。
 

やっぱり親愛なる隣人
 ということで、もしもクモがいなくなったら、この世界は大きく様変わりしてしまいます。私たちの日常生活では、クモの存在が意識にのぼってくることはあまりないかもしれませんが、そこはやっぱり親愛なる隣人なのです。
 私たち人間とはまったく違う進化の道筋を経てきたクモ。その生きる論理には、私たちと大きく重なる部分も大きく違う部分も両方あります。
 わかりあえることはないけれども、完全に異質というわけでもない。こういう存在が身近にいてくれるのは、とても素敵なことだと思います。
 もしもクモがいない世界になったりしたら、それはつまらないものだ、と思いませんか?
(同書P191より)

 この本を読んでいると「クモ愛」が復活してきそうです。
 例年よりはやくあたたかくなってきています。
 さあ、「親愛なる隣人」=クモたちもそろそろ活動を開始しているかも知れません。
 今年はどんな「出会い」があるのか、とても楽しみになってきました。

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【お薦め本】『科学実験 お楽しみ広場』(本間明信・小石川秀一・菅原義一 編集 新生出版)

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▼断捨離をすすめると決意しながらもなかなか進まないのが「本」の処理である。
 デジタル版も同時発売が多くなった今日では、「蔵書」のスタイルもずいぶんかわりつつあるのだろう。なかなかそこにはつけていけていないポンコツには、本の断捨離は難題中の難題デアルのだ。

 なかには、出版元の出版社がなくなってしまったような本は、貴重DBでもある。
 「記念碑的」役割もしてくれている。そして…!!

▼そんな一冊が、今回の【お薦め本】である。
 30年以上前の本である。 
 どこかの本棚のスミに眠っているかも知れない。
さがしてみる価値ある本である。 
 ひょっとしたら、古書店でみつけることができるかも知れない。そのときはぜひ!!


◆ 【お薦め本】『科学実験 お楽しみ広場』(本間明信・小石川秀一・菅原義一 編集 新生出版 1992.8.10)

 いつものようにお薦めポイントを3つあげる。

(1)「お楽しみ広場」の歴史がわかる!!
(2)定番実験の発展史がわかる!!
(3)「これから」の教材開発のヒントがここにある!!


▼では少しくわしくみていこう。
(1)「お楽しみ広場」の歴史がわかる!!
 ふりかえって見れば、科教協の「お楽しみ広場」でどれだけ多くのモノ、教材を「おすそ分け」してもらってきただろう。
 授業に使わせてもらってきたネタ(教材)も数限りなくある。
 あの「お楽しみ広場」は、いつごろどのように始まったのだろう!?
 本間明信さんは「まえがき 子どもたちがやってくる」のはじめに次のように書いていた。
 

科教協「お楽しみ広場」の起源は1977年の岩手大会の開会行事にあります。10m以上もある北海道の昆布やスッポンの骨格などが紹介されました。
 以来「お楽しみ広場」は全国の教師たちを集めています。最も新しい実験が紹介され、普通のルートで手に入らない材料がその場で安く買えました。やがて、教科書会社・教材会社なども情報を集めに来るようになって、かつて「お楽しみ広場」でしか手に入らなかったものが、「おもての」ルートでも手に入るようになりました。学校だけの必要ではなく、供給が需要をつくり出す日本全体の流通の大変化がその背景にあります。歴史のなかで、これほど情報の流れが速くなった時代もめずらしいのではないでしょうか。
 
さらにつづけてこうも書いていた!!
 そしていま、「お楽しみ広場」に異変が起きているように思われます。教師に広めようとした実験(もちろん授業で使う)紹介の場に、高校生、中学生、小学生がやってくるのです。教師が学ぶ前に子どもたちが直接見に来るようになったのです。これも一種の流通革命かもしれません。 (同書「まえがき」より)

 と書いたのは1992年!!
 30年以上前のことです。
 さて、その後「お楽しみ広場」は!?
 やっぱり「お楽しみ広場」にも「歴史」があるんですね。

(2)定番実験の発展史がわかる!!
 今度は「あとがき」に小石川秀一さんがこう書いていた。

 ここにあげられた実験は1991年5月に「科学教育研究協議会」のお楽しみが仙台を会場に行われた時のものです。全国の仲間が楽しい実験を紹介するために行われた集会での実験が中心です。当日の参加者の中には、小学生から中学生、一般の大人の方々の参加も多く見られました。(同書p162より)
 
 今や教科書、「科学の祭典」「お楽しみ広場」等々でおなじみのあの定番実験の1991年の「現在地」があがっているのです!!
 これは貴重なDB(データーベース)です。
 ではどんな実験があるのか。具体的にリストアップしてみましょう。
 69例あります!! 
 
