【お薦め本】『寺田寅彦「線香花火」「金平糖」を読む』(松下貢・早川美徳・井上智博・川島禎子 著 究理舎)

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▼2012年4月よりはじめたオンライン「寅の日」において、「備忘録(一回)」「線香花火」「金平糖」(それぞれ二回)を読んでいた。
 とりわけ、「金平糖」については、第200回達成記念オフとして、名古屋の「金平糖博物館」で、中田友一先生から直接お話を聞かせてもらうような機会もあった。
 それからしばし、「金平糖」の「ふしぎ!?」からも遠ざかっていた。
 この夏、久しぶりに、その「ふしぎ!?」や面白さに再会する本にであった。

▼それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『寺田寅彦「線香花火」「金平糖」を読む』(松下貢・早川美徳・井上智博・川島禎子 著 究理舎 2023.8.11)

期待通り、いやそれ以上に充実した面白さであった。
 話が拡散してしまわないうちに、3つのお薦めポイントをあげておく。

(1)寅彦随筆の面白さ、文学性・先駆性を再認識できる!!
(2)多角的に寅彦の科学の先見性を読むことができる!!
(3)この一冊で、深く興味をもって読むための全資料が揃えてある!!

▼では、ひとつずつ私の「お薦めポイント」に行こう。

(1)寅彦随筆の面白さ、文学性・先駆性を再認識できる!!
私は、正直に言ってとんでもない勘違いをしていることに気づいた。
オンライン「寅の日」で読んだことがあるから、ある程度理解していると思っていた。「備忘録」(吉村冬彦(寺田寅彦) 同書P1~)を読みはじめたら、すぐに気づき思った。
「備忘録」が面白い!!
「備忘録」ってこんなに面白かったかな!?
「金平糖」「線香花火」ばかりに注目してしまい、他の随筆をあまりしっかり読んでいなかった。
 著者代表の松下貢氏は、「まえがき」のなかで、次のように言っていた。
 

 改めて言うまでもなく、自然の美しさはまさしく全体として見なれれば意味をなさない。寅彦はもしかしたら自然や日常身辺で起きるいろいろな現象をまず文学者の目で深く理解しようとしたのではなかろうか。ここに師と敬愛する漱石の影響を見ようとするのは考え過ぎであろうか。(同書 「まえがき」ⅲより)

 もうひとつの引用をさせてもらおう。
 それは 
 ・寺田寅彦「備忘録」に見る未来への胚珠…川島禎子 (同書 P105~)
 のなかにあった。川島氏は次のように言っていた。
 すると「備忘録」という作品は、ルクレティウスの詩のような黙示録的な意図も意識して書かれたように浮かび上がってきます。
 その後も「備忘録」の続編を書こうとしていたことを鑑みると、精密な世界観を構成するのではなく、直観的に感じた不思議や自身の懐かしい記憶を連句のように書きつけていくという執筆の姿勢-それは世界そのものに対峙する姿勢でもあるわけですが-を示した寅彦の記念碑的作品が「備忘録」と言えるかも知れません。寅彦はのちに文学を「人生の記録と予言」(「科学と文学」昭和八年九月)だと書きますが、これを最期まで自身の執筆態度として持ち続けたのでしょう。(同書 P135 より)

 なぜかくも「備忘録」が面白いのか!?
 その訳が少しだけわかりはじめた!!
 もう一度、「備忘録」を読んでみたくなってきた。

(2)多角的に寅彦の科学の先見性を読むことができる!!
「線香花火」「金平糖」の科学=寅彦の科学!!
 「複雑系の科学」!!
 この科学の第一人者・松下貢氏が語っていた。
・寺田寅彦の科学に見られる先見性 松下貢 (同書 P54~)

 このように見ると、寅彦が注目をしていたのは、まさしく日常身辺で見られる複雑系であることがわかる。そのため、近年進展したカオス、フラクタル、非線形科学やそれらの発展・延長線上にある複雑系科学の視点からは、寅彦の科学的考察と思索の産物である随筆には、汲めども尽きない魅力が秘められている。寅彦は、寅彦は、自然界には要素還元主義的な手法では捉えることのできない、しかし、科学的には依然として非常に興味深くかつ重要な複雑系科学的な現象が多々あることをはっきりと認識し、時代にはるかに先駆けてそれらの科学的な理解に傾注していたということができる。
(同書 P56より)

 そして、「寅彦の科学の特徴」として 次のようなこと等をあげておられる。
・寅彦の科学の特徴(一)- 統計的な取り扱い 
・寅彦の科学の特徴(二)- 一様状態の不安定化
・寅彦の科学の特徴(三)- 一様界面の不安定化:金平糖を例にして
・寅彦の科学の特徴(四)- 天災、人災についての考察
たいへんくわしくわかりやすい説明が展開されている。
 そして、「おわりに」では、次のように語っておられた。
 わからないことがあればどこまでも細かく分解して縦方向的に分析するという単純な方法論に基づく従来の物理学に対して、寺田寅彦は横方向のつながりの重要性に気づき、それを科学にすることを目指したと言うことができる。しかし、物理科学の世界ではそれはあまりにも早過ぎる試みだったのである。寅彦のこのような研究は幾分揶揄的に「寺田物理学」と呼ばれ、時には複雑な現象に注目しているというだけで批判的に見られてきた。単純な系が示す単純な現象を定量的に精度よく測定しようとする当時の科学者の目には、寅彦が目指す科学はあまりも定性的に見え、前近代的とさえ思われたのかもしれない。 
 しかし、このような見方は一九七〇年代、寅彦の死後四十年近く経ってようやく無くなって来て現在に至たる。(同書 P73より)

またこうも語っておられた。
 このように、寺田寅彦が生み出し、植え付けた複雑系科学の芽がようやく世界的に育ち始めているといっても過言ではない。これまでに見てきたように、彼は時代にはるかに先駆けていたので、「複雑系科学の父」と呼ばれるにふさわしいと筆者は思っている。それだけでなく、それだけでなく、寅彦は希有の名随筆家でもあり、自然科学と人文科学という二つの文化の融合を体現したということができる。 (同書 P74より)

この論考にとどまらないのが本書のもうひとつの大きな魅力でもあった。
よりくわしく具体的に、「金平糖」「線香花火」についての論考が続いていた。 

・金平糖の研究をめぐって 早川美徳 (同書 P77~)
・線香花火の不思議と研究について 井上智博 (同書 P89~)

手製の「ドラム式金平糖作成装置」を用いての実験報告はきわめて興味深い。
 写真も充実していて楽しい。
 井上氏の「線香花火の研究史」も、実に面白い!!

