【お薦め本】『植物は<知性>をもっている』(S・マンクーゾ、A・ヴィオラ著 NHK出版)(1)
▼定点観測地のヒガンバナが葉の先の方から枯れ始めた!!
それは周囲の植物たちが生長してくるのに対応しているように見えた。
そうこれが植物「ヒガンバナ」の戦略であった。
昨年秋に花茎をのばしみごとな花を咲かせた後に、葉は伸びてきた。冬、他の植物が枯れている間は光を独り占めして、生産活動を行い地下の鱗茎(球根)に栄養をため込んでいく。そして、春、他の植物が生長してくる頃枯れていくのである。
このヒガンバナの株はもう20年近く観察している。毎年繰り返し繰り返し見てきたくてたことだった。
それを人に伝えたくて、それまでの観察をまとめたこともある。
それでも、今年もこれを目の当たりするとやっぱり植物「ヒガンバナ」は「すごい!!」と思う。
「かしこい!!」とも思う。
▼その「かしこさ」は、植物「ヒガンバナ」に限らないと教えてくれる面白い、刺激的な本に出会った。
それを今回【お薦め本】にあげる。
◆『植物は<知性>をもっている~20の感覚で思考する生命システム~』(S・マンクーゾ、A・ヴィオラ著 訳久保耕司 NHK出版 2015.11.20)
正直に言って大袈裟なタイトルの本だと思った。ひょっとしたらトンデモ本かも知れないと思った。
やっと手に入れて読んでみた。それは大きな誤解であることが読み進めるうちにすぐにわかった。
ともかく面白い!!
もう少し、その面白さを語りたいが、それをはじめると止めどなくダラダラ書いてしまいそうだ。
だから、例によってお薦めポイント3つを先にあげておく。
(1) 植物の驚異の「かしこさ」が見えてくる!!
(2) これまでの植物の「ふしぎ!?」を解くヒントがここにある!!
(3) これからの植物とのつきあい方を教えてくれている!!
▼さあ、これだけ書いておけばあとは気を楽にして、ダラダラと語ってみよう。
まず、
(1) 植物の驚異の「かしこさ」が見えてくる!!
からだ。
まったく気づいていなかったわけではなかった。この植物の「かしこさ」に。
とても古い話で恐縮だが、30数年前私はこれまでの先達たちの実践に学びながら
◆授業テキスト『植物の世界』
をつくった。それは、「動物」にくらべあまり人気のなかった「植物」を、少しでも魅力的にとらえてもらうための試みだった。「植物」けっして「静的」生命ではない!!ときには「動物」以上に「動的(?)」暮らしぶりなのである。
そのドラスティクな植物の日々の営みを実感をもってとらえて欲しいという願いがあった。
当時、そのなかでも「光とり競争」「つる植物」に注目していた。
それが、この本にも登場した。
「避陰反応」をしているあいだ、かなりの植物がかなりのスピードで成長するのは、ライバルよりも背を高く伸ばし、光をより多く受けたい一心からだ。しかし、この急速で猛烈な成長には、大量のエネルギーが必要になる。植物ががんばって背を伸ばしても成果が得られなかった場合には、その努力がかえって命とりになることもある。エネルギーと養分を、費用がかさむ上に確実に成功するとはいえない事業に投資することになってしまう。まさしく植物は、将来のために投資する実業家といえる。
植物は予測のもとによい結果がでるように投資する。つまり、典型的な知的行動をとっているのである。(同書 P73より)
茎が充分に伸びて、光を受けられる成長するまで、大量のエネルギーを消費して苦しい数年間を堪え忍ばなければならないだろう。そう聞くと不安になるだろうか?じつはべつの選択肢もある。もっと短期間ですむ方法、つまりつる性植物が選びとっている方法だ。苦しい日々を耐え抜くなんて考えもしない本当の怠け者、背を伸ばすためにいちばんの近道をとる。それは、すでにしっかり立っている何かの支柱にしがみつくことだ。そうすれば、短い時間で光にたどりつけるうえに、貴重なエネルギーをむだにすることもない。つる性植物のこの戦略は、私たち人間にもよくみられる行動ではないだろうか?(同書P191より)
子どもたちをして「つる植物はずる植物だ!!」と言わしめたそれが書いてあった。
▼つる植物の「戦略」の話だけでなかった。
次から次と植物の「かしこさ」を実証する具体例があがっていた。
「擬人化が過ぎる」という批判もあるだろう。わからないでもない。
しかし、きっちり科学的根拠にもとづくものであれば、理解を助ける手法として大いに有効であることも確かだ。
タイトル『植物は<知性>をもっている』は現実味を帯びてくるのだった。
ダメだ。
やっぱり予想した通りだ。書き始めたらいっぱい書いておきたいことが出てくる。
つづきは明日にしよう。
(つづく)
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