今年2度目の「寅彦」を訪ねて(続)
▼昨日の朝は、まだまだお聞きした大野良一先生のお話の「反芻作業」を繰り返していた。
朝食の後、少し外に出て「雲見」をしてみることにした。
土佐の国での「雲見」もすばらしかった!!特に巻雲がすばらしかった。なにかスケールの大きさを感じた!!
「雲見」をしながら高知駅に向かった。と言うのは前日の講演のとき新聞記者さんがみえていたので記事になっているのではと思い新聞各紙を買うためだった。
あった!!記念にとっておこう。
◆銅像見て科学の心を 彫刻家・大野さん、記念館で講演 /高知(毎日新聞2016年12月5日 地方版)
▼いったんホテルに帰り記事をゆっくり読ませてもらった。
次に向ったのは高知県立文学館だ。
ここの「寺田寅彦記念室」は大のお気に入りだった。「寅彦」を訪ねて旅で高知に来たときは必ず寄らせてもらうことにしている。
まずなにより展示してある貴重な資料が充実している。それに展示に「物語」がある。
何度見せてもらってもあらたな「発見」があるのがうれしい!!
このなかでも、特に気に入っているのは三本の寅彦の「実験ビデオ」だ。
(1) 「渦巻きの実験」
(2) 「地滑りの実験」
(3) 「割れ目と生命の実験」
どれも興味深い実験を具体的やって見せてくれていた。今回はたっぷり時間があったので、繰り返し繰り返し何度も見せてもらった。どれも4分あまりのものだが、私は超傑作であると思っていた。
何度も見ても飽きない!!面白い!!
といいながらも、繰り返し見せてもらっているあいだに、ここ数日の睡眠不足か、ドライブのつかれかうたた寝をしてしまった。はっと気づいたとき人の気配を感じた。
(゜o゜)ゲッ!! そこに「寅彦」が立っていた!!夢ではなかった。
記念室に「等身大」の寅彦(後で背比べしたら私と同じぐらいの身長だった。ほんとうかな!?)のパネルがあるのだ。
それが、ビデオを見るところの真後ろに立ててあったのだ。
繰り返しビデオ見せてもらっているあいだも誰も入室者はなかった。
寅彦と二人きりのなんと贅沢な時間!!
うたた寝から目覚めた私は再びビデオを見た。そのときはたと思いついたことがある。この三本のビデオとも、最後はコート姿の寅彦が登場して、寅彦のコトバでしめくくられる。
それがとても気に入っていた。
「このコトバは、きっと寅彦の随筆のなかにあるのではないか!?」
よし帰ったら調べてみようと思った。コトバをメモ書きした。
そして今、調べてみた。
あった!! メモ書きが正しければ次のようになる。
(1) 「渦巻きの実験」 「物理学圏外の物理的現象」(青空文庫より)
広大無辺の自然にはなお無限の問題が伏在しているのに、われわれの盲目なためにそれを問題として認め得ない結果、それが存在しないかのように枕(まくら)を高くしているのである。
(2) 「地滑りの実験」 「自由画稿」はしがき(青空文庫より)
どんな瑣末さまつな科学的知識でも、その背後には必ずいろいろな既知の方則が普遍的な背景として控えており、またその上に数限りもない未知の問題の胚芽(はいが)が必ず含まれているのである。
(3) 「割れ目と生命の実験」 「空想目録」二 製陶実演 (青空文庫より)
学問の場合には、素材というものの価値が実は非常に重大である。いい素材を発見しまた発掘するということのほうがなかなか困難であってひと通りならぬ才能を要する場合が多く、むしろそれを使って下手(へた)な体系などを作ることよりも、もっとはるかに困難であると考えられる場合も少なくはない。そうして学術上の良い素材は一度掘り出されれば、それはいつまでも役に立ち、また将来いかなる重大なものに使用されるかもしれないという可能性をもっている。
至福の時間は2時間あまりになった。
次はこの傑作ビデオがどのような経緯で制作されたものかをぜひ知りたくなってきた。
▼文学館を出る前にどうしても手に入れたいものがあった。
「寅彦珈琲」である。オンライン「寅の日」の朝は必ずこの一杯からはじめていた。
私にとってはこれは「必需品」だった。
次に向ったところも「定番」コースにしていた。
寺田寅彦のお墓である。
今月は命日月だ!!
それにオンライン「寅の日」まもなく150回を迎えることの報告をしなければと思っていた。
合掌!!
お墓の後ろの土手に「藪柑子」の実が雨で洗われ赤かった!!
▼お墓からすぐ帰路についた。
今回はオプションで「ゆかりの地」に立ち寄ることはしなかった。
と言うのは、暗くなってから車の運転に自信がなくなってきているからだ。
車を運転しながら考えてみた。
今、私にとって「寅彦」を訪ねる旅はどんな意味をもつのだろう?
今さら、「寅彦」研究者にはなれないし、なるつもりもさらさらない!!
「寅彦」のことを少しでも知ることがとても愉しいのだ!!
それも一人でというのでなく、こよなく「寅彦」を愛する人たちから学びながら愉しむのが最高なんだ。
来年の春もお世話になります。
【追記】デジタル朝日新聞にも記事がありました。
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