 実は、寺田寅彦は線香花火の学術論文を執筆していない。線香花火に関する国内初の論文は、門下生の一人であり、雪の結晶の研究で有名な中谷宇吉郎(一九〇〇~一九六二)と関口譲によって、寅彦の随筆と同じ一千九百二十七年に書かれた。論文の最後に寺田先生への謝意が明記されている。当時、寅彦は「もし西洋の物理学者の間にわれわれの線香花火というものが普通に知られていたら、おそらくとうの昔にだれか一人や二人はこれを研究したものがあっただろうと」と考えていた。実際には、宇吉郎の論文が出る半世紀も前にヨーロッパで線香花火の研究が始まっていた。 (同書 P94より)

こんな一文からはじまる「線香花火の研究史」の展開は実に興味深い!!
 こちらの方も貴重な写真・絵図が充実していた。
 このように、きわめて「多角的」に、とことん「金平糖」「線香花火」の「ふしぎ!?」に迫っていた。

▼いよいよ最後のお薦めポイントである。

(3)この一冊で、深く興味をもって読むための全資料が揃えてある!!
 私のような「にわか寅彦ファン」が、その随筆に関連する資料が「そこに」あると教えてもらっても、実際には、わざわざ「そこに」は行かないことがほとんどである。スミマセン。
 ところが、この本はアリガタイ!!
 関連しそうな資料は、すべてこの一冊に「付録」として納められていた。

・金平糖  寺田寅彦(ローマ字で書かれたものを邦字起こししたもの)
・金平糖  福島 浩
・科学物語 線香花火のひみつ  中谷宇吉郎
・線香花火 中谷宇吉郎

 どれも貴重であり、より興味深く随筆を読むのを助けてくれる。
 最後に、とっても「お気に入り」のものが付録としてついていた。
・寺田寅彦 略年譜
 デアル
これただの「略年譜」でなかった。ある面できわめて特化していた。
寅彦の年齢についで(漱石○○歳)が付け加えてあったのだ。
「それは、師・漱石先生何歳のとき!?」
 が一目瞭然だった。アリガタイ!!

 まだまだお薦めポイントがありそうな気がするが、「蛇足」にならないうちにここらあたりでとめておく。
 
 寅彦ファン 必読の一冊!!

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【お薦め本】『中学校理科 授業づくりアイデア大全』(河野 晃著 明治図書)

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▼直接中学校で「理科」の授業をすることから、遠ざかってだいぶん時間が経つ。
 しかし、「理科」(科学)のこと考えるとき、いつもいちばんベースにするのは、自分のやってきた「中学校理科の授業」のことである。
 拙い実践で恥ずかしいかぎりであるが、私がいちばん参考になる「情報」はやっぱりここからはじまっていた。事実はこれ以上でも、これ以下でもなかった。
 もし、現役時代に出会っていたら、もっとも参考になりそうな本に最近出会った。

▼ その本が今回の【お薦め本】である。

◆ 【お薦め本】『中学校理科 授業づくりアイデア大全』(河野 晃著 明治図書 2023.7)

 例によって【お薦め】ポイントを3つにしぼってあげてみる。
(1)中学校理科授業づくりの最前線の情報のすべてがここにある!!
(2)「授業づくり」のための最高の「相談役」の書である!!
(3)生徒の疑問に答えるための「授業づくり」の書である!!

▼では少しだけ詳細に3つのポイントにふれてみます。
(1)中学校理科授業づくりの最前線の情報のすべてがここにある!!
 著者は「イントロダション」のなかで、次のように述べていた。

 中学校の理科教員の仕事には、特有の大変さがあります。座学的な授業だけでなく、観察・実験も多くあり、物品の管理や理科室の運営も必要です。また、校内の分掌でICT等手間のかかる役割を担うことも多いのではないでしょうか。
 そんな多忙な日々の中で、効率よく充実した授業をつくるために大切にしたことを3つご紹介します。(同書P2より)
 納得できますね。
 「授業づくり」だけが、独立してあるわけではないですよね。
 「授業内容」だけに焦点をあてた類書が多い中で、「授業づくり」全般に配慮した本書はすばらしいです。それは「もくじ」にもよくあらわれていました。
第1章 授業準備 知的好奇心を喚起しながら、全員参加の授業を目指す
第2章 理科室づくり 管理や準備、片づけの工夫で、授業の効果を最大化する
第3章 観察・実験 手軽に、魅力的な学びを創り出す 
第4章 学習評価 効率的かつ確かなテスト、評価を行う 
第5章 生徒の疑問 素朴な問いから、知的更新を拡げる
(同書P5~P8「もくじ」より)

 どの章・どのページにも最新情報が満載である。
 きっと、今すぐ真似てみたい「情報」がいっぱいである。
 なかでもやっぱり最高にお薦めは、第3章 「観察・実験」である。
 一年 15
 二年 17
 三年  8
 全部で40もの「手軽に、魅力的な」観察・実験のアイデアが紹介されている。
 ナルホド これは面白い!! すばらしいアイデアだ!!
 と思うものばかりだ。
 特に私の気に入った「観察・実験」を次にあげてみる。
・スローモーションで沸騰を観察しよう
・水の蒸発による質量変化を、精密電子天びんで捉えよう
・豆電球を家庭用コンセントで点灯させよう
・ワイヤレスLEDを点灯させよう
・使い捨てカイロを使って、酸化を可視化しよう
・花粉管の観察を簡単、確実に行おう
・Webサービスで自然現象を把握しよう
・理科室を宇宙空間にしよう
等などである。
 どの項目にも「所要時間」「注意事項」が明示してあり、現場で活躍中の著者ならではの配慮・工夫があった。また著者自身のホームページの実験動画への案内もアリガタイ!!
 
 次の【お薦め】ポイントに行こう。
(2)「授業づくり」のための最高の「相談役」の書である!!
 やはり「イントロダクション」の「3 困ったときは人を頼る」のなかで、次のようにも述べていた。
 観察・実験や理科室運営は言うに及ばず、指導方法から評価方法まで、経験者から直接学ぶことは多いでしょう。ところが、理科教員が校内に1人しかいなかったり、複数名いてもお互いの時間が合わなかったりして、なかなか質問したり相談できないこともあるでしょう(本書も、そうした方を意識して書きました)。そうした中、学校外の人とのつながりはとても大切です。(同書P3より)

 またSNSにも理科のつながりがあります。例えばFacebookでもいくつか理科教育に関わるグルーブがあります。私自身も「FACEBOOK版【理科の部屋】」というグループを運営しています。LINEでもオープンチャットの「理科室の雑談」というグループをつくっています。
こうしたSNSのメリットの1つは、全国に広がっていることです。
 (中略)
 「学校内のこと(だけ)を一生懸命やるべきだ」という考え方の先生もいらっしゃいますが、生徒によりよいものを教えるためにはどうしたらよいか考えたとき、私は積極的に外とつながりをもつことも大切だと考えます。(同書P4より)

 まったく同感です!!
 著者自身も語られているように、この本そのものが、最高の「相談役」になっていると思います。
 また、この本を入り口として、外に「相談役」を求めることも、よりよい「授業づくり」のためには有効かもしれませんね。
 この本の続きは、ぜひ「FACEBOOK版【理科の部屋】」で

 著者自身が運営するWebサイトの紹介があるのもうれしい!!

