【お薦め本】『鳥の目・虫の目・子どもの目』(酒井 浩著 無明舎出版)
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自然は 最高の教科書!!
子どもは 最高の指導書!!
理科教育の先達からの貴重な教えだった。
現場で授業に困ったら思い出した。教えはいつも「有効」だった!!
「やっぱりそうだつたのか」と実感をともなって納得することも一度や二度ではなかった。
それは、言わば理科教師にとって「不易」の教えでもあった。
▼現場を離れて久しくなろうとしていた。
この春、この教えを「やっぱりそうだったのか」と思い出させてくれるうれしい本に出会った。
著者はネットでいつもお世話になっている酒井浩さんだ。
◆ 【お薦め本】『鳥の目・虫の目・子どもの目-ヒロちゃんの子育て自然観察ガイド-』(酒井 浩著 無明舎出版 2020.4.10)
あまりに面白かったので一気に読んでしまった!!
お薦めポイントはありすぎるほどいっぱいある。ひとつひとつあげていけばきりがない。
いつものように、あえて3つにしぼっておく。
勝手に自分の文脈にひきつけ過ぎの感もあるが…。
(1)「自然は最高の教科書!!」を具体例をあげながら熱く語ってくれている。
(2)「子どもの目」を通しての自然観察の面白さを教えてくれている。
(3)最高の「子育て自然観察ガイド」ブック!!
▼ここからはポイントひとつずつについて
(1)「自然は最高の教科書!!」を具体例をあげながら熱く語ってくれている。
少し著者自身のコトバにかえてみよう。
自然の中には、子育てのヒントとなるものがたくさん隠されています。具体的な一つ一つの自然が私たちに様々な姿で「子の育ち」にとって大切なことを教えてくれます。まさに「自然は先生」なのです。
本書では、本格的な「子育て論」とまではいかないものの、野山で育つ生き物たちや子どもたちの具体的な姿を紹介していくことで、「ヒトの育ち」にとって大切なことは何か、お伝えできたらと思います。(同書p4より)
ここで感動したことがあります。
私が、「自然は最高の教科書!!」というとき、射程内に入っているは授業・学習のことどまりです。でも著者はそこまででとどまらず、「子の育ち」「ヒトの育ち」まで射程内に入れてきます。さすがです!!
さらに驚くのは、この本では一貫してこの姿勢が貫かれています。
例えばこうだ。
わずか半年だが、カンムリカイツブリには大切な子育ての原理が詰まっているように思えた。
子育てを半年で終えるようにカンムリカイツブリの一生は、私たち人間と比べて圧倒的に短い。はっきりとしたことはわかっていないが、一説には10数年だという。
それだけに、生きていくうえで大切なことが凝縮されていたと思えてしょうがない。(同書p41より)
(2)「子どもの目」を通しての自然観察の面白さを教えてくれている。
「葉っぱが風で小鳥のように飛んでいる!」(同書p102より)
この子どものみずみずしい感性に感動する著者は、これまた徹底して「子どもの目」にこだわっていきます。
子どもの目線というのは、大人と違って低い位置にある
大人が1.5~1.8メートルならば、子どもは0.7~1.3メートルぐらいだろうか。
子どもが様々な発見ができたのは、その低い目線の位置にもよるだろう。それだけに、子どもの目線から教えられることは多い。
しかし、それ以上に子どもの何物にもとらわれないまっすぐな目やそれを支える感性が大人も驚くほどの発見につながっているに違いない。(同書p52より)
ここにこそ、「子どもは最高の指導書!!」にツナガル信念がある。
▼最後にいこう。
(3)最高の「子育て自然観察ガイド」ブック!!
本のタイトルを単なる「自然観察ガイド」とせずに「子育て自然観察ガイド」としたところに、大いなる著者の主張があるのだろう。
この意図は、みごとに成功している!!
類書にみられないすばらしい取り組みの数々!!
3 森の子どもたち
4 子どもと楽しみたい自然
には、実際に自分でも「自然観察会」をやってみたいと思っている人にはとても役立つヒントが満載だ!!
なかでも著者のお薦めは「親子自然観察会」である。
私は、現職時代から「親子」での自然観察会にこだわってきたが、子育てには最高のシーンであると考えている。
もし、私に小さな子どもがいたら、わずかな時間でかまわないから親子で野山や公園を歩いてみたいものだ。
そのことの繰り返しがどれだけ子どもの心や体の成長につながることか、年を重ねれば重ねるほど痛感するのだ。
「親子自然観察会」は、一過性のイベントであってはならないと思う。
この観察会をきっかけにして、親子でのコミュニケーションを図るだけでなく親子で自然に触れることの大切さを感じてほしいと願っている。(同書p80~81より)
他にも面白そうな具体的取り組みがいっぱい紹介されている。
私が特に気に入ったのは
○歌って楽しむ自然観察「繭の抜け殻3兄弟」(同書p85より)
だ。
そう言えば、オンラインで著者にヤママユガの抜け殻のことで教えてもらったことがあったような。その節はありがとうございました。
「自然観察会」に興味があっても、実際に自分でやってみようと思ったら、はじめの一歩は誰しもちょっと躊躇してしまう。
「親子自然観察会」でも同様だろう。
そんなとき、とっても参考になることが書かれていた。
失礼だが、項目だけ引用させてもらう。くわしくは、ぜひ本書を手にとって読んでみてください。
○ 子どもとどう関わったらよいの? (同書p93より)
① 教えようと思わずむしろ子どもと一緒に遊ぶ気持ちで
② 問いかけと実物を説明の推進力にする
③ 大人にとってやっかいなものが子どもの遊び道具になる。
最後にもうひとつだけふれておきたいことがある。
すばらしい「写真集」が記載されていることだ。
まず「写真集」を、そして本文を読んでからまたこの「写真集」を!!
一枚一枚の写真が「物語」を語りはじめる!!
私のお気に入りベスト3は
「落葉を使って首飾り」
「草笛に挑戦する2歳児」
「小学校の教室で3・2・1の合図で種子模型を飛ばす」
さあ、こんな時期だからこそあまり人の集まっていない近くの野山で著者お薦めの「親子自然観察会」を楽しもう!!
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