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【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店)

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▼鎌田浩毅氏は、寺田寅彦についてたいへん興味深いことを語っておられた。

 アウトリーチに関する私の修行は今も進行中であり、寺田が残してくれた試行錯誤の記録は知恵袋となっている。彼の専門と思想を引き継ぐ者として、これからも寺田寅彦を「活用」していきたいと思う。 (「寺田寅彦を「活用」する」鎌田浩毅『科学者の目、科学の芽』(岩波書店)P174より)

 この「寺田寅彦を「活用」する」というコトバにいたく共感した。
 大賛成である!!
 レベルはとても及ばないが、姿勢だけは少しずつ真似ていきたいものであると思った。

▼この春に、このコトバを具現化したような本が出された。
 それが、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『地震はなぜ起きる?』(鎌田浩毅著 岩波書店 2021.3.26)

 この春、創刊された「岩波ジュニアスタートブックス」(ジュニスタ)の一冊として出された。
 アリガタイ!!
 私は昔から「ほんとうの名著は児童書にアリ!!」
 という確信を持っていた。
 初学者向けに書かれてわかりやすく面白い本は、誰が読んでも興味深く面白い。ほんとうの名著中の名著である。今回の【お薦め本】も、またこの確信を強めるものとなった。
 いつものようにお薦めポイント3つを先にあげておこう。
 
(1)地震学の基本の“き”を教科書よりわかりやすく!!
(2)南海トラフ巨大地震・首都直下地震を起こることを前提にくわしく!!
(3)地震・津波への備えをきわめて具体的に!!

▼ではひとつずついこう。
(1)地震学の基本の“き”を教科書よりわかりやすく!!
序 章 日本をおそった巨大地震
第1章 地震とは何か
第2章 プレート運動と活断層
第3章 地震にともなう災害
 と前半は教科書的な内容がつづきます。
 地震学の基礎・基本の内容が初学者向けに教科書よりくわしくわかりやすく説明されています。
 これは私にもアリガタイ!!
 その道のプロの説明はやっぱりひと味ちがいます。一歩踏み込んでの説明は初学者には「ほんとうに知りたいこと」がわかってアリガタイです。
 一例をあげてみるとこうです。
 

このうち海のプレートは、陸のプレートの下にもぐりこんでいます。太平洋にある2つのプレートが、ななめ方向に日本列島の地下へしずみこんでいるのです。プレートの動きは非常にゆっくりしたもので、1年に4~8㎝くらいの速度で移動しています。私たちの身近なもので言えば、ちょうど爪が伸びるぐらいの速さです。
 こうしたゆっくりとした動きでも、何十万年、何百万年という間には非常に大きな距離を移動します。そして、この運動が、最初に述べた東日本大震災の原因ともなったのです。(同書P36より)

 「プレートがゆっくり動いて…」と説明を受けても、なかなかその「速さ」はピンとこないものです。そこを「ちょうど爪の伸びるぐらいの速さ」と言われるとナットクです。
 これがよほど気に入ったのか、表紙にもなっていますね。
 モットモです!!

(2)南海トラフ巨大地震・首都直下地震を起こることを前提にくわしく!!
「南海トラフ巨大地震」「首都直下地震」いずれもメディアにもよくとりあげられ知っているつもりになっていることが多い。しかし、なかなか切実感・危機感がないのが実情である。 
 この本ではちょっと違う迫り方をしていた。
 

 ここで述べた予測は、科学的データに基づいて行なわれたものであり、週刊誌やテレビでよく報道される「予言」とはまったく異なります。
 これらのメディアでは何月何日に大地震発生などと予言していますが、現在の地震学では、日付まで予知することはまったく不可能です。まず「何月何日」という予言はすべて根拠のないものと考えて差しつかえありません。
 もともと地震現象にはピンポイントでの予測はできないのです。科学的根拠のない予言と地震予知のちがいが、そこにあります。
 さらに西暦何年に起きると年号に特定して予測することも、同様にできません。
 (同書P75より)

 現在の地震学の限界を明らかにしたうえでの次なるコトバは説得力を持ってきます。
 

 よって、確率として2030年から起きる可能性がきわめて高いことを念頭において準備してください、と私たち専門家はメッセージを発しているのです。地学では、シミュレーションによって比較的細かい数字が出されることもありますが、実際には大きな誤差をともなっていることを理解してほしいと思います。
 じつは、世界の変動帯でこれほど次の巨大地震が予測できるケースは他にはないと言っても過言ではありません。その意味では、2030年代というのは非常に貴重ないわば「虎の子」の情報なので、ぜひ活用していただきたいと願っています。(同書P76より)

 必ず起こることを前提とする被害の説明は、大きな説得力を持ち次なる行動に結びつきます。
 
▼最後のポイントに行きます。
(3)地震・津波への備えをきわめて具体的に!!
 災害への「備え」について、現代の暮らしに沿ってきわめて具体的に語ってくれている。
 「備え」についての科学的根拠もはっきり示してくれているのはアリガタイ!!

 しかし人間はそのような確率で示される将来の出来事に対して、リアルな感覚を持つのが難しい習性を持っています。だからこそ私は南海トラフ巨大地震の場合「2030年代に起きても本当に大丈夫か」とピンポイントで想定した警告を発しています。  個人の人生にとっても国にとっても、入念な準備が非常に重要だからです。たとえ巨大地震が実際に起こったとしても、事前にしっかり備えをしておけば、被害の8割は減らすことができるのです。(同書P112より)

 寅彦が最晩年まで鳴らし続けてくれた警鐘「天災は忘れられたる頃来る」を、今、鎌田浩毅氏が引き継いで鳴らしてくれている気がしてくるのだった。

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