◆「にしきの理科準備室」


▼【お薦め】ポイントの最後はこうです。
(3)生徒の疑問に答えるための「授業づくり」の書である!!
・自然は最高の「教科書」!!
・子ども(生徒)は最高の「指導書」!!
 理科の先達からの「教え」であった。
 なんども ナルホド!! と納得することがあった。
 この本でも、そのスタンスが具現化して書かれていた。
 それがこの本をより魅力的なものにしてくれていた。 
 それが
第5章 生徒の疑問 素朴な問いから、知的更新を拡げる
である。
 14の生徒の素朴な疑問がとりあげられていた。実際の授業実践のなかから生まれた疑問であろう。読者はきっと「それ あるある!!」となるだろう。
 疑問に対しての「応答例」もあがっている。なるほどウマイ!!
 「私ならどう答えるだろう?」と考えながら読むとより面白い。
【生徒に紹介したいWebサイト】まであがっているのはうれしい!!

 また、これらの真似して「授業」をやってみたくなるような本だ!!

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【お薦め本】『白菜のなぞ』(板倉聖宣著 仮説社)

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▼たまたま、遅れん坊の畑に出会うことにより、すっかり「野菜の植物学」にはまっています。
アタリマエすぎるほどアタリマエだけど、畑の「野菜」たちも、どれもりっぱに「植物」たちです。だから、植物としての「科学」が成立するはずです。
 そんなこと考えているうちに、ずっと以前に読んだあの一冊の本のことを思い出した。

▼本棚から、ひっぱり出して来て読み始めた。
 読み始めたら、なかなかやめられない面白さだ!!
 今一度、【お薦め本】にあげることにより、私自身の「記録」として、残して置きたくなってきた。

◆ 【お薦め本】『白菜のなぞ』(板倉聖宣著 仮説社 1994.11.1)


 例によって、3つのお薦めポイントをあげておく。

(1)身近な野菜の「植物学」を楽しめる本である!!
(2)科学の謎解きを、具体的に楽しめる本である!!
(3)豊富な資料・図版で大人から子どもまで楽しめる「科学読み物」!!


▼3つお薦めポイントは重なるところも多々あるが、ひとつずつ少しだけ詳しくのべていこう。

(1)身近な野菜の「植物学」を楽しめる本である!!
 ハクサイ(白菜)の歴史の「ふしぎ!?」から話は、はじまった。

 私ははじめ「日本人がハクサイを取り入れたのは明治以後だった」ということがあまりに信じ難いと思いました。そこで、「ハクサイは明治以後、どのようにして日本で栽培されるようになったのか」ということをくわしく調べてみることにしました。すると、調べれば調べるほど、いろんな面白いことがわかってきました。そこで、その結果をお知らせしたいと思います。少し話が長くなりますが、つきあって下さい。
(同書P22より)

 実はハクサイの原産地は、中国の「山東半島」であるという。
 案外近くなんですね。
 あんななじみのあるハクサイが、どうしてこんなに遅く、日本にやってきたのだろう!? この「ふしぎ!?」にこだわったわけです。
 このこだわりは、さすがですね。
読み始めたら、ついつい「次は!?」と展開の面白さに引きつけられて読んでしまいますね。
 ときには、こんな一節もでてきたりして、うれしくなってしまいますね。
しかし、それらの本がでたころになると、そういう知識も徳四郎さんの耳にはいるようになったに違いありません。科学の知識というものは、決して自然に得られるものではありませんが、その知識を切実に求めている人のところには集まってくるものだからです。
(同書P67より)

(2)科学の謎解きを、具体的に楽しめる本である!!
 著者の謎解きは、いつも具体的で、わかりやすく楽しいですね。

 私は、「ダイコンの仲間とカブの仲間とはタネで区別できるのではないか」と予想してみました。私はその予想を確かめたかったので、桜島大根・聖護院大根のほかに、時なし大根と二十日大根のタネを買ってきました。園芸屋さんに売っているタネは、作物の写真がきれいに印刷された紙袋に入っているので中身が見えません。そこで、ワクワクしながら袋を切ってみました。するとどうでしょう。桜島大根と聖護院大根のタネは二十日大根のタネより少し大きめでしたが、タネの形・色はそっくり同じでした。私の予想は当たったのです。あとで買ってきた宮重大根のタネもそっくりでした。それなら、カブの仲間のほうはどうでしょう。
(同書P126より)

 いいですね!!
 こちらまでつられてワクワクしてきますよね。
 なんとうれしいことにカラー図版もありますよ。

●カラー図版(同書P112より)
・野菜の形とタネ1
・野菜の形とタネ2

 見ていると自分でもタネを手に入れたくなってきますね。

▼では、最後のポイントです。

(3)豊富な資料・図版で大人から子どもまで楽しめる「科学読み物」!!
 先にあげた「カラー図版」だけでなく、図表・年表・地図・野菜のスケッチ図等がいっぱい出てきます。
 だから、とてもわかりやすく誰もが楽しめる「科学読み物」になっています。
 著者は「あとがき」に次のように記していました。

 ですから、私はこの読み物を、次のようないろんな人びとに読んでほしいと思っています。
 まず、「世界史のつながりや流れを考えたいと思う人びと」、「日本の歴史、とくに近代史に興味のある人びと」、それからさらに「生物学上の種の概念について知りたいと思う人びと」、「科学の歴史に興味をもつ人びと」です。そして、できるだけ、『ジャガイモの花と実』(福音館書店)『砂鉄とじしゃくのなぞ』(国土社)の姉妹編として中学生以上なら配慮したつもりです。
 しかし、出来上がったものは、専門的な科学史の論文と啓蒙的な科学読み物、歴史読み物の性格を併せもつような本になりました。じつは「日本の白菜の歴史については、この本が日本でもっとも詳しい本」と言っていいからです。
(同書P134より)

 著者の言うとおり、多様な興味に応えることができるホンモノ「科学読み物」デス。
 大人(専門家・野菜をつくる人)もきっと楽しめる本デス!!

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【お薦め本】『見てびっくり野菜の植物学 ゲッチョ先生の野菜コレクション』(盛口 満 文・絵 少年写真新聞社)

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▼少し事情があって、しばらく東の畑を放置することになってしまった。
 気づいたら、キャベツにきれいな花が咲き始めていた。
 そうだ!!
 キャベツもりっぱに「植物」だからアタリマエ!!
 となりのハクサイには、なんと実(タネ)までできていた。

 それらを見ていて思い出す本があった!!

▼久しぶりに読んで(見て)みて、とても面白かった。
 やっぱり、ぜひとも【お薦め本】にあげておきたくなってきた。

◆【お薦め本】『見てびっくり野菜の植物学 ゲッチョ先生の野菜コレクション』(盛口 満 文・絵 少年写真新聞社 2012.2.1)

例によって、お薦めポイントは3つ

(1)みんなが楽しめる「家庭菜園(畑)のとも」!!
(2)ゲッチョ先生の大きな絵が楽しめる!!
(3)野菜たちのルーツがひと目でわかる!! 


