【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社)

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▼私は、「フランクリンの末裔」くんからプレゼントしてもらったお宝本をこのまま本棚にしまい込んでおくのではモッイナイと思っていた。
 「静電気」を科学するシリーズ をつづけている今こそもう少しなんとかしたかった。
 とは言っても、「静電気」に関する絵・写真の資料は見ればなんとかわかるが、それ以上まったくわからなかった。思いはあっても、全文英語ではまったくお手上げだった。
 こんなことならもう少し英語も勉強しとくんだったな。

▼そんなとき、ファラデーラボの森本雄一さんに「この本が面白いよ」と教えてもらった本がある。それが今回の【お薦め本】だ。

 

◆【お薦め本】『フランクリン』(板倉聖宣著 仮説社 1996.8.15)

 

読んでみたら、ほんとうに面白かった!!
 人に語らずにはおれない面白さだ。そこで【お薦め本】にあげてみることにした。
 話があちらこちらにとばないうちに、いつものようにお薦めポイント3つをあげておく。

(1)等身大の語り口調で人間「フランクリン」の魅力に迫る!!

(2)科学者「フランクリン」の面白さをやさしく熱く語る!!

(3)社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? を問う!!

▼ではもう少しだけ詳しくひとつずついこう。

(1)等身大の語り口調で人間「フランクリン」の魅力に迫る!!
 まず最初に正直に白状しておこう。
 私はあまりに「フランクリン」のことを知らなすぎた!!
 「凧をあげて、電気をあつめた男」程度の認識しかなかったのである。
 著者はこの本の最後にこう言っていた。

そこで私はこの本で、かなりくわしくフランクリンの仕事をできるだけ視野広く見ようと試みたのですが、理解していただけたでしょうか。私のこの『フランクリン』が、新しいフランクリン像を多くの人びとに知らせることができるといいと思っています。(同書P269より)

 この試みはみごとに成功しています。
 「フランクリン」というのがこんなすばらしい魅力的な人間だったとは!!
 感激です。
  いかし、これまたふつうの偉人伝のように、別世界の人間のようには扱われていません。そこがまた著者板倉聖宣先生のうまいところですが、平易な等身大の語り口調で新たな「フランクリン」像を浮き彫りにしていきます。

 ベンは年とった父親の子どもで、すでに五人の兄さんと五人の姉さんがいました。そのうち五人は前のお母さんの子どもでしたが、ベンを生み育てたお母さんはその後二人の妹を生んでいます。小さいときに亡くなった兄弟を除いて、子どもだけで十三人の大家族でした。手工業をやりながらそんな大家族を養っていくのは大変だったことでしょう。じつは私も九人兄弟の六番目で、似たような手工業の職人の家に育ったので察しがつくように思えるのです。(同書P14より)

 こんな調子です。
 読み進めるうちにわかってきます。板倉先生はこの「フランクリン」のことがとても気に入ったのだなあと。
 読んでいるこちらもそれにつられてどんどん「フランクリン」が好きになっていくことまちがいないです。

(2)科学者「フランクリン」の面白さをやさしく熱く語る!!
 私にとっては、ここがこの本を読む本命の部分でした。

 しかし、彼は「科学者になろう」などとは全く思っていませんでしたから、その研究の成果を論文に書いて発表することなど、考えてもみませんでした。彼はただ仲間と一緒に実験したり議論したりして楽しむだけで満足していたのです。そして、その他にも彼の実験に興味をもってくれる人がいることがわかると、その人に喜んで手紙を書いて知らせました。そこで、このときの実験のことも、ずっと後になって書いた手紙の中に書かれて残っているだけなのです。(同書P44 より)

 ここにフランクリンの「科学」の醍醐味とその「方法」が示唆されていた。
 だからこそ

 フランクリンの手紙の中の説明はとても簡単明瞭です。だから、その説明を読むだけでも、彼らがどんな実験を積み重ね、どんな議論をしていたか察することができます。(同書P96より)

 これは生涯一貫した科学者「フランクリン」の姿勢でした。
 板倉先生は、この本の中で、できるだけくわしく「フランクリンの手紙」をたくさん紹介してくれています。
 シロウトの私にはそれがとてもアリガタイ!!
 それは、きっとこんな思いからなんだろう。

 私がもっとも知りたいと思っていた部分についても具体的な多数の手紙を紹介してくれています。これが実にアリガタイ!!

・先端放電現象
・電気の行方
・電気流体の過剰(+)と不足(-)という考え方
・電気一流体説=電気量保存の原理の確立
・ライデン瓶=コンデンサーの謎の解明
・フランクリンのカミナリ研究の起源
・カミナリの正体をつきとるための実験方法の提案
・『電気の実験と考察』の出版
等々です。

 ますます「フランクリン」のファンになってしまいます!!

▼そして最後に
(3)社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? を問う!!
 フランクリンのマルチな活躍ぶりにはびっくりばかりであった。

・『貧しいリチャードの暦』
・フランクリン暖炉の発明
・アメリカ理学会の創立
・北東風の研究
・フランクリンの人口論
・アメリカ植民地全体の政治家
・義勇軍の連隊長
・『富みに至る道』
・「アーモニカ」の発明
・メキシコ湾流の海図の作成
・アメリカ独立宣言
・フランス駐在大使の仕事
・遠近両用眼鏡の発明
等々

 ここでも、具体的な「フランクリンの手紙」を多数紹介してくれているのはアリガタイ!!
 こんなマルチな活躍の強力なバックボーンになっているのは科学者「フランクリン」なのではないかと思う。
 そして、今、問いかけてくるのである。

 社会や暮らしのなかでの「科学」とは!? 

 最後に、著者・板倉先生のこんなコトバを引用させてもらおう。

 フランクリンだけではありません。彼の時代の科学者たちには、自分がたのしんだ科学研究の感動をできるだけありのまま伝えたくて、その研究の経過をくわしく書く人が少なくありませんでした。しかし、最近の科学論文には、そういった生き生きとした表現がほとんど見られません。そこで、科学は多くの人びとにとって身近な存在でなくなってしまったのです。これは残念なことです。私は、科学の歴史を専門として、かつ科学教育の研究も専門としています。そこで「せめて私だけでも」と思って、専門的な論文でも自分の研究したことをできるだけ具体的に感動的に書くようにしています。すると、多くの人びとに喜ばれるだけでなく、フランクリンの場合と同じように、たくさんの人びとからいろいろなことを教えてもらうことができることを体験しています。(同書P214より)

【オマケ】最後のベンジャミン・フランクリン(1706~1790)年譜
  スバラシイ\(^O^)/ 使いモノ二ナル!!(エラソウに (^^ゞポリポリ)

 あの「お宝本」の資料が妙にリアルに見えてきた!!ウレシイ!!

 

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【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎)

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▼今年の元旦はうれしい報告からはじまった。
 ラボ(物置!?)に設置していた「藤の実」が3つも一斉にはぜったという。
 たまたまそこに泊っていた子供からの報告だった。
 夕方になって、2つがはぜった。さらに深夜には、2つが追加してはぜった。
 けっきょく2022/01/01だけでなんと7つもの「藤の実」が一斉にはぜったことになった!!
 元日はまさに「藤の実」の「潮時」だったのだろうか。
 普段はほとんど使わないエアコン暖房を使ったことも影響しているのだろうか!?

▼「ふしぎ!?」な「偶然」があるものだ。
 この日は今年最初の「寅の日」でもあった。それだけでない。
 以前から予約注文していた一冊の本が年賀状とともに届いた。
 それが今回の【お薦め本】である。


◆【お薦め本】『寺田寅彦「藤の実」を読む』(山田功・松下貢・工藤洋・川島禎子著 窮理舎 2021.12.31)


なんと発行日は前日の「寅彦忌」だ!!
  例によってお薦めポイントを先に3つをあげておく。

(1)寅彦の謎解きの科学を何倍にも増幅して楽しめる!!

