本日(2023/06/01)、第349回オンライン「寅の日」!! #草をのぞく #traday #寺田寅彦
▼寺田寅彦は「科学と文学」のなかで、次のように言っていた。
顕微鏡で花の構造を子細に点検すれば、花の美しさが消滅するという考えは途方もない偏見である。花の美しさはかえってそのために深められるばかりである。花の植物生理的機能を学んで後に始めて充分に咲く花の喜びと散る花の哀れを感ずることもできるであろう。
寅彦の軸足はつねに「科学」にあった!!
▼本日(2023/06/01)は、第349回オンライン「寅の日」である。
6月のテーマは、朝ドラ「らんまん」にはじまる折からの牧野富太郎ブームにちなみ次のようにした。
◆6月テーマ 「寅彦と植物学」
同じ土佐の寺田寅彦と牧野富太郎どのように交叉し、響き合ったのだろう。
本日は、その第1回目である。「草をのぞく」(「沓掛より」より)を読む。
◆本日(2023/06/01)、第349回オンライン「寅の日」!!
▼寅彦と「植物」 どんなつき合いだったのだろう!?
子供の時分に少しばかり植物の採集のまね事をして、腊葉(さくよう)のようなものを数十葉こしらえてみたりしたことはあったが、その後は特別に山野の植物界に立ち入った観察の目を向けるような機会もなくて年を経て来た。
ところが
最近にある友人の趣味に少しかぶれて植物界への注意が復活しかけたのと、もう一つには自分の目下の研究の領域が偶然に植物生理学の領域と接触し始めたために、この好機会を利用して少しばかりこの方面の観察をしようと思ったので、まず第一の参考として牧野(まきの)氏著「植物図鑑」を携帯して行って、少しずつ、草花の名前でも覚えようと企てた。
ここであの「植物図鑑」の登場である!!
そのあとの寅彦の「観察眼」に恐れ入るばかりである。
そして、次のようなことにまで言及していた。
自然界ではこのように、利己がすなわち利他であるようにうまく仕組まれた天の配剤、自然の均衡といったようなものの例が非常に多いようである。
▼ここからの文が、とても寅彦らしかった。
この数日間の植物界見物は実におもしろかった。もっともこんなことは、植物学者、あるいは学者とまでは行かずとも、多少植物通の人にとっては、あまりにも平凡な周知の事実であるかもしれないが、始めて知ったまるの素人(しろうと)には実に無限の驚異と、従って起こる無数の疑問を提供するものである。
こうして秋草の世界をちょっとのぞくだけでも、このわれわれの身辺の世界は、退屈するにはあまりに多くの驚異すべく歓喜すべき生命の現象を蔵しているようである。
こう言いきる寅彦がすばらしい!!
また、最後のアイロニーたっぷりの「まとめ」も、いかにも寅彦らしい!!
今でも浅間の火口へ身を投げる人は絶えないそうである。そういう人たちが、もし途上の一輪の草花を採って子細にその花冠の中に隠された生命の驚異を玩味(がんみ)するだけの心の余裕があったら、おそらく彼らはその場から踵(くびす)を返して再び人の世に帰って来るのではないかという気もするのである。
だから寅彦の随筆は面白い!!
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