▼ではお薦めポイントひとつずつ少しだけ詳しく述べてみる。

(1)みんなが楽しめる「家庭菜園(畑)のとも」!!
 野菜たちも、「植物」である。このアタリマエついつい忘れてしまうんですよね。
ゲッチョ先生のコトバを借りよう。

 植物を口に入れない日はないといってもいいでしょう。そうです。食卓の上の野菜も、植物の仲間なのです。そうしてみると、わたしたちは、ずいぶんと植物の名前を知っていることになりますね。トマト、ニンジン、ダイコン……。でも本当に野菜のことを知っているといえるでしょうか?野菜も植物です。そのことを、ふだんとは少しちがった目から見てみることにしたいと思います。そこから、どんなことに気づくでしょう? 
(同書「はじめに」P2より)

 より具体的なところを見ていきましょう。
 先のキャベツのことについて、次のようなページがありました。
 「キャベツの七変化 その1 その2」
 野菜の品種とは何でしょう?野菜はみんな、もともとは野生の植物でした。
 最初、人々は野生のままの植物を、いろいろ利用していました。
 そのうち身近なところに植えて世話をするようになったのです。
 身近で世話をするうちに、同じ植物にも個性があることがわかります。
 そうして、よりすぐれた個性のものが選ばれ、受けつがれていくうちに、だんだんともとの野生の姿とは変わった形や性質へと、姿を変えていきました。
 (同書P34より)

 キャベツのご先祖様はケールにはじまり、やがて葉が丸まった、おなじみのキャベツへと姿を変えました。ブロッコリーやカリフラワーも、キャベツと同じご先祖様から生みだされた野菜たちです。
(同書P37より)

 「植物」である「野菜」が、どんどん「品種改良」をしていくうえで、忘れてはならないのが、花と実(タネ)です。
 あまり普段意識的に観察することのない花についてのページもあります
「花くらべ」(同書P4より)
 これを見ていると、同じ仲間の野菜たちは、よく似た花をつけることがわかる。
 花の次は実(タネ)です。
 とてもお気に入りのページがあった。
 「わたしは誰?」(おわりに)

 畑に行ってみましょう。今日も野菜たちが生きています。
 そして、食卓や店先とはちがった姿の野菜たちにも出会えるはずです。
 来年のために花を咲かせ、種子をつくり……と、そんな姿を。
 野菜たちは食べものであるけど、そのまえに植物という生きものなのです。
 (同書P60より)

 いいですね!!
 ぜひぜひ家庭菜園(畑)のすぐそばに置いておき、いつでも開いてみたいですね。
 一家に一冊 家庭菜園(畑)のともに!!


(2)ゲッチョ先生の大きな絵が楽しめる!!
 ゲッチョ先生の文も大好きだが、特にあの絵が最高に大好きだ。
 これまでもずいぶん楽しませてもらってきたが、今回もそうだ!!
 どこが「見どころ」かを理解しての絵はみごとである。
 「現物」と照らし合わせながら、見せてもらうと、きっとその「観察眼」に驚く。
 大判のゲッチョ先生の「植物絵本」として大人から子どもまで楽しめる。
 きっと「そうだったのか!!」と驚くことがいっぱいあるはず。


▼最後のポイントに行こう。
 
(3)野菜たちのルーツがひと目でわかる!!
・あの野菜はいったいどこからやってきたのだろう?
・その野菜はいつの時代に日本にやってきたのだろう?
 こんな疑問に答えるためには、今の時代だからネットで検索すればわかるかもかも知れない。しかし、この本にはこれらの疑問に答えて、すばやくひと目でわかる貴重なページがあった。

 ●「野菜のふるさと」(表紙 見開きページ)
  世界地図に、野菜のイラストとともに表示されている!!
あの野菜の「ふるさと」がひと目でわかる。

 ●「野菜伝来年表」(裏表紙 見開きページ)
  あの野菜はいつごろ日本にやって来たか、ひと目でわかる。  
時代のおもなてきごと・文化・野菜の欄がもうけられており、伝来の時代背景がよくわかる。
他の野菜との比較して見るのも面白い!!

ひと目でわかる興味深い資料がついているのもこの本のうれしい特長である。
これは「おまけ」というには面白すぎる!!

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【お薦め本】『雲の超図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA )

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▼私の究極の道楽は、次の2つだ!!

・賢治の「雲見」
・寅彦の「宇宙見物」

とりわけ前者の「雲見」は、いつでも どこでも 誰でも 簡単に楽しめる。
 最高の「自然観察」事始め!!
と思っていた。

▼その「雲」に特化した「図鑑」が出たというので、さっそく手に入れてみた。
 『すごすぎる 天気の図鑑』シリーズの第3弾である。

◆ 『雲の超図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA 2023.3.27 )

 これまでとも重なるところがあるが、お薦めポイントは次の3つである。

(1)「雲見」をゆたかに膨らませてくれる!!

(2)動画解説も含めて、「雲見」を科学する面白さを教えてくれる!!

(3)子どもから大人まで楽しめる「雲見」徹底ガイドブック!!
 

▼ではお薦めポイント3つを少し詳しく

(1)「雲見」をゆたかに膨らませてくれる!!
 著者は「はじめに」のなかで、このように言っていた。

 雲がいるから空は楽しく、私たちは美しい風景に出会えます。
雲について少し知っているだけで、さまざまな見方で空を観察できるようになり、新たな発見もたくさんあると思います。この本が、みなさんにとって楽しい雲ライフを送るきっかけになればいいなと考えています。(同書 P2より)

 特に「ゆたかに」というところでひとつ気に入っているところがあります。
それは「目次」を見ればわかるように

第1章 すごすぎる 雲のしくみ
第2章 すごすぎる 雲の分類
第3章 すごすぎる 積乱雲
第4章 すごすぎる 雲の文化
第5章 すごすぎる 雲と天気

そうです。第4章「すごすぎる 雲の文化」があることで、「雲見」はうんと「ゆたかに」なるのです。
 暮らしのなかの「文化」「文学」「芸術」等で「雲見」の楽しさが生きているのです。
 第4章のなかでも特に気に入ったのは「45 正岡子規は雲が大好きだった!」(P126)です。

 彼には「雲」(1898年)という最高なタイトルの作品があります。これを読んで驚いたのが、独自の雲の名前や地域ごとの積乱雲の名前(P122~125)などにもかなり言及していることです。さらには、「春雲は綿の如く、夏雲は岩の如く、秋雲は砂の如く、冬雲は鉛の如く、晨雲は流るゝが如く、午雲は湧くが如く、暮雲は焼くが如し。」という記述もあります。
 …
 極めつきは「雲好きと果物好きと集まつて一日話してみたい」と述べていることです。筆者がこの時代に生きていたら、きっと仲良しの雲友になれていたはず……!(同書 P126 より)

 そんな集まり(「雲見」オフ)があったら、ぜひ私も寄せてもらいたいですね。

(2)動画解説も含めて、「雲見」を科学する面白さを教えてくれる!!
 今回もうれしいことに、とてもくわしい「動画解説」があった。

 ※この本の内容は、筆者のYouTubeチャンネル『荒木健太郎の雲研究室』で目次の項目すべてについて動画で解説していますので、本とあわせてご覧ください。(同書P2より)

 アリガタイ!!
 これまでもそうだっが、著者自らのミニレクチャー(動画解説 なかみはけっしてミニではないが)はとてもうれしい。
 リアル「雲見」をしているとき屋外でも、スマホ、タブレットでミニレクチャーを楽しめるということだ。
 それも何度でも繰り返して学べる。

・リアル「雲見」
・【お薦め本】『雲の超図鑑』
・著者自らのミニレクチャー(動画解説)

 この3つを繰り返し行ったり来たり これぞ最高の「雲見」だ!!


