【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社)
▼昔、読んだつもりになっていて、あらためて読んでみて、その内容の新鮮さに驚いていてしまうことがある。
自分でも「ほんとうに、この本、昔読んだかな!?」と疑わしくなってしまったりする。
最近、そんな思いをした本に、次がある
●1971年 板倉聖宣『(いたずらはかせの科学の本)もしも原子見えたなら』国土社
初版本は、年表(『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)より)によればそれは半世紀以上前に出されたものだった。
▼「原子論」を科学する シリーズをやっているうちに、ぜひこの本の新版を手に入れて 読んでみたくなった。
◆【お薦め本】『もしも原子がみえたなら 新版 いたずらはかせのかがくの本』(板倉聖宣著 さかたしげゆき 絵 仮説社 2008.11.25)
話があまり面白いので拡散しすぎないうちに、いつもの3つの【お薦め】ポイントをあげておく。
(1)わかりやすく面白い!!
(2)科学的根拠が明確である!!
(3)再度、「原子論」を学び直したい人のための必読書!!
▼できるだけもう少しくわしく書いてみよう。
(1)わかりやすく面白い!!
が 元々これはアタリマエすぎるほどアタリマエのことです。これは「絵本」だからです。
これは、私の「絵本」に対する勝手な思い込みがすぎるでしょうか。
この本ができた根っこのところに、著者の「思い出」が深くかかわっていました
じつは、私がこのような本を書くようになったのは、私自身が小学校5~6年生のころに、この本と同じような原子・分子の話を読んでいて、「その話が私の科学好きを育んでくれた」という思いが元になっています。私はそのころ、子ども向きの科学の本を古本で買うことを覚えたので、たまたま古本屋で<小学校全集>の一冊『児童物理化学物語』という本を買ったのです。そんな本を小遣いで買ったといっても、その本の内容が全部理解できると思って買ったわけではありません。ただ、<そういう科学の本への憧れ>で買ったにすぎません。じっさい大部分の話は理解できず、面白くも感じなかったのですが、その本の一部に「<科学者の使っている不思議なメガネ>を使うと原子や分子が見える」という話があって、とても面白いと思いました。
じつは、その「<不思議なメガネ>を使うと原子や分子の動きまで見える」というのは本当のことではありません。しかし、私は、その話を本当の話として受け入れてしまいました。しかも私は、その後大学生になってまでも、何となく「原子や分子は、その動きまで目に見えるものだ」と思い込んでいました。しかし、その思い違いは私にとってマイナスになることはありませんでした。(同書 P44より)
何事も、こういうことというのは、自分自身の<体験>が元になっているというのは強いものである。この本の面白さやわかりやすさというのは、板倉氏自身のこの<原体験>からくるものだった。
ダカラ、きわめて納得のいく話だった。
(2)科学的根拠が明確である!!
しかし、またなぜ自分が「読んだことがある」と思い込んでいたのだろう。
いや、実際に当時の勤務校の「図書室」ででも当時読んだのかも知れない。初版が半世紀以上昔のことで忘れてしまったのある。
もうひとつ理由があった。それは同名の授業書「もしも原子がみえたなら」(©仮説実験授業研究会1976年5月新版)というのがあって、ならよく参考にさせてもらっていたから、その元本の本書と勘違いしていたのかもしれない。
その授業書の最初は次のようにはじまつていた。
この授業書は『(いたずらはかせの科学の本7)もしも原子がみえたなら』(板倉聖宣著、国土社刊)をもとにして作成されたものです。
<もしも原子がみえたなら>は、約1億倍の分子模型(実体積分子模型)を手にとって、くみたてながら、空気の原子・分子論イメージを形成しようというねらいをもった授業書です。[質問]が三つあるだけで、あとは原子・分子の絵に色ぬりながらお話を読みすすめる、という、仮説実験授業の授業書としては異色の構成をもった授業書ですが、小学校5・6年生や中学生にはたいへん好評を得ています。
「絵本」と言いながらも、いくつも授業実践を経ていたから、中身はきわめて科学的な根拠に基づいていた。特に水の分子(同書P12)、二酸化炭素分子(同書P29)等についてはくわしかった。こうであってこそ、永きにわたって多くの小学生・中学生に受け入れられてきたのであろう。ダカラ、今、大人が読んでも説得力をもつのである。
▼最後に蛇足的になるが
(3)再度、「原子論」を学び直したい人のための必読書!!
今回、私としては、ここがもつとも強調したいところであった。
長期にわたって、『原子論の誕生・追放・復活』(田中 実著 新日本文庫 )、 『原子論の歴史 上・下』 (板倉聖宣著 仮説社)を中心として、「原子論」の歴史を学び直してみた。自分自身が「授業」で使いつづけてきた「原子論的物質観」のルーツを追いつづけてみた。
そのなかで、あらためて気づいたこと、「発見」したことも多かった。
この本も「すへてのものが原子でできている」という「原点」を再認識させてくれる。
簡単に「わかったつもり」にならずに、この偉大なるアタリマエをじっくり学び直してみよう。きっと、「その通り!!」と膝をたたくことも多かろう。ぜひ…!!
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