« 2023年2月のオンライン「寅の日」は #科学と文学 #traday #寺田寅彦 | トップページ | 子規庵の糸瓜(4年目)から種子を採取した!!(2)(2023/01/19) #子規庵 #糸瓜の種子 #ヘチマタワシ »

本日(2023/01/20)、第338回オンライン「寅の日」!! #とんぼ #traday #寺田寅彦

Dscn2409

▼確かにその「風向風速計」は、建物より2m以上の高さの位置に支柱で支えられていた!!

 「流線型胴体と鉛直な尾翼からなる風向感部、および4枚のプロペラの風速感部で構成されている。風があると風向に正しく向くように胴体と尾翼が回り、風速に比例してプロペラが回転して風向・風速を測る。」
 という。なんとうまくできているものだ!!
 コードが延びていることからみて、電気信号となり逐一私たちの知るところとなるのだろうか!?
 オミゴト!!

▼本日(2023/01/20)は、第338回オンライン「寅の日」である!!
 2023年1月のテーマは次のようにしていた。

【1月テーマ】「寅彦と三斜晶系」

  参考にする随筆集は『三斜晶系』である。
 その二回目である本日は、「二 とんぼ」(『三斜晶系』青空文庫より)を読む。
 
◆本日(2023/01/20)、第338回オンライン「寅の日」!!
●「二 とんぼ」(『三斜晶系』青空文庫より)


▼何気ない「日常」から始まって、いつしか「科学」の本質に迫っていくのが、寅日子先生の常套手段だった!!
 今回もまたさりなんである。

 ステッキの先端を空中に向けて直立させているとそれに来てとまる。そこでステッキをその長軸のまわりに静かに回転させると、とんぼはステッキの回るのとは逆の方向にからだを回して、周囲の空間に対して、常に一定の方向を保とうとする。そういう話を前日子供たちから聞いていたのではたして事実かどうか実験してみようと思った。

 夕日がもう低く傾いていて、とんぼはみんなそれに尻(しり)を向けているのであった。当時ほとんど無風で、少なくも人間に感じるような空気の微動はなかったので、ことによるととんぼはあの大きな目玉を夕日に照りつけられるのがいやで反対のほうに向いているのではないかとも思われた。

しかしまた考えてみると、とんぼの方向を支配する環境的因子はいろいろあるであろうから、他の多数のとんぼが感じないようなある特殊な因子に敏感な少数のものだけが大衆とはちがった行動を取っているのかもしれないと思われた。そのようなことの可能性を暗示する一つの根拠は、最大頻度方向より三十度以上の偏異を示す七匹のどれもがみんなその尾端を電線の南側に向けており、反対に北側に向けたのはただの一匹もなかったという事実である。

  それから、ずっと毎日電線のとんぼのからだの向きを注意して見たが、結局彼らの体向を支配する第一因子は風であるということになった。地上で人体には感じない程度の風でも巻き煙草(たばこ)に点火したのを頭上にかざしてみれば流向がわかる、その程度の風にとんぼは敏感に反応して常に頭を風に面するような態度を取るのである。

 いちばん安全な方法はやはり野外でたくさんの観測を繰り返し、おのおのの場合の風向風速、太陽の高度方位、日照の強度、その他あらゆる気象要素を観測記録し、それに各場合の地形的環境も参考した上で、統計的分析法を使用して、各要素固有の効果を抽出することであろうと思われる。

面白い!!
と思った人は、寅日子先生の思うツボである。

こんな短い文章のなかに「科学の方法」の醍醐味のすべてがつまっていた!!

「観察(実験)→仮説(予想)→考察→再実験→別仮説→…」!!

▼ここまででとどまらないのも寅日子先生の凄さであり、面白さであった。

 とんぼがいかにして風の方向を知覚し、いかにしてそれに対して一定の姿勢をとるかということがまた単に生物学者生理学者のみならず、物理学者工学者にまでもいろいろの問題を提供するであろうと思われた。  

 そして、次をどう読めばいいんだろう!?
 ひよっとしたら、寅日子先生はこれが書きたかったら「とんぼ」を書いたのかも知れない!?
 人間をとんぼに比較するのはあまりに無分別かもしれない。しかし、ある時代のある国民の思想の動向をある方向に引き向ける第一第二の因子が何かしら存在している、それを観察し認識する能力が現在のわれわれには欠けているのではないかという気がする。そうしていっそう難儀なことはその根本的な無知を自覚しないでほんとうはわからないことをわかったつもりになったりあるいは第二次以下の末梢的まっしょうてき因子を第一次の因子と誤認したりして途方もない間違った施設方策をもって世の中に横車を押そうとするもののあることである。

 極めつきが次なるアイロニーである。その意味するところは…
 人類を幸福に世界を平和に導く道は遼遠(りょうえん)である、そこに到達する前にまずわれわれは手近なとんぼの習性の研究から完了してかからなければならないではないか。
 このとんぼの問題が片付くまでは、自分にはいわゆる唯物論的社会学経済学の所論をはっきり理解することが困難なように思われるのである。


寅日子先生がこう書いたのは、最晩年の昭和十年十一月である。
その年の大晦日、寅日子先生は亡くなった!!

 寺田寅彦はいつ読んでも今日的である!!

 

|

« 2023年2月のオンライン「寅の日」は #科学と文学 #traday #寺田寅彦 | トップページ | 子規庵の糸瓜(4年目)から種子を採取した!!(2)(2023/01/19) #子規庵 #糸瓜の種子 #ヘチマタワシ »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)


コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。



« 2023年2月のオンライン「寅の日」は #科学と文学 #traday #寺田寅彦 | トップページ | 子規庵の糸瓜(4年目)から種子を採取した!!(2)(2023/01/19) #子規庵 #糸瓜の種子 #ヘチマタワシ »