(2)多面的な視点から寺田物理学の読み解きがされている!!   

(3)名作「藤の実」をより面白く読むための豊富な資料がここに集めてある!!


▼3つのお薦めポイントは重なるところもあるが、順次少しだけ詳しくのべてみる。
 まず

(1)寅彦の謎解きの科学を何倍にも増幅して楽しめる!!
 はじめの山田功氏の読み解きは実に面白かった。
 十段落に分けての読み解きは、寅彦の文章のバックグラウンドを詳しく興味深く解説するものだった。
 なるほどと納得することしきりだった。
 特に第三段落までの「藤の実」が一斉にはじける現象の謎解きはみごとである。
 それは、まるでコナンの探偵物語でも読むような面白さだ。
 謎解きは、自ら体験することからはじめておられた。

 藤の実がはぜたときの音とは、いったいどんな音だろうか。私も確かめたくなった。ある年の十一月中頃、藤の実を探すことにした。大きな公園の藤棚を見に行くと、手入れがされていて藤の実はない。近くの家に藤棚があることを思い出し出かけた。幸い、いくつかの藤の実が残っていた。  それを貰い、部屋にひもを張りつるした。十二月中頃、部屋で本を読んでいると、突然「ぴしっ」と乾いた短い音がし、藤の実がはぜた。その時、体がピクリと緊張した。そして、タネは部屋のドアに当り床に落ちた。これが寅彦の体験した藤の実のはぜる音なのかと納得したのである。それだけのことだが、作品「藤の実」がぐっと自分に近づき、いっそう深い関心がもてたのである。(同書P17より)

 これはこの探偵物語のはじまりにすぎなかった。
 謎解きは、次々とリアルに展開された。
 寺田邸の藤棚はいつどこにつくられたのか? 
 タネがはげしくあたった障子のある居間とガラス窓の台所と藤棚の位置関係は?
 寺田邸平面図、現場写真、居間スケッチ等々。
 次には藤の実が一斉にはじけた時の気象条件の検証を行なっていた。
 当日の「天気図」、中央気象台の観測データから、「異常に低い湿度」の謎を読み解こうしていた。
 それで驚いてはいけない。
 山田氏とその教え子の川口氏はなんと2014年、二ヶ月にわたり数百の藤の実で、はじけた数と、気象状況(湿度)との関係を調べているのである。
 まだまだある。
 猛烈な勢いで飛び出すタネの「初速度」を寅彦がやったように「高校物理」の問題として計算しているのである。さらには「その瞬間」を写真に収めようと根気よく試み成功しているのである。(この本にはそのときの写真が口絵に紹介されている)
 この取り組みを読んでいるあいだに、寅彦の次のコトバを思い出したのだった。

一方で、科学者の発見の径路を忠実に記録した論文などには往々探偵小説の上乗なるものよりもさらにいっそう探偵小説的なものがあるのである。実際科学者はみんな名探偵でなければならない。 (「科学と文学」青空文庫より


 山田氏の「むすび」のコトバを引用させてもらおう。
 

 こうして、「藤の実」を読み終えてみると、身近な事象も気を付けて眺めると、「おや」、「不思議だな」と思うことが結構あることに気づく。それは、興味深いことで、楽しい疑問である。そうした出会いができるためには、普段から自分の五感の感度を少し上げておかねばならぬ。五感というアンテナを磨き、いくつも立てておくことだ。そして、不思議だと思ったことを、「それは偶然だ。」とか、「悪日」とか、「神様や悪魔の仕業だ。」と、簡単に思考を止めてしまわないことである。根気強くもう一歩調べていくと「不思議」の原因を発見できるかもしれないのである。(同書P29より)


▼次のお薦めポイントにいこう。

(2)多面的な視点から寺田物理学の読み解きがされている!!
 多面的・多角的な視点で読み解きがおこなわれているということは、著者たちのそのタイトルからもわかった。

○「藤の実」によせて:偶然と必然のはざま 松下 貢
 「銀杏の一斉落葉」にふれて次のように語っていた。
  

 ここでのポイントは、落葉集団の表面は外部の空気抵抗を受けるが、その内部では空気も一緒になっているので、葉っぱ達は空気の抵抗なしに落ちるということである。こうなると、落葉集団の縁の葉っぱはひらひらとするが、集団内の葉っぱは滝の流れのようにどどっと一斉に落ちるであろう。
 この落葉の流れのきっかけを考えてみると、どの一枚の葉がどこで落ちるのかは、まったく偶然であろう。しかし、落葉が集団となって滝のように流れる段階では、この流れは実際の滝の水の流れと同様に、必然的な現象ということになる。すなわち、寅彦が見た銀杏の一斉落葉は偶然から必然への推移を観察したことになる。(同書P36より)

 思わず、なるほどと膝をたたくのだった。


○植物生態学からみた「藤の実」 工藤 洋

 自然科学者としての立場では、あらゆることに先入観を持ち込まない。まずは、現象をよく観察し、数値データを集め、偶然でなく説明し得る仮説を立てる。そして、その仮説が否定されるあらゆる可能性を考えて、観察と実験を繰り返す。この行為は自分が仮説を信じるかどうかとは別次元の行為で、仮説は証明されるものではなく、否定されないことをもって保持される。(同書P53より)
 
 さすが自然観察のプロのコトバは示唆的である。


○寺田寅彦「藤の実」に見る自然観 川島禎子

 「藤の実」について、文学的な考察をしてきました。とても短い作品ですが、これは備忘録であると同時に、連句的手法を活用して今寅彦が見ている世界を写した試みであり、身近な出来事から「潮時」という現象を読み取る実験である、と言っていいでしょう。
 また科学者として分析的で論理的な自然観を持つのみならず、連句的手法を随筆に取り込むことで東洋的な自然観で対象をとらえることも意識的に行なっていたのではないかと指摘しましたが、そうした複眼的な自然観が、文学者としても、また科学者としても独自の興味深い視点を提示し得た理由だと考えられます。(同書P76より)

 「連句的手法」「複眼的な自然観」私にはなんとも興味深いキーワードだ!!


最後のポイントに行こう。

(3)名作「藤の実」をより面白く読むための豊富な資料がここに集めてある!!
 これはこれまでのお薦めポイントと重なることにもなるのだが、やっぱりこの本の大きな特徴ともなっているのであげておきたい。
 よくありがちなケースとして、「これをより深く知るためには、こんな参考資料・文献がありますよ」と紹介のみに終わることが多いのだが、この本はちがっていた!!
 この本にはこのすべてが<付録>として「ここに集めて」あった。

<付録>
・「十五メートルも種子を射出す 藤の莢の不思議な仕掛」平田 森三   
 ※必読!!寅彦たちの論文をわかりやすく『子供の科学』(昭和八年十月号)に発表したもの

・「破片(抄)」 吉村冬彦(寺田寅彦)

・「雪子の日記(昭和七年十二月~昭和八年一月)」

・「鎖骨」 吉村冬彦(寺田寅彦)

・寺田寅彦 略年譜

 この一冊で名作「藤の実」のバックグランウドのすべてがわかるのだ。

 
 寅彦ファン必読の一冊だ!!

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【私の読んだ本・ベスト8】2021!! #お薦め本

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▼年末恒例の【私の読んだ本・ベスト○○】をあげてみる。
 リストアップするのは、この2021年一年間に【お薦め本】としてあげたもの8冊である。
 順番はあくまでここのblogに書き込んだ順番である。


【その1】【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書)
 アタリマエのことであるが、「科学」も歴史のなかにある!!
 ニュートンのあの有名な発見は、ペストの流行の時期だったという。
 コロナ禍の今、「科学」の現在地は!?


