【お薦め本】『クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ 』(大﨑茂芳著 中公新書)
▼貴奴=コガネグモに出会ってから10日目の朝。貴奴はまたしてもネットの張り替えをしていた。
いつやったのだろう?それが「ふしぎ!?」だった。
一昨日の夜、見たときには少し乱れていたはずなのに、昨日の朝のネットはみごとなものだ。
夜なべ仕事にやったのだろうか?それとも朝、早起きしてやったのだろうか。
いかに驚異のクモと言えども、「資源」を無制限に持ち合わせているわけではない。ネットを更新するときには一度張った糸を回収するという。それをまた使って糸を紡ぎネットを張るのだという。
幸いなことにこの10日間に「狩り」をするところも、ネットを張るところも目撃した。しかし、まだこのネットを回収するところは見ていなかった。
いつかはそれをも見てみたいものだ。
▼たった10日間だが、すっかり「クモの世界」の魅力に取り憑かれてしまった!!
それに拍車をかけてくれた一冊の本がある。それが、今回の【お薦め本】である。
コガネグモに出会って、少しくわしくクモのこと知りたくなって近くの図書館に行った。そこでたまたま出会った本である。
◆『クモの糸のミステリー―ハイテク機能に学ぶ』(大﨑茂芳著 中公新書 2000.08)
私が読んだのは、この「中公新書ワイド版 2003.10.25」である。
▼ともかく面白かった!!
図書館で借りた本を【お薦め本】にあげるなんてはじめてであった。でもあまりにも面白かったので、どうしてもあげたくなって、これを今書いている。
たまたまコガネグモに出会ったこともそうなんだが、ちょうど私はこのとき、私自身の夏の「自由研究」のことを考えていた。
「自由研究」のテーマを考えると同時に、
・私にとって「研究」ってなんだろう?
・私の「ふしぎ!?」から私の「科学」への道すじは?
・ホンモノの「研究」と「自由研究」のちがいは?同じところは?
と言うようなことをおぼろげに考えていた。
まったくベストタイミングであった。この本のなかにその答えが語られていた。
読みはじめたらとまらなくなった。ひとり大笑いしながら、ときに膝をたたき、ほんとうに拍手しながら読んだ。
いっぺんに読んでしまうのが「もったいない」と思った。
だから、コガネグモの観察と並行させながら、少しずつ自分を焦らせながら読んだ。
こう書き出したらダラダラいつまでも書いてしまいそうだ。
いつもの【お薦め本】のようにお薦めポイント3つをあげておく。
【その1】 「研究」の面白さを語っている!!
【その2】 「研究」のすすめ方を具体的にわかりやすく等身大に語っている!!
【その3】 自然から学ぶ「科学」の有効性を実践的に語っている。!!
▼著者も私と同じ(言えば失礼になるが。もちろんレベルがちがう)持病の持ち主だと思った。
その持病とは「ばっかり病」である。
一般企業で「高分子化学」の研究をしておられた著者が、ひょんなことから「クモの不思議」
に出会う。病に取り憑かれた著者は、「クモばっかり病」を発症をする。
家族を巻き込み、周辺の人々を巻き込んでいく。
やがて「趣味」は「本業」に変わっていく。
ともかくアクティブだ。
「ふしぎ!?」は逃さない。
実際に牽引糸を回収器を自作する。
その道の先行研究者がいるとわかるとすぐさま直接会いに行く。
「クモ合戦」が今もおこなわれいるところがあると知ると、四国、九州へと飛び回る。
それも家族ずれでである。
「本業」になっただけでない、「クモの糸」研究の世界的な第一人者となっていた。
「あとがき」の次の文章は「これから」の科学にきわめて示唆的である。
三〇〇万年という進化の歴史を持つ人類は、その間に道具と火を使うことを覚えた。しかし、四億年という気の遠くなる長い進化の歴史を歩んできたクモは、人類より古くから糸という道具を上手に使いこなしてきた。この期間に、環境に適応した生存システムをあみだすとともに、環境に適した機能を持つ道具としての糸ができあがってきたものと思われる。すなわち、クモの牽引糸は長い進化の歴史から、「効率性」と「ゆとり」を持ち合わせた「安全性」という概念で設計されていることがわかった。最近の「ハイテクノロジー」という言葉は、人類がどんなことでも安易に解決できるような錯覚に陥らせたが、それはしょせん錯覚でしかなく、歴史の浅い人類は、まだまだ、身近な生物であるクモから数々のサイエンス(科学)を学んでいく必要があろう。(同書 P180より)
さあ、今朝もあの貴奴に学びにでかけよう!!
今日は何を教えてくれるかな。
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コメント
楠田先生、
こんなにすばらしい後書きだったんですね。
読み直します。
それにしても、何時ごろ
コガネグモは網を更新しているのでしょうね?
コガネグモの場合、
そんなに頻繁に更新していないと
思っていたのですが、
違うようですね。
思い込みはだめですね。
観察こそ大切!
投稿: 鈴木勝浩 | 2013/07/19 05:47
鈴木勝浩先生
おはようこざいます。やっぱり読まれていたんですね。
それはそうですよね。
こんな面白い本、逃すわけないですよね。
今から今朝の観察にでかけたいと思います。
さてどうなっているでしょうね?
また報告をしたいと思います。
投稿: 楠田 純一 | 2013/07/19 06:35