名著『切っても切ってもプラナリア』に感動!!
▼昨日は、大賀ハス植えかえから、22週目だった。花托、いまは果托というのかな、そこに8つの子房のうち、5つにしっかりとした「種子」ができている。黒々としている。たくましさすら感じさせてくれる。
この間の様子を、阪本祐二先生は次のように書いておられる。
この間に受粉した胚珠は発達し、約一ヶ月後に黒熟する。花托は果托に変わり、発達して大きくなり、褐色化し、順次下の茎の方へ枯れていくから、花梗のところで折れるようになり、果托は下を向き、中の実が落下したり、果托と共に水面に下向きに落ちることになる。…(『蓮』阪本祐二著 法政大学出版局 P7より)
あの「あこがれの4日間」から、まもなく1ヶ月がたとうとしている。阪本先生の言われることが、展開されようとしている。引き続いて観察をつづけていきたい。
▼昨日は、どうしても記しておきたいことがもうひとつあった。
それは、あの名著『切っても切ってもプラナリア』(阿形清和 文 土橋とし子 絵 岩波書店)を読んだのである。コウガイビルを追いかけるなかで、この本の存在は知っていた。1996年に刊行された「科学であそぼう」(岩波書店)シリーズの一冊として世に出ていた。非常に人気が高く、今は絶版になっているということだった。復刻を望む声も高かったようだ。私は、子度向けのこの人気の本をぜひとも読みたかった。図書館にいくたびに捜してまわった。amazonでも捜した。古書では数万円のプレミアついているとも言われていた。
そう言われると、なんとしても読んでみたい気分になるのが人情だ。「コウガイビルを追う」のページでは、阿形先生の発表されたプレゼンのページにリンクしたりしていた。
▼いずれは、復刻されるだろうと淡い期待にかけていた。先日、偶然ネットで、「新装版」(2009.6.4第1刷)として復刻されているという情報を得た。さっそく注文した。小型化され一部改訂されているらしい。
やっと手に入れたこの本を読んでみた。
なるほど名著の所以がわかる。ぐいぐいと惹きつけられる。次へ次へと読みたくなる一挙に読んでしまった。
▼これは、科学読み物の傑作というだけでない。「コウガイビル」の「ふしぎ!?」を追いかけてきた私には、特別の意味をもっていた。自分でも驚いてしまうような事実が書いてあった。
まず最初に驚いたのは「プラナリアのいる場所」として、先日お世話になった兵庫県立大学理学部の近くの地図があがっているのである。ひょっとして、と思い著者阿形清和先生の巻末の履歴を見た。
「1991年より姫路工業大学(現・兵庫県立大学)生命科学科・助教授」
と書いてある。驚いた!!
ということは、この本の初版を出された当時は、あの「研究室」におられたことになる。
あの「研究室」とは、この8月20日に渡辺憲二先生に案内していただいあの部屋だ。
そのときは、まったくそのことを意識していなかったのだ。
あの研究室から、この名著『切っても切ってもプラナリア』は生まれていたんだ。
驚き、感動の事実だ。
▼まだまだある。この本の最後の方に『一匹から増やしたプラナリア』(同書P41)の話が紹介されている。
私がプラナリアの研究をしていた兵庫県立大学の理学部の研究室では、渡辺憲二教授が世界ではじめて実験室で増やすことに成功したプラナリア実験に使っていた。最初は一匹だったものが、今では何十万匹にも増えて、日本だけでなく、世界中の研究室に配られて実験に使われているのだ。プラナリアの遺伝子を研究するためには、同じ遺伝子を持ったプラナリアを使うことが必要だ。
この名誉ある最初の一匹は渡辺教授が岐阜県の入間川でとってきたプラナリアの中から、実験室の環境になじませたものである。ほとんどのプラナリアは実験室の環境になじまずにそのうち死に絶えてしまうが、このGIと命名されたプラナリアは、実験室の水とニワトリのレバーを好むたくましいプラナリアなのだ。(中略)実験室では、渡辺教授がGIに一週間に2回ニワトリのレバーをあげては新しい水に交換し、水温は22度程度にして、2週間に一回の割合で増やした。増やすといっても、別に渡辺教授がナイフで切っているわけではなく、ある程度の大きさプラナリアは、咽頭のまえかうしろで自分で2つにちぎれて増えるのだ。(『切っても切ってもプラナリア(新装版)』P41より)
なんということだ。あの研究室へお邪魔して渡辺先生自らがセッティグして、「プラナリアは顕微鏡で見なければ…」と見せてくださったのが、このGI(ジーアイ)だったのだ!!
これを先に読んでおけば…。という思いもあるが、それよりもあの一匹の「コウガイビル」がここまで連れ来てくれたことに感動すると同時に感謝だ!!
▼まだある。この本にはちゃんと、コウガイビル261日の「ふしぎ!?」の答えが書いた。
その答えとは、この本のキーワード 「再生」である。
みごとな話の展開で、「再生のルール」まで話が及ぶ、すばらしい。やっぱり名著だ!!
そして、これも最後の方に、私の「ふしぎ!?」に対する答えは用意されていた。
「エサを食べなくても再生できるのか?」(p37から)にある。
このことは、何を意味しているかというと、プラナリアはエサがなくてちぢんでいくときも、エサを食べて大きくなっていくときも、いつも体の<つくり直し>をしているということだ。(同書P38)
これこそ、コウガイビル261日の「ふしぎ!?」の質問に対して、渡辺憲二先生が、黒板に図も書きながら答えてくださった答えと同じではないか。「やっぱり」と思うと同時にあらためて渡辺先生に感謝する。
ゆっくりな私にわかりかけたこと。
●再生とは<つくり直す>こと。コウガイビル(陸棲プラナリア)は261日間、再生を繰り返した。
●再生の営みを繰り返すこと、それを「生きている」という。
▼この本は、この後、「大学で研究していること」「科学者をめさざす君へ」とつづく。子ども向けの本ということになっているが、そればかりでない。大人も十分に楽しめる。
そして、「自分でも研究してみよう」という気持ちにさせる名著である。
私にとって、名著の域を超えて、特別の意味をもつ一冊である。
この夏、この本の新装版が出たということで、この本をテキストに「自由研究」に取り組んだという話などあれば、ぜひ知りたいものだ。
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