本日(2022/12/31)、第336回オンライン「寅の日」!! #日本人の自然観 #traday #寺田寅彦
▼『寺田寅彦ー天然に育まれし眼差しー』(高知県立文学館)の「年譜」には次のようにある。
●一九三五(昭和一〇)年 五八歳
12月31日、死去(病は転移性骨腫瘍)。
つまり、本日は「寅彦忌」である!!
▼本日(2022/12/31)は、第336回オンライン「寅の日」である。
「寅彦忌」特番オンライン「寅の日」で読む随筆は毎年きまっていた。
「日本人の自然観」である。
◆本日(2022/12/31)、第336回オンライン「寅の日」!!
▼先の「年譜」には、同年(一九三五年)の7月に次のように記されていた。
7月30日、家族の滞在する星野温泉へ行く。夏の間四回ほど往復。
別にグリーンホテルに滞在して「日本人の自然観」を執筆。
つまり、この「日本人の自然観」、寅彦の最晩年に執筆されたものである。
だから、私は勝手に、これを寅彦の「遺言」であると思っていた!!
寅彦がこれまでに語ってきたことのすべてが、ここに凝縮されていた!!
何度読んでも、読むたびに「発見」がある!!
今年は、引用を少し控えめにしたい。
「緒言」と「結語」に限るというようにしたい。あとはゆっくり、ゆっくりと…。
ではさっそくむ「緒言」から
われわれは通例便宜上自然と人間とを対立させ両方別々の存在のように考える。これが現代の科学的方法の長所であると同時に短所である。この両者は実は合して一つの有機体を構成しているのであって究極的には独立に切り離して考えることのできないものである。人類もあらゆる植物や動物と同様に長い長い歳月の間に自然のふところにはぐくまれてその環境に適応するように育て上げられて来たものであって、あらゆる環境の特異性はその中に育って来たものにたとえわずかでもなんらか固有の印銘を残しているであろうと思われる。
▼「なかみ」はぜひぜひゆっくり一読したいものである。
きっと、これまでに語ってきた「あのこと」を言っているか!?という箇所を「発見」するはずである。
私は、とりあえず「結語」まではしょってみる。
以上の所説を要約すると、日本の自然界が空間的にも時間的にも複雑多様であり、それが住民に無限の恩恵を授けると同時にまた不可抗な威力をもって彼らを支配する、その結果として彼らはこの自然に服従することによってその恩恵を充分に享楽することを学んで来た、この特別な対自然の態度が日本人の物質的ならびに精神的生活の各方面に特殊な影響を及ぼした、というのである。
そうして人は千里眼順風耳を獲得し、かつて夢みていた鳥の翼を手に入れた。このように、自然も変わり人間も昔の人間とちがったものになったとすると、問題の日本人の自然観にもそれに相当してなんらかの変化をきたさなければならないように思われる。そうして、この新しい日本人が新しい自然に順応するまでにはこれから先相当に長い年月の修練を必要とするであろうと思われる。多くの失敗と過誤の苦(にが)い経験を重ねなければなるまいと思われる。現にそうした経験を今日われわれは至るところに味わいつつあるのである。
87年の時空を超えた寅彦からの熱きメッセージが聞こえてくるのである。
来年もオンライン「寅の日」をよろしくお願いします。
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