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【お薦め本】『クモのイト』(中田兼介著 ミシマ社)

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▼私のシロウト「クモ学」は、偶然にも2013年の夏にコガネグモの「狩り」を目撃したことによってはじまった!!
 それまで、ことさらにクモの存在すら認識したこともなかった。いや、無意味に「いやなヤツ」ぐらいの認識があったかも知れない。
 しかし、このときをきっかけにコガネグモ、ゲホウグモ、ジョロウグモ等などこんなに面白くて「ふしぎ!?」生きものが、一緒にに暮らしていることを知った。
 知れば知るほど「ふしぎ!?」がふえてきて面白かった!!
 誰かはやく『クモはすごい』を書いて欲しいと願いつづけていた。

◆「クモ学」のすすめ


▼私は間違っていた!!
 やっと気づいた。
 私のアンテナが低くなっていただけだった。
 すでに待望のその本は出版されていた。それが今回の【お薦め本】だった。
 
◆【お薦め本】『クモのイト』(中田兼介著 ミシマ社 2019.9.26)

待望のこの本は、期待以上に面白かった!!
あまりに面白いので、いっきょに読めた。
お薦めポイントもいっぱいありすぎて、いつものように3つにしぼるのはむつかしかった。
でも、やっぱり3つにしておこう。

(1)私の「クモ学」の世界をより豊かに面白くしてくれた!!
(2)等身大のユーモアたっぷりの語り口調がうれしい!!
(3)今年のクモたちとの「出会い」を楽しみなものにしてくれた!!


▼では少しだけ詳しくなかみにふれてみましょう。

(1)私の「クモ学」の世界をより豊かに面白くしてくれた!!
 少しだけといっても、60歳台になってからはじめた「にわかファン」とちがって、本格的な専門家です。
 「へーそうだったのか!!」と驚きナットクすることばかりだった。 
 当然、シロウトの私のレベルとはちがうが、共感できるところも多かったです。
 たとえばこうです。

 クモの魅力とは何でしょう?クジラのように大きくもない。鳥のように美しく鳴くわけではなもない。イヌのように懐くわけでもない。魚のように美味しいわけでもない。クワガタのようにカッコよくもない。
 私が思うに、クモの魅力は、その賢さと複雑さにあります。クモは他の動物を襲って生きている捕食者です。うまくエサを捕らえるために、糸を使ってワナを仕掛けたり、オトリを使っておびき寄せたり。多彩な技を繰り出すために、経験から学び、未来を予測して柔軟に生き方を変えていきます。その様子を見ていると、クモに意図があるように見えてきます。この世界はクモの意図に満ちあふれているのかも。 
 そんなクモには、私たち人間と重なる部分もありますし、よく似ているようでまったく異質な部分もあります。ですから、ずっと見ていると、自分たち人間の生き方が決して唯一絶対のものでなく、実はいろんな可能性の一つに過ぎなかったんだと気づかされます。この信じて疑っていなかった世界が崩壊するような感覚を覚える瞬間は、一度体験すると病みつきです。私にとってクモの魅力はここにあります。(同書P7より)
 
 まったく同感です!!
 私も、ずっとこれが言いたかったです。
 でも、まったくのシロウトの私には、知識もコトバもなかったです。
 だから、『クモはすごい』をはやく誰かに書いて欲しかったのです。

 私のシロウト「クモ学」の世界は、自宅から半径数㎞の限られた範囲だけでのものだった。
 むしろ最も身近にこそ、その最大の「ふしぎ!?」があると主張していた。
 しかし、それは広い世界のことを知らなかっただけのことかも知れない。
 この本を読んでいると痛切にそう思い始めていた。
 例えばこうです。
 

クモ、日本人より先に宇宙を飛ぶ
 NASAというと、宇宙開発です。そして、クモと宇宙は切っても切り離せない関係にあります。なんといっても、これまで十六個体のクモが宇宙旅行をしているのです。ちなみに宇宙を飛んだことのある日本人は二〇一九年時点で一二人しかいません。
 クモが最初に地球の重力のくびきを離れたのは、日本人に先駆けること二十年近くなる一九七三年のことでした。(同書P27より)

 「重力」のことは意識したことはあるとは言え、「宇宙」のことまで考えていなかったです。いつも下向きにネットに待機して「狩り」をすることは観察により知っていても、「重力」と関係を深く追求することはなかったです。
 関連して、こうも教えてくれています。

 クモの世界の大法則が成り立つのは、下のほうがエサをとるのに都合がよいからです。私たちは重力のある世界に棲んでいるので、上へのぼるより下へおりるほうが速く移動できます。ですから、クモは下にかかったエサを捕まえやすいのです。
 私たちが商売するとき、お客さんがよく来る場所には大きな店を開くように、クモもとりやすい方向に網をひろげているわけです。下を向くのも同じ理由で、エサがとりやすい下を向いてあらかじめ好機に備えています。(同書P79より)