【その2】【お薦め本】『細胞とはなんだろう』(武村政春著 ブルーバックス)
 今、再び問う。そもそもウィルスって何!?
 ウィルスが感染するのはヒトではなくて細胞!?
 細胞とウィルスの関係は!?


【その3】【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店)
 「ほんとうの名著は児童書にアリ!!」の確信を強めてくれた本だ!!


【その4】【お薦め本】『理系的アタマの使い方』(鎌田浩毅著 PHP文庫)
 あの名著『知的生産の技術』の現代版!!
 アウトプット優先主義の知的生産術を伝授!!今一度、自分の知的生産術の吟味を!!
 ヒントのすべてがここにある!!


【その5】【お薦め本】『すごすぎる 天気の図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA)
 子どもから大人まで誰もが楽しく学べる!!
 動画(YouTube)のレクチャーで楽しく学べるのもうれしい!!


【その6】【お薦め本】『チバニアン誕生』(岡田誠著 ポプラ社)
 子どもから大人まで誰もが「チバニアン誕生物語」を楽しめる本!!
 私としては「地磁気逆転」の松山基範博士と寺田寅彦のツナガリが面白かった。
 さらには、「磁石石」の堂面春雄先生にまでツナガッタのはとてもうれしかった!!


【その7】【お薦め本】『煮干しの解剖教室』(小林眞理子著 仮説社)
 私はこの本をテキストとして、はじめて「煮干しの解剖」実験に取り組んでみた。
 とてもわかりやすく、楽しかった!!
 この本の著者・小林眞理子先生にオンラインレクチャーを受けたのは今年最高の思い出だ!!


【その8】【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部)
 オンライン「寅の日」への最高の案内書!!
 「オンライン「寅の日」って何!?」と問われれば、これからはこの本をお薦めしたい。
 

 さあ、2022年はどんな本と出会えるかな。
 楽しみである!!

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【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部)

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オンライン「寅の日」をはじめたのは2012年4月だった。
 面白くなくなったらすぐやめようと思っていた。 
ところが寺田寅彦の随筆は、読めば読むほど面白くなっていった。
はじめてから10年目になり、まもなく第300回目をむかえる。
 
 にわか寅彦ファンは、いつしか「寅の日」が最高の楽しみになってしまった。

▼そんなオンライン「寅の日」に関連しそうなたいへん興味深い本がこの夏に出された。
 それが、今回の【お薦め本】である。
 

◆ 【お薦め本】『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部 2021.7.30)


 いつものようにお薦めポイント3つを先にあげておく。
 でなければ、いくらでもダラダラと書いてしまいそうだ。それほど面白いのだ!!

(1)平易な一人称の語り口で語られる最高に面白い「寺田寅彦自伝」!!

(2)「寺田物理学」が子どもから大人まで楽しめるように語られている!!

(3)オンライン「寅の日」への最高の案内書である!!


▼ではひとつずついこう。 

(1)平易な一人称の語り口で語られる最高に面白い「寺田寅彦自伝」!!
 著者は寅彦研究の第一人者・池内了氏である。
 池内了氏はすでに

・『寺田寅彦と現代 ~等身大の科学を求めて~』(池内 了著 みすず書房)
・『ふだん着の寺田寅彦』(池内 了著 平凡社)

等で科学者・寺田寅彦の魅力を私たちに紹介してくれていた。
 今回は、これまでの「総まとめ」として、子ども向けにわかりやすく語り口調で書かれていた。
 いつまでもにわか寅彦ファンの私にはそれがアリガタイ!!
 著者は最初にこうとも言われていた。

 本書では、私が寺田寅彦になった気持ちで、かれの人生をたどりながら、どのような発想で研究をおこなってきたかを語ろうと思います。同時に、寅彦の長所だけでなく短所についてもふれ、かれの人間性の豊かさにもふれたいと思っています。わたしは、そんな欠点も見える寺田寅彦を好ましく思っているからです。(同書P3より)

 ますますアリガタイ!!


(2)「寺田物理学」が子どもから大人まで楽しめるように語られている!!
 「寺田物理学」!! 
 私にはなかなか魅力的なひびきをもつコトバです。
 しかし、 「寺田物理学とは!?」
 の問いに、自分のコトバで答えようとしてもなかなか難しかったです。
 あきらめずに、これからも何度でも挑戦してみたいと思います。
 この本には、それに答えるときのヒントがあります。

著者は言います。
 

 第2の点は、それまで解決が困難だとして敬遠されてきた問題にたいして、思いきったアイデアで挑戦したということです。
 一般に、敬遠されてきた問題というのはひじょうに複雑で、解決の糸口すら見つからないので「複雑系」とよばれてあとまわしにされてきました。寅彦はそのような複雑な系こそ今後重要となり、研究の本腰を入れなければならいと主張し、考えるヒントを提案したのです。(同書P8 より)

うれしいのはその「寺田物理学」を、子どもから大人まで楽しめるようにわかりやすく語られているのです。
 ときには、「現代」からの視点でその意義、先駆性が語られているのはうれしい!!
 それはまるで、寅彦自身が「現代」に蘇ったようだ!!


▼最後のポイントはこうだ!!
 今回はここが最も言いたかったお薦めポイントである。

(3)オンライン「寅の日」への最高の案内書である!!

 著者ははじめの「寺田寅彦とわたし」でこう言っていました。

 このようにわたしの進路を決めることなった寺田寅彦は、むろんとっくに亡くなった人だし、かれが書いたむつかしい論文を読んだわけではありません。わたしがおもに親しんだのは彼が書いた多くの随筆です。かれはその随筆で、だれもが経験するような日常のことがらをとりあげ、思いがけない発想でそれに関する「ふしぎ」について語っていくのです。その発想のおもしろさにひきこまれ、こんな見かたができるのか、そんなふうに考えられるのか、と思ってしまいました。かれは、自分の意見をおしつけるのでなく、筋道どおり考えればこうなるはずだとしめすだけなのですが、わたしは知らぬまに納得させられているのでした。合理的に考える方法さえ身につければ、だれもが納得する答えに行き着くためでしょう。  こうして寺田寅彦の随筆に魅せられるうちに、かれが物理学だけでなく広く科学の重要な課題を50年も前に予言したいたことがわかりました。(同書P2 より)

 思わず納得です。(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン
著者は寅彦の人生をたどりながら、そのときどきに書かれた随筆を数多く登場させます。
そして、その随筆を寅彦の視点でわかりやすく解説してくれます。
私が数えたかぎりでは
 26編もあります。(数えもれがあるかも知れませんので、これ以上です。)
 26編の随筆は、アリガタイことに今すぐ青空文庫で読むことができます。

◆作家別作品リスト:No.42 寺田寅彦 (青空文庫)


  そうです!!
  それをオンラインで、12日に一度これを読んでいるのが
オンライン「寅の日」なんです。

 ここからは完全な「我田引水」モードです。
私はこれからオンライン「寅の日」ってなに!?
と訊ねられたら、ぜひ

『寺田寅彦と物理学』(池内了著 玉川大学出版部 )を読んでみてください!!

と答えようと思う。

 この本は寺田寅彦の随筆の世界へ誘う本です!!
 オンライン「寅の日」への最高の案内書です!!

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【お薦め本】『煮干しの解剖教室』(小林眞理子著 仮説社)

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▼先週はずっといちどはやりたいと思いつづけてきた実験をやってみた。
 「煮干しの解剖」である。
 あの「煮干し」の「解剖」!?
 「煮干し」=カタクチイワシの準備からはじめて、その顛末の一部始終をこのblogで報告をした。
 結論から言うと、

「煮干しの解剖」は最高に面白かった!!

