【お薦め本】『蘭学者 川本幸民』(北 康利著 PHP研究所)
▼「日本のマッチの歴史」を追って、三田に川本幸民を訪ねてからはや2週間が過ぎた。
◆私の「科学」雑話(23) #マッチ #川本幸民 #化学新書
◆私の「科学」雑話(24) #マッチ #川本幸民 #化学新書
まだまだこの旅の反芻作業をくりかえしていた。
▼その作業の過程で出会った本が、今回の【お薦め本】だ。
◆【お薦め本】『蘭学者 川本幸民 ~近代の扉を開いた万能科学者の生涯~』(北康利著 PHP研究所 2008.7.2)
私はこの種の本をあまり読まない。
【お薦め本】にあげるのもはじめてかもしれない。いつもそんなところが幾分かはあるのだが、今回は特別にその傾向が強い!!
これは【お薦め本】と言うより、私自身のための「覚え書き」である。
▼ともかく、はじめて知ることも多くとても面白かった!!
いつものようにお薦めポイント3つあげておく。
(1) 科学者・川本幸民の全体像(人物像)が見えてきた!!
(2) この時代の「科学と社会」の関係が少しわかってきた!!
(3) 「科学する」面白さは時空を超えて不易であることを教えてくれていた!!
ではひとつずついこう。
(1) 科学者・川本幸民の全体像(人物像)が見えてきた!!
私は常識の範疇を超えて無知であった。特に「歴史」というものについて不勉強であった。
川本幸民という人物についても、マッチについて調べはじめるまでまったく知らなかった。
この点、この本はとてもアリガタイ!!
いろいろのエピソードを交えてのこの「川本幸民物語」はとても面白かった。
この幕末を生きた万能科学者のファンになってしまった。
(2) この時代の「科学と社会」の関係が少しわかってきた!!
これまたこの時代に限ったことではないが、科学・技術は深く社会とかかわっていた。
西洋からやってきた「科学」はどのように受け入れられたのだろう!?
それを見ることは、ひょっとしたら「これから」の科学・技術を考えるうえでもおおいに参考になるかも知れない。
▼最後にもうひとつだ。
(3) 「科学する」面白さは時空を超えて不易であることを教えてくれていた!!
これがいちばん言いたかったことだ。
・「舎密」から、はじめて「化学」というコトバを使った人
・宇田川榕庵の後継者
・はじめてマッチをつくった人
・はじめて和製ビールをつくった人
等々
多くの業績を残した偉大なる万能科学者である!!
それは間違いない。
なかでも私が特に驚いたことはふたつある。
ひとつは
「すべての根本に科学を据えようとしていた。」ということだ。
ひとつだけ引用させてもらう。
中でも斬新だったのが、「理科は諸科の総領」であるという林宗の考え方をより具体的にして、<医学の基礎は物理学にあり>と語っていることである。 当時のわが国において科学の中心は医学であり、化学は薬品製造のための補助的分野にすぎないと見なされていた。だが幸民は、物理学こそ医学の「本原」だと主張し、次のように述べて医学を目指す者に物理学を学ぶように勧めている。 医をなす者はまずこれヒシカ(物理学)について万有の理をきわめ、次にかのヒシヨロギー(生理学)をつまびらかにし、しかして後、パトロギー(病理学)に入るべし。 (同書 P147より)
もうひとつは「科学することを楽しんでいた。」ということだ。
どんな苦境に立とうとも、「科学する」こと・学問をすることの面白さを忘れなかった。
なによりすごいのは、そんなに充分な器具や道具あったとは思えないが、必ず得た知識を実際に確かめる「実験」をしていたということだ。
マッチやビールは、そんな取り組みのひとつの成果なのだろう。
「マッチの歴史」を追う旅、次は誰に出会うのだろう。o(^o^)o ワクワク
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