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【お薦め本】『アオバナと青花紙』(阪本寧男・落合雪野著 サンライズ出版)

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▼そもそものはじまりは、33年前の「紅花を追って」の旅で京都「古代友禅苑」を訪ねたときだった。
 そこで、私は実際に友禅染めの下絵を描いておられる職人さんに「青花紙」を見せてもらい、「アオバナ」=「オオボウシバナ」のことを教えられたのだった。いつかは草津に行ってこの目で「アオバナ」の咲くのを確かめたいと思っていた。
 そして、ついにこの夏の終り草津に旅をしたのである。

•草津「あおばな」を追って(1) #あおばな #青花 #オオボウシバナ 

•草津「あおばな」を追って(2) #あおばな #青花 #オオボウシバナ

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▼この旅で「草津宿街道交流館」を訪ねたとき、学芸員の方に「アオバナ」「青花紙」に関する唯一無二の本と紹介してもらった本が、今回の【お薦め本】である。

◆【お薦め本】『アオバナと青花紙』(阪本寧男・落合雪野著 サンライズ出版 1998.9.20)


 その場でパラパラとめくってみた。なかなか面白そうだった!!
 それに読みやすそうだった。そんな貴重な本なら、手にいれられるうちにと帰るなりAmazonで発注した。
 手には入って、じっくり読んでみた。これが滅茶苦茶面白かった!!
 話がひろがってしまわないうちに、いつものようにお薦めポイント3つをあげておく。
(1) 「アオバナ」「青花紙」のすべてがわかる!!
(2) 調査・研究の姿勢に大いに学ぶべきものがある!!
(3)「常民の科学」再考のきっかけを与えてくれる!!
▼蛇足にならない程度に少し詳しく
(1) 「アオバナ」「青花紙」のすべてがわかる!!  学芸員の方がおっしゃった通りだった。
 すべてが書かれていた。わかりやすいように「目次」をあげてみる。

はじめに
第一章 アオバナとツユクサの植物学
第二章 アオバナと青花紙の歴史
第三章 アオバナの栽培
第四章 青花紙のできるまで
第五章 青花紙の販売ルート
第六章 青花紙の利用
まとめ
あとがき
主要参考文献

 これで「すべて」が出てくることがわかるだろう。さらに、その場でもコピーをしていただいのだが、資料としてあがっている図譜がとてもいい。繰りかえす!!
 この一冊で「アオバナ」「青花紙」のすべてがわかるのである。

(2) 調査・研究の姿勢に大いに学ぶべきものがある!!
 特に気に入った章がある。
第三章 アオバナの栽培
第四章 青花紙のできるまで
 である。ここは実際に今なお「アオバナ」を栽培し、「青花紙」をつくっておられる農家に入り込んでの現地ルポなんである。
 さらに、具体的な様子を多数の写真でよりリアルに「記録」されている。
 もっとも気に入ったのが、作業される農家さんは固有名詞で登場されるのである!!
 作業するのは農家さん誰かの手ではないのである。「○○さんの手」なのだ!!
 それがすごい説得力をもつことになるのである!!
 それにもうひとつ感動した説得力をもつものがあった。それは、作業の過程で使われているコトバを、そのまま「記録」していることである。
 「アオバナのキ」「カイ」「カッテバエ」
 「ハナツミ」「シル」「アラシボリ」「ナガス」「ツケル」「ネカス」等々
 全体として、農家さんの美しい青花紙づくりへのこだわりをみごとに伝えることになっている。
 根っこのところに、調査・研究をすすめる人の姿勢があるような気がした。
 大いに学びたいところである!!

▼最後にきわめて個人的感想のようなことをあげている。
(3)「常民の科学」再考のきっかけを与えてくれる!!
 「常民の科学」!!
 なんともなつかしさすらおぼえるコトバだ。草木染めにはまっていたころよくつかったコトバだ。
 もうひとつの「科学」が、人々の日々の暮らしや自然とつき合いながら営まれてきた「生産」と「労働」のなかにある!!
 それを名づけて「常民の科学」!!
 それを思い出させるような文章に出会った。

●青花紙の役目は『消えること』
 青花紙は友禅染や絞染の製作工程にかかせない材料として、いまでも確固たる地位を占めている。その理由は、下絵用絵具としてのきわめて優れた性質にある。
 アオバナ色素で描いた下絵は、そのままの状態で置いておきたいときは安定的に長い間消えないでいるのに、消したいときは霧を吹くか水につけるだけで簡単にしかもきれいに消えるという相反する特質を併せ持つ。
 このような性質を、人工的に合成された化学青花ですべて代用することは、今のところ不可能なのである。(同書p158より)

続けてこうも語られていた。

 滋賀県草津市では、いまでも農家の人たちによって毎年アオバナが栽培され、その花弁から青花紙が生産されている。できあがった青花紙は「束」という伝統的な単位で取引きされ、地元の仲買人を通じて日本各地へ出荷される。そして、友禅染や絞染といった日本を代表する華やかな染織文化の裏方としてその役目を果たす。つまりアオバナと青花紙は、滋賀県草津地方にしか存在しない貴重な文化財であるととらえることができるのである。(同書p159より)

 来年の夏には、もっと早い時期に「アオバナ」摘み、青花紙づくりの現場を訪ねたいものである。
 この一冊、今ならまだ間に合うかも!! 

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