【お薦め本】『ねえ君、不思議だと思いませんか?』(池内了著 而立書房)
▼「雲見」をしたり、「高層天気図」を参考にしながら「天気の変化」の謎解きを愉しんでいると、つくづくと不思議に思うことがある。
「38万㎞もかなたの月が今夜どう見えるのか。」
「1億5000万㎞も遠くにある太陽の表面でなにが起こっているのか。」
「日食・月食はいつ起こるのか。」
「いつどこから観察できるのか。」
等々がいや、
もっと「何億光年もかなたの宇宙のこと」がかなり正確にわかるのに、たかだか高さ十数㎞の空間で起こる「大 気の運動」のことはまだ正確にはわからない!?
『それはアタリマエ!!、「大気の運動」がそれだけ複雑なものだ。』と言ってしまえばそれまでなのかも知れない。
でもやっぱり私は寅彦のあのコトバを言いたい!!
「ねぇ君、不思議だと思いませんか?」
▼寅彦のこのコトバをそのままタイトルする本が出ていた。それが今回の【お薦め本】です。
◆【お薦め本】『ねえ君、不思議だと思いませんか?』(池内了著 而立書房 2016.12.20)
この本は著者がここ数年雑誌、新聞などに書かれた文章を集めたものである。
そのときどきに発表されたものなので、少し補足する意味で「後日談」もときどきついている。発表されたメディアごとに3部構成になっていた。
同じことを書かれてもメディアによって少し切り口がちがっていた。
それがまた面白い!!
Ⅰ 現代科学の見方・読み方
Ⅱ 時のおもり
Ⅲ 科学の今を考える
ぜったいに話が拡散してしまいそうなので、いつものように先にお薦めポイント3つをあげておく
(1)「私の科学」をより豊かにしてくれる!!
(2)社会における「科学」の「現在地」を教えてくれる!!
(3)これからの「科学」を示唆してくれている!!
▼ ひとつずつ行こう。
(1)「私の科学」をより豊かにしてくれる!!
著者はこれまでに2つの「道標」を立ててくれたと私は思っていた。
「等身大の科学」と「新しい博物学」(そこから発展しての「オープンサイエンス」)という「道標」である。(くわしくは『科学のこれまで、科学のこれから』(池内 了著 岩波ブックレット 2014.6.4)等参照)
とりわけ「等身大の科学」という「道標」が私は気に入っていた。
私の「○○の科学」遍歴の終着点がここだと思っていた。ところが少し疑問が出てきた。いや疑問というよりそれはピッタリとこない違和感のようなものだ。
「等身大」と言ってもその大きさは人それぞれの「大きさ」があるのではないか?
「等身大」とひとくくりしていいものだろうか?
人それぞれの「等身大」にこそ意味があり、面白いのではないか。
そこで私は「等身大の科学」に変えて「私の科学」を使うことにした。
Ⅰ 現代科学の見方・読み方
では、著者池内了氏自身の「等身大の科学」が多く語られていた。
それが実に 面白い!!
はじめて知ることも多かった。
やっぱり「科学・技術」(ここでは「科学」のみならず「技術」もセットで)は面白いと思った。
読み進めるうちに「私の科学」がより豊かになっていく気分になった。
▼次に行こう。
(2)社会における「科学」の「現在地」を教えてくれる!!
これについても、これまですでに『科学・技術と現代社会 上・下』(池内了著 みすず書房 2014.10)等でくわしくまとめられていた。
しかし、ここの
Ⅱ 時のおもり
おさめられたのは、新聞の「時事コラム」として書かれたものである。
だからとてもリアルタイムだ!!
そのときどきの科学者としての発言がするどい!!
後日談が現在進行形をよく物語っている。
最後に行こう。
(3)これからの「科学」を示唆してくれている!!
これからの「科学・技術」についてもいくつか提言され実際に展開されていた。
そのなかで私がいちばん興味を持っているのは「オープンサイエンス」の取り組みだ。
それについては、「市民科学に求められること」(p67)にくわしく書かれた。
また、
Ⅲ 科学の今を考える
には、これからの「科学」を考える上でとても示唆的文章が多くあった。
なかでも
「科学者・技術者の条件」(p256)がとてもいい!!
タイトルの「ねえ君、不思議だと思いませんか?」はここに出てくる。
引用された中谷宇吉郎「「霜柱の研究」について」(青空文庫より)を今から読んでみようと思う。
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