【お薦め本】『科学・技術と現代社会 上・下』(池内了著 みすず書房)
▼「やっぱり、雨だった!!」
今朝起きてすぐ外に出て確かめてみた。
私の天気予報の的中率も少しずつあがってきていた。
毎日飽きもせずに「雲見」三昧だった。
「雲見」を続けながら、誰でもすぐに手に入れることできる資料・データを使って、今、「大気の物理学実験室」で起こっていることをできるだけ具体的にイメージする。そして「実験室」で起こる未来を予測するのである。
それが私の天気予報!!
実験材料費も設備も機器もなにもいらない。誰にでもたった今すぐできること!!
それが私の「等身大の科学」。
あの人の言う「新しい博物学」にツナガルものかもしれない。
▼その「等身大の科学」「新しい博物学」を教えてくれた人がいる。
池内 了氏だ。氏のこれまでの「仕事」の集大成のような本が出た。(実際の発行は上2014/10/10、下2014/10/24)
■『科学・技術と現代社会 上・下』(池内了著 みすず書房)
変な話だが、私はこの人の「追っかけ」をしていた。(まだ本の上だけであるが)
とりわけ、3.11以降にこの人の語ること、書くことに興味があった。
著者は昨年夏のはじめに『科学のこれまで、科学のこれから』(池内 了著 岩波ブックレット)を書き、そのなかで「これから」の道標を立ててくれていた。
「等身大の科学」「新しい博物学」という道標を!!
▼今回、この大著を少し変わった読み方をした。
手に入れたのは昨年末だった。年末年始に一挙にということはしなかった。と言うよりできなかったという方が正しいかも。(頭はポンコツ度を増すばかり(^^ゞポリポリ)
毎日時間を決めてちびりちびりと読み進めた。それはまるで大学の「講義」を聴講するような気分で。
だから、これは興味深いから長く読むということはせずに、次の「講義」のお楽しみということにした。
読み終えた今、思う。これは正解ではなかったかと。
実はこの本は著者の大学での講義録を中心に構成されたものだそうだ。だから私の「読み方」はけっこう
的を射たモノになっていたのかもしれない。
ダメだ!!こんな調子でいくといつものダラダラ病になってしまう。
お薦めポイント3つを先にあげておく。
(1) サイエンスコミュケーター必読の書!!
(2) 科学・技術の「現在地」が全領域にわたって語られている!!
(3) わかりやすく平易な文章で「これから」の科学・技術の方向が語られている!!
これまたいつものことだが、あくまで私の「文脈」にそった「我田引水」風のお薦めポイントだ。
▼ではひとつずつ行こう。
(1) サイエンスコミュケーター必読の書!!
私は、2011年4月、「サイエンスコミュニケーター宣言」をした。私は、それまでの取り組み(拙い実践ばかりではあるが)の中でひとつの確信を持っていた。
サイエンスコミュニケーションの最前線は現場の「理科」の授業である!!
だから、理科教師こそが、最前線の「サイエンスコミュケーター」である!!
ずいぶん手間勝手な理屈だ。
でもやっぱりそう思っていた。
では、そのなかで伝えたい「科学」とはなんだ!? 自問をはじめた。
その答えのひとつとして有力候補があった。
それが「等身大の科学」!!
だからこの書はサイエンスコミュケーター必読の書!!
(2) 科学・技術の「現在地」が全領域にわたって語られている!!
ほんとうに全領域をカバーしていた。人類史からはじめて現在までの科学・技術の「歴史」のすべてが語られていた。もっともリアルタイムの「歴史」についても避けてはいなかった。
序章に「原発事故をめぐって」をもってきていることからも著者のスタンスはわかると言うものだ。
歴史をひもとき「現在地」を確認するという作業は、「これから」を考えるとき最も重要である。
あのことの「歴史」についてくわしく知らないなと思えば、その項目のページを見ればよい。
およそここに書かれていない「科学・技術の歴史」はないぐらいにすべてが書かれている。
(3) わかりやすく平易な文章で「これから」の科学・技術の方向が語られている!!
元々が「これから」科学・技術の「専門家」になっていく若人たち語りかけた「講義」がベースになって構成された本だからそうなんだと思うが、非常に難解な問題を論じながらも文章は平易でわかりやすい。
これは示唆的である。わからなければ伝わらないのだから。
「地下資源文明から地上資源文明へ」の著者の主張もわかりやすく伝わってくる。
最後にどうしても引用させもらいたい一文があった。
その意味で本書は私の予見の書であり、取りようによっては今後科学と社会を考えていく人々への遺言と言っても差支えない。ここで指摘した問題について一つ一つ対処していくための私の遺言のつもりで書いてきたからだ。
幾分でも参考になれば幸いである。(下「あとがき」 P753より)
『科学のこれまで、科学のこれから』(池内 了著 岩波ブックレット)とセットで手元に置いておき、道に迷いそうになったらこの本を開いてみたい。
雨はやんだようだ。
今日の「雲見」はどんな展開になるのだろう。
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