 なんというアタリマエ!!
 もっと驚くのはこのアタリマエにさからうクモもいるという!!
 ことさように、専門家だからこそ知るうんちくが次々と出てくる。
 それが実に面白い!! 
 私がこれまで知っていた「クモ学」の世界をどんどん豊かにふくらませてくれるのだ。
 いっぱいその具体例がありすぎて、ほんとうにきりがないが、もうひとつだけ例をあげておく。
 クモ流、おびき寄せの術
 クモはただ網を仕掛けてエサが来るのを待ちぶせる受け身一辺倒の生き物ではありません。エサをだまして、おびき寄せることもこともします。クモの網は、材料の糸がとても細く、光をあまり反射しないようになっているのに、その中心部には、いろいろな形の、糸でできた目立つ飾りがついていることがあります。
 この飾りを作る糸は、たて糸とも横糸とも性質が違っていて、昆虫が見ることのできる紫外線を中心に、光をよく反射します。一説によると、この目立つ飾りとクモのからだの色や模様があいまって、私たちほどに目のよくない昆虫からは、花のように見えるのだそうです。ハチのような昆虫はこの偽物の花に引き寄せられていきます。そして、ハッと気づいたときはすでに遅し、網にぶつかってしまいます。(同書P81より)

 ずっと「ふしぎ!?」に思ってきた「飾り=隠れ帯(今はあまり使わないコトバらしい)」の謎解きもしてくれているのです。やっぱり「クモはすごい」デス!!
 

(2)等身大のユーモアたっぷりの語り口調がうれしい!!
かつて延原肇先生(高校教師・生態学者)は言った。
「ミミズの身になってミミズをみる」と。 
それを合点的に肯定できる一言だと、あの庄司和晃先生は絶賛していた。
この著者は、最後の最後にこう書き記していた。

 クモを見ていると「何を考えているんだろう」と思います。人間を見ているときに考えるのと基本的に同じです。経験で変わり未来を予測する、柔軟で複雑な心があります。本当か?と問い詰められると、うううと困ってしまうのですが、ともかく眺めているとそう言いたくなる気持ちを抑えられません(動物行動学では、対象を人になぞらえて理解しようとするのは抑制的であるべきとされていて、私もその意味はよく理解できるのですが、一方で人間が世界を理解するやり方とはそういうものであろうとも思います)。本書のタイトルは、そんなクモの心を「イト」=「意図」として表現しています。
 もちろん「イト」は、クモの最大の特徴である「糸」でもあるわけです。糸を世界に張り巡らせる。心のあるクモ。そんな二つの「イト」に満ちた世界を、健やかなまま息子の世代に受け渡せれば、この本がささやかでもその役に立てればな、と願っています。 
(同書P195より)

 著者の「イト」はみごとに成功しているようです。
 始終一貫して「クモの身になって、クモをみている」のです。
 それも、等身大のユーモアたっぷりの語り口調で書かれているからうれしいですね。
 とりわけ後半の
第5章 クモ的思考 その1 個性って?
第6章 クモ的思考 その2 コミュニケーション上手になりたい
第7章 クモ的思考 その3 不確実な世の中をサバイバルする
 が面白いですね!!


▼最後に行きましょう。

(3)今年のクモたちとの「出会い」を楽しみなものにしてくれた!!
 正直に言いますと、最初にコガネグモの「狩り」に出会ったときのような新鮮な感動がうすれてきていました。
 最初は「こんなスゴイやつたちと一緒に暮らしてきたんだ!!」と、会う人ごとに熱く語っていました。
 ところが、最近ちょっと…!?
 著者はちがいました!!著者の「クモ愛」は徹底していました。
 こんな調子で語りかけてくれていました。
 

やっぱり親愛なる隣人
 ということで、もしもクモがいなくなったら、この世界は大きく様変わりしてしまいます。私たちの日常生活では、クモの存在が意識にのぼってくることはあまりないかもしれませんが、そこはやっぱり親愛なる隣人なのです。
 私たち人間とはまったく違う進化の道筋を経てきたクモ。その生きる論理には、私たちと大きく重なる部分も大きく違う部分も両方あります。
 わかりあえることはないけれども、完全に異質というわけでもない。こういう存在が身近にいてくれるのは、とても素敵なことだと思います。
 もしもクモがいない世界になったりしたら、それはつまらないものだ、と思いませんか?
(同書P191より)

 この本を読んでいると「クモ愛」が復活してきそうです。
 例年よりはやくあたたかくなってきています。
 さあ、「親愛なる隣人」=クモたちもそろそろ活動を開始しているかも知れません。
 今年はどんな「出会い」があるのか、とても楽しみになってきました。

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