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【お薦め本】『世界は変形菌でいっぱいだ』(増井真那著 朝日出版社 )

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▼私はここ10年ばかりの間に、これまでの生きもの観を大きく変える3つの「ふしぎ!?」な生きものに出会ってきた。

・巧みな糸技を目の前で披露してくれた「ゲホウグモ」
・水をかけたら「乾眠」からみごとに目覚めた「クマムシ」
・エサなしで385日も生きのびた「コウガイビル」

である。
 どれもこれもがビックリの生きものたちだった。
 なんと言ってもいちばん驚いたのは、この3つの「ふしぎ!?」な生きものどれにも、最も身近である我が家の庭で出会ったことである。
 そう、私はこの「ふしぎ!?」生きものたちとずっとずっと一緒に暮らしてきていたのだ。 

 この3つの生きものに出会う前から存在だけは知っていて、ぜひ仲良くしたい生きものがいた。
「粘菌」である!!
これははじめて南方熊楠を田辺、熊野に訪ねたころからはじまっていた。
あの熊楠をあそこまで夢中にさせた生きもの=「粘菌」に興味が湧かないはずはなかった。「動物の世界」の授業びらきに、コウガイビルとともに話題にあげたりもしていた。

▼しかし、まだこの生きものとの本格的なつき合いははじまっていなかった。
 「もうそろそろちゃんと出会ってみたいな。」と思いはじめてていた矢先に偶然出会ったのが、今回の【お薦め本】だ。

◆【お薦め本】『世界は変形菌でいっぱいだ』(増井真那著 朝日出版社 2017.11.10)

 ちょっと読み始めたらやめられなくなった!!
 とっても読みやすくわかりやすい。絶対に【お薦め本】にあげてみたくなる本だった。
 著者は書いた当時なんと16歳!!
 それがまたスバラシイ!!若い感性がこの「ふしぎ!?」な生きものをとらえた。
 教えられること満載だ!!

 興奮のあまり話があちらこちらに飛び回りそうな予感がする。(^^ゞポリポリ)
 そこでいつものようにお薦めポイント3つを先にあげておく。

(1) 変形菌の「キレイ」「フシギ」「カワイイ」が満載だ!!
   
(2) 最高の「変形菌入門書」だ!! 

(3) 科学研究の面白さ・醍醐味のすべてを教えてくれている!!

▼ひとつずついこう。

(1) 変形菌の「キレイ」「フシギ」「カワイイ」が満載だ!!

 こんにちは、増井真那です。  ぼくは変形菌が大好きです。     今16歳で変形菌と10年間いっしょに暮らしながら研究を続けています。  (中略)  この本では、ぼくが変形菌とすごした10年間に  見たこと、体験したこと、知ったこと、考えたこと  ー「キレイ」や「フシギ」や「カワイイ」についてお話しします。  (同書p3より)

 こんな文章からはじまった。なんともこの等身大の語り口調がうれしい!!
 これはまさに真那君と変形菌の10年間の交遊ドキュメントだった。
 真那君の日常の写真、研究生活のドキュメント写真、そして真那君自身が撮影された「変形菌」の写真等々すべてがすばらしかった。写真、図に添えられたコメントもとてもわかりやすい!!
 それにつられるように次へ次へとページをめくってしまっていた。
 気がついたらすっかり「変形菌」の虜になり、今度は自分の眼でもそれを確かめたいと思うようになっていた。

(2) 最高の「変形菌入門書」だ!! 
 真那君の文章はとてもわかりやすかった。
 専門用語を使うときにも必ずシロウトにわかるようにくわしく解説してくれていた。
 たとえば、私は恥ずかしながら、まだ熊楠の「粘菌」と「変形菌」のちがいがよくわかっていなかった。その説明をわかりやすくこう書いてくれていた。

変形菌?粘菌? 「粘菌」って聞いたことありますか?  たぶん、変形菌よりも粘菌のほうが、なじみのある人が多いのではないでしょうか。ここまで、当然のように「変形菌」と話してきましたが、変形菌イコール粘菌と考えてもらって大丈夫だと思います。   「粘菌」と呼ばれたことがある生物は3つあって、変形菌はそのひ1つ。あと2つは細胞性粘菌と原生粘菌です。変形菌は「真正粘菌」と呼ばれることもあります。整理すると、「変形菌イコール真正粘菌」で、「変形菌は粘菌のなかま」です。(同書p51より)

 「ソウダッタノカ!!」「わかった!!」(゜゜)(。。)(゜゜)(。。)ウンウン
 それにしてもうまい説明だ!!

 こんなくだりもある。

 このように変形菌には4プラス1、合計5つの姿があります。もちろんどれも変形菌です!変形菌好きの人は、変形体派と子実体派に分かれるって聞いたことがあります(胞子派とか粘菌アメーバー派は聞いたことないな……そういう人いますか?ぼくは最近、胞子っておもしろいな~って思い始めたんですけど)。(同書p46より)

 これまたうまい!!なにかツボを心得ている!!
 例をあげればきりがない。
 それほど、シロウト・初学者にとてもやさしい「変形菌入門書」なのである。
 
▼どこまでも等身大に語る「変形菌の世界」!!
 面白いかぎりである。最後にいこう。

(3) 科学研究の面白さ・醍醐味のすべてを教えてくれている!!
 シロウト・初学者にやさしい「変形菌入門書」だからと言ってけっしてそのレベルをさげてはいない。
 むしろホンモノの「科学研究」とはこんなものだと教えてれているようだった。
 第3章 ぼくの変形菌生活
第4章 変形菌と暮らしてぼくはいろいろ考えた
第5章 変形菌の「自他」の研究
を圧倒される思いで読んだ。

 とりわけ第5章の「研究」には興味津々だ。
 最後に「ーあとがきにかえてー変形菌がぼくにくれたもの」で、10年間の変形菌研究生活をふり返って次のように語っていた。

 みなさんに支えられて研究が進むたびに、ぼくは学会やコンテストなどで成果を発表してきました。「発表をすると知識が増える。人とのつながりが増える」ということは新鮮な驚きでした。変形菌や生物の研究者だけでなく、本当にさまざまな分野の方々と出会い、議論ができる。それが刺激になるし、楽しくてしかたないということにも気づきました。 研究友だちも増えました。生物だけでなくいろいろな分野に夢中な子がいっぱいいて、研究を続けていると、またどこかで会える。それもうれしいことでした。  こうしたつながりは、気がついたら日本中、そして今では海外にも広がっています。(同書p150より)

 こんなの読んでいるとすっかり真那君のファンになってしまう。
 いつかどこかで直接、真那君のレクチャーを受けたいものだ。

さあ、今年の夏は、第四のこの「ふしぎ!?」な生きもの=「変形菌」と出会うことができるだろうか!?
o(^o^)o ワクワク

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