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【お薦め本】『科学絵本 茶わんの湯』(文:寺田寅彦 解説:髙木隆司/川島禎子 絵:髙橋昌子 窮理舎)

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▼実はまだ4月の10回目の「土佐の寅彦」詣の余韻のなかにいた。
 今回の「土佐の寅彦」詣の余韻がこう長く尾を引いているのにはわけがあった。
 今年度の寺田寅彦記念館友の会の総会の場で、7年間続けてきたオンライン「寅の日」について少し話をさせてもらう機会があったからである。
 いつも話を聞かせてもらう立場の人間が話をしたのである。まとまらない話であったが、それなりに緊張もした。
 そのぶんそれだけ印象深く、今もなおその反芻作業を繰りかえしているのだった。
▼その総会のとき、一冊の面白そうな本が紹介されていた。
 
◆【お薦め本】『科学絵本 茶わんの湯』(文:寺田寅彦 解説:髙木隆司/川島禎子 絵:髙橋昌子 窮理舎 2019.05.01)

 

 である。さっそく入手して読んでみた。
 これが実に面白かった!!
 ぜひ【お薦め本】にあげたいと思った。
 面白いところはあれもこれもといっぱいあるので、きっとまとまらない紹介になってしまいそうだから、いつものようにお薦めポイント3つ先にあげておく。
(1)子どもから大人まで楽しめる科学絵本である!!
(2)『茶わんの湯』すべてがわかる本である!!
(3)きっと、今一度「茶わんの湯」を自分の眼で観察してみたくなる本である!!

▼名著『茶わんの湯』は、寺田寅彦の作品のなかでももっともよく知られた一編だろう。
 現にオンライン「寅の日」でも、これまで5回も読んできている。
 文章を読むだけなら、今すぐ青空文庫でも読める。
●『茶わんの湯』(青空文庫より)  
そこをあえてこの本を【お薦め本】としてとりあげたのは、先にあげたお薦めポイント3つをはじめとしてすばらしいところがいっぱいあるからだ。
 少しくわしくのべてみよう。

(1)子どもから大人まで楽しめる科学絵本である!!
 先に目次をあげてみよう。

(目次構成)
茶わんの湯(絵本版)――寺田寅彦
科学解説:「茶わんの湯」には何が書かれているのか――髙木隆司
文学解説:「茶碗の湯」について――川島禎子
茶碗の湯(初出原文)――八條年也
付録:『茶碗の湯』のことなど――中谷宇吉郎

目次を見るとわかるように、これは単なる「科学絵本」ではないんです。
 まず『茶わんの湯』(絵本版)には寅彦のあの名文に30枚を越えるやさしい絵(イラスト)が加えられているのです。
 ひとつひとつの絵もとてもすばらしいです。寅彦の書いている文章が具体的にイメージしやすくなっています。これなら子どもが読んでも充分に理解できます。もちろん大人にも…。(「子どもにとって名著こそ、大人にとっては最高の名著である!!」は私の持論
さらにうれしいのは、この本には「科学解説」と「文学解説」がついていることです。
 髙木隆司さんの「科学解説」にも、髙木さん直筆の画、図が追加されていてわかりやすい解説になっています。
 髙木さん言っていた。

これらには難しい科学の用語は出てきません、しかし、説明が短いためにわかりにくいところや、見たことがなくて想像しにくいところもあると思います。そこで、私が描いた図を追加して、「茶わんの湯」の内容をわかりやすく説明することにしましょう。
(同書P38より)

(2)『茶わんの湯』すべてがわかる本である!!
 この本を類書に比べて特別面白くしているのは、「科学解説」だけでなく「文学解説」を加え、さらには茶碗の湯(初出原文)――八條年也、付録:『茶碗の湯』のことなど――中谷宇吉郎 まであることだ。
 この本で、名著『茶わんの湯』のすべてがわかるようになっていた。 
 寅彦ファン必読の一冊だ!!
 私には、「文学解説」:「茶碗の湯」について――川島禎子 がとりわけ面白かった。
 鈴木三重吉の創刊した雑誌『赤い鳥』に記載されるまでの経緯、初出のペンネーム「八條年也」は三重吉の命名であったこと等々。
 はじめて知ることも多かった。
 また、とりわけ次の2つの読み解きが面白かった!!

 しかし、図を使うことに対する寅彦のこだわりは、教育者としての問題意識がより強く関係しているように思われます。(中略)とあり、他人の目を通してでなく自分の目で見て興味をもつことの大切さを述べています。当時は相対性理論などが発表されてるなど古典物理学から現代物理学へ移っていく最中で、そのため人間の五感が軽視されていた時期でもありますので、余計にそうした危機感を持っていたのではないでしょうか。
(同書P71より)

 もうひとつあります。

 自然現象の不思議を次々に提示してみせる「茶碗の湯」は、若い頃に親しんだ正岡子規らの俳句に対する感動が少なからず影響しているのではないかと思います。(中略)子規同様、西洋科学に基づく学校教育を受けていた寅彦は、見立てなどの技巧を駆使した近世的な俳句を喜ぶ父と違って、自然そのものの美しさがそのまま文学になるということを感動とともに味わった人です。また自然の美への感動のみならず、表現の方法においても子規の影響が読み取れます。
(同書P71・72より)

この読み解きが実に面白い!!
▼ちょっと長くなってしまっている。最後のお薦めポイントにいこう。
(3)きっと、今一度「茶わんの湯」を自分の眼で観察してみたくなる本である!!
 ともかく『茶わんの湯』の面白さ・すばらしさは、寅彦をもっともよく知るあの中谷宇吉郎も認めるところである。その文章も「付録」についていた。 アリガタイ!! 「付録」:『茶碗の湯』のことなど――中谷宇吉郎

恐しいもので、この「茶碗の湯」を数行よみかけたら、これは寺田先生以外には誰も書けないものだとすぐ直観された。それは、文章の良い悪いなどの問題では勿論なく、又内容が高級で表現が平易であるなどということを超越したものであった。強いて言へば、それは藝が身についた人の藝談にあるような生きた話であった。(同書P89より)

 この本を読めば、まちがいなく誰もが、今一度一杯の「茶わんの湯」を自分の眼でじっくり観察してみたくなる!!
 髙木さんの解説に登場する簡単な実験も自分で挑戦してみたくなる!!

 もう一度繰り返し言う。
寅彦ファン必読の一冊だ!!
 いや
「科学」に興味あるすべての人の必読の一冊だ!!

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