あなたはどんなヒガンバナの里名を知っていますか? #higanbana
▼またして暑さが逆戻りしたような天気が続く。
しかし、ひとたびスイッチオンとなったヒガンバナの花茎はとまったり逆戻りすることはない。ひたすら「お彼岸」をめざしていた。通勤路の中間地点に勝手に設けた私のヒガンバナスポットの風景は日々更新していた。
ここは、かろじて「テクサレ」が使われた西の端に近かった。(都染直也先生たちの調査研究によれば)
▼先日、道普請で近隣の人たちと草刈りをしていて、久しぶりに聞いた、この言葉を。
「テクサレ」である。なんともなつかしい響きである。とてもうれしくなってきた。
私の住む地域(播磨地方)では、ヒガンバナのことを「テクサレ(テクサリ)」と呼ぶのである。
▼ かつて柳田國男は野草雑記のなかで、この「テクサレ(テクサリ)」について次のように書いていた。
自分たちの郷里では、子供は此植物に就いて三つの名を知つて居た。其一つは前に挙げた狐の剃刀で、是は専ら其葉をさして謂ひ、次にはジュズバナ、今一つはテクサレであるが、此事は後で一しょにいふ。ジュズ花といふのは此花の茎を折って、数珠の形に員
似て首に掛けて遊ぶからで、播磨一國だけで無く三河の寶飯郡石見の邑智郡等にも同じ語が有る。(『野草雑記』「草の名と子供」(定本柳田國男集 第二十二巻 筑摩書房)P72より)
播州も西の境では、此草をシビト花ともいふが、又シブラ・シビレ・シブライなどゝも呼んで居る。此植物の汁液
が唇などに附くと刺戟するので。此語を痺れの意味に解したのであらう。
大和の竹之内村などではテクサリ又はシタコジキ、富士山南麓地方は一般にハコボレグサと謂ひ、子供は此草をロに入れると歯が抜けるなどゝ嚇されて居り、或は又ハッカケバナーハツカケバアサンとも謂ふ者もある。信州の南部でも歯抜けばばアといひ、此花を折っただけでも歯が抜けると信じられて居た。九州も大分絲の南海部郡ではハカゲバナ・ハモギ・ハンモゲ・歯抜けいばら等の異名がある。何れも小兒を警戒する爲らしいから、作者は成人であったことがほヾわかる。
テクサリといふ語の方は、或は子供の實驗だったかも知れぬが、私たちは手が腐るなどゝ謂ひながらも、いつも折って遊んで居た。テクサリといふ名は私の郷里だけで無く、近畿では處々に行はれて居るやうだが、伊像の大三島などでは之をテハレグサ、紀州の尾鷲ではヒゼンバナと謂って居る。ヒゼッはいやな皮膚病の名で、實際此液がつくと指の股が白くなる。(同書P73より)
さすが柳田國男である。この情報収集力はたいしたものである。
▼柳田だけではない、柳田以降も多くの人がヒガンバナの里名を調査研究している。
その成果でもあるが、このヒガンバナほど多くの里名(方言)をもつ植物は少ないと言われている。
それは、古の人々とヒガンバナつき合いの深さを意味するのであろう。
里名ひとつひとつを見ていると、それなりの意味するとこがわかってとても興味深いのである。
その鋭い観察眼・表現力にも驚かされるのである。
里名は貴重な文化遺産である。
今や消えかけようする貴重な「文化遺産・財産」である。
自分の住む地域のヒガンバナの里名を再発掘し、次なる世代に伝えていくこともけっこう意味ある文化事業になると思うのだがどうだろう。
あらためて聞こう。
あなたはどんなヒガンバナの里名を知っていますか?
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コメント
楠田先生、こんにちは。
鈴木勝浩です。
なるほど!
人との関わりが多いほど、深いほど、
いろいろな里名がつくのですね。
地名もしかりですね。
里名の由来、地名の由来、おもしろいですね。
投稿: 鈴木勝浩 | 2013/09/14 05:22
鈴木勝浩さん
おはようございます。
ほんといろんな里名があって面白いですね。
鈴木さんがご存じのヒガンバナの里名ってありますか。
聞かれたことないですか?
投稿: 楠田 純一 | 2013/09/14 09:57