▼お薦めポイント最後の3つ目である。 
 
(3)子どもから大人まで楽しめる「雲見」徹底ガイドブック!!
 ひょっとしたら、私は順番をまちがったかも知れない。
 この3つ目こそが最大のお薦めポイントなのかもしれない。
 大人が読んで、見て(「図鑑」なのだから必須)楽しめる!!
 まずは、これが大切だった。
 いつものように、我らが「パーセルくん」が登場してくる。
 なんだか、それだけで身内気分になってくるから不思議だ!!
 今回はさらにうれしいことに
 「十種雲形の雲たち」(同書P3)のキャラクターも登場するのだ。
・どのキャラクターも、その雲形の特徴をとらえていてかわいい!!
・特に一度見たら忘れられないキャラ 2つ
 「巻層雲」薄く空に広がってハロ・アークの虹色を生む。
      虹色の帯がかわいい!!
 「層積雲」畑のうねのように並ぶ。野菜はイメージ。
      手に持ったニンジンが印象的。層積雲を見るたびにニンジンを探していたりする。困ったものだ(^^;ゞポリポリ)

 子どもたちへの配慮は、かわいいキャラクターの登場だけではありません。 全文とおして、難しい気象用語のみならずすべての漢字には「ふりがな」がついています。これは私にもアリガタイです。
 そのこころざしは、「おわりに」の文の中に現れていました。
 そして雲を見て、「おもしろい!」「これは楽しい!」と感じたら、家族や友達に伝えてみてください。それを一緒に楽しめれば、ワクワクも倍増です。

 逆に、誰かに「こんな発見をしたよ!」と教えてもらったら、もし「そんなのあたり前じゃん」と思ったとしても、頭ごなしにはねつけず「それはすごいね! じつはこういうおもしろいこともあってさ……」と楽しさを共有しましましょう。発見と感動をわかちあう経験は、きっとみなさんの人生をより豊かにしてくれると思うのです。(同書 P170より) 

 最後にどうしても引用させてもらいたい一文があった。
 積乱雲による局地的大雨に加え、線状降水帯による大雨やJPCZによる大雪など、危険な現象がたびたび起こっています。私たちは自分や大事な人の命を守るために災害への備えを進めるなど、防災の行動していく必要があります。しかし、つねに防災を意識していると肩に力が入り、疲れてしまって長続きしません。そこで楽しいことなら自分から日常的に取り組めるはずなので、楽しい防災をしようというのが感天望気の考え方です。(同書 P168 より)
 

 「感天望気」!!
 著者の一貫した主張です。大賛成です!!

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【お薦め本】『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸著 NHK出版新書 )

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▼朝ドラ『らんまん』がはじまって一週間がすぎた。
 
前に書いたように、私の「牧野富太郎」への興味は主に3つあった。
 ・ 牧野富太郎とヒガンバナ
 ・ 牧野富太郎と『赭鞭一撻』
 ・ 牧野富太郎と寺田寅彦
とりわけ「赭鞭一撻」についてはよりくわしく知りたいと思っていた。
だから牧野富太郎博士をモデルとした言われる今回の朝ドラには大いに期待していた。

▼そんなとき、朝ドラ『らんまん』の植物監修者が執筆された本があると言うことでさっそく入手して読んでみた。

◆【お薦め本】『牧野富太郎の植物学』(田中伸幸著 NHK出版新書 2023.03.10)


正直に言う。
植物名は大の苦手という私には最初はなかなかなじめない本だった。
ところが、後半急激に面白くなってきた。
これはやっぱり【お薦め本】にしたくなってきた。
話があちこちいってしまう前に例によって、3つのお薦めポイントをあげておく。

(1) 植物分類学の面白さがわかってくる!!
(2) 牧野富太郎の「仕事」の凄さがわかってくる!!
(3) 朝ドラ「らんまん」がより楽しくなってくる!!

▼では、ひとつずつ少しだけ詳しく

(1) 植物分類学の面白さがわかってくる!!
 実は私は「植物の名前」覚えが大の苦手である。そう自慢げに言うことでもないが事実だから仕方ない。ずいぶん以前に授業テキスト『植物の世界』をつくったときにもこんなことを言っていました。

 それは知っていることにこしたことはないが、知らぬから「植物の世界」がわからぬというものではないだろう。知らぬからこそ見えてくる構造だってある。そんな居直り気味の姿勢から出発した「テキスト」づくりなんです。

 牧野富太郎博士の場合は、まったくちがっていたようです。
 この佐川での幼少の経験が、目の前にした植物を「これは一体何という植物なのだろうか」という分類の好奇心を芽生えさせたのではないかと想像する。ここに、始終一貫して植物の名前を調べ、ないものは命名し、草木の名前を知ることの楽しさ世に広め、自らを「草木の精」と称した牧野富太郎の原点がある。(同書 P52より)

 この書の前半の部分 つまり
第一章 植物分類学者・牧野富太郎
から 
第二章 本草学から植物学へ
第三章 日本の植物学と東京大学
第四章 標本採集の意義
第五章 新種を記載するということ
第六章 『植物学雑誌』の刊行
第七章 記載された学名の数
第八章 植物図へのこだわり 
のあたりまでを少し尻込みしながら読み進めていった。
 そのうちかつての前言を翻して
 「植物の名前を調べ、分類する植物分類学もけっこう面白い!!」
 と思うようになっていた。
 今さらであるが…。

(2) 牧野富太郎の「仕事」の凄さがわかってくる!!
 私がいちばん興味深く面白く読んだのは、この本の後半であった!!
それは、牧野富太郎博士の人生の後半部とも重なるのであった。

 牧野富太郎の生涯は、ややもすれば植物研究一徹であったかのようにとらえられることが多い。しかし、先に述べたように『植物学雑誌』にシリーズ化して発表していった日本のフロラに関する本格的な学術論文は、五〇代前半までにかけて、つまり明治二一年(一八八八)から大正四年(一九一五)にかけて書かれたものだ。
一方、のちに刊行する個人雑誌の様相を呈した『植物研究雑誌』の時代からは、牧野は研究活動のエフォートを啓蒙活動や教育普及へより顕著にシフトさせたように感じられる。それは『植物研究雑誌』の創刊にともなって選択された、牧野の新たな生きる道だったと捉えることができよう。(同書 P170より)
 