▼ このときテキストとして使用させてもらった本が、今回のお薦め本である。


【お薦め本】『煮干しの解剖教室』(小林眞理子著 仮説社 2010.7.22)


 はじめての「煮干し解剖」の報告を進めていくなかで多くの人からコメントをいだいたのはとてもうれしかった。
 きわめつけがこの本の著者・小林眞理子先生のオンラインレクチャーだ。
 あげた画像をとてもくわしく解説してくださった。
 わかりにくかったこともいっぺんにわかりはじめた!!
 見ていても見えなかったものが、見えはじめた!!
 最高だった!!
 感動だった!!
感動の余韻の中でこの本を今一度読みなおしてみたら、ぜひとも【お薦め本】にあげたくなってきた。

 お薦めポイントはいつものように3つだ。

(1)最高に楽しい「煮干し解剖」案内の書である!!

(2)あらたな「解剖」学習の提案がある!!

(3)発展学習のための豊富な資料がある!! 


▼ではひとつずつもう少し詳しく見ていこう。

(1)最高に楽しい「煮干し解剖」案内の書である!!
 「解剖」!?
 と聞くとちょっとかまえてしまうところがあった。ところが最初の「ようこそ 煮干しの解剖教室」なかで著者はこう語っていた。

 といっても、特別な道具はいりません。大きめの煮干しが数匹、そしてこの本があれば、あなたも魚の体についてたのしく研究することができます。  この小さな魚から、生きものの体と暮らしについていろいろなことが見えてきます。もちろん、解剖したあとは、おいしくいただきましょう。たかが煮干し、されど煮干し。目でも口でも味わいつくす煮干しの解剖です。  たのしいおどろきの時間を、さあご一緒に。(同書P1より)

 そうです。
 私もこの「解剖」実験のために用意したのは「爪楊枝一本」と「ルーペ」と「A4用紙」(白 解剖皿のかわり)だけでした。
 「解剖」の作業はすべて素手を使ってやります。
 これがまたうれしいです!!
 
また「謝辞 あとがきにかえて」では、こうも語られていた。
 

本書は、子どもが自分で読みながら煮干しの解剖が体験できるようにと思って書きました。先生方がこの本を元に、授業として「煮干しの解剖」をやっていただけるなら、それもまたとてもうれしいことです。(同書P32より)

 私もこの本を読みながら「解剖」を体験していきました。
 私は途中で「心臓」を見失ってしまいました。(^^ゞポリポリ
 オンラインレクチャーで教えていただきわかったのですが、よくあることだそうです。
 だから、そのため「標本」としての「心臓」や「胃」などの写真は複数ならべおられるそうです。
 該当のページを再度見て納得しました!! (゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン
 ほんとうに「子どもが自分で読みながら」を想定したつくりなっているのです!!
 この事実にいたく感動しました!!


(2)あらたな「解剖」学習の提案がある!!
 「解剖」学習というと、「生きている」ものの「命」を奪ってという負のイメージがつきまとうのも事実である。
 ところがこの本では、これまでにないあらたな視点に立つ「解剖」学習の提案があるように思えた。
 たとえばこうだ!!

 乾燥品での解剖は、「生命を絶つ」という心理的負担が子どもたちにも教員にもなくてすむのは確かです。でも、「煮干しの解剖」がおすすめなのは、それだけが理由ではありません。この本で、少しでもこの教材の魅力を感じていただけたらと願っています。  私が中学生に授業をしたときの子どもの感想に「煮干しも生きて泳いでいたんだね」ということばがありました。他の方の実践報告を見ても、年齢にかかわりなく、ひからびた魚をバラバラにしながら感じることは共通して「煮干しも、生きていた」ことのようです。 (同書P32より)

 そうです!!
 ここにあらたな「解剖」学習のねらいがあるのです。

 カタクチイワシの「在りし日」(生きているとき)の姿を想像する!!
 ひからびた煮干しを「観察」という学びによって蘇生させる!!
 それが、これからの「解剖」学習!!
 

▼次に行こう。

(3)発展学習のための豊富な資料がある!!

 楽しい「煮干しの解剖」学習からはじめて、そこから発展していく学習のヒントが随所に書かれていた。
 これもこの本の大きな魅力だ!!
 たとえば

・「食べる・食べられるカタクチイワシ」(P23)
・「もし見ることができたら」(P29)
・「解剖で見えてくるもの」(P30) 等々

 「主な参考文献」(P35)としてあげてあるものも興味深いものばかりだ。
 著者の体験的学びをもとに紹介されているのでなおさら興味深い!!

 きわめつけが 次のページだ。必見だ!! 

  ●煮干しの解剖資料室

 
 さあ!!
 あなたもこの本をテキストにして「煮干しの解剖」をはじめてみませんか!!

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【お薦め本】『チバニアン誕生』(岡田誠著 ポプラ社)

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▼「地球は1個の大きな磁石である」
 「しかもそのN極とS極が逆転する地磁気逆転が何度も起こっている」
 この驚くべき事実をはじめて知ったのは、はじめて中学校「電流と磁界」の授業をしたときだった。面白そうと思ったが深入りはしなかった(できなかった)。もうひとつ関連してたいへん興味をもったことがあった。
 「磁石石」のことである。
 最近では「地磁気逆転」の痕跡が刻まれたという「チバニアン」にすごく興味があった。
 面白そうだが、深く知るにはシロウトの私にはちょっとむつかしそうと思っていた。

▼そんなとき、私にもわかるかも知れないと思われる本が出たことを知った。
 さっそく手に入れてみた。


◆【お薦め本】『チバニアン誕生 ~方位磁針のN極が南をさす時代へ~』(岡田誠著 ポプラ社 2021.6)


 例によってお薦めポイント3つを最初にあげておく。

(1)子どもから大人まで誰もが「チバニアン誕生物語」を楽しめる本!!

(2)「チバニアン」のすごさを0からわかりやすく語ってくれる本!!

(3)研究の面白さを等身大に語り、「地球科学」の世界へ誘う本!!


▼ではひとつずつ少しだけ詳細に
 
(1)子どもから大人まで誰もが「チバニアン誕生物語」を楽しめる本!!
  これは、「児童書」である。それがうれしかった!!
私は昔から「ほんとうの名著は児童書にアリ!!」という信念を持っていた。
 初学者向けに書かれてわかりやすく面白い本は、誰が読んでも興味深く面白い。そんな本がほんとうの名著中の名著である。
 この本は私のこの信念に応えてくれていた。
 「児童書」ならではの配慮があってとてもうれしい!!順番関係なく気づいたこと列挙してみる。
・専門用語を使いながらもすべてにルビがうってある。
・章ごとに「用語解説」がある。(無理やり専門用語をさけ、簡単な言葉に言い換えるのでなく、それをわかりやすく解説するという姿勢に共感する)
・コラムは12あるがどれもすばらしい!!
・いちばん質問してみたいことがコラム「Q&A」でとりあげられている。
・「Q&A」の表記の方法がすばらしい。「A」はわかりやすく、簡明に結論がはっきりと書いてある。さらに詳しく知りたければ「Q」と「A」のあいだの説明を読めばいい!!
 実にうまい!! なんかこれにいたく感動してしまった!!
・導入のカラーページがとてもわかりやすい。本文を読むのを楽しみさせてくれる。
・本文中の図はスペースをしっかりとってありわかりやすい。
 
 等々である。ぜひ自分でも手にとって確かめて欲しい!!

