コウガイビルからiPS細胞まで
▼大賀ハス、植え替え21週目であった。今週は、ずっといい天気がつづき、池の水がなくなってしまうところであった。週の途中でバケツで何杯かの水をいれた。花托は、今はこう呼ばないのかもしれないが、一週間でやはり成長している。長径は、7.5㎝である。一週間で2㎝成長したことになる。だんだん扁平に近づいているようでもある。しわが寄ってきている。少し、黄色みもおびてきている。黒い班点、「しみ」のようなものができているのも気になるところだ。ところで、肝心の種子であるが、ケースは8個ある、そのうちケースが空っぽは3個。種子らしいものが入っているのは、5個だ。これは、ほんとうに「種子」だろうか。それはまだわからない。自家受粉はOKなんだろうか。いずれにして、次の世代につなぐ営みがあるということはまちがいない。
▼昨日は、まだまだあの20日の講義「幹細胞の生物学」の余韻が残っていた。時間が少しとれたので、今度は「記録」しているものに基づいて、講義内容吸収の反芻作業をやってみた。
「記録」残しているもの。
・ICレコーダでの音声データ
・板書をデジカメで撮った画像データ、
・自分で書いたメモ(システム手帳リフィル、これを「カード」がわりに使用)
・講義でいただい資料A3枚プリント
以上である。今度は、パソコンで、画像、音声は出力させた。
メモの方を、補足したり、順番を並べかえたりしながら自分のペースで講義を再現してみた。
「私自身の文脈」にすり合わせをしながらである。
▼この作業のなかで、いくつもはじめてわかったことがある。それは単なる「知識」を越えたものだ。
渡辺先生の講義には、「ふしぎ!?」を追求する人の輝きがあった。
「発生学」ひとすじに36年。
「研究」対象に対する愛情(うすっぺらな表現だが、他に言葉がうかばない)のようなものが感じられた。
たんたんと語りながら、板書をしていかれる。
ときどき、なるほどと思わせる言葉が飛びだす。プロならでは言葉。
たとえば、「お皿では…」「お皿のなかでは…」。人工的な「培養」「培地」を意味する言葉らしい。
なるほど…。なんとも、ぐっと「研究」を身近にひきつける言葉だ。
誠実だ。
「これは、わかっていないんです」「私も、わからない」「こんなことはできないです」
こんな言葉がすっと出てくるんです。
これは質問に答えられるときが、顕著だった。いいな!
大いに学びたいところだ。
▼どうしても今日の時点の書き残しておきたいことがあるので、「原則」からはずれて、2度書きする。
私の等身大にひきつけて、講義のなかで書き残しておきたいことプロットしてみる。
・ウズラのように生殖の時期(季節)を選ぶのが「原則」である。
・プラナリア(私にはコウガイビル)は、「再生」のチャンピョンだ。
・生殖細胞ができる仕組みに共通する言葉がある。それが「幹細胞」。
・細胞の損失を補充する細胞=幹細胞
・細胞を構成する分子で考える。原子レベルでは考えない。問題は、タンパク質だ。
・細胞の生存に必要なもの(ハウスキーピング)がある。
・「全能性細胞の系譜」がキーだ。
・全能性細胞は、次の世代つくる細胞に引き継がれる。
・全能性細胞を人工的に増やし(細胞を培養する:「おさら」のなかで)利用する時代に。
・卵細胞質は分化した核を初期化(リプログラミング)できる。
・初期化の効率は若い細胞で高く、分化細胞では低い。発生が途中で止まったり、異常が生じたりする。
・受精卵は全能性の細胞である。
・ES細胞(embryonic stem cell)=胚性幹細胞
・細胞には自己非自己の認識が可能である。
・患者自身からES細胞はつくれないか。→iPS細胞 これがHot!!
・人工多能性幹細胞(iPS細胞 induced pluripotent stem cell)
・細胞融合したときES細胞よりの細胞となる。
・受精卵に分化した細胞の核を移植したときと似ている。
・遺伝子は一度手に入れれば、いくらでも増やせる。
【質問に関連して】
・プラナリア(コウガイビル)には、全身に全能性細胞がある。
・場所を認識して、全能性細胞は増殖する。(場所に応じてつくりなおす)
・プラナリアの場合、全能性細胞のことを新生細胞という。
・種を超えて、全能性細胞には共通する分子がある。
・新生細胞は、ほとんどES細胞と呼んでいい。
【コウガイビルについての質問に対して】
・人間のように餓死はしない。
・それは、細胞の数をへらして、「小さく」つくりなおしたのだ。
・再びエサを与えれば、大きく作り直す。
・袋のなかの「みどり」はケイ藻類だろう。水道水でも可能性大。
・「みどり」のケイ藻類をエサにした可能性は少ない。
・自分の細胞をこわして栄養にした。自己消化 自分自身を食べた。
・水中の微生物がコウガイビルである可能性は限りなく0に近い。
・微生物は、せん毛をもつ単細胞であろう。
▼ここに来て、コウガイビル→全能性細胞→ES細胞→iPS細胞
一挙に、私のなかではつながってきた。
まもなく授業が再開する。
今年の授業開きも、単元【細胞と生殖】のはじまりも、コウガイビルだった。
夏休みの間に「消えてしまったコウガイビル」のこれを報告しよう。
うまく説明できるかは別にして、これだけは何としても話をしておかなければならない。
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コメント
おはようございます。
>自家受粉はOKなんだろうか。
OKです。たぶん他の花粉は混ざっていないでしょう。楠田家の半径2km以内にハスは植わっていないでしょ。
投稿: sakamoto | 2009/08/23 07:47
阪本さん
さっそくありがとうございます。
そうすると、5個は、正真正銘の大賀ハスの種子となる可能性があるということですか。
楽しみだ。
投稿: 楠田純一 | 2009/08/24 06:33