(1)針金のペンダント 石のブローチ
(2)グンと高く飛ばそう二段式水ロケット
(3)サウナのような暑さを!
   木陰のような涼しさを ー金属は熱も反射する-
(4)2玉衝突実験器をつくろう
(5)鏡を使った不思議な貯金箱
(6)熱源の温度を測る
(7)巨大風車 ー2Kgのおもりを持ち上げるー
(8)エアー・フレッシュ ー真空調理器を使った実験ー
(9)鉄筋を使ってチャイムをつくる
(10)ポリ袋のエアマット
(11)液体窒素の実験
(12)ハンガーまわしてコインの曲芸 
(13)横笛づくり
(14)水爆 熱だんご
(15)液晶を使って熱の伝導を
(16)ドライアイスでつくる低温の世界
(17)黒板ふきクリーナーで人の乗れる
ホーバークラフトの製作
(18)巨大プリズム型水そう
(19)発電するから遅くなる ー渦電流を取りだすー
(20)モーターゴマをまわす
(21)ダイナミックな電磁石
(22)必ずまわる強力モーターの製作
(23)ふろブザーの利用
(24)ピッカリ・ブーブーテスター
(25)コンデンサーマイク
(26)大型発光ダイオードの利用
(27)水銀スイッチの利用とチャッカマンの改造
(28)圧気発火器
   ー断熱圧縮はディーゼルエンジンの原理ー
(29)電気のいらないカラオケマイク
(30)電気パンをつくろう
(31)なんでもスピーカー
(32)人間のはいれるシャボン玉
(33)大きなシャボン玉をつくろう
(34)酸素の発生
(35)簡易キップの装置をつくろう
(36)自然発火する鉄粉
(37)昔なつかし カルメ焼
(38)ミョウバンの巨大(?)結晶づくり
(39)なんでも還元
(40)ぜったい安全な水素の実験
(41)身近な食品などの環境調査
(42)くり返し色が変化する液体
(43)スライムを作ろう ー溶解教材としてー
(44) べっこうあめ づくり
(45)サンソから酸素・サンソから二酸化炭素
(46)固形アルコールの作り方
(47)塩化コバルト紙の呈色反応
(48)とけていく金属が電子を放す ー激しく反応がおこっているのはどちら?ー
(49)ニワトリの解剖 ーヒトとニワトリー
(50)たたきぞめではっぱのでんぷんをさがそう
(51)木の葉でブローチを作る
(52)パルプ100%ででんぷん検出
(53)なんでも蒔いてみよう ーなまけもののための簡単な水耕法ー
(54)ニンヒドリンを使ってタンパク質検出
(55)魚のつくりを調べよう
(56)虫あつめ いろいろ 
(57)わらばん紙を作ろう
(58)染色を楽しもう
(59)魚の背骨で骨の実験
(60)光る石のブローチを作ろう
(61)石をくだく
(62)きれいな砂をつくろう
(63)校庭の砂鉄を全部集めよう
(64)砂鉄から教室内で鉄を取り出そう
(65)鉄鉱石から鉄を 金属酸化物から金属を
(66)校庭の砂からガラスを作る
(67)雪雲の実験
(68)雲の発生
(69)双眼実体顕微鏡でみる

 あの定番実験はすでにはじまっていたのです!!

▼最後にいきましょう!!
(3)「これから」の教材開発のヒントがここにある!!
 最高のお薦めポイントがここにあります。
 定番実験のルーツを知るのはプライオリティだけの問題ではありません。
 その実験がはじまったときの「本意」を知っておくことは、授業で、あらたな展開を考えるときにとっても役に立ちます。
 小石川さんはこうも言っていた。

 4.実験をやって子どもの反応をぜひ、知らせてほしい
 実験には、材料の入手方法、実験のやりかたを詳しく紹介しています。そこで、実験をやった結果をぜひ知りたいのです。実験の工夫、手直しが可能になります。また、「発展」が生まれることでしょう。教師の工夫、創意です。もっとこうしたらよくなる、よくなった等の報告が、お互いの「発展」につながります。(同書p163より)

 この「呼びかけ」を裏付けるように各実験の執筆者の名簿が書いてありました。
  
それから30数年!!
 定番実験の「現在地」がぜひ知りたいですよね!!
 「これから」のヒントは必ずここにある!!

