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【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書)

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▼私は最近「歴史」というものに興味を持ちはじめた。
自分が歳をとってきたせいもあるのだろうか!?

今さらではあるが、
小さな小さな「自分史」も、大きな「歴史」の流れのなかで起こったことなのかも知れない。
と思い始めたのだ。

「世界史」「科学史」は、不勉強もあってこれまではどちらかというと他人事だった!!
待てよ!!
 ひょっとしたら私が好むと好まざるに関わらず、その「渦中」に暮らしてきたのかも!?

▼こんな思いを加速してくれる本に出会った!!
 実際に手に入れたのはちょうど一年前だった。少し寝かせておいたのだ。

 

◆【お薦め本】『高校世界史でわかる 科学史の核心』(小山慶太著 NHK出版新書 2020.01.10)

 

 もともと「歴史」は他人事!!という認識だった。私はとりわけ「世界史」が苦手だった。
「高校世界史でわかる」と言われても、そのレベルもきわめてあやしいものがあった。
 だから、話はどこにとんでいくかわからない。
 そこであらかじめいつものようにお薦めポイント3つにしぼつてあげておく。

 

(1) ハイブリッド「科学史」の面白さを存分に楽しめる!!

(2)「科学」の「現在地」を世界史の視点で読み解くことができる!!

(3)「これから」の科学・科学教育のヒントがここにある!! 

 

▼ではひとつずつ少しだけくわしく

(1) ハイブリッド「科学史」の面白さを存分に楽しめる!!

ハイブリッド「科学史」 ?(゜_。)?(。_゜)?
耳慣れぬコトバだ。著者のコトバを借りよう。

そうした現状を鑑みたとき、ひとつの事例ではあるものの、歴史学と自然科学を融合した科学史の研究は、文科と理科にまたがる貴重な懸け橋となっている。いま、「ユニークな特徴をもっている」と書いたのはそういう意味であり、また、そこから ー 一粒で二度美味しいとでも表現できる ー 二つの大きな領域の融合ならではの、いわば〝ハイブリッド〟(hybrid)な面白さ知ることができる。(同書P3より)

 もう少し続けて引用させてもらおう。

 そこで、そういう面白さ伝えるために、本書では、世界史の流れの中に科学上の発見や科学者の人間模様を組み込むという構想を立ててみた。たとえてみれば、世界史(主として近代科学を生んだヨーロッパの近現代史)の変遷を「知の時間軸」に、各時代の科学者が挑んだ自然の探究を「知の空間軸」に設定し、二つの軸が形成する「時空」を舞台に、科学史を描いてみようという試みである。(同書P4より)

 この試みはみごとに成功していた!!

第1章 イギリス王政復古と「学会」創設
    ──ニュートンはなぜ大科学者たり得たか

第2章 フランス革命と化学革命
    ──なぜ諸科学は動乱期に基礎づけられたか

第3章 普仏戦争と「量子仮説」
    ──量子力学は製鉄業から生まれた?

第4章 世界大戦と核物理学
    ──真理の探究はいかに歴史に巻き込まれたか

第5章 変貌する現代科学──巨大科学は国家を超える

 各章のタイトルならべて見るだけでも圧巻である!!
 「世界史」の苦手な私にも十分楽しめた。
 一大スペクタル巨編を見るような思いだった。
 誰かほんとうにこれを映像にしてくれないかな。
 大ヒットまちがいなしだと思うけどな。

 

(2)「科学」の「現在地」を世界史の視点で読み解くことができる!!
 「科学」の本質は「未知なる真理」の発見にある。
 しかし、それもまた、やはり人間の営みである。いかに「真理」が時代を超えたものであっても、その「発見」には時代的背景が色濃く影響している。   
 第一章の主人公・ニュートンの場合で見てみよう。

 一六六五年、イギリスは貿易の利害の対立から再び、オランダと戦火を交えることになる(第二次英蘭戦争)。と同時に、この年、イギリスはペスト(黒死病)の大流行という災厄に襲われた。特に人口が多いロンドンは感染が瞬く間に広がり、阿鼻叫喚の地獄と化した。(同書P28より)
 さてペストが猖獗をきわめる一六六五年には、ニュートンは大学を卒業し、引きつづき、ケンブリッジで学究生活を送るつもりでいたが、疫病の感染を防止するため大学は閉鎖されてしまった。やむなく、ニュートンはウールスソープ村の生家に帰ってきた。(中略)ニュートンは二年近くを一人、故郷で過ごすことになる。(同書P30より)
 大学を卒業したばかりの若者わずか一年余りの間に誰の助けも借りず、二項定理、流率法(微分)と逆流率法(積分)、色彩理論(太陽光が屈折率の異なる光線に分けられるとする理論)を見つけ出すか、あるいはその手掛かりを得たというのであるから、驚かせる。
(同書P31より)

 コロナ禍の「現代」と重なってしまったもので、ついつい引用がながくなってしまった。 
 
 第二章の断頭台に消えた大化学者・ラヴォアジエしかり、「時代」に生き死んでいった科学者が次々と登場するのだった。
 先の話にもどるが「一大スペクタル巨編」の登場人物には事欠かなかった!!
 
 本論にもどろう。「時代」とともに「科学」はどのように変遷していったのだろう。
 そして、「現在地」は…!?。

 

 振り返ってみれば、近代科学が産声をあげたおよそ四〇〇年前から今日まで、本書を通してたどってきたように、科学という営みは決して立ち止まることなく、比類なきほどの進歩を遂げてきた。そして、進歩するにつれ、社会との関係を深め、その深まりはやがて、諸刃の剣の性格を帯びてきた。科学をどちらの刃として使うかは偏に、我々の人間性にかかっている。(同書P253より)

 「諸刃の剣」!!それが「現在地」!?

 

▼最後のポイントに行こう。

 

(3)「これから」の科学・科学教育のヒントがここにある!!
 本書の最後は次のように締めくくってあった。

 そして、科学が進めば進むほど、剣の諸刃の威力はどちらも強くなるわけである。
 将来にわたり、巨大化をつづけるであろう科学は同時に、国際協力の体制も強化されていくものと予想される。その流れが、同じ目的と責任をもった者どうしの連帯を深め、科学が平和の実現と人類の幸福、そして知的好奇心の発露の場となることを願って、本書の締め括りとしたい。(同書P254より )

 

 「時代」は遡行はしない。
 だから、その「時代」にもどって「やりなおし」はできない。
 できるのは「これから」を変えることだけだ!!
 そのためにも「歴史」から学ぶ必要がある。
 ここにこそ、科学・科学教育の「これから」を考えるヒントがある。

 

 ここからはちょっと【お薦め本】の話をはなれて、蛇足をひとつふたつ。

ひとつめは、この本最後は「超巨大科学」の話が中心になってしまって、「等身大の科学」の話はどこかに行ってしまっている。
 あえて探すとすれば最後に引用した文の「知的好奇心の発露の場」のコトバか。 
個人的にはそこにいちばん興味あるのだが…。

 もうひとつは、この本の中に2度ばかり我らが寺田寅彦が登場する。
これを探してみるのも面白いかも知れない。

 最後の最後に 
 附録「世界史・科学史比較年表」は実に面白い。
 この年表は2019年で終わっている。
 後に2020年・2021年には何が追記されるのだろうか!?

 

 やっぱりまちがいない!!
 私たちは「歴史」の「渦中」にいる!! 

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