(2)「チバニアン」のすごさを0からわかりやすく語ってくれる本!!
本の帯に 次のようにあった。

 “チバニアン”とは  今から77万4000年前から~12万9000年前の地球の時代を示す名称。「千葉時代」を意味する。千葉市原市の地層にちなんで命名され、2020年1月正式に決定した。

ニュース等を通して「すごいこと!!」とはわかっているつもりでいた。しかし、そのすごさのほんとうの意味はよくわかっていなかった。
というのが正直なところだ。
 たとへば「チバニアン」のはじまりの時代に起きた「地磁気の逆転」の話にしても、そもそも「地磁気」そのものについてのことをよく理解していなかった。
 それを0から「地磁気研究」の歴史から説き起こし説明してくれていた。
 アリガタイ!! 
「無口な地層」が、私たちに何を語りかけてくれているのか!?
 予備知識などなくても、「ふしぎ!?」を受けとるレセプターさえ持っていれば面白く読める。


▼最後に

(3)研究の面白さを等身大に語り、「地球科学」の世界へ誘う本!!
 著者・岡田誠氏は「千葉セクションGSSP提案代表」である。
 つまり「チバニアン誕生物語」の当事者であり、スタッフリーダーでこの物語の主人公である。
当事者が等身大に語るドキュメンタリーはもうそれだけで、すごい説得力をもつ。
 面白さを倍増させているのは、第3章「僕はこうして、地質学者になった」だ。
 岡田氏が「チバニアン」に出会うべくして出会ったことがよくわかる。
 きっとこの章を最も印象深く受けとる若者もでてくるだろう。ひょっとしたら、そこから次なる「後継者」が生まれるかもしれない。
 
 さらに、第4章「めざせ、チバニアン承認。国際レースにいどむ」はワクワクドキドキのノンフィクションドキュメント!
 最高に面白い!!

 少し「チバニアン」をはなれるが、とても気に入ったところがあった。
 

僕が考える「科学」とは
たとえば君たちが自由研究で、ある森に生えているキノコの調査をテーマにしたとする。(中略)
そこで君はある共通性に気づいたとする。それはキノコはどんな種類であってもほとんどが、日当たりが悪くジメジメと湿ったところに生えていることだ。
 君が気づいたこのキノコの共通性は、「法則性」といいかえてもいい。
そして、この法則性は、この森だけで発見したものだけれど、君はほかの森でも成り立つと考えた。これを「仮説」とよぶ。
君がこの観察結果とそこから導きだされた法則性や仮説を、学校で発表したとしよう。(同書P189より) 

  
まだまだ続く。
引用が長くなってしまったのは、いたくここに感動してしまったからだ!!
これぞすばらしい「自由研究」のすすめ!! ではないか!!
  
著者は、この本全体を通して、こんな面白い「地球科学」の世界へひとりでも多くの若者を誘おうとしているのだろう。いや、誘われるのは若者ばかりではないのかも!!


※ どうしても書いておきたい「蛇足」
 日本ではじめて「地磁気逆転」を報告したのは松山基範博士です。
 兵庫県のあの玄武洞で現在の地磁気の向きと逆方向を示す溶岩を発見したのです。(1926年)他の場所でもそれを確認・発見し、地球が過去に「地磁気逆転」を起こしていた可能性を指摘したのです。

 しかし、松山博士のように実績も実力も認められた人でも「地球の重力が下から上に向かっていくようなものだ」と、まわりからひどいことをいわれ、認められることはありませんでした。失望したのか、それからの松山博士は地磁気の研究をやめてしまったようです。  松山博士は自分の説に唯一興味を示し、論文執筆中から助言を受けていた寺田寅彦の推薦で論文を発表していました。寺田寅彦は、科学者であり文学者として有名な人です。  この発表が知のバトンとなって、科学者たちにリレーのように受けつがれていきます。 (同書P192 コラム12「科学の発見は知のバトンでつながっている?」より)
   ここにも我らが寺田寅彦が関連しているなんてなんかうれしくなってきますね。  「チバニアン」への注目で、あらためて松山基範博士や寺田寅彦が注目されるようになるとうれしいですね。これが、どうしてもふれておきたかった「蛇足」です。

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【お薦め本】『すごすぎる 天気の図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA)

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▼私は「パーセルくん」のことがうんと気にいっていた。
 毎日の「雲見」でもよく思い出すのだった。
 私がはじめて「パーセルくん」に出会ったのは、『雲の中では何が起こっているのか』(荒木健太郎著 ベレ出版)のなかであった。
 はやあれから6年も経っていたのだ。

▼この度、あの「パーセルくん」だけでなく「温低ちゃん」「トラフくん」や「たつのすけ」に再会できる本が出た。
 それが今回の【お薦め本】です。

◆ 【お薦め本】『すごすぎる 天気の図鑑』(荒木健太郎著 KADOKAWA 2021.4.30)

 例によって、お薦めポイント3つを先にあげておく。

(1) 動画(YouTube)のレクチャーで楽しく学べる!!

(2)「空のふしぎがすべてがわかる!」は本当だった!!

(3)子どもから大人まで誰もが楽しく学べる!!


▼ではひとつずつ少しくわしく 

(1) 動画(YouTube)のレクチャーで楽しく学べる!!
 私は、この本の最大のウリはここにあると思っている。
 著者も「はじめに」次のように書いていた。

 この本では、空や雲、天気について、みなさんが疑問に思われることの多いトピックを中心に取り上げて、わかりやすく解説しています。また、天気について知っておくと便利なことことや、思わず「へえ~、そうだったんだ!」と思えるような知識についても紹介しました。この本の内容については、目次にあるすべての項目について、著者の荒木健太郎のYouTubeチャンネルで動画解説していますので、この本とあわせてご覧ください。(同書P2より)

驚きです!!
78の項目、column すべてにひとつずつの動画解説(83本の動画)があるんです。
本文と同じ写真、図(それ以上のことも多々ある)を使いながら著者のわかりやすいレクチャーがあるのです。これがとてもうれしいです!!
本を読む→動画を見る 動画を見る→本を読む の往復運動を繰り返しながら楽しく学べます。本は各レクチャーの「ノート」(覚え書き)としても利用できます。
 空の観察しながら、気になることがでてきたら「ノート」をみて、さらに動画を見て復習すればいいのです。アリガタイ!!


(2)「空のふしぎがすべてがわかる!」は本当だった!!
 本の正式なタイトルは 『空のふしぎがすべてわかる! すごすぎる 天気の図鑑』です。
 ちょっと長すぎるのと、「空のふしぎがすべてがわかる!」なんて本当かな!?という半信半疑の思いが最初はあったから、ここの部分省略していました。
 商品の誇大広告(「個人の感想です」みたいなヤツ)みたいに思ったからです。ずいぶん失礼な話です。<(_ _)>
 
読み終えたら(動画、見終えたら)、わかりました!!
「空のふしぎがすべてがわかる!」は本当です!!
 
【第1章】すごすぎる雲のはなし
【第2章】すごすぎる空のはなし
【第3章】すごすぎる気象のはなし
【第4章】すごすぎる天気のはなし
の4章に分けて空の「ふしぎ!?」のすべてを追いかけます。とことんです!!
 例えば、虹の「ふしぎ!?」については、第2章で10項目も設けて、あの手この手で謎解きをやってくれます。 

 私自身はじめて知ることも多かったです。


▼ 最後のお薦めポイントにいきます。

(3)子どもから大人まで誰もが楽しく学べる!!
 この「誰もが」「楽しく」というところがとても大切です。
 確かに難しい気象用語も多数でてきます。しかし、それらの漢字にはすべて「ふりがな」がふってあります。その気になれば誰でもが読み解くことができます。
 あの「パーセルくん」をはじめとするキャラクターも登場して、理解を助けてくれます。
 「誰もが」空の「ふしぎ!?」とつきあいながら暮らしているのですから。
 
「楽しく学ぶ」ことについて、著者は「おわりに」のなかでこんなことを言っています。

 空や雲の心を感じて楽しみながら天気の変化を予想することを、「観天望気」から、一歩先に進んだものとして、私は「感天望気」と呼んでいます。この本を読んで気になった雲や空、気象、天気のことを、ぜひ友達やご家族にも伝えてみてください。    空や雲への愛を育んで、それを友達と共有しあうことで、よりいっそう雲や空への愛が深まるはずです。(同書P170より)
   さらに著者は言います。  日常的な「感天望気」こそが、気象災害から身を守る防災・減災にツナガル道だと!!