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【お薦め本】『石は元素の案内人』(田中陵二 文・写真 福音館)

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▼ちょっと恥ずかしい話だが、私は正直言って、ごく最近まで「青空」と「原子論」が頭のなかでつがっていなかった!!
「青空」のわけが「レーリー散乱」で説明ができても、それと「原子論」は別の話という認識だった。
 このアタリマエがなぜ!?

▼同じようなアタリマエが、認識できていなかったのでは!?
 そんなことを思わせるタイトルの本にであった。
 それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『石は元素の案内人』(田中陵二 文・写真 福音館 2024.1.10たくさんのふしぎ傑作集)

 月刊「たくさんのふしぎ」の傑作集として、このたび発刊された本書は実に面白い!
ぜひとも手にしたい一冊だ。
 例によって、お薦めポイント3つを最初にあげておく。

(1)「石」と「原子論」をツナイデくれる本だ!! 
(2)著者自らが撮った豊富な写真が美しくすばらしい!!
(3)徹底して、「元素」にこだわりつづける実験に感動だ!!

▼ではひとつずつ少し詳しくふれていきます。 

(1)「石」と「原子論」をツナイデくれる本だ!! 
アタリマエすぎるほどアタリマエのこと!!
 でもついつい抜けてしまっていること。著者は巻頭でそのことを再認識させてくれていた。

空や地面や自転車、あなたやわたし。パン、水、塩や砂糖、鉛筆、黒板、窓ガラス、草、木、犬やパソコン、そして空気。今あなたの目にうつるこの世界のすべてが、たった90種類の「元素」組み合わせでできています。
 元素とは、それ以上分けることのできないろ、目には見えない小さなつぶのことです。 (中略)
 どれもちがってみえる、この世界のあらゆるものが、ほんとうにそんなかぎられた元素からからできているのか? そもそも、この世界はほんとうに“つぶ”でできているのか? じつは、それをおしえてくれるヒントをにぎっているのが、石なのです。石をながめながら、いっしょに考えてみましょう。(同書P2より)

このコトバがすべてを語っていた。

・塩、鉱物の世界へ
・自然のなかから元素を集める
・元素の結晶たち
・この世界のもと (元素の周期表)
 次々と展開していく話はどれもすばらしい!!すごい説得力を持つ!!

著者の「原子論」へのこだわりは随所に見られた。 
一例をだけ引用させてもらおう。

 水晶にかぎらず、鉱物の結晶の種類により、となりあう面と面がつくる特徴的な角度はそれぞれきまっています。これを「面角一定の法則」といいます。結晶が、原子のあつまった精緻でくるいのない小さな小さなジャングルジムのつみ重ねでできている、わたしたちの目にも見える証拠です。(同書P21より)

 石(結晶)が、「原子論」を可視化してくれているのです!!
 アリガタイ!! 

 最後のページの作者紹介に次の一文があった。
「2023年、チームで発見した光る新鉱物「北海道石」が世界的な機関に新鉱物として認められ、この石の筆頭記載者、命名者となった。」
なに、あの「北海道石」の!!
なるほど、話の展開の仕方がうまいのも納得がいく。
授業の展開の仕方にも大いに参考になりそうである。

(2)著者自らが撮った豊富な写真が美しくすばらしい!!
 (1)のポイントと深く関係するが、ともかく話の展開がうまい!!
 誰にもわかりやすく説得力をもつ。
 すべての写真は著者の撮ったものだそうだ。
 文の展開に沿ったリアリティのある写真が多いのはそのせいだろう。
 写真はどれもとても美しくすばらしい。
 極めつきは巻末の「元素の周期表」だ。

この世界のもと 元素の周期表
 この周期表は、各元素を私が撮影した写真でつくりました。
周期表とは、すべての元素をならべて、にた性質のもので分類した表です。
およそ、原子ひとつのおもさの順番にならんでいます。
自然界は、92番ウランまでの90種の元素でできています。
 (43番テクネチウムと61番プロメチウムをのぞく)
原子番号93番以降の元素は、すべて人工的につくりだされた元素です。
 (同書p46-47 より)

 これは付録にしては豪華すぎる!!
 これを見るためだけで、この本を手に入れても損はしない!!


