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本日(2013/08/16)、第42回オンライン「寅の日」!! #traday

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▼その現場は私の家から数十メートルだけはなれたところにあった。播但線が走る土手の下であった。土手の草はクズのマントで覆われいた。クズは土手を覆うだけでなくつるは道端までのび、道を横断しかねないぐらいの勢いだ。
 そこには多くのナガコガネグモがネットを張っていた。「獲物」はこの草むらいる虫たちだろうとは予想していた。
しかし、まだ「狩り」の現場にはでく会わせていなかった。
 昨日の朝の散策でやっと目撃することができた。「獲物」は夏を楽しませてくれていたキリギリスだろうか?
食事時間はきめているのだろうか。ここのナガコガネグモだけでなかった。近くのナガコガネグモも同じように一斉に食事中だった。
 これが私の「田舎」の朝の風景だった。
▼本日(2013/08/16)は、第42回オンライン「寅の日」である。
今日読むのは、こんな「田舎」の風景に関連する『田園雑感』である。
8月の大きなテーマは「文化としての科学」である。
折しもお盆であるので、「田舎」に帰省されている方も多いのではないかと思う。
いやもうUターンの帰路についておられる方も多いかも知れない。
そんな意味ではグッドタイミングの作品かも知れない。
◆第42回オンライン「寅の日」
●『田園雑感』(青空文庫より)
▼作品を読むのにやはり時代背景、作者の「現在地」を知っておいた方が少し深読みできるように思う。
これは大正10年(1921)。寅彦44歳のときである。彼はこの作品を書いたときまだ病床(胃潰瘍のため)にあった。この年の11月ごろから次第に快復し多くの仕事を成し遂げていった。
この翌年(1922)にはアインシュタインが来日している。
このころ寅彦は「田舎」と「文明」「文化」「自然」「科学」…をどう見ていたのだろう。

 田舎(いなか)の自然はたしかに美しい。空の色でも木の葉の色でも、都会で見るのとはまるでちがっている。そういう美しさも慣れると美しさを感じなくなるだろうという人もあるが、そうとは限らない。自然の美の奥行きはそう見すかされやすいものではない。長く見ていればいるほどいくらでも新しい美しさを発見する事ができるはずのものである。できなければそれは目が弱いからであろう。一年や二年で見飽きるようなものであったら、自然に関する芸術や科学は数千年前に完結してしまっているはずである。

 自然くらい人間に親切なものはない。そしてその親切さは田舎(いなか)の人の親切さとは全く種類のちがったものである。都会にはこの自然が欠乏していてそのかわりに田舎の「人」が入り込んでいるのである。

そして「盆踊り」「神社の祭礼の儀式」などを語り、次のように現状分析をする。

 簡単な言葉と理屈で手早くだれにもわかるように説明のできる事ばかりが、文明の陳列棚(ちんれつだな)の上に美々しく並べられた。そうでないものは塵塚(ちりづか)に捨てられ、存在をさえ否定された。それと共に無意味の中に潜んだ重大な意味の可能性は葬られてしまうのである。幾千年来伝わった民族固有の文化の中から常に新しいものを取り出して、新しくそれを展開させる人はどこにもなかった。「改造」という叫び声は、内にあるもののエヴォリューションではなくて、木に竹をつぐような意味にのみもてはやされた。それであの親切な情誼(じょうぎ)の厚い田舎の人たちは切っても切れぬ祖先の魂と影とを弊履のごとく捨ててしまった。そうして自分とは縁のない遠い異国の歴史と背景が産み出した新思想を輸入している。伝来の家や田畑を売り払って株式に手を出すと同じ行き方である。

▼寅彦がこう言ってから92年の年月が経った。
ほんとうに「時代」は変わったのだろうか。最後に寅彦の言ったことは、今こそ緊急課題とも言えるのではないだろうか。
 そうした田舎(いなか)の塵塚(ちりづか)に朽ちかかっている祖先の遺物の中から新しい生命の種子を拾い出す事が、為政者や思想家の当面の仕事ではあるまいかという気もする。

ここにこそ最晩年の『日本人の自然観』にツナガル回路のはじまりがあるような気がするのだが。


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コメント

楠田先生、こんにちは。

 鈴木勝浩です。

 伝来の家や田畑
 祖先の魂と

 日本人が失ってならないものですね。
 

投稿: 鈴木勝浩 | 2013/08/16 06:18

鈴木勝浩さん
コメントありがとうございます。
時空を超えて寅彦から学ぶことは多くありますね。
 今後もオンライン「寅の日」へのコメントよろしくお願いします。
 

投稿: 楠田 純一 | 2013/08/16 14:16

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