牧野富太郎の『赭鞭一撻』を読む。(1)
▼2012年の夏よりはじめた「土佐の寅彦詣」は今年の4月で10回になっていた。
そのうち2回、高知県立牧野植物園を訪れた。その充実ぶりに圧倒され感動した。2回ともミュージアムショップに寄って一冊のノートを手に入れていた。
である。「赭鞭一撻」(しゃべんいったつ)の現代語訳もついていてとてもいい!!
大のお気に入りである。
先日、毎日の「自然観察ノート」を新しくしたのをきっかけにこのノートを引っぱり出してきて、「赭鞭一撻」を読みなおしてみた。
▼現代語訳を読むうちに、この原本は読むことができないのか?と思うようになった。
青空文庫でさがしてみた。あった!!
◆牧野富太郎自叙伝・第二部 混混録 (牧野富太郎)(青空文庫より)
ここに「余ガ年少時代ニ抱懐セシ意見」として出てくるのである。
「赭鞭一撻」までの「所感」等を読んでいるとあの牧野富太郎の学問への情熱が伝わってくるようでたいへん面白い!!
▼「余ガ年少時代ニ抱懐セシ意見」では、「赭鞭一撻」のことを次のように説明していた。
左の一篇は私が年少時代にわが郷里土佐高岡郡佐川町の自宅に於てその当時私の抱懐していた意見を書き附けたもので、「赭鞭一撻(しゃべんいったつ)」と題してあった。これは今から六十六、七年前の明治十四、五年、私が二十歳頃に書いたものである。そして今日これを読んでみると私は実に感慨に堪えないものがある。
またこのようにも書いていた。
今左にわざとその「赭鞭一撻」の一字一句も改竄せずに、極めて拙文のままその全篇を掲げて、読者諸君の一粲(いっさん)に供えてみよう。私は上に述べたように今は何んにも出来ていないが、それでも一度はこのような希望に燃えていた少年であった事を思い遣って下さい。
アリガタイ!!
▼「赭鞭一撻」は現代に通用する「勉強心得」「研究心得」デアル!!
この機会に原文と「赭鞭一撻ノート」の現代語訳をならべて読ませてもらいながら、少年牧野富太郎にじっくり学んでみたい。
全部で15項目ある。今日のところは3つだけにしておく。
赭鞭一撻 結網子 稿○忍耐ヲ要ス
堅忍不撓ノ心ハ諸事ヲ為スモノノ決シテ欠クベカラザル者ニシテ繁密錯雑ナル我植学ニ在テモ資ヲ此ニ取ラザルハ一トシテ之ナキナリ故ヲ以テ阻心ヲ去テ耐心ヲ存スルモノハ其功ヲ就(な)ス易々タルナリ○精密ヲ要ス
周密詳細モ亦決シテ失フ可ザルモノニシテ之ニ忍耐ヲ添加シテ其功正ニ顕著ナリ精細之ヲ別テ両トナス心ト事ト是ナリ解剖試験比較記載ヨリ以テ凡百ノコトニ至テ皆一トシテ此心ノ精ヲ要セザルナク又事ノ精ヲ要セザルナシ故ヲ以テ此心ヲシテ恒つねニ放逸散離セシメザレバ一睹(いっと)スル者此ニ瞭然一閲スル者此ニ粲然○草木ノ博覧ヲ要ス
博覧セザレバ一方ニ偏辟ス一方ニ偏在スレバ遂ニ重要ノ点ヲ決スル能ハズ要点ヲ発見スル無キハ是レ此学ノ病ニシテ其病タル博覧セザルニ座スルモノナリ
現代語訳(「赭鞭一撻ノート」より一部のみ引用させてもらう)では
一. 忍耐を要す
-我慢することが必要である
二. 精密を要す
ー正確であることが必要である
三. 草木の博覧を要す
ー草や木についての豊かな知識が必要である
(つづく)
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