【お薦め本】『中谷宇吉郎の森羅万象帖』(福岡伸一・神田健三・中谷芙二子著 LIXIL出版)
▼「雪は天から送られた手紙である」
なんともうまく言ったものだ。
昨日(2016/01/14)の朝、大賀ハス観察池に雪が降っていた。
初雪であった。
私は、まだこの手紙の暗号を読み解く術を知らなかった。
この名言を発した中谷宇吉郎から大いに学びたいものだと思っていた。
▼私は、今回の【お薦め本】を先月、『親愛なる寺田先生~師・寺田寅彦と中谷宇吉郎展~』(なおこの企画展は1/31まで開催中)行ったときに決めていた。
◆『中谷宇吉郎の森羅万象帖』(福岡伸一・神田健三・中谷芙二子著 LIXIL出版 2013.3.15)
▼例によって先に3つのお薦めポイントをあげる。
(1)「中谷宇吉郎の世界」入門書として最適!!
(2)美しい!!至高の森羅万象図鑑!!
(3)最適の3人の案内人が科学者・宇吉郎を語っている!!
さあ、これで少しダラダラと語ってみる。
(1)「中谷宇吉郎の世界」入門書として最適!!
私は、最近急に、科学者・中谷宇吉郎に惹かれている。あの名言、寅彦の一番弟子というからだけでない。
きっと『立春の卵』を書いた科学者であることとも深く関係しているにちがいない。
もう少し、くわしく宇吉郎のことを知りたくなったときに読むのに最適だろう。
本のつくりがとても気に入った。まず時系列に、宇吉郎の研究歴を追っている。
1923年「ねぇ君、不思議だと思いませんか?」
からはじめて、それぞれの年代ごとにタイトルがついていた。
これがとてもうまい!!
これが、科学者・宇吉郎の全体像を理解するのに、とてもわかりやすい。
巻末の「略年譜」と合わせれば、とても利用しやすい。
これから、宇吉郎から学びたくなったときは、側に置いて参考にさせてもらいたい。
▼2つ目に移ろう。
(2)美しい!!至高の森羅万象図鑑!!
「値段の割には、うすっぺらいな。」これが、最初に手に取ったときの正直な印象だった。
なかみを見ているうちに、それは大きな間違いだとわかった。
ともかく美しい!!
見て楽しめるのである。とても美しい写真群は、ただそれだけではなかった。
科学者・宇吉郎を知る上で、貴重な資料ばかりだった。
「火花放電」
「雪の結晶」
「チンダル像」
「氷の単結晶」
「宇吉郎の描いた絵画」等々である。
いつしか、「中谷宇吉郎展」に来ている気分になってくるのである。
旅費、入館料込みと考えると、これは安い!!
それもいつでも入館できるというのだから、益々お得だ!!
次の最後に行こう。
(3)最適の3人の案内人が科学者・宇吉郎を語っている!!
最後に、3人の案内人の文章があった。
よくぞこんなピッタリの案内人がいたものだと思った。
・「中谷宇吉郎に寄せて」(福岡伸一)
あの福岡伸一である。人を魅入らせる文章を書くことで有名な『動的平衡』の福岡伸一だ。
中谷ハカセと福岡ハカセが響き合うというのが、なんともうれしい!!
ともにすばらしい文章を書くのだが、福岡は中谷の文章を次のにように語っていた。
中谷博士の文章はいつも科学的です。つまりシンプルで、軽妙で、端的です。でもそれだけではありません。 中谷博士の文章はすぐれて可視的であることにその特性がある、と私は思うのである。 科学は、複雑なことをシンプルな言葉で解き明かそうとする営みです。そのとき、目に見えるように語ることがとても必要になるのです。(同書p69より)
さすがだ!!おみごと!!
・「中谷宇吉郎-没後50年経て」神田健三
神田健三先生は、「中谷宇吉郎 雪の科学館」前館長で現「友の会」会長だ。
中谷宇吉郎を語るのにこれほどふさわしい人はないだろう。
先月、講演を聴かせてもらったばかりであった。そのときの講演内容を理解するのにまだ反芻作業を繰り返しているところだった。そんなときこの文を読ませてもらって、少しだけ頭の「整理」ができた気分だ。
ありがとうこざいます。
・「父の言葉」中谷芙二子
中谷の次女中谷芙二子の文章だ。これまた、娘ならでは尊敬と親愛に満ちた文章だ。
この文章を読ませてもらって、すぐ「簪を挿した蛇」を読んでみた。
中谷のほんとうに言いたかったことをいちばんよく理解しておられるのだろう、と思った。
うれしい【オマケ】がついていた。
・中谷が写した雪の結晶の写真原板シート
・ルーペット(フレネルレンズ )携帯に便利!!
昨夜は「とんど」だった。
炎を見ながら、中谷宇吉郎なら、これをどう表現しただろうとつい思ってしまった。
今日は、十五日正月!!
はやくも一月折り返しだ。今朝は「手紙」は届かなかった。
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