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本日(2013/04/06)、第31回オンライン「寅の日」!! #traday

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▼久しぶりに「春」の空の「雲見」をした。
青空が広がっていた。
それはまちがいなく春の青空であった。
冬の青空ではなかった。夏の青空でもなかった。
どこがどう違うのか、私には言葉にできなかった。
「あの寅彦ならどう表現しただろう?」と思ってしまう自分がいた。
▼その寅彦の文章をオンラインで読みはじめて一年が経った。
今日(2013/04/06)は、二年目スタートの日である。
今一度、オンライン「寅の日」とはなになのか、問いかえしながら二年目をはじめたい。
◆第31回オンライン「寅の日」
●「春六題」(青空文庫より)
▼二年目スタートにふさわしい、いかにも寅彦らしい文章群である。
「春」をキーワードに寅彦ワールドが縦横無尽に展開されている。六題はバラバラのように見えてどこかでツナガッテいた。それこそが寅彦の文脈であった。
 ポンコツ理科教師の文脈と重なるところをなんとか見つけようとするが、なかなか困難な作業である。
でも楽しい、魅力的な作業でもある。
 一の切り出しなど
「こう来たか!!」
「やっぱりさすが!!」という感じだ。

暦の上の季節はいつでも天文学者の計画したとおりに進行して行く。これは地球から見た時に太陽が天球のどこに来ているかという事を意味するだけの事であるから、太陽系に何か大きな質量の変化が起こるか、重力の方則が変わらない限り、予定のとおり進行してゆくはずである。

そして、アインシュタインをも引き合い出しながら諸々を展開して最後に
 だれにでもわかるものでなければそれは科学ではないだろう。

とストンと落とす。「そりゃそうだ!」と頷かずにおれない。
いつしか寅彦ワールドに引き込まれていくのである。
ニ、三と同様につづく。
▼「六題」の主旋律は四、五あたりにあるように思う。
四では、寅彦がこだわり続けた「生命と時間」のテーマについて
植物の「生命」をとりあげながら
植物が生物である事はだれでも知っている。しかしそれが「いきもの」である事は通例だれでも忘れている。

とはじめて、
  われわれがもっている生理的の「時」の尺度は、その実は物の変化の「速度」の尺度である。万象が停止すれば時の経過は無意味である。「時」が問題になるところにはそこに変化が問題になる四元世界の一つの軸としてのみ時間は存在する。

と展開している。
なんと示唆的なことを言っているのだろう。感嘆するばかりである。

五では、これまた大テーマである「物質と生命」についてである。

 物質と生命の間に橋のかかるのはまだいつの事かわからない。生物学者や遺伝学者は生命を切り砕いて細胞の中へ追い込んだ。そしてさらにその中に踏み込んで染色体の内部に親と子の生命の連鎖をつかもうとして骨を折っている。物理学者や化学者は物質を磨(す)り砕いて原子の内部に運転する電子の系統を探っている。そうして同一物質の原子の中にある或(あ)る「個性」の胚子(はいし)を認めんとしているものもある。化学的の分析と合成は次第に精微をきわめて驚くべき複雑な分子や膠質粒(こうしつりゅう)が試験管の中で自由にされている。最も複雑な分子と細胞内の微粒との距離ははなはだ近そうに見える。しかしその距離は全く吾人(ごじん)現在の知識で想像し得られないものである。山の両側から掘って行くトンネルがだんだん互いに近づいて最後のつるはしの一撃でぽこりと相通ずるような日がいつ来るか全く見当がつかない。あるいはそういう日は来ないかもしれない。しかし科学者の多くはそれを目あてに不休の努力を続けている。もしそれが成効して生命の物理的説明がついたらどうであろう。
 科学というものを知らずに毛ぎらいする人はそういう日をのろうかもしれない。しかし生命の不思議がほんとうに味わわれるのはその日からであろう。生命の物理的説明とは生命を抹殺(まっさつ)する事ではなくて、逆に「物質の中に瀰漫(びまん)する生命」を発見する事でなければならない(強調は私)

この文章が書かれたのは、1921年(大正10)4月である。

●1953年 ワトソン(米)、クリック(英)DNA二重らせん構造の発見。
●2003年 ヒトゲノムプロジェクトが解読完了を宣言(米)
●2006年 山中伸弥ほか(京大)、トムソン(米ウィスコンシン大)がそれぞれiPS細胞(人工多能性幹細胞)生成技術発見。

を重ねあわせて考えるとき、寅彦の文脈の先見性が浮き彫りにされるのである。
そして、同時に、今私たちの「科学」はどこにいるのか、問われているような気がしてくるのである。

拙い読み取りはこれぐらいにしておく。
もっといろんな立場の人、ちがった「私の科学」を持つ人の読み取りを聞きたい。
ちがった読み取りがあってこそのオンライン「寅の日」である。
よろしくお願いします。

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