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本日(2022/05/25)、第317回オンライン「寅の日」!! #マーカス・ショーとレビュー式教育 #traday #寺田寅彦

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▼「もうこのダイコン引っこ抜いてええか?」
 「ええで、もう花の写真も撮ったからな」
 「実もできてるで!!」
 「えっ、実が!?」
 恥ずかしながら、思わず聞き直してしまった。
 花が咲いたら実ができるのはアタリマエ!!実から種が採れるのだ。これまたアタリマエ!!
 なのに私は言ってしまった。

 「実の写真撮りたいから、あとちょっとまそのままにしといて!!」


▼本日(2022/05/25)は、第317回オンライン「寅の日」である。
5月テーマは、

【5月テーマ】「寅彦と科学教育」

である。第三回目の本日読むのは「マーカス・ショーとレビュー式教育」である。

◆本日(2022/05/25)、第317回オンライン「寅の日」!!

●「マーカス・ショーとレビュー式教育」(青空文庫より)


▼「あれ!?」
 なんの話だ。そう思っているあいだに、いつしかどっぷり寅彦の世界に入り込んでしまう。
 いつものことながら、みごとなものだ!!

 いつのまにやら本論の「教育」の話になっていく。

 筋の通った劇よりも、筋はなくて刺戟と衝動を盛り合わせたレビューの流行(はや)る現代に、同じような傾向が色々の他の方面にも見られるのは当然のことかもしれない。それについて先ず何よりも先に思い当るのは現代の教育のプログラムである。
 自分等が商売がら何よりも眼につくのは物理学の中等教科書の内容である。限られた紙幅の中に規定されただけの項目を盛り込まなければならないという必要からではあろうが、実にごたごたとよく色々のことが鮨詰(すしづめ)になっている。

現状認識にとどまらず、少しずつ示唆的な提言が出てくる。

そのうちの一つだけにして他は割愛して、その代りその一つをもう少し詳しく分かるように説明した方が本当の「物理」を教えるためには有効でありそうに思われる。それからまた、近頃の教科書には本文とは大した関係のない併(しか)し見た眼に綺麗なような色々の図版を入れることが流行(はや)るようである。これも一体「物理」とどんな関係があるのか少なくも本文をよんだだけではちっとも分からない。
 
 物理の教科書を見るたびに何となくこの汽車弁当を思い出すのであったが、今度レビューを見学してからレビューと教科書の対照を考えさせられるような機会に接した。
 三つのものを一つに減らしてもその中の一番根本的な一つをみっしりよく理解し呑込んでしまえば、残りの二つはひとりでに分かるというのが基礎的科学の本来の面目である。そうでなくても一つのものをよく玩味(がんみ)してその旨(うま)さが分かれば他のものへの食慾はおのずから誘発されるのである。沢山に並べた栗のいがばかりしゃぶらせるような教科書は明らかに汽車弁当に劣ること数等であろう。
一体「教えるためには教えない術が必要である。」というパラドックスが云わば云い得られなくはない。

88年も前に書かれた文章であるが、今日も有効な提言いっぱいあるように思うのだが。
寅彦はいつ読んでもやっぱり今日的である!!

▼私が寅彦の文章でいちばん気に入っているのは、いつも一方的な「批判」に終わらないところである。
 少しずつ少しずつ「本意」に入っていく。

 物理のような基礎科学の教科書が根本の物理そのものはろくに教えないで瑣末(さまつ)な枝葉の物理器械や工学機械のカタログを暗記させるようなものでは困ると思う。レビュー式でも本当に面白いレビューならまだしも、さっぱり面白くない百景を並べたのでは全く生徒が可愛相(かわいそう)である。結局は物理学そのものが嫌いになるだけであろう。
 一体レビュー式ということには何もそれ自身に悪い意味は少しもないはずである。善用すればむしろ非常に好い効果をあげ得べき可能性を多分にもっているものである。
 教えるためには教えないことが肝心である。もう一杯というところで膳を取り上げ、もう一と幕と思うところで打出しにするという「節制」は教育においてもむしろ甚だ緊要なことではないか。この点について世の教育者、特に教科書の内容に関する一切の膳立ての任に当る方々の考慮を煩わしたいと思う次第である。
現代民衆の心理を無視した学者達が官庁の事務机の上で作り上げた教程のプログラムは理論上如何に完全に出来ていても、活きて動いている時代の人間の役に立つ教育には少しどうかと思われるのである。
 あらゆるレビューのうちで何遍繰返し繰返し観ても飽きない、観ればみる程に美しさ面白さの深まり行くものは、こうした自然界のレビューである。この面白いレビューの観賞を生涯の仕事としている科学者もあるようである。ずいぶん果報な道楽者だとも云われるであろう。


私にとって、「ダイコンの実」は最高の「自然界のレビュー」見えてくるのだった!!

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