【お薦め本】『増補版 実験で楽しむ宮沢賢治~サイエンスファンタジーの世界』(四ヶ浦弘著 細川理衣 絵 金沢・金の科学館)
▼昨日は雲ばっかりの「雲見」からはじまった。雨もときおり降ってきた。
しかし、夕方ちかくになると青空も見えて広がっていった。どのときの「雲見」もいい!!
それぞれの味わいがあっていい、いくらやっていても飽きない!!
「雲見」はもっとも安上がりの私の究極の道楽だ!!
その「雲見」を最初に言ったのはあの宮沢賢治だ。
眺(なが)めても眺めても厭(あきな)いのです。そのわけは、雲のみねというものは、どこか蛙の頭の形に肖(に)ていますし、それから春の蛙の卵に似ています。それで日本人ならば、ちょうど花見とか月見とか言う処(ところ)を、蛙どもは雲見をやります。
「どうも実に立派だね。だんだんペネタ形になるね。」
「うん。うすい金色だね。永遠の生命を思わせるね。」
「実に僕(ぼく)たちの理想だね。」
(宮沢賢治『蛙のゴム靴』青空文庫より)
▼残り少なくなった今年は、その宮沢賢治の生誕120年!!
生誕で思い出すのが、5年前の賢治115歳の誕生日(2011/8/27)のことだ。その日、私は偶然にも生誕の地に立っていた。「デクノボーの科学」を訪ねての旅だった。
先日、この宮沢賢治に関するたいへん興味深い本を手に入れた。面白くていっきょに読んでしまった。
【お薦め本】にあげるのは、実験を見せてもらった後にしようかと迷っていたが、やっぱり感動のうすれぬ今あげておくことにした。
◆【お薦め本】『増補版 実験で楽しむ宮沢賢治~サイエンスファンタジーの世界』(四ヶ浦弘著 細川理衣 絵 金沢・金の科学館 )
▼感動した点はいっぱいありすぎて、また話が拡散してしまいそうだ。
だから、最初にいつものようにお薦めポイント3つをあげておく。
(1)「宮沢賢治の世界」を楽しむあらたな方法の提案がある!!
(2)アートとサイエンスのコラボレーションに成功している!!
(3)もう一度「宮沢賢治」を読んでみようという気持ちにさせてくれる!!
ひとつめから行こう。
(1)「宮沢賢治の世界」を楽しむあらたな方法の提案がある!!
「金」の「ふしぎ!?」を追いかけ、ついには「金沢・金の科学館」までつくってしまう四ヶ浦さんだ。
今回はどんな展開を見せてくれているのか、本を手にする前から楽しみだった。
期待どおりだった、いやその何倍も面白かった!!
最初に気に入ったのは「はじめに」のコトバだった。
ところが興味を持って作品を手にしてみると、なんだかよくわからず(宮沢賢治ってこんなだったっけ?)と本を閉じてしまうことが…。実は、私がそうでした。親しみやすそうで難解な宮沢賢治の世界。そんな彼からのメッセージを確実に受け取れる方法があるのです。その方法で、ご一緒に賢治のサイエンスファンタジーの世界を楽しんでみませんか?
「そうなんですよね!!」と思わずうなづいた。
私も、「デクノボーの科学」なんてカッコつけて言っていても、ほんとうはよくわかっていなかった。
ましては「宮沢賢治の世界」を楽しむなんていうのはとてもとてもだった。
そこで、いかにも四ヶ浦さんらしい方法の展開がある。
それを語る四ヶ浦さんの口調もとても気に入った。どこまでも等身大だ!!
わからないことはわからないと言い。
「ふしぎ!?」だと思うことは不思議がり、驚き、感動する!!
このアタリマエがとってもいい!!
そこで四ヶ浦さんがとった方法は? これも四ヶ浦さんのコトバを借りよう。
賢治の作品には色々な味わい方があるように思います。ここで紹介してきたような<描かれたひとつひとつの表現を、実物や実験で確かめていく>という味わい方は、実験をやりながら、科学を学んでいく感覚に似ている様に感じられます。(そのうち何かがひらめくんじゃないかな?)と期待して少しずつ読み進めていけばいいような気がします。(同書 p20より)
そう実験をするのです!!
実際のモノを見るのです!!
賢治がやったであろう実験を再現するのです!!
賢治は「理科の教師」であり、科学者でした。実験も大好きだったのではと想像できます。
具体的に扱った作品は『春と修羅』のなかの「真空溶媒」「蠕虫舞手」です。
ここで私も今すぐできる<実験>をやってみました。
この本を読んだ後、青空文庫をひらいて「真空溶媒」を読んでみました。
なんとカラーで読めてくるのです!!
この一事をもって四ヶ浦さんの試みは成功していると思った。
▼ダメだ。こんなふうに書いていたら、いくらでも出てくる。
先を急ごう。
(2)アートとサイエンスのコラボレーションに成功している!!
これも追加ですが、「第2部 賢治の作品に描かれた科学を楽しもう」がとてもいいです。
きれいな写真とともに実験方法が具体的に紹介されています。
表紙、中表紙のイラストもすばらしい!!
場面場面のイラストは「賢治の世界」のイメージを豊かにふくらませてくれています。
(3)もう一度「宮沢賢治」を読んでみようという気持ちにさせてくれる!!
これは今の私の心境そのままです。
今回はこれぐらいにしておいて、またつづきをぜひ書きたいと思います。
だから…
(つづく)
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