▼最後の3つ目だ。
(3)徹底して、「元素」にこだわりつづける実験に感動だ!!
 これが、ひょっとしたら最高のお薦めポイントかも知れない。
「自然のなかから元素を集める」が最高に面白い!!
・鉄をとりだしてみよう
・銅をとりだす(孔雀石から)
・ヨウ素をとりだす
 実験のあとこうまとめています。

 実験からわかるように、わたしたちの身近にある元素といえども、自分ひとりの力でとりだすのはそう簡単ではありません。それでも、やってみると過去の人びとの苦労が体験できます。そして、鉱物と元素のたしかな結びつきをかんじられます。自分で元素の結晶をとりだすのはおもしろいなぁ、とわたしは思います。(同書P35より)

最高に気に入ったのは
・原子になるまで割ってみよう(同書P36より)
岩塩(約2センチ)を繰り返し半分に割っていきます。
半分に、またその半分に…ずっとずっと写真が出ているんです。   
 これがとってもいいですね。!!
 そして、こう言います。
 もし、これを77回くりかえせば、ひとつのナトリウム原子とひとつの塩素原子の組にまで小さくできることでしょう。(同書P38より)

 半分21回まで写真をとっているから説得力ありますね!!
 「半分72回目ぐらいの大きさ」
 として、特別な電子顕微鏡の写真まであげているんですね!!
 この「こだわり」好きですね。

 『石は元素の案内人』にナットクです!!

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【お薦め本】『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(荒木健太郎著 ダイヤモンド社)

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▼「天気の変化」を科学する!!
 「○○」を科学する シリーズのひとつとしてはじめてみて、あらためて再認識しています。
 「天気の科学」は面白い!!
 私たちは、「大気の物理学実験室」のなかで暮らしています。
 空でも、身の回りの暮らしのなかでも、日々休むこと日替わりメニューの「物理学実験」が展開されています。
 それはとても「ふしぎ!?」で、面白く、美しいです!!
 
▼そんなことを思っているとき、この「天気の変化」を科学するのにとてもうれしい参考書に出会った!!
それが今回の【お薦め本】です。

◆ 【お薦め本】『読み終えた瞬間、空が美しく見える気象のはなし』(荒木健太郎著 ダイヤモンド社 2023.9.26)

 例によって、お薦めポイント3つをあげておく。

(1)「天気の科学」を身近に楽しむ方法がいっぱい紹介してある!!
(2)誰にもわかりやすく、楽しいイラスト・図が満載されている!!
(3)空をより美しく楽しむ工夫・アイデアがたくさん紹介されている!!

▼ではひとつずつ少しだけ詳細に行きましょう。

(1)「天気の科学」(気象学)を身近に楽しむ方法がいっぱい紹介してある!! 
 第1章「体感する気象学」のはじまりは、寺田寅彦の名随筆「茶わんの湯」を彷彿とさせるような「味噌汁で感じる雲のしくみ」の話からはじまる。
 そして、朝の「公園」、空の旅、お風呂場、一杯のホット珈琲 等々へ展開していく「気象学」はおみごと!!
 思わず、うんうんと頷いてしまう。(゚ー゚)(。_。)(゚-゚)(。_。)ウンウン
 著者は「まえがき」でこう語っていた。

  気象学を学ぶと、人生がより豊かになると私は考えています。
  空の現象の仕組みを知っていると、美しい空や雲の風景に出会いやすくなるだけでなく、突然の雨などに濡れて困ることが少なくなったり、災害から身を守ることにつながったりします。何となく「今日は雲が多いな」くらいに見えていた空にどのような名前の雲があり、今空がどうなっているのかがわかるるようになるーつまり「空の解像度が上がる」のです。(同書P007より)
 

また「おわりに」にも、同様にこう語られています。

 気象学は誰にでも開かれた学問です。私たちは常に天気に生活を左右されており、その天気を司る気象学を学ぶということは、私たちの生活をより豊かにすることです。 
 美しい空や雲に出会えたり、災害から身を守れたりしますし、少しの知識があるだけでふと見上げた空の解像度が上がる-気象学にはそんな側面があるのです。
 (同書P378より)

 繰り返して語られている著者のコトバを借りれば

 この著は、見上げた「空の解像度」を上げるための最高の参考書!!