 私に最も興味あったのは、この「牧野の新たな生きる道」だった。
 詳しくは本書を読んでいただくことにして、この後に展開される「小見出しの項目」だけでもプロットしてみる。

・全国の趣味家によるネットワーク
・一流の植物オタクとして
・植物同好会の普及
・観察会という学びの場
・「自然科学列車」での普及活動
・地方フロラへの貢献
・随筆の名手
・読み物としての図鑑
・随筆だけでなく作詞まで
等など

多様なる活動に驚くと同時に感動である。
 なかでも私がいちばん驚き感動するのは最初にあげた牧野が植物学を志ざしはじめた頃に書いた勉強心得「赭鞭一撻」の精神を、生涯貫きとおしていることである。
 「赭鞭一撻」については、ぜひぜひ

◆牧野富太郎自叙伝・第二部 混混録 (牧野富太郎)(青空文庫より)

 を参照されることをお薦めする。

▼次が最後のお薦めポイントである。

(3) 朝ドラ「らんまん」がより楽しくなってくる!!
 著者は最後にこう言っていた。

 翌月、今度はNHK出版の山北健司氏が訪れ、牧野富太郎についての本を書いてくれという。牧野富太郎についての評伝は数多く出版されているものの、植物学における業績をわかりやすく一般向けて書いたものは意外にないという理由だった。
 これには、同感した。朝ドラではモデルなだけで、そこに登場する万太郎は、万太郎であって富太郎ではない。すでにいくつもの小説で描かれている牧野富太郎がさらにドラマになることで、真の姿が見失われる可能性もあった。そこで迂闊にも引き受けてしまった。(同書 P252 より)

 また著者は「はじめに」の文章で、こうも語っていた。
 しかし、業績を顕彰するためには、その人物がその分野で果たした役割、仕事というものを正しく、冷静に、そして中立的に理解しなくてはならない。科学は証拠主義に基づいている。牧野富太郎を科学者として、捉えるならば、人物像やそれを取り巻く人間ドラマではなく、学術的に正確な情報、検証された業績、それが与えたインパクトなどで評価されるへきである。
 本書は、牧野富太郎の人物像を考察するものではまったくない。牧野が専門とした学問分野はどういうものだったのか。研究者としての牧野の業績はどういうもので、どのような意味をもっていたのか。そして、それが現在にどのように影響を与えているのか。これらについて、自然科学の立ち場から考察するのが本書である。(同書 P8より)

 アリガタイ!!
 明確な主張をもった本なのである。
 きっと朝ドラ「らんまん」をより楽しいものにしてくれるだろう!!
 もうひとつうれしいことに、本の巻末に「牧野富太郎年譜」がついている。
 ドラマの進行に合わせて参照すれば、時代背景もよくわかり朝ドラを何倍も豊に楽しいものにしてくれるだろう。


【蛇足の蛇足】
最初にあげた私の3つの興味どころ 2つが残ってしまった。 
・ 牧野富太郎とヒガンバナ
 注意深く読んだつものだが、それについて触れた部分はなかった。
またの機会にさがしてみたい。

・ 牧野富太郎と寺田寅彦
 本書のなかには、見落としがなければ二カ所に「寺田寅彦」の名前が出てきただけだった。
 くわしくは、次の「土佐の寅彦」詣のときに聞いてみたいものだ。

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【お薦め本】『まんがで名作 寺田寅彦エッセイ集 これから科学者になる君へ』(原作 寺田寅彦 監修 鎌田浩毅 KADOKAWA)

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▼寅彦は「漫画と科学」(青空文庫より)のなかで、次のようなことを言っていた。

次にその対象の見方および取扱いの上に如何なる特徴があるかと考えてみると、その対象の形態的ないし心理的の現象の中である特別な部分を抽象してその部分を誇大しあるいは挙揚して表示するというのが一つの顕著な点である。

こういう対象の取扱い方は実に科学者がその科学的対象を取扱うのと著しく類似したものである。

▼あの数々の名エッセイ(随筆)を漫画で読むことがてきる本が出たと聞いた。
 面白そうだと思ったので手に入れてみた。

◆【お薦め本】『まんがで名作 寺田寅彦エッセイ集 これから科学者になる君へ』(原作 寺田寅彦 監修 鎌田浩毅 KADOKAWA 2023.2.15)

やはりなかなか面白い展開になっていた。
これは、ぜひ【お薦め本】にしたいと思えてきた。
 例によってお薦めポイント3つを先に挙げておく。

(1) 寺田寅彦の名エッセイ(随筆)をはじめて学習まんが化した本である!!
(2) 大人から子どもまで「寅彦の世界」を楽しめるための最高の手引き書である!!
(3) きっと寅彦の原作を読んでみたくさせてくれる本である!!

▼少しくわしくふれてみよう。

(1) 寺田寅彦の名エッセイ(随筆)をはじめて学習まんが化した本である!!
 まんが化された随筆は次の7編であった。
第1章 夏の小半日
第2章 茶碗の湯
第3章 電車の混雑 
第4章 こわいものの征服
第5章 津浪と人間 
第6章 藤の実
第7章 科学者とあたま 
 もちろん寅彦の随筆を原作としながらも、7編の随筆がつながりがあるようにストリー化されていた。
 「これから科学者にになる」主人公(勇一君)への寅彦からのメッセージが中心テーマとしての物語となっている。
 これがなかなかうまい!!
 まんが化することにより、寅彦からのメッセージがより「見える化」&「焦点化」しているように思う。

(2) 大人から子どもまで「寅彦の世界」を楽しめるための最高の手引き書である!!

 裏表紙の内側にある「保護者の方へ」という文章の最後に次のような一文があった。
 「まんが名作」シリーズでは寺田寅彦のエッセイを理解しやすいように脚色し、子どもたちの目線で楽しめるまんがとしてえがいています。大人が読んでもハッとする視点や学べる要素が入っておりますので、ぜひ子どもたちと一緒に読んでみてください。

 特に後半にうんと納得した。(゚ー゚)(。_。)(゚-゚)(。_。)ウンウン
 
「大人も楽しめるのが最高の児童書!!」
 というのが私の持論である。これがピッタリあてはまる本だ。
 大人がはじめて「寅彦ワールド」を楽しむのにもうまくできていた。
・寅彦のここをちょっと深掘り!!① 
・寅彦のここをちょっと深掘り!!②
・知ってびっくり! 寺田寅彦ってこんな人!!(同書P154)
・科学者!?文学者!? 寺田寅彦二刀流年表(同書P156)
これらもとても参考になる。
 大人にとっても子どにとっても、「寅彦の世界」第一歩の最高の手引き書!!

▼最後のポイントは次である。
(3) きっと寅彦の原作を読んでみたくさせてくれる本である!!
 この本を読めば、きっと寅彦の原作ではどうだったんだろう!?
 と気になってくるはずである。
 アリガタイことに、ここにとりあげてある7編とも、青空文庫のお世話になれば今すぐにも読むことができる!!

