サイエンスコミュニケーター宣言(94)
▼私は、その本を読みながら少し興奮していた。この感覚は久しぶりである。一つの章が終わる度に、「そうだったのか!」と納得する。うっすらとは知っている知識はあるが、「そう見るのか!!」と。断片的な知識が、みごとな文章でつながっていくとき目から鱗である。ちょっと一度に読んでしまうのはもったいないので何日間に分けて楽しむことに にする。その本とは、『動的平衡2』(福岡伸一著 2011.12.07 木楽舎)である。あの『動的平衡』の第二弾だ。これは私にとってはとても楽しい「科学読み物」なのである。
▼子どもたちが、「目から鱗」の経験をする「科学読み物」はいつはじまったのだろう。ここに皮肉な歴史の奇遇がある。
●1886年(明治19) 学校令「小学校の学科及びその程度」
において「理科」は誕生した。
それまで科学教育の系譜をたちきるように現れた「理科」教育。
「理科」は身近第一主義、実物第一を優先した。見えないもの、手に触って確かめることのできないものは遠くへ押しやろうとした。それは子どもたちが学ぶにふさわしいものでないと判断されたのかも知れない。
▼それは、科学教育の系譜の終焉を意味するものではなかった。かたちを変えて登場するのである。それが、『読書』 としての「理科」である。
『理科読本』として蘇ったのである。これが、今日の「科学読み物」のはじまりであったのかも知れない。
▼私は、「科学読み物」を読むのが大好きである。特に子供向けに書かれたものが好きだ。とてもわかりやすい。大人が読んでわくわくするようなものこそ、子供にとっても良書ということになるとかたく信じている。だから、いつも思っている今、科学最前線にいる科学者・研究者には、まず大人が「目から鱗」の科学読み物を書いてほしい。それをぜひぜひ子供向けにも書いてほしい。
それで自らの後継者が育てば願ったり叶ったりでは。
福岡伸一さんには、ぜひぜひ子ども版『動的平衡』(絵本でもいいかも知れない)
を書いてほしい。きっと今の子どもたちは、このような「科学読み物」を待っているのだ!!
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