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本日(2016/06/25)、第132回オンライン「寅の日」!!#traday

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▼「私たちは、まだここにいますよ。」
とコウガイビルショックでしょげる私をはげますように定点コガネグモがまた「狩り」をしていた。
 はげましてくれたのはコガネグモたちだけではなかった。となりの大賀ハス観察池には花芽3号、4号が連続してみつけることができた。
 自然の「ふしぎ!?」に尽きることはない。
 こんなときはやっぱり、あの人のあのコトバだ。

「ねえ君、不思議だと思いませんか?」

▼本日(2016/06/25)は、第132回オンライン「寅の日」です。
4月以来ながく続けてきた「寅彦の「観察眼」をテーマとした最後の回になります。
読むのは「三斜晶系」です。

◆本日(2016/06/25)、第132回オンライン「寅の日」!!

●「三斜晶系」(青空文庫より)

▼「三斜晶系」は昭和10年(1935)11月に発表された作品となっています。
 寅彦はその年の12月31日になくなりました。つまりこれは最晩年のエッセイ集ということになると思います。
「三斜晶系」は「夢」「とんぼ」「三上戸」の三つの作品からなります。
「観察眼」という視点でみると観察対象がそれぞれちがうように読めます。
私の勝手な読みときではこうです。
「夢」… 自分
「とんぼ」… 生きもの
「三上戸」… 人
 それぞれに面白いです。「夢」なんて、たったひと朝みた夢でここまで語れる人はそう多くいないでしょう。
「三上戸」も、食堂で座しているだけでこれだけ深く「人」を観察しているのだから驚きだ。そして面白い。
 しかし、私は今回は「とんぼ」に焦点をあてて読んでみました。

「とんぼ」は次のような「ふしぎ!?」の謎解き物語だった。

 ステッキの先端を空中に向けて直立させているとそれに来てとまる。そこでステッキをその長軸のまわりに静かに回転させると、とんぼはステッキの回るのとは逆の方向にからだを回して、周囲の空間に対して、常に一定の方向を保とうとする。そういう話を前日子供たちから聞いていたのではたして事実かどうか実験してみようと思った。

▼この文章は、私たちが謎解きをするときの手法について大きなヒントをくれていた。
たとえば次のような文章はナルホドと。

 試みに近い範囲の電線に止まっている三十五匹のとんぼの体軸と電線とのはさむ角度を一つ一つ目測して読み取りながら娘に筆記させた。その結果を図示してみるとそれらの角度の統計的分布は明瞭めいりょうに典型的な誤差曲線を示している。
 それから、ずっと毎日電線のとんぼのからだの向きを注意して見たが、結局彼らの体向を支配する第一因子は風であるということになった。
太陽の影響は、もしいくらかあるにはあるとしてもそれは第二次的以下のものであるという結論になるのである。
しかしまたこの事から、とんぼの止まっているときの体向は太陽の方位には無関係であるという結論を下したとしたら、それはまた第二の早合点という錯誤を犯すことになるであろう。

ぐいぐいと引き込まれていくような謎解き物語だ。
さらには、私たちを謎解き「自由研究」に誘ってくれるのだ。

 いちばん安全な方法はやはり野外でたくさんの観測を繰り返し、おのおのの場合の風向風速、太陽の高度方位、日照の強度、その他あらゆる気象要素を観測記録し、それに各場合の地形的環境も参考した上で、統計的分析法を使用して、各要素固有の効果を抽出することであろうと思われる。
 風速によってとんぼの向きの平均誤差が減少するであろうと想像される。その影響の量的数式的関係なども少し勉強すれば容易に見つかりそうに思われる。アマチュア昆虫生態学者こんちゅうせいたいがくしゃにとっては好個のテーマになりはしないかという気がしたのであった。

と。それから81年が経った。今どこまでわかっているのだろうかそれにも興味あるところだ。
それとは別に私には、最後の文章がすごく気になりだした。
少し長くなるが…。

そうしていっそう難儀なことはその根本的な無知を自覚しないでほんとうはわからないことをわかったつもりになったりあるいは第二次以下の末梢的まっしょうてき因子を第一次の因子と誤認したりして途方もない間違った施設方策をもって世の中に横車を押そうとするもののあることである。  人類を幸福に世界を平和に導く道は遼遠りょうえんである、そこに到達する前にまずわれわれは手近なとんぼの習性の研究から完了してかからなければならないではないか。  このとんぼの問題が片付くまでは、自分にはいわゆる唯物論的社会学経済学の所論をはっきり理解することが困難なように思われるのである。

このアイロニーの意味するところは…。

あのコウガイビルは、ダーウィンも観察したようにすっかり溶けてしまっていた。

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