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「原子論」を科学する(28) #原子論の歴史 #アヴォガドロの仮説 #カルルスルーエ国際会議 #メンデレーエフ #周期表

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「すべてのモノは原子からできている!!」
 このアタリマエ!!

 このアタリマエの「歴史」を長きわたり追い続けてきた。
 「原子論」の面白さをあらためて認識した!!
 どこまでも、やっぱり「ふしぎ!?」を大切にしたい。

▼長きにわたり続けてきた「原子論」の歴史を追う作業も終わりが近づいていた。

 原子と分子の重さを決定するために、これほど大きな有効性をもったアヴォガドロの仮説は約五〇年間はほとんどどんな化学文献にも引用されなかった。
 その理由は簡単ではないが、一口にいえば化学者には化学に固有の手法を重んずる態度が強かったことが大きな原因だったといえる。 
(『原子論の誕生・追放・復活』P171より)

と言われても、シロウトの私には納得できないものがあった。
「ふしぎ!?」だ!!

 そうこうするうちに五〇年だ!!大混乱収束のときが来たようだ。

 一八六〇年に原子量、分子量、化学式の大混乱の解決を求めて、ドイツのカルルスルーエで、自然科学で最初の国際会議が開かれた。イタリアの化学者で、イタリア独立のためにシチリア島でたたかっていたガリバルディ将軍の義勇兵であったカニッツァロが一つの報告をし、印刷物をくばった。それには現代の化学界の大混乱を解決し、最近の進歩に化学理論を適合させるためには、わが祖国の化学者アヴォガドロの仮説を分子量決定の基礎としなければならないことが、強い説得力をもって書かれてあった。
(『原子論の誕生・追放・復活』P173より)

▼この国際会議でのカニッツァロの提案は、次々と波及効果もたらしていった。
  その成果のひとつが「周期表」である。

 メンデレーエフは統一された原子量にたよって元素周期性の法則(いわゆる周期律)を発見した(一八六九年)。その法則には当時知られた六〇種類以上の元素をそれらの原子量や価数から関連づけ、未知元素の存在を予見するという有効性のほかに、原子の内部構造への洞察までふくんでいた。
(『原子論の誕生・追放・復活』P174より)

 さらには

 物理学では一八五〇年代から、気体の原子論-気体分子運動論-が発展し、一八六〇年にはイギリスのマクスウェルがこれをほぼ完成させた。それはやがて熱力学とあいまって物質的世界の運動法則をとらえる新しい展望をきりひらくものとなった。力学と統計数学を基礎とするこの理論には、分子の質量を決めることが欠かせないのであるが、それには一八六〇年まで化学的原子論の成果が必要であった。
 現代に直接つながる近代原子論の歴史は、化学者のカルルスルーエ会議と、物理学における気体分子運動論の基礎づくりをもってはじまった。
(『原子論の誕生・追放・復活』P174より)


▼さて、いよいよここまででいったん幕としよう。

 原子はまだ「仮説」であった。物理学と化学の大きな進歩に支えられて、その正当性を主張する根拠はしだいに強くなったが、原子と分子の存在を物理的方法によって直接的に証明することはまだできなかった。原子の存在、非存在ということをめぐって、またもっと深刻に原子を認識することの可能性をめぐって、やがて科学哲学上の大論争が展開されることとなる。その論争は哲学に関心のある自然科学者を唯物論と観念論の二大陣営に分裂させた。ギリシア時代の原子論、反原子論の対立がイデオロギーのたたかいであったのにも似た状況が出現するのである。それは自然科学がもたらす真理とは何であるかをめぐっての科学内部の論争でもあれば、激動する社会の中での思想闘争でもある複雑なできごとであった。
(『原子論の誕生・追放・復活』P175より)

示唆的なコトバがつづいた。
 科学的方法による自然認識が、人間が物質的世界にはたらきかけることによって描き出す客観的世界の像である以上は-そのことの真偽がまた現代の哲学の一大論争点でもあるのだが-どんなに不完全で、断片的な像であろうとも、より完全な、より全体的な像へ接近するための手がかりでなければならない。不完全な像を完全なものと断定し、部分の姿を全体像ときめつけたとき、そこに誤りが生まれ、挫折がおこり、ひいては科学的真理への不信が芽生える。
(『原子論の誕生・追放・復活』P175より)


 ここまでで 
◆『原子論の誕生・追放・復活』(田中実著 新日本文庫 1977.7.25 初版)
 を参照しながらの「原子論」の歴史を追う作業はいったん終える。
 
 ただし、「原子論」を科学する シリーズはまだまだつづけるつもりである。

(つづく)

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