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本日、第20回オンライン「寅の日」!! #traday

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▼昨日は大賀ハス定例観察日。蓮根の植え替えから34週目だった。観察池に枯れた葉が浸かり、その周辺には濁ったアオミドロがどろっと取り巻いている。観察池は完全にビオトープ化していた。前日の原生動物観察の影響だろか、観察池のなかに見えるはずのない生命体の蠢く姿がみえてくるのだった。
▼本日は第20回オンライン「寅の日」である。
11月は【理科の部屋】の誕生月ということもあり、理科教育関係の文章を中心に読んできた。「研究的態度の養成」「雑感(科学魂)」に続いての第3弾である。
◆第20回オンライン「寅の日」
●「物理学実験の教授について」(青空文庫より)
こうして寅彦の理科教育への提言を続けて読んでいて疑問に思うことが2つある。
ひとつは
(1) なぜ教育現場の実情を理解していたのか?
もうひとつは
(2) 90年以上もの時空を超えて響いてくるものがあるのはななぜ?
これを頭におきながら読み進めてみた。
▼また今回の文章のかかれた時代についてであるが、これは大正七年六月『理学界』に書かれたものだ。
前々回の「研究的態度の養成」は大正七年十月『理科教育』だ。
大正七年(1918)とは理科教育にとってどんな時代だったのだろう。
『日本理科教育史』(板倉聖宣著 仮説社)の年表を見てみる。

●1918.1.9 理科教育研究会、東京帝国大学で発会式(会長 林 博太郎)。
●1918.2.5 文部省、師範学校・中学校の物理・化学に生徒実験を課すことを定め、「物理及化学実験要目」を訓令、生徒実験設備費として臨時補助金20万円余を国庫支出。
●1918.4.△ 理科教育研究会『理科教育』創刊

この時代背景を考えると寅彦の文章の書き出しも幾分か理解できるような気がしてくるのである。
この年、寅彦は41歳。1916年には東京帝国大学理科大学教授に就任しており、加えてこの年の4月より航空研究所兼任を命じられている。
▼ひとつめの疑問であるが今回の文では

 自分は中等教育というものについては自分でこれを受けて来たという以外になんらの経験もないものであるが、ただ年来大学その他専門学校で物理実験を授けて来た狭い経験から割出して自分だけの希望を述べてみたいと思う。勿論我田引水的のところもあろうが、ただこれも一つ参考として教育者の方々に見て頂けば大幸である。

 と自分の立場をことわりながらも
このような場合における教員の措置如何(いかん)は生徒の科学的精神の死活に関するような影響を有するものと思う。この場合に結果を都合のよいようにこじつけたり、あるいは有耶無耶(うやむや)のうちに葬ったり、あるいは予期以外の結果を故意に回避したりするような傾向があってはならぬ。却って意外な結果や現象に対しては十分な興味をもってまともに立向かい、判らぬ事は判らぬとして出来る限りの熱心と努力をもってその解決に勉めなければなるまい。これは一見生徒の前に自分の無知を表白するように見える。ことに中学程度の生徒には教員の全知全能を期待するような傾向があるとすれば、なおさら教員の立場は苦しい訳であろう。しかしそれはほんの一時の困難であろうと思われる。一通りの知識と熱心と忍耐と誠実があらば、そうそう解決のつかぬような困難の起る事は普通の場合には稀である。そのうちに生徒の方でも実験というものの性質がだんだん分って来ようし、教員の真価も自ずから明らかになろうと思う。そういう事を理解するだけでもその効能はなかなか大きいものであろう。これに反して誤った傾向に生徒を導くような事があっては生徒の科学的の研究心は蕾(つぼみ)のままで無惨にもぎ取られるような事になりはしないかと恐れるのである。

と繰り返し提言するのである。現場の理科教師の事情にも理解を示す一方できっちりと言いたいことは言い切っているのである。これはみごとである。
 では寅彦は「現場の事情」をこうもリアルに理解していたのか。
それは、寅彦自身が実はもうひとつの「現場」の「理科教育者」であったのではないか。というのが私の仮説である。
▼今回は「物理実験」についてということになっているがこれは「化学実験」「生物実験」などで言えることで科学実験一般に言えることが提言されている。
 実験することのねらいが書かれているのである。

物理実験を生徒に示すのは手品を見せるのではない。手際(てぎわ)よくやって驚かす性質のものではなく、むしろ如何にすれば成功し如何にすれば失敗するかを明らかにする方に効果がある。それがためには教師はむしろ出来るだけ多く失敗して、最後に成効して見せる方が教授法として適当であるかと思う。

などは、痛切に現代の理科教育にも訴えるところがあるのかも知れない。
ふたつめ疑問であるが、今ところの私の仮説は、これぞ我田引水になるが、

「寺田寅彦は「私の科学」をもつ科学者であり、科学教育者であった。」
「常に「科学とは」を自らに問いかけるホンモノの科学者であった。」

ということである。
 だからこそ、90年もの時空を超えて響いてくるものがあるのだろう。


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