◆作家別作品リスト:No.42 寺田寅彦 (青空文庫)
 
「原作」と「まんが化」されたこの本を往復運動をしているあいだに、きっとより深く読み解くこができるだろう!!
 ここからは、完全「我田引水」モードだ!!
 
誰もが楽しめるオンライン「寅の日」の案内書として最高!!


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【お薦め本】『石と地層と地形を楽しむ はりま山歩き』(橋元 正彦著 神戸新聞総合出版センター)

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▼先日、ついに待望のお話を聞くことができた。
予想通り実に面白かった!!
「さあ、いよいよ目の前のあの山を歩いてみるぞ!!」
と決意した。
またまた話を大げさに言ってしまう。
 そうではなくて、決意などと言うのでなく毎日の「雲見」や「宇宙見物」のように、「山歩き」を楽しむのである。
それにぴったりの「案内書」に出会った!!

▼それが今回の【お薦め本】だ。
 
◆ 【お薦め本】『石と地層と地形を楽しむ はりま山歩き』(橋元 正彦著 神戸新聞総合出版センター 2021.11.12)

  あまりに面白すぎて、話があっちこっちに行ってしまいそうだ。その前にいつものようにお薦めポイント3つをあげておく。

(1)ふるさとの「動く大地の物語」を楽しめる!!
(2)はりまの「山歩き」をしながら地層や地形を楽しむ最高の案内書!!
(3)身近な自然に興味をもつことの楽しさを教えてくれている!!

▼少し重なるところもあるが、ひとつひとつ少しだけ詳しくふれてみよう。

(1)ふるさとの「動く大地の物語」を楽しめる!!
 「なんで目の前のあの山のてっぺんから、海の底でできた化石がみつかるのだろう!?」
 「足元のこの石ころは、どんな物語を語ってくれているのだろう!?」
 遠く離れた地の話ではなく、今も暮らす「ふるさと」の話として知りたかった。
 それに答えてくる本がついに出た。著者はこう語る。

 山の歩き方は人それぞれですが、花や木の名前や、鳥の鳴き声がわかってくると楽しくなってきます。それと同じように、今歩いている山がどのような岩石でできているのかがわかってくるのもとても楽しいのです。岩石や地層は、ここで過去の地質時代に何がおこったのかを教えてくれます。
 地層が南の海からプレートに乗ってやってきたり、カルデラをつくるようなとてつもなく大きな火山噴火があったり、湖の底で静かに泥や砂がたまったりと、そんな大昔の大地の姿が目に浮かんでくるのです。(同書 P5より) 

 うれしいことには、この「物語」を読み解くための基礎知識のページもちゃんとこの一冊に用意されているのです。

○ はりまの大地はどのようにしてできたのか (同書 P7~10) 
○ 播磨の地質図 (同書 P10)
○ はりまの地質形成史 (同書 P11)

○ はりまの石を見分けよう (同書 P121~)
○ はりまの石 ミニ図鑑 (同書 P123~)

 なんとアリガタイことに「ミニ図鑑」まであるのです!!
 それもすべて「はりま」産出の石ばかりだ!!


 次に行こう。
  
(2)はりまの「山歩き」をしながら地層や地形を楽しむ最高の案内書!!
 私は「登山」どころか、「山歩き」も、まったくのシロウトであった。
  「あこがれ」はずっとあったが、ついにこの年まできてしまった。
  今さらであるが、可能な限り挑戦してみたいのだ!!
 著者はこう言いきってくれていた。アリガタイ!!

 本書は、播磨の山々を歩きながら地質や地形を楽しむための案内書です。(同書 P5より)
 
そんな私にはとってもアリガタイ配慮がいくつもあった。
 27コース全てに次のようなことが記されていた。
・ 所要時間 (観察をして楽しむも含めてあった)
・わかりやすいコースの地図
・stop して観察する地点を地図に明示してくれていた。
・stop 地点で何をこそ観察するのか、くわしく説明してくれていた。
・著者自らが歩いて観察した最近の写真を多数貼付してくれていた。
・アクセス 「マイカー」だけでなく交通機関利用の場合もくわしく書いてくれていた。アリガタイ!!

まだまだありそうだが、次に行こう。

▼ 最後は少し全体的な話になるのだがこうだ。

(3)身近な自然に興味をもつことの楽しさを教えてくれている!!
 もっともの「ふしぎ!?」は、最も身近にある!!
 身近な自然を科学することの楽しさを教えてくれている。
 著者は「おわりに」の文章のなかで、このように語っていた。

 登山道で岩に張りついて観察していると、ときどき声をかけられます。「何しょってん?」とか、「何か珍しいものでもあるん?」などです。石を見ていると答えると、予想外の答えのようでだいたいの人が驚かれます。そこで、「ここの石は、ずっと昔、まだ恐竜の生きとった時代に火山の大噴火でできたんや」などと話し出すと、また驚かれます。山を歩く人たちたちの大地への興味が広がるために、少しでもこの本が役に立つことを願っています。また、子どもたちが身近な自然に興味を持つきっかけとなればとてもうれしく思います。(同書 P127より)

 さあ、この本を片手に出発です!!
 27コース、どこまで行けるだろう!?
 私のことですから ゆっくり ゆっくり です。
 どこかで出会ったら声をかけてください。
 そして、あなたの「発見」した「動く大地の物語」を教えてください。

※なお著者のホームページは必見!!
 『兵庫の山々 山頂の岩石』
http://www2u.biglobe.ne.jp/~HASSHI/yama.htm

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【お薦め本】『季語の科学』(尾池 和夫著 淡交社)

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▼しばらく「つん読」にしておいた本をこの正月にひっぱりだしてきた。
 著者の名前になつかしい思い出があった。
 山崎断層地震(1984.05.30)のすぐ後ではなかったと記憶している。だから、それは40年近く前のことになるのかもれない。場所に定かな記憶もなくなっていた。
 ただ、講演の冒頭だけは鮮明に憶えていた。
 「私が、小池(尾池にひっかけて)の鯰(なまず)です!!」
 (このときは地震と鯰の関係はうっすらとした認識しかなかった)
 尾池先生の名前を聞くと、今でもこのフレーズを思い出すのである。
 だから、私には俳人「尾池和夫」より先に地震学者・地球科学者「尾池和夫」が先行するのである。
 
▼正月から読み始めた俳人「尾池和夫」先生の本があまりに面白かったので、今年最初の【お薦め本】にあげてみることにした。

◆【お薦め本】『季語の科学』(尾池 和夫著 淡交社 2021.3.6)

 例によって、話が拡散してしまわないうちにお薦めポイント3つを先に挙げておく。

(1)「季節のことば を科学する」から学ぶのに最適の書!!
(2)俳句を読むあるいは俳句を詠むための最高の参考書!!
(3)自分が暮らす地域や専門と季語との関連を考えるための書!!

