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【お薦め本】『めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業』(盛口 満著 岩波ジュニア新書)

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▼アンテナが低くなっているなあ~ (/_;)
 正直そう思った。こんなことがあったからだ。
 前回の【お薦め本】『クマムシ調査隊、南極を行く!』 (鈴木 忠 著 岩波ジュニア新書 )を読み終えて、表紙カバーのうらを見てはじめて知った。
 ゲッチョ先生こと盛口満さんの新刊が出ていたのである。私は『僕らが死体を拾うわけ』以来、ずっとずっとゲッチョ先生の大ファンである。
 あのユーモアたっぷりの等身大の文章、そしてすばらしいあのスケッチ画!!あこがれてしまう。
 それにあることが理由で勝手に親近感を持ってしまっていたのである。
 そんなゲッチョ先生の新刊を知らなかったなんて、やっぱり…。
▼さっそく、その新刊を手に入れた。

◆ 【お薦め本】『めんそーれ!化学 おばあと学んだ理科授業』(盛口 満著 岩波ジュニア新書 2018.12.20)

なんと昨年末にもう出ていたのである。
 これまではどちらかというと生物関係の本が多かったので、ゲッチョ先生の化学は興味津々だった。
 パラパラとページめくっただけでわかった!!
 これは絶対に面白い!!あのスケッチ画、実験のイラスト画も冴えている!!
 ゆっくりゆっくり楽しみながらと思うが、次が読みたくなってしかたない!!
 そんな面白さだ。ヤバイ (^^ゞポリポリ)
 お薦めポイントも、ダラダラと長くなってしまいそうだ。 
 先に、3つにしぼってあげておこう。

(1) 授業の理想のかたちがココにある!!
(2) 化学実験の面白さがココにある!! 
(3) 化学という学問の本質がココにある!!    

▼では、ダラダラ文をはじめよう。
(1) 授業の理想のかたちがココにある!!
  これはゲッチョ先生が沖縄の夜間中学校でやった化学の授業15時間の授業記録である。
  こんな面白い授業記録ははじめてだ!!
  サブタイトルがそのスタンスをよくあらわしていた。
 「おばあと学んだ理科授業」デアル。けっして「おばあの学んだ…」デワナイ!!
 学んだのは生徒であるおばあだけではない。いやむしろ教師自身なのかも知れない。
 このあたりについては、的を射たゲッチョ先生自身の言葉を借りよう。少し長くなるが、ヘタな紹介をするよりやっぽど説得力あるから。

 でも、僕がこの本を書こうと思ったわけは、ちゃんとある。もし化学に苦手意識がある人がいるとしたら、この本で紹介したような「地点」から、化学について見直すことができるんじゃないかということだ。だってこの本は、一度も化学を勉強したことがない人たちの化学との出会いの記録なのだから。  それに、本文を読むとわかると思うのだけれど、夜間中学校の生徒たちは、僕らとはちがった経験知を持っている人たちだ。つまり、夜間中学校の生徒たちは、本や学校から得たのではない知識とは、どんなものかということを僕たちに教えてくれる存在だ。  僕と、(その多くは)おばあちゃんたち(沖縄風にいえば、おばあたち)との授業の輪に、読者のみなさんも一緒に入って、あれこれ考えてみてほしい。沖縄の言葉では、「いらっしゃい」を「めんそーれ」と言う。   では、みなさんがこれまで持っていた「化学」のイメージと、ちょっと違う化学の世界へ「めんそーれ」!(同書ⅷ「はじめに」より)

(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン納得である。
これ以上の紹介文はないだろう。後は私の「蛇足」デアル!!
ココにこそホンモノの「授業」がある!!
ココにこそホンモノの「授業記録」がある!!