ぜひ、ご一読を!!

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【お薦め本】『理系的アタマの使い方』(鎌田浩毅著 PHP文庫)

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▼「知的生産」というコトバで何を思い出すだろう?
 私がいちばんに思い出すのはあの名著『知的生産の技術』(梅棹忠夫著 岩波新書 1969.7.21初版)である。この本の初版が出てから半世紀以上たっている。
 大いに影響を受けてきた。一度は、自分自身の「知的生産」の「原点」を見つめ直すそんな意味も込めてこのblogで少しずつ読み進めたこともある。
 
●『知的生産の技術』を読む

▼この春、今もっとも熱く今日的「知的生産」を語る本に出会った。
 それが今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『理系的アタマの使い方』(鎌田浩毅著 PHP文庫 2021.4.15)

 「店じまい」にかかったポンコツが、今さら「知的生産」というと笑われるかもしれないが、実に面白かった。著者は、「これから」の若人向けに書かれたかもしれないが、私にもたいへん面白く読めた。
 いつものように3つのお薦めポイントを先にあげる。

(1)アウトプット優先主義の知的生産術を伝授!!
(2)自分の知的生産術を再吟味するのに最適!!
(3)「最初の一行目がなかなか書き出せない人」に有効!!

▼ではひとつずつ少しだけくわしくいこう。

(1)アウトプット優先主義の知的生産術を伝授!!
 「情報は発信するところに集まる」は、ずっと使い続けてきたお気に入りのフレーズである。まずは自ら情報発信をすることこそが、もっとも手に入れたい情報を収集する有効な手段だと思っていた。ずっと唱え続けてきて確信は深まるばかりだった。
 このフレーズと「アウトプット優先主義」どこか ツナガル 気がするのだった。
 このコトバは、この本では何回も繰り返された。
 例えばこうだ。
 

ここで「知恵」といったが、本書の内容自体は日常的なノウハウに近いものである。資料の整理法、時間の使いかた、作業の第一歩を踏み出せないときのコツ、アイデア出しや表現法などなど。
 しかしそれらに例外なく通底しているのは、理系のアウトプット優先主義だ。
 全体の構成は三部からなり、
①理系的システムの整備と情報の収集
②クリエイティブな情報整理と発想法
③理系的なアウトプットの実行と将来への準備
が語られる。(同書P6より)


(2)自分の知的生産術を再吟味するのに最適!!
 この歳になると、「これまで」とちがう手法でということになると正直言って億劫である。あたらしい手法に慣れるまでに使うエネルギーがモッタイナイ!!
 それは、この本に一貫している「ラクして」精神に反する。
 しかし、こちらの方が有効そうだという手法をみつけたら、それを採用することはやぶさかではない。
この本には繰り返し「知的生産」に有効な㊙テクニックが出てくる。
 16個もである。
 ネーミングもなかなかすばらしい!!巻末にまとめてくれているのであげてみよう。(同書P362~363)

【本書で取り上げた16のキーワード】
「一望法」
「落ち穂拾い法」
「コピー&ペースト法」
「三脚法」
「隙間法」
「棚上げ法」
「橋渡し法」
「バッファー法」
「ひと言法」
「不完全法」
「目的優先法」
「要素分解法」
「呼び水法」
「ラベル法」
「枠組み法」
「割り算法」

「それならすでにやっているよ」と言うのもいくつかはあった。それでも、あらためて「○○法」と言われるとナットクだった。(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン
 そして、「これでよかったんだ!!」と自信をもつこともできた。アリガタイ!!
 反対に「これはいい!!気がつかなかった。使わせてもらおう!!」というのもあった。
 時代にあわせて、また自分流にカスタマイズして採用させてもらおうと思う。 
 
このように「これまで」の自分の知的生産術を再吟味するのに最適の書である。

▼最後にいこう。

(3)「最初の一行目がなかなか書き出せない人」に有効!!
 「最初の一行目がなかなか書き出せない人」と聞いてドキッとした。(^_^;)
 私のことかと思った。心当たり大ありだった。
 この歳になってもこの病はなかなか克服できていなかった。
 そんな私にこの本は病克服のヒントと勇気をくれる本だった。
 著者は「おわりに」のなかで次のように語っていた。

 本書はまず、膨大な資料と格闘して悩んでいる人たちへ向けてアドバイスした。さらに、準備はできているのに一行目がなかなか書き出せないという人にも、「ラクな書き出し」のコツを指南した。いずれの場合も、目的を先行させることによって、状況は一変することをまず知って欲しい。  そして、「アウトプット優先主義」に変えれば、生産性が上がるだけでなく、部屋まで片づくというオマケがついてくる。  しかも片づいたところから、人生の次のステージが見えてくるのである。(同書P360より)

 さあ、残りの人生の次なるステージのためにも。


<オマケ> 蛇足的になるが、これ以外のお薦めポイントというか、いたく共感できることがいくつかあった。
  どうしてもあげてみたくなったのであげてみる。

【その1】

 本書の主要メッセージの一つに「デジタルとの賢いつきあいかたと逃げかた」があるが、そのポイントは「新しいツールに溺れない」である。(同書P8より)

【その2】
 私は今も昔も、メインのスケジュール管理は紙の手帳だ。(中略)よって、スケジュールの詳細はすべてアナログの手帳に書き込み、一元管理をする。(同書P82より)

【その3】
 私の経験では、実際に使ってみて効果があるテクニックは以下の二つであり、しかも二つだけで十分だと断言したい。
①パソコンについているいちばん簡便な検索機能で、全データを瞬時に文字検索できる。
②保存してある情報はすべてデータベースとして活用できる。これらを用いてコピー&ペーストすることで、次のアウトプットを簡単に行なうことができる。
(同書P125より)

【その4】
 この戦略はまったく正しかった。だからそれ以降もいったん使いこなしたソフトはよほどのことがないかぎり、とことん使ってみる。
 そのほうが、そのソフトのもつ潜在能力に習熟することができるし、何よりも、乗り換えにともなうタイムロスを激減させることができるからだ。(同書P127より)

【その5】
このように、不可能なことは早々に見切りをつけ、よい面を見るのがいちばんだ。
 では、日本式の細かなコミュニケーションは今後不要かというと、それも違う。オンラインで切り捨てられた部分を、いかに補完するか考えなくてはならない。(同書P230より)


 実はまだまだある。しかし、これ以上続ければ蛇足的がほんとうに「蛇足」になってしまう。「蛇足」こそが、この本の趣旨にもっとも反するものである。
 だから、これぐらいにしておこう。

 ぜひ、ご一読を!!