▼では少しだけ詳細に書いてみる。

(1)「季節のことば を科学する」から学ぶのに最適の書!!
 【お薦め本】にしたいと思うのに決め手となったフレーズがあった。
それは、「季節のことばを科学する」である。
 昨年から少し「○○を科学する」というコトバにはまっていた。一番最近では、「「原子論」を科学する」で、それは今なお継続中である。さて、次はどんな「○○を科学する」にするか迷っているところだった。
 コレだ!!と思った。それはなんとこの書の「あとがき」にあった。

 『淡交』の二〇二〇年七月号から一二月号まで、六回にわたって「季節のことばを科学する」というシリーズを掲載していただいた。その内容の一部もこの本に再録した。『淡交』は、裏千家茶道の機関誌であり、茶の湯を中心とする日本文化を総合的に紹介する月刊茶道誌である。その読者からも「季節のことばを科学する」はたいへん好評で、このことが、茶の湯と季語の出会いの意味を考える機会となった。(同書P278 より)
 「季節のことば=季語」を科学するという姿勢は、みごとに徹底していた。そのことにいたく感動するのだった。
 手持ちの「歳時記」(『俳句歳時記 第四版』(角川学芸出版編))と読み比べながら読んでみると、「科学する」の徹底ぶりが実に面白かった。

(2)俳句を読むあるいは俳句を詠むための最高の参考書!!
 ちょっと 後先が逆になってしまったが、「はじめに」著者はいきなり次のように言い切っていた!!

 季語がおもしろいと思っている方に読んでいただきたいと、この本を書いた。この本は季語を批判するものでない。季語を知って俳句を読む、あるいは俳句を詠むためのための本である。(同書P6 より)

 なんとみごとな言い切りだろう!!ここまで言い切られるとスッキリしていていい。さらには、次のように言っていた。
 片山由美子は『季語を知る』(角川選書、二〇一九年)で、「季語は意味ではなく言葉である」と述べ、「歳時記の矛盾や季節のずれ指摘しようとすればいくらでもできるが、合理性が最優先される世界ではない。現実とのずれを承知の上で、むしろ楽しむゆとりがほしい。南北に長い日本列島の季節の違いは誰もが承知しており、いっせいに春になるはずはないのである。むしろ文学上の共通の時間を持つために、歳時記があると思えば、よいのではないだろうか」と言う。(同書P6 より)

読み始めたのが、お正月ということで、本の最後の「歳の暮れ・新年」から見ていった。「季語」を「科学する」視点にたった読み解きが実に面白い。
 一例をあげてみる。
「春」の章から【立春】をあげてみる。ところどころの部分の引用で失礼ではあるが、

 【立春】<春立つ・春来・立春大吉>初春 時候

 二十四節気の最初が立春である。節気には三つの意味がある。天文学で定義された時刻としての節気は一瞬である。暦ではその瞬間を含む日をさしたり、次の節気(立春なら雨水)の前日までの期間をさす。立春から立夏の前日までが春で、寒さの頂点を過ぎた立春から、時候の挨拶に「余寒」を使う。

 ……(中略)
 一九四七年、ニューヨークと上海と東京で、大がかりな実験が行われた。そのことは、中谷宇吉郎『立春の卵』にくわしい。この場合の立春は、場所によって異なった時刻であり、その時、中国の古書にある通り、実際に卵が立ったという記事が新聞に載った。

 ……(中略)
(「朔旦立春」について)次の機会は二〇三八年、南海トラフの巨大地震が起こる時期と予測された年にあたっている。((同書P14-15 より))


 全文はぜひ手にとって読んでみてください。「ヘェー、そこまで言うの!?」と面白いです!!


▼最後のお薦めポイントにいこう。
(3)自分が暮らす地域や専門と季語との関連を考えるための書!!
 再び「はじめに」もどろう。

 地球科学を専門とする私は、かつて「天地人研究会」と「ジオ多様性研究会」を主宰し、広い分野の専門家を集めて議論を繰り返した。互いの専門領域の話を理解しながら議論を深めることで、新しい研究分野を展開していこうという趣旨であり、また、日本列島の大きな特徴である、地形や地質の細かい分布による多様性を分析して、そこから浮かび上がる日本の文化の特徴を知ることを目的とした。(同書P7 より)

 まさに、地球学者・尾池和夫先生の本領発揮である。
 こだわりのあったのは、専門分野だけでなかった。
 全編通じて、地域「京都」へのこだわりも強いと思った。

 これもまた一例だけでも

 【鯰】<梅雨鯰・ごみ鯰> 仲夏 動物
 …(略)
 この頃ちょうど、一六〇五(慶長一〇)年の南海トラフの巨大地震に先行する西日本は内陸地震の活動期であった。この秀吉による指月伏見城の天守も、一五九六年の有馬ー高槻構造線活断層に発生した大地震で倒壊し、多数の死者を出すこととなった。(同書P117 より)

これら地域・専門への「こだわり」を見せた「歳時記」はこの本の大きな特徴ありとっても面白いと思えてきた!!
 
その点から言えばもっともっと多様な「歳時記」があってもいいな!!
もっと言えば、私だけの「歳時記」があってもいいな!!

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【私の読んだ本・ベスト6+α】2022!! #お薦め本 #静電気 #原子論

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▼年末恒例の【私の読んだ本・ベスト○○】をあげてみる。
 リストアップするのは、この2022年一年間に【お薦め本】としてあげたもの6冊である。
 順番はあくまでここのblogに書き込んだ順番である。

 今年は、【お薦め本】としてあげたものが、6冊と少々少ないので+αとして
「静電気を科学する」
「原子論を科学する」
 に関連して、とても参考にさせてもらった本を一緒に並べてみた。


【その1】【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎)
 2022年の元日には、この「藤の実」が7つもはじけるのを目撃するという体験をさせてもらった。
 寅彦の言う「潮時」を、リアルに実感できたのはうれしい!!
 何度も読み返したい本だ!!


【その2】【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社)
 人間「フランクリン」を身近に感じさせてくれた。
 そして、科学者「フランクリン」のすばらしさが存分に描かれていた。


【その3】【お薦め本】『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 )
 戦後の「原子論」(いや「科学教育」そのものといっても過言ではない)はここからはじまった!!
 ずっと使い続けて来た「原子論的物質観」のルーツはここにあった。あらためて読み返してみてたくさんの再「発見」があった。


【その4】【お薦め本】『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)
 「原子論の歴史} 定番本!!
 巻末の「原子論の歴史」年表は、「これから」も うんと役に立つだろう!!


【その5】【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社)
 大人から子どもまで、誰もが「これから」も楽しめる科学絵本決定版!!
 今では、同名アプリでも楽しめることもできる!!


【その6】【お薦め本】『ふしぎで美しい 水の図鑑』(文・写真 武田康男 緑書房)
 “空の探検家”=武田康男氏自らが撮影した176枚の写真はどこまでも美しく圧巻である!!
 あなたはどの写真に「水」の「ふしぎ!?」を見るだろう!?
 バケツの「氷」から、南極、砂漠草原の「水」まで、世界まるごと「水」の記録!!
 今、もっとも 美しく 「ふしぎ!?」な本!!


 さあ、2023年は、どんな本に出会えるだろう!?
 どんな本に「再会」できるだろう!?
 楽しみである!!
 

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