コウガイビルとES細胞
▼昨日20日はついに、その日だった。朝から、ワクワクドキドキして落ち着かなかった。コウガイビルのいたあのナイロン袋を取りに理科室に行った。そのナイロン袋と一緒に、あのコウガイビル2号であるクロイロコウガイビルのいた袋も一緒にもっていくことにした。コウガイビルのいた緑色のナイロン袋には少し気をつかった。なにしろ、ここに今なお動く「生命体」がいるのだから、急激な環境変化を与えていけないと。
それら布製の袋にいれて、県立大学光都キャンパスに向かった。
▼少し早めに着いたかと思ったが、講義室に入ると、この公開講座の熱心な聴講生たちは何名かはすでに、席に着いておられた。今回は、遠慮している場合ではなかった。失礼をして、いちばん前の中央に席をとった。
講義内容の一言一句も聞き漏らしたくなかった。手帳、ICレコーダー、デジカメそして、あのナイロン袋を準備して講義がはじまるのを待った。何十年ぶりかに学生にもどった気分だった。(と言っても、こんな熱心な「学生」であった記憶はない。(^^ゞポリポリ)
▼いよいよ
県立大学理学部大学院生命理学研究科 渡辺 憲二教授の講義『幹細胞の生物学』がはじまった。
先生自身の研究史のお話からはじめられて、生命科学の基礎から、今 話題の「ES細胞」「iPS細胞」にいたるまでお話は実に興味深いものだった。期待通りと言うより、それを上まわるものがあった。90分はあっと言うまであった。先生の研究に対しての誠実さや熱意がうんと伝わってきた。
「研究」ほんと面白いな。
もっともっと勉強しておけばよかったなと思うことしきりだった。
可能な限りの「記録」はした。これから、何度も何度も反芻作業を繰り返して楽しみたいと思う。
▼講義が一段落したところで、質問の時間をとってくださった。
いよいよの機会だった。聞いてみた。「コウガイビルの再生と幹細胞」について
ひじょにていねいに応えてくださった。
先生のあつかってこられたプラナリアで説明してくださった。「全能細胞が体のいたるところに存在する」こと、
「再生」のメカニズム。とてもわかりやすかった。面白かった。
応えてくださる先生の対応ぶりに、研究者の誠実さをみた。他にも質問者がおられたので、ふたつ目の質問は、全てが終わったあとにすることにした。
▼いよいよ、そのことを質問した。
例の持参したナイロン袋をとりだして、それをお見せしながら、コウガイビル「261日」の「ふしぎ!?」をぶっつけてみた。先生はていねいに聞いてくださった。「えーえー、動いていたでしょう」「小さくなったでしょう」と相づちをうちながら、そして言われた。
「それは、小さく再生したんです。」と。
何も餌を与えていないことについては、「自分を食べたと言っていいんですかね」と聞いたところ。
「そうです。自己消化をしたんです。そして、細胞の数を少なくして、体を脳をつくりなおしたんです」
「人間は、そんなことできないですよ」
なんということだ、前のコウガイビルの「仮説」のひとつが正しかった。
他のものを食べていたんではない。自分をたべていたんだ。
みどりの物質についても聞いてみた。
「「藻類」でしょうね。」と簡単応えられた、よくあることですとも言われた。それが餌になったことについては、否定された。
そして、いよいよ聞いてみた。17日から、顕微鏡下に見ている「生命体」の正体について
「コウガイビルの子どもである可能性については、限りなく0に近い」と。
「何もいないように見えても、コウガイビルの腸のなかには、いっぱい生物はいたはず」
「からだにもついていただろうし、動いていたのなら、繊毛をもつ単細胞生物だろう」と。
ちょっとショックだった。でも、一方では「生物」の世界が豊かに見えてくるようで面白かった。
▼第三の質問は、講義室から出て行かれるところをつかまえて、ひつこく聞いてしまった。
コウガイビルに未練があった。今度は先生が編集・著作された『プラナリアの形態分化』をとりだしてであった。
この本に「コウガイビル」について書かれた先生と連絡がとれるか。ということを質問した。
先生は、ほんと快く応答してくださった。「調べてみます。すぐわかると思います」と言ってくださった。
<つづく>
※実は、このあとさらに面白い展開となる。
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