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【お薦め本】『英語で楽しむ寺田寅彦』(トム・ガリー/松下貢著 岩波書店)

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▼「お見事!!きれいだ!!」
と思った。納屋の入口であまり陽のささないところで、あわや踏んづけてしまいそうなところに、タンポポが葉を広げていた。
「なんでこんなきれいなかたちをしているだろう?」
「その意味はなんだろう?」
と考えていたら寅彦の口癖の真似をしたくなってきた。
「ねぇ君、不思議だと思いませんか?」と。
▼その寅彦の名エッセイをオンライン「寅の日」で読みはじめて、まもなく一年になろうとしている。
ほんの少しだけ寺田寅彦の文脈が見えかけてきたところだ。
 昨年秋に【理科の部屋】で岩波『科学』に「寅彦i n English」を連載していることを教えてもらった。
それは読んでおきたいと思い、バックナンバーを取り寄せ読みはじめていた。
そしたら先日たまたま新聞で、この連載が単行本として出ていることを知った。
◆『英語で楽しむ寺田寅彦』(トム・ガリー/松下貢 岩波科学ライブラリー 2013.02.06)
 「目次」を見ればわかるが、連載9回目までの6編のエッセイをとりあげていた。
 「藤の実」「エレベーター」「津波と人間」「地震雑感」「天災と国防」「流言蜚語」の6編である。
このうち「エレベーター」「流言蜚語」以外はすでにオンライン「寅の日」でとりあげ一応読んでいた。
▼日本語でも満足に理解していない状態の私に「英語」で読むなんていうことにどんな意味があるのだろう。
まして不勉強な私は「英語力」などまったくないに等しい。
 そう思いながら読みはじめると、著者のひとり松下貢氏がはじめの「寅彦を今、英語で読むこと」のなかで次のように言っていた。

 寅彦の随筆内容は一般的・普遍的であり、世界中の誰もが理解できるはずである。彼の随筆を日本語で読みながら、興味深く思った部分を英語にするとどんな表現になるのか考えてみる。これは随筆の一層の深読みにつながり、それまでに気づかなかったことが見えてくるかも知れない。(同書 Pⅶ より)

そう言われると納得である。この誘いに乗ってみたくなってきていた。
本書の中でもこのことは英訳にあたったトム・ガリー氏が立証していた。
よみとき1 「偶然と必然のはざま」
よみとき2 「ばらばらな状態の不安定さ」
よみとき3 「的中してしまった警告」
よみとき4 「地震予知の難しさ」
よみとき5 「忘れた頃に来る天災」
よみとき6 「噂の無責任さと怖さと」
この6つの「よみとき」を読んでみて松下氏のことばはほんとうだ!!と思った。
するどい「深読み」だ。自分で読んだときに気づかなかったことがいっぱい出ていた。
四つの「追記」もとってもいい。
特に「科学と「私」」、「寅彦のリズム」がいい。
▼英語にするとどうなるなるのだろう。気になる寅彦の言葉がふたつあった。
ひとつはあの有名な警鐘「天災は忘れた頃にやってくる」である。これもよく知られたことであるが、寅彦自身の書いたもののなかにはこの言葉そのものはでてきていない。中谷宇吉郎が普段から言っていたことをこの言葉にしたのだろう。寅彦の書いたもののなかでこれに近い言葉は『天災と国防』のなかの「畢竟そういう天災が極めて稀にしか起こらないので、丁度人間が前車の顚覆を忘れた頃にそろそろ後車を引き出すようになるからであろう。」だろうと言われている。これを英語で言ったらどうなるのだろう。
 もうひとつは『津波と人間』のなかにある「科学の方則とは畢竟「自然の記憶の覚え書き」である。」
これはここだけでなく寅彦が一貫して言いつづけたことでもある。英語にすると…。
ぜひ本書を手にとって確かめてみることをお薦めします。
▼寅彦の科学エッセイを読んでいていつも強く実感することがある。
それは、70年80年の時空を超えてきわめて今日的であることだ。
たった今書かれたものと言われてもなんの違和感もない。それはなぜなんだろう?
「時間」を超えては実感をしているところであるが、今度は「英語」にしてみることで「空間」も超えてを立証してもらいたいところだ。
 連載はまだ続いているようだ。ぜひぜひこの本の第2弾も期待したいところである。
 

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