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【お薦め本】『なぜ学ぶのか 科学者からの手紙』(板倉 聖宣著 仮説社)

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▼寺田寅彦記念館友の会では、5年前の2015年、寺田寅彦没後80年企画としてアンケート「私の好きな寺田寅彦の随筆 ベスト・ワン」を実施された。
 私は躊躇なく「科学者とあたま」を選んだ。
 5年経った今もその思いは変わらない。
 事実、この7月で8年と4ヶ月つづけてきたオンライン「寅の日」でも、この「科学者とあたま」を繰りかえし読んできた。
 読んだ回数は、読んだ随筆の中でトップで9回に達していた。
▼その寅彦の「科学者とあたま」について、あの板倉聖宣さんが書いた文章が載っている新刊が出たと聞いた。
 さっそく入手して読んでみた。

◆【お薦め本】『なぜ学ぶのか 科学者からの手紙』(板倉 聖宣著 仮説社2020.06.26) 

新刊と言っても、板倉さんは2018年2月すでに亡くなっている。
 従って、過去に書かれ遺された文章から、テーマに関連するメッセージを厳選されたものだそうだ。
 特に若い人向けのメッセージが中心だそうだが、ポンコツの私が読んでも十分楽しく読めたので、【お薦め本】にあげてみることにした。
 例によって、お薦めポイント3つを先にあげておく。

(1) 不易な問い「なぜ学ぶのか?」に答えるヒントがやさしく語られている!!

(2) 現代版「学問のすすめ」がここにある!!

(3)「寅彦とこれからの科学教育」を読み解くヒントがここにある!!

▼ではひとつずつ少しだけ詳細に

(1) 不易な問い「なぜ学ぶのか?」に答えるヒントがやさしく語られている!!
 「なぜ勉強するのか」「なぜ学ぶのか」この不易な問いかけに出会わなかった教師はいないだろう。
 いや教師のみでないだろう。多くの大人が一度は出会ったのことがあるのでは。
 ひょっとしたらこの問いを発したのは自分自身であったかも知れない。
 答えはみつかっただろうか!?
 答えはひとつではない!!まだみつかっていない人もあるかも知れない。
 ここに答えをみつけるヒントが語られている。たとへばこうだ。
 

 「なぜ勉強するのか」それがわからないと勉強しない、というのは、いまの学校教育中ので明らかに損です。しかし、長い目でみると、それは決して損なことではないと私は思っています。「なぜ学ぶのか」それがわかってはじめて<本当の学問>ができるようになり、学問を作りかえることができるようになると思うからです。
 「急がば回れ」ということわざがあります。本当の学問をするために、ときには損を覚悟で「なぜ学ぶのか」考えてみませんか。(同書P19より)

 あくまで中学生・小学生への「手紙」というかたちで語られているので、とても平易な文章でわかりやすい!!
 なおかつ説得力をもつ!!そして面白い!!
 最初の「ジャガイモの話」など、今、なお新鮮で納得である (゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン

(2) 現代版「学問のすすめ」がここにある!!
 5章「予想と討論と実験と」
 6章「たのしく学び続けるために」
 は仮説実験授業をやっている子どもたちへの「手紙」というかたちをとりながら、現代版「学問のすすめ」が語られているように思えた。
 これまた時空を超えて今なお響いてくる熱き呼びかけであった。

 じつは、科学の歴史の上でもっともすぐれた科学者というのは、「みんなが解けないむずかしい問題を解いてみせた人」ではありません。一番えらい科学者というのは、「やってみればだれでも実験できそうな問題だけれども、それまでだれも考えたことのないような問題で、しかもたいていの人がまちがって予想するような問題」を考えついて実験してたしかめた人なのです。そういう科学者はみな、昔の科学者の研究したことをくわしく勉強しています。(同書 P87より)

▼さて、次が私にとっては本命です。

(3)「寅彦とこれからの科学教育」を読み解くヒントがここにある!!
 仮説実験授業を提唱した板倉聖宣さんが、寺田寅彦をどう読んだか!?
 私のお気に入りの「科学者とあたま」をどう読み解いたか。それにいちばん興味があった!!
 寺田寅彦と板倉聖宣 やっぱり 多く響き合うところがあったようだ。
 さすがだと思うところがあった。ここだ!!

