本日(2023/05/08)、第347回オンライン「寅の日」!! #電車の混雑について #traday #寺田寅彦
▼私の「○○の科学」遍歴も長くなってきた!!
思い出すものを、アトランダムにならべてみる。
・「常民の科学」
・「等身大の科学」
・「デクノボーの科学」
・「萃点の科学」
・「私の科学」
そして、今 もっとも気に入っているのが
・「共愉の科学」デアル!!
▼本日(2023/05/08)は、第347回オンライン「寅の日」である。
5月のテーマは、
◆5月テーマ 「日常のなかの科学」
である。寅彦のもっとも得意とする領域なかのかも知れない。
5月1回目の本日は「電車の混雑について」を読む。
◆本日(2023/05/08)、第347回オンライン「寅の日」!!
▼日常生活のなかで「科学する」とは、こんなことを言うのだろうという文章がつづく。
このような特別な時間だと、いくら待ってもなかなかすいた電車はなさそうに思われるが、そういう時刻でも、気長く待っているうちには、まれに一台ぐらいはかなりに楽なのが回って来るのである。これは不思議なようであるが、実は不思議でもなんでもない、当然な理由があっての事である。この理由に気のついたのは、しかしほんの近ごろで、それまでは単に一つの実験的事実として認識し、利用していただけであった。
このような律動の最も鮮明に認められるのは、それほど極端には混雑しない、まず言わば中等程度の混雑を示す時刻においてである。
そういう時刻に、試みにある一つの停留所に立って見ると、いつでもほとんどきまったように、次のような週期的の現象が認められる。
私はいつもこうした混雑の週期的な波動の「峰」を避けて「谷」を求める事にしている。そうして正常な座席にゆっくり腰をかけて、落ち着いた気分になって雑誌か書物のようなものを読む事にしている。波の峰から谷まで待つために費やす時間は短い時で数十秒、長くて一分か二分を越ゆる事はまれなくらいである。
しかしここで私の考えてみたいと思う事は、そういう大多数の行為の是非の問題ではなくて、そういう一般乗客の傾向から必然の結果として起こる電車混雑の律動に関する科学的あるいは数理的の問題である。
オミゴト!!
「観察」→「仮説」
日常のなかから「科学」を見つけ出してきているのである!!
▼さすが科学者・寺田寅彦!!
そこにはとどまらなかった。「実証実験」へと進む。
私はこのような考えを正す目的で、時々最寄(もより)の停留所に立って、懐中時計を手にしては、そこを通過する電車のトランシットを測ってみた。その一例として去る六月十九日の晩、神保町(じんぼうちょう)の停留所近くで八時ごろから数十分間巣鴨(すがも)三田(みた)間を往復する電車について行なった観測の結果を次に掲げてみよう。
きっちりとデータを基に考察をすすめるのである!!
この最後の点は不確かだとしても、次の結論は免れ難い、すなわち「来かかった最初の電車に乗る人は、すいた車に会う機会よりも込んだのに乗る機会のほうがかなりに多い。」
それでもしこのような片寄りがちの運転状況を避けて、もう少し均等な分配を得たいというならば、そのために採るべき方法は理論上からは簡単である。第一には電車の車掌なり監督なりが、定員の励行を強行する事も必要であるが、それよりも、乗客自身が、行き当たった最初の車にどうでも乗るという要求をいくぶんでも控えて、三十秒ないし二分ぐらいの貴重な時間を犠牲にしても、次のすいた電車に乗るような方針をとるのが捷径(しょうけい)である。これがために失われた三十秒ないし二分の埋め合わせはおそらく目的地に着く前にすでについてしまいそうに思われる。
しかしそういう美徳の問題などはしばらくおいて、単に功利的ないし利己的の立場から考えても、少なくも電車の場合では、満員車は人に譲って、一歩おくれてすいた車に乗るほうが、自分のためのみならず人のためにも便利であり「能率」のいい所行であるように思われる。少なくも混雑に対する特別な「趣味」を持たない人々にとってはそうである。
ここまでで終わりとしないのが寅彦だった!!
「余談ではあるが」と語られたことが妙に気になるのだった。
これは余談ではあるが、よく考えてみると、いわゆる人生の行路においても存外この電車の問題とよく似た問題が多いように思われて来る。そういう場合に、やはりどうでも最初の満員電車に乗ろうという流儀の人と、少し待っていて次の車を待ち合わせようという人との二通りがあるように見える。
これはおそらくだれにもむつかしい問題であろう。おそらくこれも議論にはならない「趣味」の問題かもしれない。私はただついでながら電車の問題とよく似た問題が他にもあるという事に注意を促したいと思うまでである。
寅彦がこう語ったのは1922(大正11)年のこと!!
今から101年前のことだ!!
| 固定リンク
« 「植物の世界」を科学する(9) #植物の世界 #花と実 #仮説実験授業 #授業書 #花とたね #板倉聖宣 | トップページ | 【Web更新5/7】23-19 サイエンスコミュニケーター宣言等 更新!! »
コメント