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【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店)

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▼鎌田浩毅氏は、寺田寅彦についてたいへん興味深いことを語っておられた。

 アウトリーチに関する私の修行は今も進行中であり、寺田が残してくれた試行錯誤の記録は知恵袋となっている。彼の専門と思想を引き継ぐ者として、これからも寺田寅彦を「活用」していきたいと思う。 (「寺田寅彦を「活用」する」鎌田浩毅『科学者の目、科学の芽』(岩波書店)P174より)

 この「寺田寅彦を「活用」する」というコトバにいたく共感した。
 大賛成である!!
 レベルはとても及ばないが、姿勢だけは少しずつ真似ていきたいものであると思った。

▼この春に、このコトバを具現化したような本が出された。
 それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店 2021.3.26)

 この春、創刊された「岩波ジュニアスタートブックス」(ジュニスタ)の一冊として出された。
 アリガタイ!!
 私は昔から「ほんとうの名著は児童書にアリ!!」
 という確信を持っていた。
 初学者向けに書かれてわかりやすく面白い本は、誰が読んでも興味深く面白い。ほんとうの名著中の名著である。今回の【お薦め本】も、またこの確信を強めるものとなった。
 いつものようにお薦めポイント3つを先にあげておこう。
 
(1)地震学の基本の“き”を教科書よりわかりやすく!!
(2)南海トラフ巨大地震・首都直下地震を起こることを前提にくわしく!!
(3)地震・津波への備えをきわめて具体的に!!

▼ではひとつずついこう。
(1)地震学の基本の“き”を教科書よりわかりやすく!!
序 章 日本をおそった巨大地震
第1章 地震とは何か
第2章 プレート運動と活断層
第3章 地震にともなう災害
 と前半は教科書的な内容がつづきます。
 地震学の基礎・基本の内容が初学者向けに教科書よりくわしくわかりやすく説明されています。
 これは私にもアリガタイ!!
 その道のプロの説明はやっぱりひと味ちがいます。一歩踏み込んでの説明は初学者には「ほんとうに知りたいこと」がわかってアリガタイです。
 一例をあげてみるとこうです。
 

このうち海のプレートは、陸のプレートの下にもぐりこんでいます。太平洋にある2つのプレートが、ななめ方向に日本列島の地下へしずみこんでいるのです。プレートの動きは非常にゆっくりしたもので、1年に4~8㎝くらいの速度で移動しています。私たちの身近なもので言えば、ちょうど爪が伸びるぐらいの速さです。
 こうしたゆっくりとした動きでも、何十万年、何百万年という間には非常に大きな距離を移動します。そして、この運動が、最初に述べた東日本大震災の原因ともなったのです。(同書P36より)

 「プレートがゆっくり動いて…」と説明を受けても、なかなかその「速さ」はピンとこないものです。そこを「ちょうど爪の伸びるぐらいの速さ」と言われるとナットクです。
 これがよほど気に入ったのか、表紙にもなっていますね。
 モットモです!!

(2)南海トラフ巨大地震・首都直下地震を起こることを前提にくわしく!!
「南海トラフ巨大地震」「首都直下地震」いずれもメディアにもよくとりあげられ知っているつもりになっていることが多い。しかし、なかなか切実感・危機感がないのが実情である。 
 この本ではちょっと違う迫り方をしていた。
 

 ここで述べた予測は、科学的データに基づいて行なわれたものであり、週刊誌やテレビでよく報道される「予言」とはまったく異なります。
 これらのメディアでは何月何日に大地震発生などと予言していますが、現在の地震学では、日付まで予知することはまったく不可能です。まず「何月何日」という予言はすべて根拠のないものと考えて差しつかえありません。
 もともと地震現象にはピンポイントでの予測はできないのです。科学的根拠のない予言と地震予知のちがいが、そこにあります。
 さらに西暦何年に起きると年号に特定して予測することも、同様にできません。
 (同書P75より)

 現在の地震学の限界を明らかにしたうえでの次なるコトバは説得力を持ってきます。
 

 よって、確率として2030年から起きる可能性がきわめて高いことを念頭において準備してください、と私たち専門家はメッセージを発しているのです。地学では、シミュレーションによって比較的細かい数字が出されることもありますが、実際には大きな誤差をともなっていることを理解してほしいと思います。
 じつは、世界の変動帯でこれほど次の巨大地震が予測できるケースは他にはないと言っても過言ではありません。その意味では、2030年代というのは非常に貴重ないわば「虎の子」の情報なので、ぜひ活用していただきたいと願っています。(同書P76より)

 必ず起こることを前提とする被害の説明は、大きな説得力を持ち次なる行動に結びつきます。
 
▼最後のポイントに行きます。
(3)地震・津波への備えをきわめて具体的に!!
 災害への「備え」について、現代の暮らしに沿ってきわめて具体的に語ってくれている。
 「備え」についての科学的根拠もはっきり示してくれているのはアリガタイ!!

 しかし人間はそのような確率で示される将来の出来事に対して、リアルな感覚を持つのが難しい習性を持っています。だからこそ私は南海トラフ巨大地震の場合「2030年代に起きても本当に大丈夫か」とピンポイントで想定した警告を発しています。  個人の人生にとっても国にとっても、入念な準備が非常に重要だからです。たとえ巨大地震が実際に起こったとしても、事前にしっかり備えをしておけば、被害の8割は減らすことができるのです。(同書P112より)

 寅彦が最晩年まで鳴らし続けてくれた警鐘「天災は忘れられたる頃来る」を、今、鎌田浩毅氏が引き継いで鳴らしてくれている気がしてくるのだった。

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【お薦め本】『細胞とはなんだろう』(武村政春著 ブルーバックス)

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▼4月に入り新型コロナウイルス感染状況は「第4波」を危惧される状況にある。
 毎日、「変異株」、ワクチンの話題、感染情報も時々刻々更新されていく。
 こんな状況下にあって、今一度

 生命体がウイルスに感染するとは!?
 そもそもウイルスとは!?
 細胞ではどんな営みが!?
 細胞とウイルスの関係は!?

等々を考えてみることは、「正しくこわがる」ためにも、またこれからの「未知」なる時代を生きていくうえでもとても意味あることかも知れない。

▼それらのことを考えるには、ピッタリの本が出ていた。
 それが今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『細胞とはなんだろう 「生命が宿る最小単位」のからくり』(武村政春著 講談社ブルーバックス 2020.10.20)
 
 いきなり核心をつくコトバがあった。

 新型コロナウイルスは僕たち人間の細胞に感染するが、感染するのはあくまでも人間の細胞であって、僕たち人間そのものではない。(同書P4より)

 こちらが意図する疑問にも答えてくれそうだ。期待をもたせてくれる。
 いつものように、前もってお薦めポイント3つをあげておこう。
 
(1)〝ウイルス目線〟からの細胞観を楽しむことができる。
(2) 細胞・ウイルス研究最前線の物語を面白く学ぶことができる。
(3) 究極の「ふしぎ!?」=生命とは!? を考えるヒントがある。

▼まずは(1)から行こう。
(1)〝ウイルス目線〟からの細胞観を楽しむことができる。
 著者・武村政春氏の専門は「巨大ウイルス学」である。
 「はじめに」のなかで、この本について次のように語っていた。

 冒頭で、「細胞を取り扱う研究をしている」と述べたが、じつは僕は、細胞の研究者でない。どちらかというと、現在の僕の専門は、ウイルス学である。そして、そのなかでも巨大ウイルス学という、ウイルス学会でもほとんど相手にされない(興味を示されない、というべきか)特殊で辺境のマイナー学だ。

 しかも、ウイルスは細胞ではない。細胞からできていないので、生物でもない。微生物の教科書で扱われてはいるけれども、どう考えたって微「生物」ではない。生物の仲間には入れてもらえないがゆえに、生物学者もあまりウイルスについて考えてくれたりはしない。

 べつに卑屈になっているわけではない。僕がいいたいのは、その生物ではないウイルスを研究している人間が細胞のことを書いたのが、この本だということだ。(同書P5より)  