 そのことを思うとき、寅彦が「頭がよくて、自分を頭がいいと思い利口だと思う人は先生になれても科学者にはなれない」とか「これを読んで何事をも考えない人は、おそらく科学の世界に縁のない科学教育者か科学商人の類であろう」と言って、科学教育者を皮肉って済ませているのは感心できない。当時の寅彦の心情は私にも十分理解できるつもりだが、やはりこれは困る。もともと科学研究というものは、研究者個人の頭だけでなく、科学研究を行なう雰囲気に左右されることが大きい。だから、科学研究に従事する個人だけでなく、科学教育や科学行政に係わる人々の間にも、「科学者とあたま」のような文章を読んで「会心の笑みをもらす人」が増えなければ、日本の科学は創造性を発揮しえないと思うのである。(同書P94より)

 スッキリ!!である。
 お気に入り随筆でありながらも、読むたびに科学教育に携わってきたものとして、最後の部分に反駁できないことにくやしさをおぼえていた。
 さすが、板倉さんだ。
 「感心できない」「やはりこれは困る」と言い切っていた!!
 
 寅彦をこれからの科学教育に「活用」したい私としてうれしい本だ!!


【オマケ】最後に「「なぜ学ぶのか」なんて聞かれたらどう答えたらいいんだろう?」という小原茂巳さんの文章が出ていた。
 この本を解説してくれていた。またまたこれが、なかなか面白いのだ!!
 そこでなつかしく思い出してしまったことがある。
 今から38年前の1982年4月に『授業を楽しむ子どもたち』(小原茂巳著 仮説社)の書評(そんなたいしたものではないが…)を書いた記憶があった。たしか、それは「「同時代人」のあなたへ」ではじまるこれまた手紙風文章だった。蛇足で スミマセン<(_ _)>
  
 

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コメント

楠田純一様

はじめまして。
板倉聖宣『なぜ学ぶのか』の編集を担当した仮説社の渡辺と申します。
『なぜ学ぶのか』について,素敵な書評を書いていただきありがとうございました。
編集者としてとてもうれしく思います。
もし差し支えなければ,このブログの内容を弊社発行の月刊誌『たのしい授業』でも紹介させていただきたいのですが,可能でしょうか?

突然のお願いで申し訳ありません。
どうかよろしくお願いいたします。

仮説社 渡辺次郎

投稿: 渡辺次郎 | 2020/07/25 11:26

渡辺次郎さん

コメントありがとうございます。

>もし差し支えなければ,このブログの内容を弊社発行の月刊誌『たのしい授業』でも紹介させていただきたいのですが,可能でしょうか? 突然のお願いで申し訳ありません。

光栄です。
もちろん了解です。今後ともよろしくお願いします。

投稿: 楠田 純一 | 2020/07/25 15:30

楠田さま

お返事ありがとうございます。
お返事に気づくのが遅れてしまい,申し訳ありません。
掲載しても大丈夫とのこと,とてもうれしいです。
では,記事の形ができましたらまたご連絡させていただきますので,ご確認いただき,気になるところ等ございましたら,お教えいただければありがたいです。

この度は急なお願いに対応してくださり,ありがとうございます。
引き続きどうかよろしくお願いいたします。

投稿: 渡辺次郎 | 2020/08/05 17:46

追伸:

楠田さま

なんども申し訳ありません。
今後のやりとりのために,差し支えなければメールアドレスをお教えいただけないでしょうか?

投稿: 渡辺次郎 | 2020/08/05 17:57

渡辺次郎さん

ご丁寧にありがとうございます。
楽しみにしておきます。 o(^o^)o ワクワク

投稿: 楠田 純一 | 2020/08/06 05:49

渡辺次郎さん

了解です。
このあとメールを送らせてもらいます。

投稿: 楠田 純一 | 2020/08/06 05:51

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