
▼「あれっ!? 居ない!!」
「1ヶ月前には、たしかにここに姿があったのに!!」
とりわけ61号のナイロン袋には目を凝らしてしっかり見た。
やっぱり居ない!!
消えた!! 水が異様に「濁っている」!!
あわせて60号のナイロン袋も観察してみる。
1ヶ月前と大きく変化はないようだ。袋の隅にこびりついた茶色の「モノ」があるのは変化ない。
水は透明に澄んでいた!!
いずれにしても こうして
60号・61号コウガイビルはともに 5ヶ月を待たずに消えた!!




▼ 「生命あるモノ」が消える!?
今年も、やっぱり「授業びらき」の構想にはこの「ナイロン袋」を持ち込んでと考えていたのに。
しばしば引用させてもらってきたが、あのダーウィンもこの「消える」を観察していた。
私は、南半球の各地で、陸生のプラナリアを十二種以上見た。ブァン ディーメンス ランド Van Dimen's Land で得た若干の標本には、朽木を食わせて、約二ヶ月も生存をつづけさせた。一匹のプラナリアをだいたい相等しい大きさに横断すると、二週間のうちに双方とも完全な体となった。更に、片方が下面に開口を二つとも持ち、従って他の方は開口を一つも持たぬように切ってみた。施術後25日を経て、比較的完全に近かった方は、普通の標本と区別できぬまでになった。片方もその形がいちじるしく大きくなり、そして後端に近く柔らかい細胞集団のうちに透明な空間を生じ、その中には椀のような形の口の原基が明らかに認められた。しかし下面に裂口が開くには到らなかった。赤道に近づいたために、気温の上昇によって、すべての個体を殺すようなことがなかったならば、この最後の段階も構造を完成したに違いない。この実験はすでによく知られているところであるが、一方の個体の簡単な体の一端から、必須の器官がことごとく次ぎ次ぎに生ずるのを見るのは面白かった。プラナリア類を飼うのは極めてむずかしい。生活現象が終われば、一般に見る天然の変化の法則がここにも働いて、体は全体に柔らかくなり、液化する。そのはやさは、他に比べるものもないほどである。(「ピーグル号航海記 上」(チャールズ・ダーウィン著 島地 威雄訳 岩波文庫 P54より)
「天然の変化の法則」って何!?
▼このときどうしても引用しておきたいもうひとつの文献があった。
■『プラナリアの形態分化~基礎から遺伝子まで~』(手代木渉、渡辺憲二著、共立出版 1998.3.25)
この本の
「14.陸産プラナリア,コウガイビル種類・生態並びに形態分化」(P259~)「14.9 飢餓と再生」(P275)にあった。
コウガイビルの飼育では給餌が大切な要素となるが、餌に対しての反応は同一種内でも異なり積極的に摂取するグループとそうでもないものとがある。また長期間の飢餓に耐え、もとの体重の1/100に減少しても生存し続けることができる。このような生理的変化が、顕著な再生能をもつ本動物の器官形成にどのような影響を及ぼすのか、頭部再生の有無、形成所要時間、極性との関連について、採集直後の体重を100として、もとの30~40%に減少したグループを飢餓個体として実験を行った。
なお、飢餓個体の設定は、採集された個体のうち、何としても餌を食べないものがあり、かなりの期間絶食にも耐えられるが、やがて死に至る。体重減少と生存期間の長短は一定ではないが、採取後減少の一途をたどる体重は、ある時点で平衡状態となり、これ以降急激に減少して死ぬものが多い。体重が安定をみせる状態を越えると個体は死を迎えることから、この安定期(もとの体重の30~40%)を飢餓状態と考えた。これらの飢餓グループと採集まもないものとを次の実験により比較した。(同書P276より)
なんとも示唆的な文章である。
▼これまでの 「コウガイビル」を追う のなかで、エサなしで長く生き延びた「記録」は
●36号コウガイビルはエサなしで「385日」生きのびた!!
次いでの「記録」は
●第1号コウガイビルはエサなしで「261日」生きのびた!!
デアル。
あらためて問いたい!!
「生きる」って!?
「生命」って何!?
「コウガイビル」の「ふしぎ!?」の謎解きはまだまだつづきそうである。
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