(2) 化学実験の面白さがココにある!!
「目次」より15時間の授業内容のタイトルを引用させてもらう。
[1時間目] 料理から化学――肉じゃがをつくる
[2時間目] 身近な実験――ロウソクの化学
[3時間目] 化学反応――ホットケーキはなぜふくらむの?
[4時間目] たたくと延びる――金属の3大性質
[5時間目] 電気を通す液体――コーラって電気を通す?
[6時間目] 金属と金属じゃないもの――世界の3大物質
[7時間目] 塩と砂糖はどうちがう?――「とける」と,「燃える」
[8時間目] 砂糖の仲間――カロリーゼロのひみつ
[9時間目] イモの思い出――デンプンのいろいろ
[10時間目] デンプンの仲間――こんにゃくをつくる
[11時間目] タンパク質をさぐる――小麦粉からガム
[12時間目] 牛乳の不思議――コロイド
[13時間目] 油は油と混ざる――油の仲間調べ
[14時間目] 石けんをつくろう――油とアルカリ
[15時間目] 化学は「もの」の学問――くらしの知恵とのかかわり

 現場を離れて少し時間が経ってきているが、これまでの経験から[7時間目]までぐらいの実験はおおかた想像できた。
 事実、私が中学校の授業でやってきた実験も多く登場してきた。(それは、それでうれしかったが)
 でもちがっていた!!
 一見似ているだけでその実験の持つ意味は、ゲッチョ先生の授業に完全にカスタマイズされていた!!
 いやもっと言えば、おばあ向けに完全にカスタマイズされていた!!
 もっとすごいと思ったのは、一時間のなかで次なるあらたな化学実験が生まれていることだ。
 後半の化学実験は、ゲッチョ先生のいや、おばあたちの独壇場だ!!
 読ませてもらいながら、こちらまで o(^o^)o ワクワクドキドキだ!!
 化学実験ってほんとうに面白いな!!

▼語りすぎはむしろ逆効果と思いながらも続けてしまうのである。
 これが最後だ。
(3) 化学という学問の本質がココにある!!    
 ここもヘタな言葉連ねるより著者自身の言葉を借りよう。

 最後の授業で口にしたように、夜間中学の授業は、生徒の皆に教えていることよりもずっと多くのことを、僕が生徒たちから教わった。くり返しになるけれど、僕が夜間中学校で化学分野を扱いながら強く思ったのは、化学は本来「もの」を扱う、くらしに密着した学問だということだ。  化学式や計算など、それを理解し、扱うことで、深くわかることがたしかにある。  でもその前に、僕はまず、さまざまなものとかかわって生きてきたことに立ち返りたい。  ふだん口にしている「化学」や「科学」といった言葉から押し出されてしまっていることがないか、ふり返ってみる必要があるように僕は思う。(同書p211「あとがき」より)

 おみごと スバラシイ!!
 益々ゲッチョ先生の大ファンになってしまう。
 最後に「蛇足」の「蛇足」をひとつ。
 私は最初に「あることが理由で勝手に親近感を持ってしまっていたのである。」と書いた。その「あること」とはこういうことだ。
 この著書の最後の方に、著者自身も書いておられるように、著者の父は「盛口襄先生」だ。(『実験大好き!化学はおもしろい』盛口襄著 岩波ジュニア新書)
 化学教育の大先達だ!!
 私も若い頃いっぱいいろいろ教えてもらった。化学教育に関する著書も多くあるが、詩集も出しておられた。
 あこがれの先生の詩集ということで、その詩集にサインをお願いしたら、こころよく応じてくださった。
 その詩集を今、書棚からひっぱりだしてきた。
 「高知 第一ホテルにて 一九八七年八月三日 盛口襄」
 もう32年も前の話だ。
 言いたいのはそこではない。その詩集にそのとき先生からいただいた今はもう色茶けしまった実験プリントが三枚はさんであった。「バケツ電池」「セロファン電池」等の面白い実験の数々が紹介してあった。
  そして、そのプリントの端に先生の言葉を私がメモしていた。
「ものの声を聞け」
 と。

 今は亡き 盛口襄先生はこの本を読んできっと誰よりも大喜びだろう!!

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