【お薦め本】『日本列島の生い立ちを読む』(斎藤 靖二著 岩波書店)
▼覆っていた雪が融けて、定点観測地のヒガンバナはより一層元気に見えた。
定点観測地Aのヒガンバナは昨年の晩秋はじめて自然結実するのを見たものだ。一度は引っ越しをしたが、十数年以上観察を続けているものだ。
もうひとつの定点観測地Bは紅白のヒガンバナだ。こうしてみると明らかに紅白のちがいがよくわかる。
シロバナヒガンバナはとても葉が大きいのだ。
AもBも今こそと葉を伸ばせるだけ伸ばしているように見える。
今こそ光を独り占めして稼ぎどきなのだ。
何年観察していてもやっぱり思う。 「お見事!!」と。
▼ファラデーラボ「化石のかがく」放散虫の面白い話を聴かせてもらってから10日がたった。
なんでもゆっくりな私は、まだまだ反芻作業を続けていた。
話を聴かせてもらったとき、講師の竹村厚司先生に質問してみた。
「シロウトにお薦めの入門書は?」と。
そのとき教えていただいた本が今回の【お薦め本】である。
■『日本列島の生い立ちを読む』(斎藤 靖二著 岩波書店 2007.8.8 新装ワイド版)
お薦めは的確であった。
聴いたお話を反芻作業をするのにピッタリだった。
「あっ、このことを語っておられたのか!!」やっと納得できたことも随所に出てきた。
そこで【お薦め】の「おすそ分け」にこんな拙い紹介文を書く気になった。
▼「はじめに」からさっそく膝をたたいた。
「そうなんですよ!!」と共感してしまった。
「地質はどうもわかりません」という人には二つの意味あいがあるのではと言う。
ひとつは、野外で崖に露出している地層や岩石を見たときに、何をどのように観察するのか、あるいはどのように考えるのかがわからないというもので、岩石や化石などの知識が増えると解決する問題です。もうひとつは困ったことに解決しにくい問題で、地質をやっている人(地質屋と呼ばれたりします)にしかわかない用語と理屈が多くて、地質の話を理解することができないというものでした。(ⅴはじめに )
私が浅学なことはちょっと置いておくとして、ふたつめにあげていることは、私の思っていることを代弁してくれていると思った。
だから、この本は私のような人間のために書かれた本ということができる。
実はこの本はすでに1992年に出ていた。今回は2007年に新装ワイド版として出されたもの読んだのだ。
今から20年以上前に出ていたなら、「なんで読まなかったのだろう」と悔やませる内容だった。
例によってお薦めポイント3つだ。
(1) 地層を読むときの基本的な見方がわかりやすく語られている。
(2) 「付加テクトニクス」という一貫した「理屈」で日本列島形成物語が語られている。
(3) 日本列島形成物語が現在進行形で語られている。この物語を読むことこそが防災・減災につながることを示唆してくれている。
▼全体に写真・図が大きく挿入されておりわかりやすく面白い。
しかし、何と言っても私にとっていちばん面白かったのは
「4 きれいに積み重なっていない地層」(P66)の章である。
ここでは例の「放散虫革命」のことが語られていた。
著者が渦中の人だっただけに説得力がある。臨場感をもって語られている。
その当時の謎解きのワクワク感がそのまま生に伝わってくるようだ。
あの小さな小さなプランクトン「放散虫」の化石が、日本列島形成物語を劇的に変えていく。
いちばんの難問であったチャートが、謎解きの最大の「鍵」となる。
「地質はどうもわかりません」という人に対して一貫した「理屈」を提供したのだ。
面白い!!
そうしてみると、この本はこの4章を書くために書かれた本とも読めてくる。
もうひとつ気に入ったのは、現在もその謎解きは進行中であるとはっきり言ってくれていることだ。
とくに、「新装ワイド版あとがき」では、謎解きの「現在地」(2007.7)と「これから」が書かれている。
見慣れた風景のあの山、どのようにして山になったのだろう?
いつも通り過ぎるあの崖 もういちどゆっくり見に行ってみようかな。
チャートってあそこにもあったような。放散虫もういちど見てみたいな!!
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