 また次のようにも語っていた。

 しかし、細胞からできていないがために生物学者から無視され、高校生物の教科書からは追放状態にあり、名前そのものが元は「毒(virus)」の意味だから、いわば謂れのない悪評を一身に浴びているウイルスに対して(たとえば新型コロナウイルスなど、悪評が立つ謂れのあるウイルスももちろんいるが)、僕はきわめて同情しているから、罵詈雑言を浴びせないにしても、ウイルスのしくみを通して細胞を見つめる態度で臨みたいと思ったのだ。  いやむしろ、地球上に生物よりもたくさんいて、なおかつその生物のしくみを利用している彼らの存在を無視した生物学など、もはやあり得ないとさえ思っている。

 
 細胞とはなんだろう。
 ちょいと脇に逸れた視点、いうなれば〝ウイルス目線〟からの細胞観を、読者諸賢に楽しんでいただければ幸いである。 (同書P6より)

 〝ウイルス目線〟この本を読み解くキーワードだ。
 この時代に、こんなこというとやや顰蹙をかってしまうかも知れないが、著者の熱い〝ウイルス目線〟にほだされて、いつのまにやら「ウイルスもなかなか…」という感情がうまれてくるのもたしかだった。

(2) 細胞・ウイルス研究最前線の物語を面白く学ぶことができる。
〝ウイルス目線〟は徹底していた。
 やや長めの「プロローグ」からはじまり、第1章~第5章までその姿勢は貫かれていた。
 各章の「物語」を次のように導入していた。1章ごとに引用させてもらうと次のようになる。

第1章 細胞膜──細胞を形づくる「脂質二重層」の秘密

 細胞の形を決めるという重要な役割を果たすその一方で、細胞膜はじつのところ、細胞の弱点にもなり得る。細胞はつねに、ウイルスの侵入という非常事態にさらされており、細胞膜はその唯一の侵入経路となつているからだ。そしてウィルスが生き、増殖できるのもまた、細胞膜が存在するがゆえなのである。
 これは、そうした喜怒哀楽すべての表情を垣間見せる、愛すべき「脂質二重層」の物語である(同書P46より)

第2章 リボソーム──生命の必須条件を支える最重要粒子

 しかし、自己複製と代謝の二つは、ウイルスが決して自分たちだけではできない能力であるという点で、最初の一つとは決定的に異なっている。最初の一つは、エンベロープウイルスであれば、理論的にあてはまっているともいえるが、あと二つは、たとえエンベロープウイルスであっても自分たちだけでは不可能な能力だ。いったいどうしてなのだろう。
 これは、その能力を生み出すことができる唯一者、慈しむべき「粒子」の物語である。(同書P88より)

第3章 ミトコンドリア──数奇な運命をたどった「元」生物

 ミトコンドリアはそもそも、僕たち真核生物のもつ、一つの「細胞小器官」にすぎないはずだった。ところが、研究が進むにつれて、真核生物の進化にきわめて重要な役割を担ってきたことがわかってきた。そして、どうやらウイルスとの関係も、案外奥が深いかもしれない、いうこともー。
 これは、そうしたミステリアスなベールに包まれた、驚くべき「寄生者」の物語である。
(同書P124より)

第4章 細胞内膜系──ウイルスに悪用される輸送システム

 「そこに何かある」という経験。そこに何かがあって、前に行けなくなった経験。前後左右をやわらかいものに包まれて、異世界にでも迷い込んだかのように思った経験……。
 このような現象を、じつは僕たちの細胞の中で、ウイルスたちも経験しているかもしれないとしたら……?
 じつは新型コロナウイルスも、おそらくそれを経験している。いや、経験しているだけでなく、積極的にその経験を利用して、増殖している。
 これは、そうした懐かしい経験を彷彿させる、愉快な「膜」の物語である。(同書P158より)

第5章 細胞核──寄生者が生み出した真核細胞の司令塔

しかし、ほんとうにそうだろかー僕はいつもこう考える。細胞が生物の基本単位とするならば、その細胞の内部に包含される「細胞核」が、まるで独立した生物であるかのようにふるまうさまを、いったいどう考えればよいのか、と。
 最大の細胞小器官であり、かつ最大の〝寄生者〟でもある細胞核ー。
 これは、そうした矛盾をつねに抱えて苦しむ、尊敬すべき「司令塔」の物語である。(同書P192より)

 こう見てくると、耳慣れないコトバの連続で、私のようなシロウトは退屈してしまいそうだ。でもそこはふつうの単なる研究最前線の報告の書ではない特徴をこの本は持っていた。
 著者紹介のところに「趣味は」「落語、妖怪など」とある。
 そう武村氏は、水木しげるの「妖怪」の大ファンなのである。要所要所で「妖怪」が登場する。耳慣れないウイルスコトバも、いかにもの「妖怪」の登場で飽きさせない!!
 また、ときに飛び出す関西弁丸出しの突っ込みは、「落語」で鍛えられたのだろうか。

 いずれにしてもウイルス初学者の私にはアリガタイ!!
 飽きないで面白く学べる!!


▼最後はこれだ。
(3) 究極の「ふしぎ!?」=生命とは!? を考えるヒントがある。

 ここまでは、〝ウイルス目線〟にこだわるとは言いながらも、どこかやはり本のタイトル『細胞とはなんだろう』に遠慮しておられたのだろうか、少し「封印気味」(著者P238)だった。
 5章の終りの頃になって、こらえきれずに本意を吐露することとなった。それが実に面白い!!

 この地球はよく「水の惑星」といわれるけれども、じつのところ、「ウイルスの惑星」というべきものでもある。生物の個体とウイルス粒子のどちらが、この地球上に多いかと考えれば、ウイルス粒子の方が圧倒的に多いのだ。  しかも、進化的にも非常に古く、巨大ウイルスは真核生物の起源にまで、バクテリオファージはバクテリアの起源にまで、それぞれ遡れるであろう。コロナウイルスでさえ、五〇〇〇年から一万年まで、その起源を遡ることができるといわれる。なかには、生物の細胞はウイルス(のような単純な形をした何か)が元になってできたという考え方すら存在する。

 地球の「主」は、まさしくウイルスなのだ。(同書P234より)


 こうした視点から、果たして細胞は『生物の最小単位』であるか否か」を考えてみると、そもそも「単位」とか「最小」とか、そういう考え方そのものが実態にそぐわないのではないかという思いが頭をもたげてくる。細胞は確かに、生物が生きていくうえで一定の役割をもっているし、生まれてから死ぬまで、細胞をベースに生命現象は構築され、その上で生物その体を成長・維持し、やがて老いていく。
 しかし、どうやらそれは単なる「表向き」の様相にすぎないのではないか。じつは細胞は、ウイルスが長い年月をかけて構築した、自らの複製の「場」にすぎないのではないか。(同書P235より)

 そして、ついには次のように言い切るのである!!

 細胞とはなんだろう。

 この疑問を呈するとき、人々の頭に去来するものは、人それぞれであろう。しかし、そこにウイルスがひょっこりと顔を出すことによっで、細胞の違った一面が見えてくる。それは生物自身のことだけでなく、学問としての生物学・生命科学にとっても、同様にいえることではないだろうか。
 ウイルスを無視して細胞を語ることができないのであれば、ウイルスを無視した生物学もあり得ない。細胞はまさに、ウイルスのために存在するのだから。(同書P236より)

 ここまで言われると、やはりウイルスそのものことが気になってくるのである。
 そして、やがて究極の「ふしぎ!?」=「生命」とは!?にいきつくのである。

 この究極の「ふしぎ!?」を考えるためのヒントが満載さたれた、今もっともタイムリーな一冊と言えるかもしれない。

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