▼「動く大地」を科学する のシリーズはまだまだ続けるつもりだ。
とは言っても、ついつい暗礁にのりあげてしまう。
「次にどこに行って、何を!?」
が見えなくなってしまうのである。
「これなら、もっとちゃんと勉強しとくんだった」と悔やんでみてもしかたない。
しかし、これを途中断念する気にはなれない。
こんなとき、シロウトの私にピッタリとくる参考文献はないものだろうか。
捜していた。
そして、本棚のスミでこの本みつけた。
▼読んだことがあるようだ。
マーカーでチェックしたところがあるので、しかし 忘れてしまっていた。
あらためて読んでみて、ぜひとも【お薦め本】にあげたくなってきた。
◆【お薦め本】『日本列島の生い立ちを読む』(斎藤靖二著 岩波書店 2007.8.8)
例によって、3つの【お薦めポイント】をあげておく。
(1)地質学の基本の「き」から語ってくれている!!
(2)あらたな「知見」で、日本列島の歴史をより面白く語っている!!
(3)地域のフィールドワークに誘ってくれている!!
▼では少しだけくわしく
(1)地質学の基本の「き」から語ってくれている!!
いつまでたってもシロウトの私には、「はじめに」の巻頭のコトバが妙にうれしかった。
「地質はどうもわかりません」と、これまでつきあってきた多くの方からいわれてきました。もちろん地質を専門にしていない方達からです。これにはどうやら二つの異なった意味あいがあるようです。ひとつは、野外で崖に露出している地層や岩石を見たときに、何をどのように観察するのか、あるいはどのように考えるのかがわからないというもので、岩石や化石などの知識が増えると解決する問題です。もうひとつは困ったことに解決しにくい問題で、地質をやっている人(地質屋と呼ばれたりします)にしかわからない用語と理屈が多くて、地質の話を理解することができないというものでした。(同書 「はじめに」ⅴ より)
自分の不勉強を棚に上げてですが、まったく同感でした。
この一文により、私はこの本をぜひとも【お薦め本】にあげたくなったと言っても過言ではありません。
この本全体を通して、最初の「地質はどうもわかりません」に応えようとしてくれているように思えた。
私のようなやっかいなシロウトには、「今さら人には聞けない」蓄積された「ふしぎ!?」がいくつもあった。
そのことについて、とてもわかりやすく基本の「き」から語ってくれていた。
例えばこうである。
当時の地質学のデータはほとんどヨーロッパに限られていたので、地質時代の名称にはヨーロッパの地名や部族名が用いられています。古生代のカンブリア、オルドビス、シルル、デホンといった名称はイギリスのウェールズ地方の地名や部族名で、石炭紀はイギリスの夾炭層に由来しています。二畳紀はドイツの二枚重ねの地層ダイアスからきたものですが、同時代の海成層に用いられるペルム紀はウラル山麓の地名に由来するものです。中生代の三畳紀はドイツの大きく三つに重なってみえる地層から、ジュラ紀はフランスとスイスの国境ジュラ山脈からとられたものです。白亜紀は、チョークのラテン語であるクレタにもとづくものですが、ヨーロッパではチョーク層がこの時代代表する地層だからです。新生代の第三紀はイタリアで、第四紀はフランスでよく研究されました。いずれも、その時代の地層を最もよく観察できる地域を中心に地層の順番が調べられ、その中の化石内容がその時代を代表するものとして研究されたのです。(同書P16より)
知ってしまえばなんということのないことかも知れませんが、なんだそうだったのか!!
とうれしい気分になったりするんですよね。
今やごくごくアタリマエに語られる「付加体」ですが、やっぱりシロウトはそのアタリマエを、繰り返して聞きたいものなんです。
移動する海洋プレートが、チャートや枕状溶岩を海溝まで運んできたのでしょう。そして、プレートが地球内部に沈み込んでいくときに、一部がはぎ取られ、そこに堆積していた砂泥互層とともに陸側に押しつけられのでしょう。このようにして陸側に付け加えられたものを、「付加体」いいますが、四万十帯の謎は、それを付加体とみることでみごとに解けてしまったのです。(同書P87より)
(2)あらたな「知見」で、日本列島の歴史をより面白く語っている!!
「付加体」「プレートテクトニクス」などは、今となっては、あらたな「知見」というよりはアタリマエすぎるほどアタリマエの「科学」なのかも知れない。
それでも骨董ボンコツ頭の私にはやっぱり新鮮だ!!
ところがいまでは逆に地層としてはめちゃくちゃなもののほうが、非常に面白くなりました。プレート・テクトニクスという観点から新しく見直すことができるようになり、微化石や放射年代を利用して、複雑な地質体でも解析する手法が確立されたからです。日本列島には、新しい眼で見直して労力を払えば、驚くような発見を秘めている岩石や地層がまだまだありそうです。そんなに大げさな発見でなくても、たとえば礁性石灰岩を見て、それが遠い熱帯の海域からここまで、長い時間をかけて移動してきたのだと理解することができれば、だれでもある種の感動をもつことができます。
みなさんも、野外に行ったときにはぜひ崖を観察してください。崖にはその土地の成り立ちだけでなく、日本列島の生い立ちとか、地球の動きまで記録されています。(同書P146 より)
そう言われると、やっぱりその「記録」を読み解きたくなってきますよね。
▼そして、最後のお薦めポイントに行きます。
(3)地域のフィールドワークに誘ってくれている!!
ここが本命です。
裏山の崖とか、橋の下の崖といった身近なところに、自然の秘密、それも地球の大きな営みが隠されています。どんな地層や岩石がでていても、そこには地表環境の変遷、マグマの活動、あるいは地下での変成作用が記録されています。丹念に観察していくと、氷期・間氷期のリズムや、海洋底が拡大し移動する、そして海洋プレートが沈み込む、大陸地塊も移動し、ついには衝突して山脈を形成する、地球の大きな動きが見えてくるのです。 地層に直接手を触れみると、もっと地球の動きを実感できることでしょう。(同書P146より)
うれしいことに、自分の暮らす地域のフィールドワークに誘ってくれているのです。
具体的な各地域での実践研究例が、豊富な資料とわかりやすい図で語られいます。
気になるところを繰り返し読み返しながら、「動く大地」を科学する を続けて行きたいと思っています。
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