 と言えると思います。

 次に行きます。 
(2)誰にもわかりやすく、楽しいイラスト・図が満載されている!! 
誰にもということは、ポンコツ頭の私にもということです。
 特に私が気に入っているのは、著者のこれまでの著でおなじみの「パーセルくん」をはじめとする「水蒸気」「氷の結晶」「積乱雲」等などのキャラクターが、しばしば登場してくれることです。
これまた「おわりに」の著者のコトバを引用させてもらうとこうです。

 十年ほど前までは、気象学の本といえば数式だらけものか、簡単な説明の写真集くらいでした。そのとき、まるで「気象学は崇高な学問なのだから、数学もできないなら諦めよ」といわれているような壁を感じて、どうにかその壁をぶち壊したいと思ったものです。
 そのような思いから一般書を何冊か執筆しましたが、「難しかった」という感想もいただきました。その後の私の著作はわかりやすさを重視して、『すごすぎる天気の図鑑』(KADOKAWA)シリーズで対象読者を小学校まで広げました。そこでも専門性は重視したものの、図鑑としてのわかりやすさを優先したために、一番書きたいと思っていた「体系的な気象学の理解」とは方向性が異なっています。

そこで執筆したのが本書です。美しい空の見つけ方、気象学の歴史、気象学者たちの奮闘や魅力的なエピソード、気象学がどのように発展してきたのか、そして、最新の研究はどこまで進んでいるのかを知ることで、より深く気象学を楽しめる本を目指しています。(同書 P375より)


 つまり著者は本格的な「体系的な気象学の理解」をめざす本にしたかったのである。
 著者の意図はみごとに成功しているようです。
 とりわけ第5章「感動する気象学」、第6章「天気予報はこんなにも面白い」においてめざしたことがみごとに具現化しているようだ。
 ここでも、やっぱりいちばん有効に働いているが「パーセルくん」たちの楽しいキャラクターたちだ。 
 「体系的な気象学の理解」を大いに助けてくれているのだ。

▼最後の3つめに行こう。

(3)空をより美しく楽しむ工夫・アイデアがたくさん紹介されている!!
 今回うんと参考になったのにスマートフォンによる空の写真についてです。
「空を美しく撮るために」(P124)
・美しい空にズームする   
・スマホで撮れるタイムラプス
・スロー撮影と稲妻
 等です。今までスマホで写真を撮っていなかった私は、これらを参考にさせてもらって、「これから」挑戦してみようかなと思っています。
 そして、ちょっと興味をもった取り組みが、2つ紹介してありました。
 

私は「#人間性の回復」というハッシュタグをつけて、SNSに地球の朝焼けや夕焼けの写真をたまに投稿います。とにかく美しく、疲れた頭と心が癒やされます。
 気象庁の静止衛星「ひまわり」の画像は、リアルタイムで国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)の「ひまわりリアルタイムWeb」というウェブサイトで公開されており、二〇一五年七月以降のデータを閲覧できます。ひまわりは、赤道の上空約三万六〇〇〇キロメートルにあり、地球の自転と同じ速度で地球を周回しているため、日本を含む半球の同じ場所を連続的に観測しています。(同書P131より)

 おっこれぞ「宇宙からの「雲見」」!!ではないか。
 もうひとつある。
 そこで私は、一般の方がスマートフォンで撮影した雪の結晶の写真を、SNSなどを通して集めて解析する「#関東雪結晶 プロジェクト」を気象研究所で実施しました。これは、インターネットやスマートフォンが普及した二〇〇〇年代からアメリカなどを中心に広がった「シチズンサイエンス(市民科学)」という方法です。市民の力を借りて大量の情報を集め、科学者だけでは得られなかった知見の獲得を目指したのです。 
 雪の結晶は見た目が美しく、実物を目にすると気持ちが高揚します。美しい結晶の写真を撮りたいという人々の気持ちも、シチズンサイエンスに協力するモチベーションとなっています。
 もちろん、防災に貢献したいという思いで参加してくれる方もいますし、何種類の結晶を観察できるか全力で楽しんで参加されている方もいます。それからというもの、雪の降る日は、関東に限らず様々な地域から多くの結晶写真が届くようになりました。(同書P197より)

面白いですね。
 【「雲見」の連帯】に多くのヒントを与えてくれているように思いますね。
 実は他にも美しい空をより楽しむ工夫・アイデアがもっともっといっぱい紹介してあります。
 大いに参考になります!!

