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本日、第12回オンライン「寅の日」!! #traday

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▼線路端に我が家はある。線路から土手で一段下がったところ家は建っている。
毎年この土手一面をクズが覆うのを見てくらしてきた。クズの蔓はすさまじい勢いでのびてくる。
「もっと光を!」絶叫しながら太陽に向かう。植物の世界では少しでも多くの光を手に入れたものが覇者となるのだ。多くの光でつくり出した栄養は、背を高くするための茎に最小限の消費でおさえ、他の背の高いものを利用するのである。子どもたちは言った。「つる植物」は「ずる植物」だと。
▼同じつる植物に「カラスウリ」がある。家の西のゴンビの木に巻き付き葉を広げていたこともある。秋になれば朱色の実をつける。地下の栄養のタンクとともに教室に持ち込み教材にしたこともある。
そのカラスウリの花も興味深いものだった。
寅彦に語らせればこうだ。

 毎日おびただしい花が咲いては落ちる。この花は昼間はみんなつぼんでいる。それが小さな、かわいらしい、夏夜の妖精(フェアリー)の握りこぶしとでもいった格好をしている。夕方太陽が没してもまだ空のあかりが強い間はこのこぶしは堅くしっかりと握りしめられているが、ちょっと目を放していてやや薄暗くなりかけたころに見ると、もうすべての花は一ぺんに開ききっているのである。スウィッチを入れると数十の電燈が一度にともると同じように、この植物のどこかに不思議なスウィッチがあって、それが光のかげんで自働的に作用して一度に花を開かせるのではないかと思われるようである。ある日の暮れ方、時計を手にして花の咲くのを待っていた。縁側で新聞が読めるか読めないかというくらいの明るさの時刻が開花時で、開き始めから開き終わりまでの時間の長さは五分と十分の間にある。つまり、十分前には一つも開いていなかったのが十分後にはことごとく満開しているのである。実に驚くべき現象である。

なんというすごい観察眼であることか。
それだけではない観察したもの表現する力はみごとである。
こんな文章を読むのが本日!!
◆第12回オンライン「寅の日」
・「からすうりの花と蛾」(青空文庫より)
▼これまでに読んできた「線香花火」「金平糖」などでもそうだが、読んでいくと「へえー」と驚き、「なるほど」と膝をたたき、「面白い!!」となるのである。
 鎌田浩毅は『寺田寅彦』(池内了編集 河出書房新社 2011.11.30)のなかで、この文章について次のように語っている。
 具体的には、日常生活に身近な例を挙げること、使う言葉が平易なこと、文章だけで読ませてしまう面白さがあること、読み終わると何らかの余韻が残る仕掛けがあること、などの手法を私は寺田の文章から学んだ。(前記著 P108)

さすがである。
▼寅彦の文章にもどる。からうりのの花の話から、蛾の話、鳥の話そして人間の話へと次々と面白く流暢につづく。そして、きっちりと「余韻の残る仕掛け」はあった。

しかしもう一歩科学が進めば事情はおそらく一変するであろう。その時にはわれわれはもう少し謙遜(けんそん)な心持ちで自然と人間を熟視し、そうして本気でまじめに落ち着いて自然と人間から物を教わる気になるであろう。そうなれば現在のいろいろなイズムの名によって呼ばれる盲目なるファナチシズムのあらしは収まってほんとうに科学的なユートピアの真如(しんにょ)の月をながめる宵(よい)が来るかもしれない。
 ソロモンの栄華も一輪の百合(ゆり)の花に及ばないという古い言葉が、今の自分には以前とは少しばかりちがった意味に聞き取られるのである。

と寅彦が言って80年の年月が流れた。
 「もう一歩科学」は進んだのだろうか。私たちの「科学」は今どこにいるのだろう。

今朝もわずかに残った西庭のカラスウリの花はまだ開いているだろうか。
見に行ってみよう。

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