本日(2016/05/20)、第129回オンライン「寅の日」!!#traday
▼それはあまりも美しく、巧みな技であった!!
ゲホウグモの「店じまい」である。ゲホウグモは夜の8時過ぎになると活動を開始して、あのレコード盤のような緻密なネットをつくりあげる。9時過ぎには完成する。完成したネットのセンター(こしき)で獲物を待つのである。
朝起きてすぐそれを見に行くと、ネットが乱れた跡が何カ所かある。狩りの「痕跡」であろう。
そんなネットはもう使いモノにならない。だから、ケホウグモのネットは使用期限は一夜限りである。
あのみごとなネットもたたんで一夜で「店じまい」をするのである。
「定刻」になれば、「店じまい」にかかる。まず最初に繫ぎとめていた糸をはずす、そしてたら一瞬に何分の一かがたためてしまう。あの運動会のときのテントを倒すときのような感じである。
たたんだネットは橋糸一本にまつわりつく、それをゲホウグモは「回収」(食べる?)する。
それで終わりだ。数分もたたないうちのできごとだった。
こんなシーンを私は毎朝観察させてもらっていた。
今朝、寅彦の文章を読んだら、「定刻」になれば…を疑りはじめていた。
▼本日(2016/05/20)は、第129回オンライン「寅の日」である。
5月のテーマは、寅彦の「観察眼」である。
自然の「ふしぎ!?」を読み解く力=「観察眼」であると思っている。
寅彦の「観察眼」は今回も鋭い!!
今回読むのは「とんびと油揚」である。
◆本日(2016/05/20)、第129回オンライン「寅の日」!!
▼先日教えていただいたことであるが、この作品が戦後、国語教科書に「科学読み物」としてとりあげられた回数がいちばん多いそうである。
それは今、読んでみて納得できた。
面白いのだ。時空を超えた面白さだ!!
推理小説を読む面白さだ。いやあのコナンの謎解きの面白さだ!!
まず「とんびと油揚」のタイトルだ。うまい!!
アタリマエを疑うところからはしめていた。
そんな高さからでもこの鳥の目は地上のねずみをねずみとして判別するのだという在来の説はどうもはなはだ疑わしく思われる。
さらには
視覚によらないとすると嗅覚きゅうかくが問題になるのであるが、従来の研究では鳥の嗅覚ははなはだ鈍いものとされている。
そして従来の研究にも突っ込みを入れる。
しかし、これはずいぶん心細い実験だと思われる。原著を読まないで引用書を通して読んだのであるからあまり強いことは言われないが、これだけの事実から、鷙鳥類しちょうるいの嗅覚きゅうかくの弱いことを推論するのははなはだ非科学的であろうと思われるし、ましてや、とんびの場合に嗅覚がなんらの役目をつとめないということを結論する根拠になり得ないことは明らかである。▼そして、寅彦なりのあらたな仮説を立てる。次のように
上述のごとく、視覚による説が疑わしく、しかも嗅覚否定説の根拠が存外薄弱であるとして、そうして嗅覚説をもう一ぺん考え直してみるという場合に、一番に問題となることは、いかにして地上の腐肉から発散するガスを含んだ空気がはなはだしく希薄にされることなしに百メートルの上空に達しうるかということである。ところが、これは物理学的に容易に説明せられる実験的事実から推してきわめてなんでもないことである。
このあとみごとな寅彦の仮説が展開される。
おみごと!!としかいいようのない。
これ以上は蛇足というものだ。ぜひぜひご一読を!!
私は、寅彦のこの文章を読むまで、ゲホウグモの「店じまい」は「定刻」に始まるとばかり思い込んでいた。
なぜ「定刻」なのだろう ?そればかりを考えていた。
ところが毎朝観察するようになっておかしいと思いだした。
「定刻」が変わるのだ。私が観察をはじめるとすぐに「店じまい」をはじめるのだ。
おかしい!?
ひょっとしたらゲホウグモは観察のために当てるライト(光)に反応しているのかも…
いや、カメラのシャッターきる音に反応しているのかも…
まだまだ謎は続きそうだ。
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