最後になってしまったが、巻頭付録
・十種雲形の雲分類 フローチャート
・空の虹色判別 フローチャート
 もとてもいいですね!!

 『読み終えた瞬間、空が美しく見える…』はほんとうだった!!
あなたは!?

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【私の読んだ本・ベスト10】2023!! #お薦め本

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▼年末恒例の【私の読んだ本・ベスト10】をあげてみる。
 リストアップするのは、この2023年一年間に【お薦め本】としてあげたもの10冊である。
 順番はあくまでここに【お薦め本】としてあげた順番である。

【その1】【お薦め本】『季語の科学』(尾池 和夫著 淡交社)
 地震学者・地球科学者「尾池和夫」と俳人「尾池和夫」が交叉するところが面白い!!


【その2】【お薦め本】『石と地層と地形を楽しむ はりま山歩き』(橋元 正彦著 神戸新聞総合出版センター)
 著者自身のお話も聞くこともできた。アリガタイ!!
 ふるさとの「動く大地の物語」を楽しむための最高のガイドブックである。ゆっくりゆっくり急ごう!!


【その3】【お薦め本】『まんがで名作 寺田寅彦エッセイ集 これから科学者になる君へ』(原作 寺田寅彦 監修 鎌田浩毅 KADOKAWA)
 子どもから大人まで楽しめるオンライン「寅の日」の案内書。
 漫画と青空文庫を往復しながら寅彦の随筆を楽しめるのが実に面白い!!


【その4】【お薦め本】『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸著 NHK出版新書 )
 朝ドラ「らんまん」を思い出しながら読むと楽しいかも知れない。
 私の宿題 3つ はまだ解決できないでいた。
 ・ 牧野富太郎とヒガンバナ
 ・ 牧野富太郎と『赭鞭一撻』
 ・ 牧野富太郎と寺田寅彦


【その5】【お薦め本】『雲の超図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA )
 『すごすぎる 天気の図鑑』シリーズの第3弾
 動画レクチャーが「雲見」を科学することの楽しさを教えてくれる。


【その6】【お薦め本】『見てびっくり野菜の植物学 ゲッチョ先生の野菜コレクション』(盛口 満 文・絵 少年写真新聞社)
 ゲッチョ先生の野菜の話だ。面白いにきまっている!!
 わかりやすく、役にも立つ。家庭菜園づくりを楽しむためにも。


【その7】【お薦め本】『白菜のなぞ』(板倉聖宣著 仮説社)
 板倉さんの謎解き物語は面白い!!
 あなたの食卓の「白菜」はどこからやって来たのだろう!?「科学」してみませんか。


【その8】【お薦め本】『中学校理科 授業づくりアイデア大全』(河野 晃著 明治図書)
 理科「授業づくり」最前線の情報のすべてがここにある!!
 この続きは、ぜひ「FACEBOOK版【理科の部屋】」で!!
 

【その9】【お薦め本】『寺田寅彦「線香花火」「金平糖」を読む』(松下貢・早川美徳・井上智博・川島禎子 著 究理舎)
 寅彦ファン必読の一冊だ。
 「線香花火」「金平糖」を深く深く読み解く!!
 寅彦の科学の先駆性が少しずつわかってくるのが面白い!!「複雑系の科学」研究の第一人者が読み解く!!


【その10】【お薦め本】『天気も宇宙も! まるわかり 空の図鑑』(武田 康男著 エムディエヌコーポレーション)
 「見上げてみれば ぜんぶ空!」のフレーズに納得ダ!!
 【付録】空MAP はとてもいい。これを手に入れるためだけでも損はしない。
  毎日の「雲見」【宇宙見物】に!!常にそばに置いておきたい本だ。

 
 さあ、来年はどんな本に出会えるかな!!

(以上)

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