「日本理科教育史」をプロットする!!(50) #鉄と硫黄の化合実験 #三井澄雄 #ファーブル #化学の学校 #オストワルド #光学 #ニュートン
▼「鉄と硫黄の化合実験」という定番実験の歴史についてもう少しくわしくみていこう。
参考にさせてもらったのは前回につづきこれだった。
●1977年2月 『化学指導ノート』(三井澄雄著 むぎ書房 1977.2.28)
[6]「鉄とイオウの化合実験」物語 (同書 P160)
(2)銕和硫黄(鉄はイオウと化合する)
ここでは、『舎密開宗』からはじまり、これまでにこの定番実験が出てくる文献がくわしく紹介されていた。
紹介されている順番にあげてみる。
●1935年 『化学講座実験法』(大幸勇吉著 共立社)
「室温に於いても鉄と硫黄と化合することを示さんには次のようにする。…」
三井先生も実際にこの方法で挑戦されたようだ。
▼次にあげてあるのが、あのファーブルの本だ。
●1961年 『ファーブル 化学のふしぎ -混合・化合、元素-』(ファーブル著 市場泰男訳 さ・え・ら書房)
三井先生は、この20年ほど前に田中実先生からその英訳をお借りして読まれたそうだ。
私はまだこの本をみたことがなかった。ぜひ見てみたいものだと思っているが。
▼次はあの有名なオストワルドの『化学の学校』だ。
●1959年5月 『化学の学校 下』(オストワルド著 都築洋次郎訳 岩波書店)
『化学の学校』原著の初版 は1903年!!
この実験は、同書の「五八 鉄 二」の最後(同書p112)と「五九 鉄 三」の最初(同書P113)です。
その部分を少し引用させてもらいます。
先生 -鉄とイオウは非常にたやすく結合します。鉄屑とイオウ粉とをその化合比32:56の割合にまぜて、一部分をとって乾いた試験管で熱します。生徒 あ、全部真赤にもえている。
先生 そうして硫化鉄ができます。もう一つの部分を水でうるおし、壺の中へ入れて放置します。明朝どんなものができているか、見てみたい。(中略)
五九 鉄 三
生徒 あの混合物から何が出てきたか、よくみました。まるっきり黒い塊です。これも硫化鉄ですか。
先生 自分でたやすく検査できます。硫化鉄については、どんなことをご存知ですか。
生徒 塩酸を加えると、硫化水素を出します。試してみてもよいですか。うへ、これは完全に硫化水素です。
先生 ごらんのように、両元素は常温でも結びつくことができるのですが、ただその変化は緩慢です。しかし結果がわかる程度の早さです。この実験を君にやらせたのは、ゆるやかな反応にも親しんで貰うためです。
生徒 しかし、混合物を小試験管で熱したとき発生した熱はどこに残っているのですか。(後略)
このあと「発熱反応」についての問答が続きます。
まったく驚きです!!もうここまで出ていたとは!!
▼これで驚いていると、もっとびっくりすることがあった。
もっと古い例があがっていた。
●1983年11月『光学』(ニュートン著 島尾永康訳 岩波書店)
三井先生は旧版をあげておられたが、私は新版を参照した。
原著の初版は、なんと1704年だ。
三井先生が田中実先生に教えられ、しらべたと言うところがあった。
第三篇の最後にある「疑問三十一」の中に出ていた。
こうである。
粗大な硫黄でさえも、これを粉末にし、等しい重量の鉄のやすり屑と少量の水を混ぜてペーストにすると、鉄に作用して、5,6時間もすれば触れられないほど熱くなって炎を発する。(同書P335より)
なんとこんな昔からよく知られていたのか!!
驚くばかりである。
(つづく)
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