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【お薦め本】『南方熊楠』(唐澤太輔著 中公新書 )

▼私は、まだまだ6年ぶりの 「熊楠」詣で の余韻のなかにいた。
時間にして1日半(30時間ばかり)の旅であった。
そんな短時間にしては、実に多くのモノを見た!!多くのコトを聞いた!!
その「反芻」作業には今しばらくの時間が必要なようだ。
▼今回の「熊楠」詣で に際して案内してもらった友人から「来るまでに読んでくるように」と薦められた本があった。それが、今回の【お薦め本】である。

◆『南方熊楠~日本人の可能性の限界~』(唐澤太輔著 中公新書 2015.4.25 )

 今回の旅をふりかえってみるときナルホド!!と思った。
旅の前に読んでおいてよかったと思うこと頻りである。だから私もこの本を【お薦め本】にあげることにした。
▼熊楠と同じようにと言うと、熊楠は「レベルがちがうぞ!!」と怒るだろうが、私もすぐ話が「拡散」する癖をもっている。その「拡散」をしてしまわないうちにいつものようにお薦めポイント3つをあげておく。

(1) 熊楠の生涯を6つの時代に分けて、時系列に沿いながら熊楠の全体像を描いている。
(2) 「熊楠学」の入門書として最適である。
(3) 「熊楠学」の多様な「切り口」を紹介してくれている。

 こんな言い方をするとまるで私が「南方熊楠」を熟知した研究者みたいで、自分でも恥ずかしくなってくるが。
私は、単に「熊楠」に強く惹かれた「熊楠」ファンのひとりにすぎない。なぜ強く惹かれるのかも今の私にはわかっていない。
 私が私自身の「文脈」でなかで読んでみての独断と偏見の感想である。
ひとつずつもう少し補足してみる。

(1) 熊楠の生涯を6つの時代に分けて、時系列に沿いながら熊楠の全体像を描いている。
 まあこれほど数々の伝説に彩られた人物もめずらしいだろう。かなり増幅された「伝説」もあるだろうに、知れば知るほど「伝説」以上ではないかと思ってしまうから不思議である。
 この本ではじめて知ったことも多い。
・ミミズ嫌いだったこと
・「反芻」というあだ名をつけられていたこと
・「やりあて」のこと
・「第二曼荼羅」のこと
等々である。
 単に時系列に「時代」を区切って解説しているのでなく、「時代」をうまくリンクして解説しているのはみごとである。この「時代」のできごとが、別の「時代」のまったく別のことにツナガッテイル!!と「発見」しているのである。
それがとても面白い!!
「ナルホド!!」と説得力をもっていて読者を楽しませてくれている。

(2) 「熊楠学」の入門書として最適である。
 「熊楠学」初学者である私のような人間には、とてもわかりやすい入門書である。
面白そうであるが、だからと言って「熊楠学」を研究しようとまでは思わない。そんな能力も才能もない。
 なにか自分で「活用」できるところがあるなら、そこだけを「つまみ食い」をしたい。
そんな私のような人には最適だ!!
 これまでの「熊楠」研究の到達点をわかりやすく解説してくれているのもとてもアリガタイ!!
初学者にもっとアリガタイのは、読むのだけでもなかなか難しい『日記』『書簡』等の紹介したときには必ず、現代語訳と著者なりの「読み解き」を付け加えくれていることだ。
 ひょっとしたら、これが最大のお薦めポイントかもしれない。

(3) 「熊楠学」の多様な「切り口」を紹介してくれている。
 (1)(2)と関連するが、「熊楠学」には多種多様な「入口」がある。どこから入っても深く広い世界である。
どんな「入口」、「切り口」があるのか網羅して紹介くれている。
・「民俗学」
・「フィールドワーク」
・「自然観察」
・「粘菌」
・「博物学」
・「生物学」
・「自然保護」活動
・「神社合祀反対運動」
・「南方マンダラ」
・「萃点」
・「哲学」
・「宗教学」
・「脳科学」
・「エコロジー」
・「ヒューマンネットワーク」
等々アトランダムにあげだしたらきりがない。
もうすべてである。およそこの「宇宙」で「熊楠学」にないものはないというぐらいである。
「入口」から入って、より深く知りたくなってくれば末尾の「参考・引用文献」にあたればよい。
これもアリガタイ!!

▼こうしてこの本の紹介をしているうちに、私にひとつの衝動が生まれてきた。
それは新たな「作業仮説」をつくってみたいという衝動だ。
前回の「熊楠」マイブームのときは5つの「作業仮説」をつくった。
今回はいくつくらいできるだろう。
まずは思いついたものは「記録」だけはしておこう。熊楠に倣って
(1) 誰もが「私のマンダラ」を持っている!!
(2) 「新しい博物学」の可能性のヒントがここにある!!
きっとこんなことを思いだしたのは、この本を読んだからだろう。

 


 

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